西日本皮膚科
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58 巻, 3 号
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図説
症例
  • 駒井 礼子, 津田 眞五, 笹井 陽一郎, 松枝 俊祐
    1996 年 58 巻 3 号 p. 371-374
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
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    気管支喘息と末梢血好酸球増多が先行し, 発熱, 多発性関節痛, 四肢のしびれ感, 紫斑を生じた34歳の女性のChurg-Strauss症候群を報告した。紫斑, 結痂性丘疹は四肢, 腰部に存在し, 病理組織学的に好酸球浸潤を伴う血管炎を認めたが, 血管内外に明らかな肉芽腫性病変はみられなかった。病巣部に浸潤する好酸球の大部分はEG2陽性であった。血清IgE, 血中免疫複合体, 抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)の高値が認められ, リウマトイド因子も陽性であった。コルチコステロイドの内服あるいはパルス療法, および免疫抑制剤(シクロフォスファミド)の投与により, 皮膚症状は消退し好酸球増多などの検査値も正常化した。四肢のしびれ感を伴う神経症状と関節痛が持続するためコルチコステロイドを維持量で投与中である。
  • 永井 浩, 濱本 嘉昭, 大村 明子, 最上 聡, 武藤 正彦
    1996 年 58 巻 3 号 p. 375-377
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
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    45歳の女性。体重減少, 多汗, 動悸, 頸部腫瘤発現の7ヵ月後にバセドウ病の診断のもと甲状腺亜全摘術をうけた。術後2ヵ月後両頬部, 両前腕に紅色皮疹が出現したが放置していた。術後1年2ヵ月後に両手指, 足趾に凍瘡様皮疹がみられ, 口腔内乾燥感を自覚するようになった。Shirmer testで涙腺の分泌低下, 唾液腺造影にていわゆるapple tree patternが認められ, シェーグレン症候群と診断した。抗核抗体1000倍, RAテスト陽性, 抗SS-A抗体16倍, 抗SS-B抗体32倍, サイロイドテスト6400倍, マイクロゾームテスト6400倍であった。
  • 有沢 祥子, 吾妻 靖子, 新田 悠紀子, 池谷 敏彦
    1996 年 58 巻 3 号 p. 378-381
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
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    39歳の男性。荷物運搬の筋肉労作後に項部, 上背部に硬化性皮膚病変が生じ, 次第に腰部, 両前腕, 両下腿に拡大し両膝関節, 足関節の拘縮を伴った。レイノー現象, 内臓病変は認められない。末梢血好酸球の軽度の上昇(440/mm3), 病理組織学的に筋膜の著明な肥厚が認められ, 好酸球性筋膜炎と診断した。ベタメサゾン3mg/日の全身投与で皮膚硬化の軽快がみられず, 治療を中止。皮疹は無治療で10ヵ月後には色素沈着を残し自然消退した。本症例において病変部に著明な線維化, 小円形細胞, 好酸球および肥満細胞の浸潤を認め, この疾患の発症機序に好酸球, 肥満細胞が重要な役割を果たしていることが推測された。
  • 池田 勇, 東 修一, 城野 昌義, 水足 久美子, 小野 友道
    1996 年 58 巻 3 号 p. 382-386
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
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    心室内血栓の既往歴と再発性下腿潰瘍を有する50歳の女性, 膠原病様症状と血小板減少を呈する27歳の女性, 突発性の血栓性静脈炎で受診した70歳の男性の3症例を報告した。いずれも抗リン脂質抗体が陽性であった。2症例を原発性, 1例を続発性抗リン脂質抗体症候群と診断した。本症候群の主要な臨床症状である血栓症, 皮膚潰瘍, 血小板減少および習慣性流産などの場合には抗リン脂質抗体症候群を鑑別診断のひとつに挙げる必要がある。
  • 倉田 佳子, 武藤 正彦, 西岡 和恵, 麻上 千鳥
    1996 年 58 巻 3 号 p. 387-390
