西日本皮膚科
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85 巻, 5 号
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目次
図説
  • 平野 早希子, 永江 航之介, 田中 絵美
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 5 号 p. 335-336
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    患者:52 歳,男性

    主訴:倦怠感,全身の乾燥

    現病歴:半年前から全身の皮膚の乾燥があった。当科初診 3 カ 月前に易疲労感が出現した。当科初診 3 日前に当院内科を受診した。採血にて甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH)高値と遊離サイロキシン(free thyroxine:FT4)の著明な低下を認めるとともに,抗甲状腺ペルオキシターゼ抗体(anti-thyroid peroxidase antibody:TPOAb),抗サイログロブリン抗体(anti-thyroglobulin antibody:TgAb)ともに著しく高値であり,慢性甲状腺炎と診断された。全身の皮膚に乾燥,落屑を認めたため,当科に紹介され受診した。

    既往歴:なし 内服歴:なし

    初診時現症:全身の皮膚の乾燥と過角化,一部に落屑,亀裂や色素沈着があった(図 1 ac)。皮膚炎や紅斑,瘙痒はなかった。甲状腺を触知した。

    臨床検査所見(下線は異常値を示す):WBC 5400/μl(Neut 66.3%,Lymph 25.4%,Mono 4.8%,Eos 2.8%,Baso 0.7%),Hb 13.4 g/dl,PLT 15.8×104/μl,AST 121 U/lALT 113 U/lLDH 633 U/l,ALP 62 U/l,γ-GTP 26 U/l ,CK 5261 U/l,BUN 17.9 mg/dl,Cre 1.49 mg/dl,Na 136 mEq/l,K 4.1 mEq/l,Cl 96 mEq/l,CRP 0.24 mg/dl,TSH 107.56 μIU/mlFT4 0.05 ng/dlTPOAb 492 IU/mlTgAb>4000 IU/ml非特異的 IgE 246 U/l,TARC 403 pg/ml,抗核抗体 40 倍未満

    甲状腺エコー所見:びまん性に甲状腺が腫大し,内部エコーの低下があった

    病理組織学的所見:表皮は厚く密な過角化に覆われ,リンパ球浸潤像を伴う海綿状態と,表皮突起延長を伴う乳頭腫状の肥厚がみられた。真皮には毛細血管増生とリンパ球浸潤がみられ,真皮浅層から皮下にかけてムチン沈着を伴っていた。

    治療および経過:全身の皮膚症状は慢性甲状腺炎に伴うものと考えた。初診時からレボチロキシンナトリウム水和物内服(50 μg/day)を開始し 100 μg/day まで漸増した。皮膚症状と全身倦怠感は改善傾向となり(図 2 a c),治療開始 1 カ 月後には TSH,FT4 とも正常化した。

綜説
症例
  • 芦塚 賢美, 小池 雄太, 森嵜 仁美, 清原 龍士, 福地 麗雅, 神尾 芳幸, 宇谷 厚志, 室田 浩之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 5 号 p. 342-346
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    83 歳,女性。初診の 1 カ 月前より全身に紅斑,弛緩性水疱,びらんが出現した。近医皮膚科で伝染性膿痂疹を疑われ治療されるも改善なく,増悪したため当科を受診した。初診時,びらんと膜様鱗屑を伴う紅皮症を呈しており,血清抗デスモグレイン 1 抗体≧1000 U/ml,病理組織学的検査で表皮が顆粒層で解離し,蛍光抗体直接法で表皮上層の表皮角化細胞間に IgG の沈着を認め,落葉状天疱瘡と診断した。プレドニゾロン(PSL)45 mg/日(1 mg/kg/ 日)の内服を開始したが減量困難であり,大量免疫グロブリン静注療法(IVIG)15 g/日×5 日間を施行し皮疹は軽快した。近医へ転院し PSL 13 mg/日まで減量したところで皮疹が再燃したため当科へ転院した。初診時同様の紅皮症を認め,PSL 30 mg/ 日に増量し,アザチオプリン 50 mg/日内服を追加し,ステロイドミニパルス療法(メチルプレドニゾロン 500 mg 点滴/日×3 日間)を 1 回,IVIG 15 g/日×5 日間を 2 回行い,皮疹は軽快した。落葉状天疱瘡は一般的に尋常性天疱瘡と比較し治療反応性がよく予後良好な疾患とされているが,稀に重症化し,紅皮症化することが知られている。紅皮症の原因疾患として落葉状天疱瘡を念頭におき,早期診断・加療を行うべきである。

