西日本皮膚科
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80 巻, 5 号
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目次
図説
  • 江川 清文
    2018 年 80 巻 5 号 p. 415-416
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり
    症例:75 歳,女性
    主訴:背部の腫瘤 現病歴:1 週間前に背部の腫瘤に気づき,2014 年 7 月に受診した。毎日,山間部で畑仕事をしている。他に特記事項は無い。
    現症:左上背部に,淡黄色の地に淡褐色斑紋を有する,体長 23 mm のマダニ虫体を認めた(図1 )。刺咬部皮膚に発赤を認めたが,自覚症状は無かった。
    マダニの同定と診断:特徴的肉眼所見1) より,タカサゴキララマダニ雌成虫によるマダニ刺症と診断した。
    治療および経過:口器部分を鑷子で抓み虫体を除去した(図2 )。ダーモスコピーで口下片の欠損を認めたため,残存口器による異物肉芽腫の形成を防ぐ目的で局所麻酔下に生検トレパンを用いて刺咬部皮膚をくりぬいた(図3 )。ミノサイクリン塩酸塩 100 mg/日を 5 日間投与して経過をみたが,以後,全身症状は認めなかった。
  • 江川 清文
    2018 年 80 巻 5 号 p. 417-418
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり
    症例:3 歳,男児と,6 歳,女児
    主訴:左口角部の紅斑,亀裂,痂疲
    現病歴:患児は共に,1 週間ほど前から口角に紅斑,亀裂と痂疲を生じたとして,同一日に相次いで当院を受診した。発症前や経過中に,発熱等の全身症状はなかった。
    家族歴・既往歴:女児の姉に 1 カ月前に,発熱を伴う溶連菌感染症罹患歴あり。 現症:両児とも,左口角に黄色痂疲を伴う紅斑,亀裂と,周囲散布性に紅斑を伴う粟粒大までの漿液性丘疹を認めた(図1,2 )。また,両児に苺状舌(図3 )と扁桃腫大および発赤を,男児に肛門部の紅斑(図4 )を認めた。 臨床検査所見:A 群 β 溶血性連鎖球菌(以下溶連菌)迅速検出キットを用いて,両児の咽頭と男児の肛門に陽性を得た。口角部皮疹の真菌検査は,両児共に陰性であった。
    診断および治療:溶連菌性口角炎(両児)および肛囲溶連菌性皮膚炎(男児)と診断し,セフジニル常用量内服とフシジン酸ナトリウム軟膏外用を 10 日間行い治癒した。
綜説
  • 千貫 祐子
    2018 年 80 巻 5 号 p. 419-424
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり

    IgE 依存性即時型食物アレルギーの発症には二段階の免疫学的機序が関与する。まず,ある外来抗原に対して生体がこれをアレルゲンと認識すると,抗原特異的 IgE 抗体が産生され,組織中のマスト細胞あるいは末梢血中の好塩基球の表面に高親和性 IgE 受容体(FcεRI)を介して結合する(感作成立)。次いで,同じ抗原あるいは交差反応性を持つ抗原が侵入すると,細胞表面に結合した抗原特異的 IgE が架橋され,ヒスタミンなどの化学伝達物質が遊離され,蕁麻疹やアナフィラキシーが生じる(症状誘発)。これまで長らく,食物アレルギー発症における感作成立は,主に経口摂取した食物に対して経腸管的に生じると考えられてきた。ところが近年,本邦で生じた加水分解コムギ含有石鹸の使用による小麦アレルギー発症の事例を契機に,食物アレルギー発症における経皮・経粘膜感作の重要性が注目されることとなった。

  • ―― ゲーテ大学フランクフルト・アム・マイン皮膚科学教室 ――
    石原 あえか
    2018 年 80 巻 5 号 p. 425-430
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり
    (1)フランクフルト大学皮膚科学教室の歴史
    (2)バレッタのムラージュ
    (3)フランクフルト大学所蔵の珍しいムラージュ
    (4)梅毒特効薬「サルバルサン」パウル・エールリッヒと秦佐八郎
    (5)ユダヤ系皮膚科医たちの消息 へルクスハイマーの最期とガンスの復帰
症例
  • 楠目 エマ, 山本 真有子, 大湖 健太郎, 森 正和, 佐野 栄紀
    2018 年 80 巻 5 号 p. 431-435
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり