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
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    症例: 57歳の女性。帯状疱疹で入院。4年前に生じた四肢のそう痒性紅色皮疹を慢性蕁麻疹として近医にて加療されていた。四肢の皮疹は蕁麻疹様の紅斑で病理組織学的にleukocytoclastic vasculitisの像を呈した。螢光抗体直接法でループスバンドテスト陽性であった。また臨床検査で白血球減少, 低補体値, 抗核抗体陽性, 光線過敏などの異常が認められ, 全身性エリテマトーデスと診断。4年間発熱もなく, 顔面の紅斑, 凍瘡様皮疹, 腎機能異常もなく経過していた。インドメタシン(インテバンSP®)とヒドロキシジンパモエート(アタラックスP®)の投与で紅斑消褪し, その後再燃はみられなくなった。
  • 湯浅 徹也, 谷口 芳記, 清水 正之
    1996 年 58 巻 3 号 p. 391-394
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
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    症例1: 68歳の女性約2ヵ月前, 口腔内と肛門周囲に軽度のそう痒と疼痛を伴う皮疹が出現し次第に拡大した。初診時, 腋窩, 足背, 臀部に, 周囲に紅暈と膿胞を伴う疣贅状に隆起する境界明瞭な皮疹が認められた。粘膜疹も認められた。ステロイド内服(ブレドニゾロン50mg/day)にて軽快し経過良好であったが, 4年後結腸癌にて死亡した。症例2: 62歳の男性。約1年前に顔面, 前腕等に無症候性皮疹が出現した。初診時, 口角部, 躯幹, 四肢に粟粒大の膿胸を伴う浸潤性紅斑と, 粘膜疹も認められた。S字状結腸癌と間質性肺炎を合併していた。2例とも病理組織学的に, 表皮内への好酸球浸潤と棘融解が認められ, 病変部の免疫螢光抗体直接法所見で表皮細胞間にIgGとC3, の沈着が認められ, Hallopeau型増殖性天疱瘡と考えた。中等量以下のステロイド内服により皮疹は色素沈着を残し軽快した。
  • 谷内 克成, 稲沖 真, 坂井 秀彰, 筒井 清広, 高田 実
    1996 年 58 巻 3 号 p. 395-397
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
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    74歳の女性。扁平苔癬の皮疹が生じた3ヵ月後に体幹·四肢に緊満性水疱が多発した。病理組織学的には先行した皮疹はlichen planusに一致する所見を呈し, 水疱の部分は表皮下水疱を示した。いずれの皮疹部においても免疫蛍光法直接法では基底膜部にIgG, C3の線状沈着があり, 1 M NaCl処理にて表皮と真皮を分離した皮膚を基質とした免疫蛍光法間接法では表皮側に抗基底膜部抗体が証明された。以上の所見からlichen planus pemphigoides(LPP)と診断した。免疫ブロット法による解析で180 kdの表皮蛋白との反応がみられたことから本例における標的抗原は類天疱瘡抗原と同一のものである可能性が示された。さらに過去の報告における免疫ブロット法によるLPP抗原の解析結果についても考察を加えた。
  • 吉田 雄一, 桐生 美麿, 旭 正一, 堀 嘉昭
    1996 年 58 巻 3 号 p. 398-401
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    7歳の男児。初診約2週間前に顔面, 手掌, 足底に痒性紅斑が出現, その後拡大した。初診時, 全身に毛孔一致性の鱗屑を伴う痒性紅斑を認め, ほぼ紅皮症の状態であった。毛孔性紅色粃糠疹の診断にてetretinate 1mg/kg/dayより内服を開始したところ, 約2週間で皮疹は劇的に軽快した。しかしetretinateを0.5mg/kg/dayに減量したところ, 症状が再び悪化したため1mg/kg/dayに増量, 約4週間で略治した。以後etretinateを漸減し約3ヵ月で内服を中止したが, 中止5ヵ月後の現在皮疹の再発をみない。この間etretinate内服により出現するとされる骨端線の早期閉鎖や過骨化の有無を定期的に手根骨X線撮影を行い検査したが, 特に異常は認められず他の副作用も特に認められなかった。以上より小児毛孔性紅色粃糠疹では症例によっては副作用の発現に十分留意しながら積極的にetretinateを投与すべきであると考えられた。
  • 武下 泰三, 西村 正幸, 八島 豊
    1996 年 58 巻 3 号 p. 402-404