  • 横溝 紗佑里, 横山 恵美, 川上 佳夫, 森実 真, 安井 陽子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 5 号 p. 347-350
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    49 歳,女性。5 年前より近医で顔面の紅斑に対してステロイド外用剤,漢方薬などで治療されていた。 初診の 3 カ 月前に前医を受診し,酒さ様皮膚炎としてタクロリムス軟膏を外用したが眼瞼浮腫を生じ,プレドニゾロン(PSL)の内服を開始した。浮腫は軽快したが PSL 漸減にともない顔面の紅斑が再燃し,難治のため当院に紹介となった。顔面の紅斑や丘疹,眼瞼浮腫を認め,PSL 内服を中止し,タクロリムス軟膏外用を開始したが症状は急激に増悪し,PSL 10 mg/日の内服を再開した。初診時の皮膚生検で真皮深層にいたるまで付属器周囲性にリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤と類上皮肉芽腫の形成がみられ,トルイジンブルー染色で真皮血管周囲に肥満細胞が増加していた。酒さ様皮膚炎および Morbihan 病と考え,PSL を漸減し,ミノサイクリン塩酸塩内服とメトロニダゾール軟膏の外用で治療し,紅斑と眼瞼浮腫は約 1 年を経て緩徐に改善した。Morbihan 病は顔の中央および上部 3 分の 2(眼窩周囲・額・眉間・鼻および頰)にみられるリンパ浮腫を主症状とし,現在のところ確立した診断基準や治療はない。自験例では眼瞼浮腫の再燃が長期に及んだが,ミノサイクリン塩酸塩内服が症状改善の一助となった可能性が考えられた。

  • 古森 環, 小畑 文佳, 橋本 紗和子, 鬼束 真美, 川上 かおり, 安野 秀一郎, 浅野 伸幸, 下村 裕
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 5 号 p. 351-355
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    症例① 71 歳,男性。幼少期より腰部に軟性の腫瘤を認め,徐々に増大した。日常生活には問題がなかったため無治療であったが,次第に重さが気になるようになり,切除希望で当院を紹介され受診した。臨床所見および病理組織学的所見から表在性皮膚脂肪腫性母斑と診断した。症例② 35 歳,男性。約 10 年前より,右腰部に弾性軟の小丘疹や小腫瘤が多発し帯状に分布していた。一部の腫瘍を切除し,臨床所見と病理組織学的所見から表在性皮膚脂肪腫性母斑と診断した。表在性皮膚脂肪腫性母斑の臨床像は特徴的な外観を呈しており,比較的診断は容易とされるが,その他の疾患として神経線維腫症(特にその中でも帯状の分布を呈しうる神経線維腫症 5 型)や軟性線維腫が鑑別に挙がる。表在性皮膚脂肪腫性母斑の病因は未解明であり,今後の更なる症例の蓄積と検討を要する。

  • 須永 知里, 山内 輝夫, 岩切 琢磨, 永田 茂樹
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 5 号 p. 356-361
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    51 歳,男性。末端肥大症で持続性ソマトスタチンアナログ除放性製剤の投与治療中であった。数年前から左眼瞼と左外耳道に腫瘤がみられ,外科的切除し粘液腫と診断された。数カ月前から右陰囊内に腫瘤を自覚し,切除目的に当科に紹介され受診した。現症:右陰囊内に 3 cm の下床との癒着なく,可動性良好なドーム状隆起性弾性軟の皮下腫瘤があった。自覚症状はなかった。病理組織所見では腫瘍は真皮下層から脂肪織上層に存在した。壁は線維性被膜に覆われ,内容は疎らに存在する毛細血管や紡錐形の線維芽細胞,未熟な膠原線維と粘液よりなり,羽毛状概観を呈する充実性の部分と,粘液が貯留したと考えられる囊腫部分から構成された。陰囊粘液腫と診断した。病歴を調べ,既往歴に下垂体腫瘍による末端肥大症,大細胞石灰型セルトリ細胞腫,眼瞼粘液腫,甲状腺腫瘍,外耳道粘液腫があり,口唇の色素斑,陰囊粘液腫がみられることが Carney complex の診断基準項目に該当し,同疾患と診断した。Carney complex の予後に影響する心臓粘液腫は,心臓超音波検査を施行したがみられなかった。原因遺伝子として同定されているPRKAR1A(protein kinase A regulatory subunit 1-alpha subunit)遺伝子変異については,本人の精査希望がなく,遺伝子検索は施行しなかった。今回,われわれは陰囊粘液腫から Carney complex と診断することができた。Carney complex は稀な疾患ではあるが,皮膚病変(色素斑・青色母斑・粘液腫)のみでも診断可能な疾患であるので,予後を考え,早期に他科と連携し,精査加療が必要な疾患であると考える。