    30 歳,男性。急性骨髄性白血病を発症し,非血縁者間同種造血幹細胞移植を受けた。1 週間後に顔面や 四肢に紅斑が出現し,急性移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)と診断され,ステロイドパルス療法により軽快し,以降プレドニゾロンとミゾリビン内服で良好に経過した。移植から 3 年後,下肢に水疱,びらんが出現し,色素脱失や色素沈着を残すようになった。同時期から次第に皮膚硬化が出現した。水疱の病理組織学的所見では,基底層の液状変性と表皮直下の裂隙形成を認め,真皮深層から皮下にかけて膨化した膠原線維が増生し,萎縮した汗腺を取り囲んでいた。病理組織学的所見より皮膚硬化型慢性 GVHD と診断した。皮膚硬化は徐々に進行し下肢に潰瘍が多発し難治であった。プレドニゾロンの増量と局所処置に加え narrow-band UVB(NB-UVB)全身照射およびエキシマライトによる NB-UVB 照射を行い,徐々に皮膚硬化は改善し,7 カ月後に潰瘍は上皮化した。プレドニゾロンを漸減しているが,潰瘍の再燃はなく経過している。慢性 GVHD における紫外線治療の有効性について文献的考察を加えて報告する。

  • 江原 大輔, 小池 雄太, 大久保 佑美, 松尾 真稔, 石井 文人, 橋本 隆, 宇谷 厚志
    2018 年 80 巻 5 号 p. 436-441
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり

    67 歳,女性。2013 年 3 月に左腋窩の皮下腫瘤を自覚し,血液内科で濾胞性リンパ腫と診断され,無治療で経過観察されていた。2014 年 8 月,口腔内びらんが出現し,10 月には全身に水疱を伴う紅斑が出現した。血清解析で抗デスモグレイン 3 抗体陽性であり,病理組織学的に表皮内水疱と棘融解細胞,液状変性がみられ,蛍光抗体直接法では表皮細胞間に IgG,表皮真皮境界部に IgG と C3が沈着していた。また,ラット膀胱上皮を用いた蛍光抗体間接法で IgG 陽性,正常ヒト表皮抽出液を用いた免疫ブロット法ではペリプラキン陽性であった。以上より,腫瘍随伴性天疱瘡と診断した。また,経過中経皮的動脈血酸素飽和度の低下と単純 CT で気管支壁肥厚を認め,閉塞性細気管支炎が疑われた。腫瘍随伴性天疱瘡に対してステロイド内服,ステロイドパルス,免疫グロブリン大量静注療法,血漿交換やリツキシマブ投与を行い,随伴した悪性リンパ腫に対してベンダムスチン投与を行ったが著効せず,誤嚥性肺炎を発症し死亡した。本疾患の治療法は確立されておらず,しばしば集学的治療を要するが,自験例のごとく治療抵抗性の症例も存在する。過去の報告に鑑み,重症化が予想される場合には早期に,腫瘍随伴性天疱瘡に対するリツキシマブ,随伴腫瘍に対する抗腫瘍薬の開始を検討する必要があると考えた。

  • 河原 紗穂, 中原 真希子, 里村 暁子, 中原 剛士 , 内 博史, 古江 増隆, 桐生 美麿
    2018 年 80 巻 5 号 p. 442-445
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり

    53 歳,女性。初診の 2 年前より両肘に皮疹が出現し,ステロイド外用を行っていた。その後,無症候性の紅色丘疹が腹部,四肢に拡大し,精査加療目的に当科に紹介され受診した。前腕,下腿後面の紅色丘疹から採取した病理組織所見では,真皮膠原線維はびまん性に軽度変性しており,真皮中層~下層にかけて膠原線維間に組織球,リンパ球を中心とした炎症細胞が浸潤していた。同部位にムチンの沈着があり,interstitial type の granuloma annulare と診断した。自験例は,環状肉芽腫の定型疹をとらず,基礎疾患も特になかったために診断に難渋したが,組織学的検討が診断に有用であった。