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
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    20歳の女性に生じたpachydermodactylyの1例を報告する。3年前に右第3指, 右第4指の近位指節間(PIP)関節の側面に無症候性皮膚肥厚が出現。病理組織学的には表皮は角質増生, 表皮肥厚を示し, 真皮では膠原線維の軽度増生が認められた。自験例を含めた報告例25例について文献的考察をおこなった。
  • 中島 英貴, 池田 光徳, 山本 康生, 小玉 肇
    1996 年 58 巻 3 号 p. 405-407
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    35歳の女性と38歳の女性。両者の左上腕にトリアムシノロンアセトニドの注射によって陥凹性皮膚萎縮斑を呈した。病理組織学的に皮下脂肪組織の炎症と変性による萎縮と考えられた。全身療法を目的とするステロイド剤の注射に際しては, 特に女性の場合には厚い筋層のある臀部の筋肉内に行うべきであることを強調した。
  • 上原 啓志, 高宮城 敦, 金城 隆, 丸野 元美, Abdul Manan BHUTTO, 萩原 啓介, 野中 薫雄
    1996 年 58 巻 3 号 p. 408-412
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    85歳の女性。約1年前より右頬部に疣状皮疹が存在した。2, 3ヵ月前より増大し小腫瘤を形成した。腫瘍細胞は主に線維芽細胞様細胞からなっており, 花むしろ様構造を呈していたが, 光顕的に明らかに扁平上皮癌と考えられる部分に連続している点, 免疫組織化学的に一部の紡錘型の腫瘍細胞にサイトケラチンが陽性であった点, 電顕的にデスモゾームやトノフィラメントを認めた点から防錘状有棘細胞癌と診断した。本邦報告例20例について免疫組織化学的態度を比較検討したところ免疫組織化学的にケラチンは記載のあったもの17例中13例(76.5%)で陽性, ビメンチンは記載のあったもの10例中8例(80%)で陽性であった。ビメンチンが陽性の症例に, 術後, 早期に再発·転移を起こしているものがあり, ビメンチンの発現は脱分化の反映及び悪性度との相関の可能性を示唆していた。紡錘状有棘細胞癌の場合, amelanotic melanoma, malignant fibrous histiocytoma, atypical fibroxanthoma等との鑑別が難しいことがあるが, 免疫組織化学的所見及び電顕所見が診断確定の手助けになると思われた。
  • 村本 剛三, 内平 孝雄, 亀井 敏昭, 広田 徹, 麻上 千鳥
    1996 年 58 巻 3 号 p. 413-416
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    80歳の男性。初診の1ヵ月前, 陰嚢の紅色扁平隆起性病変に家族が気づいた。生検にて乳房外Paget病と診断し広範囲に切除した。初診5ヵ月後に右腋窩に指爪甲大紅斑が, 6ヵ月後に左腋窩に同様の紅斑が出現した。病理組織学的所見: 1) 陰嚢部; 表皮内に明るい胞体を有するPaget細胞が基底層を中心に胞巣状または一部孤立性に増殖していた。PAS陽性(ジアスターゼ低抗性), alcian blue陽性(ヒアルロニダーゼ低抗性)であった。2) 右腋窩部; Paget細胞が基底層を中心に集簇しており, 一部毛包内にも認められた。3) 左腋窩部; 右腋窩と同様な病理組織像を示した。いずれも基底膜は保たれ真皮内への浸潤はみられなかった。免疫組織化学的所見: 1) 陰嚢部; carcinoembryonic antigen(CEA)に対して一部の腫瘍細胞は陽性所見を示しepithelial membrane antigen(EMA)も陽性であったが, S-100蛋白では陰性であった。2) 右腋窩; CEAに対してほぼ陽性。EMAにも陽性。S-100蛋白に対しては陰性。3) 左腋窩; CEAに対して右腋窩と同様にほぼ陽性。EMAも陽性。S-100蛋白は陰性であった。局所再発·リンパ節転移·悪性腫瘍の合併は認められなかった。以上の所見から本例を時期を異にして発症したtriple extramammary Paget’s diseaseと診断した。
  • 佐藤 かすみ, 松倉 節子, 宮沢 めぐみ, 早川 広樹, 竹川 恵, 長谷 哲男, 中嶋 弘, 高橋 大介, 中谷 行雄
    1996 年 58 巻 3 号 p. 417-420