  • 村尾 玲, 麻生 麻理子, 古賀 文二, 古賀 佳織, 鶴田 紀子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 5 号 p. 362-365
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    2 歳,女児。1 歳半頃に家族が右第 5 指腹側の結節に気づいた。明らかな外傷の既往はなかった。部分生検の病理で真皮から皮下脂肪織にかけて紡錘形細胞が膠原線維の増加を伴って束状に増殖しており,Masson Trichrome 染色で赤く染まる封入体を認めた。以上より乳児指趾線維腫症と診断した。自覚症状や機能障害がないため経過観察としたが,自然消退しなかった。3 歳半頃より軽度の圧痛を伴うようになったことより海外の報告1)を参考にタクロリムス軟膏 0.03%小児用の外用を開始した。6 カ 月間外用するも改善に乏しく外用を終了した。現在は自覚症状はなく経過観察中である。調べうる限り本邦における 2000 年以降の乳児指趾線維腫症の報告例は自験例を含め 21 例であった。1 歳未満の男児に多く,部位は足趾に多くみられた。本症は指趾の背面~側面が好発部位であり,自験例の他に腹側に生じた例はなかった。約半数が経過観察されており,症状を認める症例では手術が選択されていた。経過観察例はすべて自然消退しており,無症状で生活に支障を来さない場合には経過観察を行うことが最適と考えられた。

  • 西村 美紅, 栗原 雄一, 宮原 正晴, 丸田 康夫, 明石 道昭, 大島 孝一, 大野 文嵩, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 5 号 p. 366-369
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    46 歳,男性。幼少時からアトピー性皮膚炎があり難治性のため当科受診 3 年前よりデュピルマブを投与されていた。1 年前より左下腿前面に紅色丘疹が出現し前医の切除生検で皮膚原発性 CD30 陽性 T 細胞リンパ増殖症と診断され,精査加療目的に紹介された。当科初診時採血で好酸球増多があり,可溶性 IL-2R は若干高値で血液内科と併診し,全身 CT や PET の画像検査で明らかな転移巣は認めなかった。近年,デュピルマブ(デュピクセント®)の長期投与における皮膚 T 細胞性リンパ腫の発症の報告が増えているが関連性については不明な点も多く,更なる研究に加えて経過観察と症例蓄積が必要と考えられる。

  • 角南 志保, 中野 宏明, 高瀬 早和子, 西村 陽一, 太田 深雪, 佐々木 洋香, 八木 洋輔
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 5 号 p. 370-373
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    64 歳,男性。初診 5 カ 月前に末梢血における赤血球,血小板の減少,および骨髄検査における 3 系統の異型性から骨髄異形成症候群と診断された。初診の 1 カ 月前頃に右大転子部に約 5 mm の紅色丘疹を自覚し,急速に増大し約 10×7 cm の潰瘍となったため,当科に紹介され受診した。潰瘍部分より皮膚生検を行ったところ,病理組織学的には芽球細胞が密に浸潤しており,leukemia cutis と診断した。初診より 6 カ 月後,大転子部の紅色丘疹の出現を自覚してから約 7 カ 月で急性転化した。骨髄異形成症候群に leukemia cutis をきたすことは非常に少ない。出現時には白血病化や予後不良を示唆する可能性が高く,本症例も急性骨髄性白血病に移行した。Leukemia cutis の出現が予後を予見できる可能性もあるため,骨髄異形成症候群患者を含めた血液疾患患者において,難治性皮膚病変が出現した場合は皮疹の十分な観察,病理組織学的検討を行うことが必要である。また,原疾患の治療によって皮膚症状が軽快するものもあれば,皮膚病変に対して治療が必要となる場合もあるため,全身状態ならびに皮膚病変の十分な観察,経過フォローを他科とも連携して行っていくことが重要である。