  • 河田 真理子, 山﨑 修, 竹原 彩, 鈴木 大介, 岩月 啓氏, 柳井 広之
    2018 年 80 巻 5 号 p. 446-449
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり
    59 歳,女性。小児期から左側腹部に限局して,軟らかい小型の結節を数個認めていた。3 年前から徐々に硬化,増大し,発赤,圧痛を伴ってきたため当科を受診した。限局性に結節が多発し,神経線維腫症 1 型や 2 型の他症状はなく,臨床的には分節型神経線維腫症を考えた。生検にて悪性末梢神経鞘腫瘍の合併を疑い,拡大切除した。全摘標本では多発する結節は神経鞘腫の多彩な組織像を示した。術後 7 年間,再発や転移を認めなかった。
  • 松田 知与, 原口 祐子, 菊池 智子, 伏見 文良, 山田 裕一, 小田 義直, 古江 増隆
    2018 年 80 巻 5 号 p. 450-454
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり
    35 歳,女性。初診の 2 年前に腰部の軟性皮下腫瘤に気付いた。自覚症状や増大傾向はなく,当科を受診した。腰部に 4 × 3.5 cm の皮膚・下床との可動性がやや不良な軟性ドーム状皮下腫瘤を認めた。エコーで腫瘍は内部がモザイク状の囊腫様で,後方輝度の増強を認め,豊富な血流を認めた。局所麻酔下に切除した。腫瘤は紫紅色調で,筋膜上に存在し周囲との癒着は軽度で,腫瘍内部へ複数の血管の迷入を認めた。組織学的に,HE 染色で境界明瞭な類円形から紡錐形の腫瘍細胞の増殖がみられ,内部の血管腔の拡大を認めた。増殖した腫瘍細胞は異型性に乏しく分裂像も少なかった。増殖細胞は CD34,STAT-6陽性,αSMA,S-100,EMA 陰性を示した。融合遺伝子解析で NAB2-STAT6 を検出した。以上より,本症例を solitary fibrous tumor(SFT) と診断した。SFT は,組織学的には血管周囲細胞腫を含む線維芽細胞性間葉系新生物である。一般的に胸腔内に生じる腫瘍であり,皮膚科領域からの報告例は少ない。近年,次世代シーケンス技術により,SFT において NAB2-STAT6 融合遺伝子が検出された。それにより SFT の診断において免疫組織化学的に STAT-6 の発現を確認することが有用とされてきている。
  • 安食 さえ子, 加賀谷 真起子, 栁澤 健二, 髙橋 博之, 後藤田 裕子
    2018 年 80 巻 5 号 p. 455-459
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり
    74 歳,男性。右外眼角部の 20 × 20 mm の腫瘍を主訴に当科を受診した。約 20 年前に気づくも放置していたところ,最近になって腫瘍は徐々に増大し出血を伴うようになった。局所麻酔下に全切除した。病理組織学的に腫瘍細胞は異型性に乏しい類円形細胞からなり,充実性増殖を呈し,囊腫状構造内にはムチン沈着を認めた。免疫組織化学染色では,estrogen receptor,progesterone receptor,synaptophysin および chromogranin A が陽性,cytokeratin5/6 が陰性だったことより endocrine mucin-producing sweat gland carcinoma(EMPSGC)と診断した。EMPSGC は高齢女性の眼瞼周囲に緩徐に増大する隆起性腫瘤として生じることが多く,粘液産生と神経内分泌分化を特徴とする非常に稀な低悪性度腫瘍であり汗腺由来と考えられている。本邦における文献報告は調べ得た限りでは5例(邦文報告は 2 例)のみであり,うち 4 例は皮膚科領域外での報告である。今回我々は,EMPSGC の 1 例を経験したため文献的考察を加えて報告する。
  • 樋口 真帆, 鍬塚 大, 小池 雄太, 佐藤 信也, 新野 大介, 宇谷 厚志
    2018 年 80 巻 5 号 p. 460-465
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり