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    90歳の女性で右上腕伸側皮膚に紅色腫瘤を形成した悪性リンパ腫の1例を報告した。病理組織学的には真皮全層にわたり中∼大型の異型リンパ球の浸潤が認められ, 瀰漫性大細胞型悪性リンパ腫と診断された。免疫組織化学的には, CD56が陽性でCD3が陰性であり腫瘍細胞はNK細胞であると考えられた。X線治療により腫瘤および所属リンパ節は縮小し, 残存した硬結は摘出し経過観察した。初診の約4ヵ月後に腫瘍細胞が全身へ浸潤し, 多臓器不全·DICのため死亡した。腫瘍細胞の表面抗原がCD3陰性, CD16陰性, CD56陽性, CD57陰性の悪性リンパ腫は急性の経過をたどるといわれているため, 十分な治療が必要と思われた。
  • —過去10年間の続発性皮膚B細胞性腫瘍本邦例のまとめ—
    武田 光, 穂積 豊, 三橋 善比古, 近藤 慈夫, 佐藤 伸二, 前田 邦彦
    1996 年 58 巻 3 号 p. 421-425
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    63歳の男性。1992年より当院内科で単クローン性IgM産生B細胞腫瘍であるWaldenström’s macroglobulinemiaの診断の下, 化学療法を含む治療を受けていた。1992年および1995年3月に腫瘍細胞浸潤による左および右眼窩腫瘍を生じ, 摘出術および放射線治療を受けている。1995年3月, 背部および胸部に鮮紅色の腫瘤が多発。病理組織学的検討により腫瘍細胞の皮膚浸潤と診断した。本症で特異疹を来すことは稀であるが特異疹を生じた場合, 続発性皮膚B細胞腫瘍に含まれる。過去10年間の続発性B細胞腫瘍の本邦報告例を検討し文献的考察を行った。
  • —猫引っ掻き病皮疹より診断し得た1例—
    井上 雄二, 小野 友道, 奥田 聡哉, 堀田 明弘
    1996 年 58 巻 3 号 p. 426-428
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    視力障害を主訴に眼科を受診し, 病歴, 皮疹, 腋窩の皮下腫瘤より猫引っ掻き病に続発したoculoglandular syndrome of Parinaudと診断した14歳の女性を経験した。皮疹, 腋窩の皮下腫瘤は抗生剤投与にて速やかに軽快したが, 視神経炎を併発し視力低下を来したために副腎皮質ホルモンの全身投与を必要とした。左腋窩の皮下腫瘤からはWarthin-Starry銀染色にて多形桿菌を証明することはできなかった。
  • —G-CSF皮下注射部に巨大潰瘍を生じた1例—
    松野 美智雄, 小野 友道, 清水 佳奈子, 西本 勝太郎
    1996 年 58 巻 3 号 p. 429-432
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    白血病(B-CLL)に併発した原発性皮膚アスペルギルス症を経験したので報告する。症例は81歳の女性。G-CSF皮下注射部に一致した紅斑として出現し, やがて水疱を伴う皮下硬結となり数日後には潰瘍化するとともに徐々に拡大した。潰瘍底の壊死組織内に二分岐性の太い真菌要素を認めた。培養によりA. fumigatusを分離した。イトラコナゾール内服とアンホテリシンB静注·外用療法で潰瘍の拡大傾向は治まった。しかし潰瘍及び皮下硬結が残ったためデブリドマンと分層植皮術を施行した。その後再発はみていない。
  • 佐藤 典子, 幡本 明利, 古賀 哲也, 利谷 昭治, 葉 山泉
    1996 年 58 巻 3 号 p. 433-435
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    69歳の男性。右下肢に有痛性の紅暈を伴う小水疱が出現し3日後には全身に散布疹を, さらに5日後には右下肢の脱力感を覚え転倒しやすくなった。右腸腰筋, 大腿四頭筋に筋萎縮と筋力低下が認められ, 神経学的所見から帯状疱疹に合併した右大腿神経不全麻痺と考えた。MRIにおいてL2∼S1までの推間板の膨隆, 椎間孔の狭窄があり, 狭くなった椎間孔部に更に帯状疱疹の炎症が生じたことにより運動麻痺が起こった可能性も考えられた。この運動麻痺は皮疹発生後約8日後に現れ2ヵ月後にはかなり回復した。
研究
  • 古谷 喜義, 森田 英伸, 高路 修, 田中 稔彦, 山本 昇壯
    1996 年 58 巻 3 号 p. 436-438