  • 大久保 和貴子, 内藤 玲子, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 5 号 p. 374-377
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    81 歳,女性。既往に関節リウマチがあり,近医整形外科に通院中で,免疫調整薬としてサラゾスルファピリジン 1000 mg/ 日を内服中だった。初診の 5 日前に左上腕の皮疹を自覚し,その後顔面にも拡大した。初診時,顔面・躯幹・四肢に散在性に水疱や痂皮を伴う紅斑を認め,水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus,以下 VZV)抗原キットで陽性を示した。また,初診時ウイルス抗体価は VZV-IgM 陰性,VZV-IgG 高値陽性と既感染パターンであった。アシクロビル点滴治療にて水疱はすべて痂皮化した。初診時のウイルス抗体価,帯状疱疹の典型的な分布を示す皮疹を伴わないこと,皮疹が疼痛を伴わないこと,水痘患者との明らかな接触がなかったことから,内因性 VZV 再活性化による水痘再罹患と診断した。VZV は幼少期に初感染し水痘として発症した後,神経節に潜伏感染する。宿主は終生免疫を獲得するが,潜伏していた内因性 VZV の再活性化は生じる。再活性化は神経支配領域に一致した部位に,帯状に皮疹を呈する帯状疱疹として発症することが殆どである。しかし,時に内因性 VZV の再活性化においても帯状疱疹を伴わずに水痘様の皮疹を呈することがある。このような水痘再罹患の発症機序としては,外因性 VZV の再感染と内因性 VZV の再活性化の両者の可能性がある。高齢者の汎発性の水疱を見た際には,水痘再罹患を鑑別のひとつとして挙げるべきである。

  • 石倉 侑, 梶原 丈照, 竹内 聡, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 5 号 p. 378-381
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    63 歳,女性。初診の約 4 週間前にアスファルトで転倒し両膝を受傷した。前医でアモキシシリン内服にて治療されたが右膝の発赤,腫脹は改善なく鼠径部の圧痛も生じたため当科に紹介となった。入院時の SARS-CoV-2 PCR 陰性,発熱などの全身症状はなく右膝潰瘍周囲の発赤,腫脹と同部から鼠径部にかけて発赤,疼痛,圧痛があり CRP は 4.99 mg/dl であった。入院しセファゾリン 3 g/day 点滴投与を開始したが 3 病日に 37 度台の微熱,4 病日には CRP が 9.22 mg/dl と上昇したためミノサイクリン塩酸塩 200 mg/day 内服を追加した。同時に鼻汁も生じ非ピリン系総合感冒薬を処方した。5 病日に創部培養からノカルジア属が分離され,同日の SARS-CoV-2 PCR 再検査で陽性が判明したため,隔離,転棟対応をしながら ST 合剤の内服を開始した。皮膚ノカルジア症は 12 病日には CRP 陰転化し,COVID-19 感染症は酸素化,呼吸状態の悪化なく症状軽快した。右膝創部の紅斑が残存したため ST 合剤内服継続しながら退院した。退院 5 日後より倦怠感,悪心,食思不振を生じ COVID-19 感染後遺症と考え当院総合診療科を受診したところ,118 mmol/ml の低ナトリウム血症と肝障害が判明したため,入院し ST 合剤を中止,ナトリウム輸液でこれらの症状は速やかに改善した。COVID-19 感染症を伴い経過の判断に注意を要した症例として報告したい。