    78 歳,男性。免疫抑制剤使用の既往はない。2008年 7 月,左膝窩に皮下腫瘤を自覚した。PET-CT で 四肢に多発する皮下腫瘤を指摘されたがリンパ節腫脹や内臓病変はなく,病理組織像と合わせ primary cutaneous diffuse large B-cell lymphoma(PC-DLBCL) と診断した。R-THP-COP(rituximab,pirarubicin,cyclophosphamide,vincristin,prednisolone) 療法 8 コース施行後,左膝窩皮下腫瘤は完全に消失し,経過観察となっていた。2015 年夏頃より,右肘窩内側に暗紅色結節が出現した。病理組織像で PC-DLBCL の再燃と判断したが,以前よりも形質細胞への分化が強くみられた。加えて真皮から皮下にかけて AL (免疫グロブリン L 鎖)型アミロイドが限局的に沈着していた。右肘窩の暗紅色結節は,一部の腫瘍細胞が免疫グロブリンを産生し,それが AL 型アミロイドーシスとして沈着したものと考えた。

  • 横山 眞爲子, 奥村 之啓
    2018 年 80 巻 5 号 p. 466-469
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり
    88 歳,女性の右手背の結節と左下腿の囊腫を呈した黒色菌糸症を経験した。結節部の病理組織検査では,PAS 染色陽性の真菌感染を伴う炎症性肉芽腫で,結節部の膿と囊腫内の膿汁より,いずれも Exophiala sp. が検出された。手術に対し患者の理解が得られず,内服薬の経口摂取も出来なかったため使い捨てカイロを用いて温熱療法を行ったところ,結節は縮小し,囊腫は内容物吸引排出後の温熱療法で再貯留を防ぐことができた。温熱療法は,一定の効果があると考えられ,手術不能例,抗真菌薬の全身投与不能例で選択肢となりうると考えた。また,高齢者の難治性肉芽腫や囊腫では黒色菌糸症を含めた深在性真菌症を鑑別に挙げ,複数カ所,異なる臨床像を呈することも念頭に置くことが必要と考えた。
治療
  • 渡辺 晋一, 中野 眞, 大久保 明弘, 竹田 憲治, 大西 友房
    2018 年 80 巻 5 号 p. 470-478
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり
    新規抗真菌化合物ラブコナゾールのプロドラッグであるホスラブコナゾールの爪白癬治療の至適用法・用量を 3 群 (100 mg 連投群,200 mg パルス群,400 mg パルス群) で検討した。治験薬投与期間は,3 群ともに 12 週間であった。治験終了時点 (第 48 週) での治癒率は 100 mg 連投群と 400 mg パルス群が同程度で,200 mg パルス群では低かった。趾爪中ラブコナゾール濃度および直接鏡検の陰性化率の観点では,100 mg 連投群が最も良い指標を示した。200 mg パルス群および 400 mg パルス群とは異なり,100 mg 連投群では再発/再感染は認められなかった。いずれの投与群も安全性上の問題点は特になかった。本剤の至適投与法はラブコナゾールとして 100 mg 1日 1 回 12 週間投与であると考えられた。
世界の皮膚科学者
  • PRINZ Jörg Christoph
    2018 年 80 巻 5 号 p. 481-482
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル 認証あり

    Jörg C. Prinz is Full Professor of Dermatology and Venereology at the Clinic for Dermatology and Allergology of the Ludwig-Maximilian University (LMU) in Munich, Germany. He graduated with a medical degree from the University of Innsbruck in 1983. After one year training in internal medicine at the University clinics of Freiburg he performed five years of basic immunology research as postdoctoral fellow at the Institute for Immunology of the LMU in Munich, focusing on the generation of monoclonal antibodies against cell surface molecules and the regulatory role of low-affinity IgE receptors in IgE production. He joined the Clinic for Dermatology and Allergology in 1990, where he founded the Research Group for Immunopathology. Jörg Prinz earned specialist qualifications in dermatology and venerology in 1995 and in allergology in 1996 and was appointed as Full Professor of Dermatology in 2001. His current responsibilities include being deputy chair of the Department and supervising the phototherapy unit and psoriasis center, and the serological analysis laboratory. At medical school he received several teaching awards.

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