研究
  • 稲葉 葉一
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 85 巻 5 号 p. 382-386
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    アトピー性皮膚炎は,増悪と軽快を繰り返す瘙痒のある湿疹を主症状とする慢性的な皮膚疾患である。瘙痒に伴う精神的苦痛や睡眠障害,搔破行動やこれによる湿疹の更なる悪化や細菌性二次感染などはアトピー性皮膚炎患者の QOL を障害する主要因となっている。したがって,瘙痒に対してどのようなケアを行うかが重要となるが,そのためには各患者における瘙痒の程度やどのような状況下で瘙痒が出現しているかを正しく知る必要がある。しかしながら,Visual Analogue Scale(VAS)や Numerical Rating Scale(NRS)など現在一般的に行われている瘙痒評価法は,瘙痒の発生する状況分析にまでは踏み込んでいない。今回どのような状況下に瘙痒が出現するかアンケート調査を行ったところ,強い瘙痒が起床時,終業時,帰宅時,入浴前後や就寝時といった患者にほぼ共通した状況下(出現ポイント)に起こっていることが分かった。更に,このようなアトピー性皮膚炎における瘙痒の日内変動を科学的に評価する方法として,共通した瘙痒の出現ポイントに基づいた「かゆみ記入票」を作成し,各ポイントにおける瘙痒の強度をオンタイムでの自己評価によるスコア化を試みたところ,ある程度正確に実際の瘙痒の強度の日内変動を反映できた。この新規瘙痒評価法が,瘙痒の日内変動に合わせたきめこまかな薬剤投与時間の調整など,患者ごとに最適化した治療設計や各種治療の効果を評価するために有用と考えられ報告した。

統計
  • ――自験例と過去 5 年間の集計――
    古荘 晶子, 久保 陽介, 吉野 雄一郎
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 85 巻 5 号 p. 387-393
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    現代の日本では,高齢化や核家族化で独居の高齢者や高齢者のみの家庭が増加している。今回,93 歳女性の浴槽での熱傷の症例を経験した。ADL が自立していた患者であったが,熱傷を契機に,全身状態が悪化し不幸な転帰をたどった。この症例より浴槽での熱傷の危険性を痛感し,当院での過去 5 年間の症例を検討した。当院で入院加療を行った 65 歳以上の浴槽での受傷例 10 例を対象とし,後ろ向きに検討した。ほとんどがⅡ度熱傷であったが,8 例で手術が必要であった。基礎疾患は数多く認めたが ADL は全例自立していた。転帰は死亡例が 2 例,残り 8 例はリハビリテーションや介護が必要な状態で転院となった。また,浴槽での熱傷は褥瘡の好発部位と類似するため治療経過で褥瘡を形成した 3 例についても検討した。10 例の検討により,浴槽での熱傷は治療に難渋することが多く,ADL の回復が極めて難しいことが分かった。浴槽での熱傷は本人からの聴取のみしか現場での詳細が不明なことが多く,時に高齢者では受傷起点がはっきりしないことが多い。如何に受傷を減らせるかについて検討した文献や報告は少ない。今回の検討では給湯器や水栓の誤操作が目立ったことから,高齢者の浴槽での事故を防ぐためには,浴室環境を整えること,「高齢者見守りツール」の活用や,行政や社会福祉施設を利用した環境調整が大事であると考えた。皮膚科医の視点から,浴槽での受傷を減らすための啓発について考察した。

世界の皮膚科学者
  • Jong Hoon Kim
    原稿種別: letter
    2023 年 85 巻 5 号 p. 397-398
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    Dr. Jong Hoon Kim M.D. Ph.D. is an Assistant Professor in the Department of Dermatology and Cutaneous Biology Research Institute at Yonsei University in South Korea. He completed his Ph.D. and postdoctoral projects between 2013 and 2016, which focused on the study of T cell immunology. His initial research aimed to dissect the mechanism of T-cell activation in psoriasis. Through his work, he found that TCR-mediated activation of PD-1IL-17A T cells contributes to disease activity in murine psoriasis, independent of IL-23-mediated activation (J Allergy Clin Immunol. 2016). This study provided insights into the mechanism of generating PD-1 resident memory Tc17 cells observed in human psoriatic skin. He also conducted a study on human T cells by collecting liver perfusate during liver transplantation, where he identified specific features of liverresident CD69CD103CD8 T cells under healthy and diseased conditions (J Hepatol. 2020).

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