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    魚類による接触蕁麻疹を生じた2例において原因となる抗原物質の検討を行った。オープンパッチテストにて2例ともに陽性を示したアジを細切してPBSに1時間浸し, 遠心して可溶性タンパク質の抽出液を得た。これをゲル濾過法により分離し, 各分画のオープンパッチテストを施行した。2例とも約17-kDa付近の分画を用いたオープンパッチテストにて紅斑と膨疹の出現を認めた。また, この抽出液を80℃, 15分間以上処理すると紅斑と膨疹の出現は認められなかった。患者血清を用いてWestern blot法により抗原蛋白質を検索した結果, 約13-kDaの位置に反応がみられた。
  • 宮井 恵里子, 山本 格, 秋山 純一, 柳田 満廣
    1996 年 58 巻 3 号 p. 439-443
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    アスコルビン酸の新規安定型誘導体であるascorbic acid 2-O-α-glucoside(AA-2G)の人工紫外線照射によるヒト皮膚色素沈着への影響を検討した。紫外線(UVA+UVB)照射後に上腕内側部の2%(w/w)AA-2G配合クリームと対照クリーム塗布部位を肉眼判定で比較したところ, AA-2Gの配合により有意な(P<0.01, by Wilcoxon matched pairs signed-ranks test)紅斑抑制効果と同時に, 有意な(P<0.05)色素沈着抑制効果を認めた。そこでAA-2Gの作用機序を詳細に検討するため, 培養細胞のメラニン合成能及び紫外線照射によるモルモット皮膚炎症に対するAA-2Gの作用を調べた。その結果マウスメラノーマ培養細胞(B16(F10))のメラニン合成は, AA-2Gにより濃度依存的に抑制された。AA-2G 2.5mMにおいてメラニン合成は約26%抑制され, 同時にDOPA反応も顕著に低下した。細胞から調製した粗酵素液によるチロシナーゼ酵素活性もAA-2Gにより抑制された。また, UVB照射モルモット背部の紅斑は0.5%, 2%(w/w)AA-2G配合吸水軟膏の外用塗布により有意に抑制され, 病理組織学的にも対照と比べて明らかな抗炎症作用が認められた。AA-2Gの紅斑抑制率は試験に供した数種のアスコルビン酸誘導体の中で最も高いものであった。これらの結果からAA-2Gは紫外線による皮膚色素沈着を抑制し, その作用機序としてメラニン合成系の直接的な抑制だけでなく皮膚炎症軽減作用の関与が強く示唆された。
  • 安元 慎一郎, 村上 義之, 堀 嘉昭
    1996 年 58 巻 3 号 p. 444-446
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    培養ヒト表皮角化細胞に単純ヘルペスウイルスを感染させ培養上清中に産生されるインターロイキン1-α(IL-1α)を経時的にELISA法によって測定し, 紫外線(UV-B)照射の影響について検討した。培養ヒト表皮角化細胞はHSV感染12時間後頃からCPEを示し細胞の膨化, 巨細胞の形成などの形態学的変化がみられた。紫外線照射した表皮細胞では紫外線を照射していない対照の表皮角化細胞に比べてHSVの増殖が促進され, IL-1αの産生も亢進していた。これらの結果から, 紫外線照射により表皮角化細胞における単純ヘルペスウイルスの増殖はより容易となること, さらに紫外線は単純ヘルペスウイルス感染に伴って誘導される免疫学的な反応において, 表皮角化細胞から産生されるIL-1αなどのサイトカインの産生を変化させることによって影響を与え得ることが示唆された。
  • 中山 樹一郎, 堀 嘉昭
    1996 年 58 巻 3 号 p. 447-454
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    ヒノキチオール配合ハンドクリーム, リキッドソープ, ハンドウォッシュが新たに開発, 製品化された。これらの製品はヒノキチオールにアルミニウムジステアレートあるいは塩化アルミニウムが配合されヒノキチオール·アルミニウム錯体として安定性, 抗菌活性の強化がなされている。抗菌活性の基礎的検討をヒノキチオール50, 500, 1000各ppmで行い, 50ppmヒノキチオール·アルミニウムジステレート配合溶液がMRSA, MSSA, P. aeruginosa, E. coliに最も殺菌効果があることを見い出した。またハンドクリームのクリームベースに0.1%ヒノキチオールと0.5%アルミニウムジステアレートを配合したものはクリームベースあるいはクリームベースに0.1%ヒノキチオールを配合したものより統計学的に有意に高い抗菌活性を有していた。製品化されたハンドクリーム, リキッドソープ, ハンドウォッシュも抗菌活性を明らかに有しとくにリキッドソープ, ハンドウォッシュは極めて高い抗菌活性を示した。以上より細菌感染が重要な役割を演じている皮膚疾患のスキンケアーあるいは皮膚洗浄に本製品が有用であると思われた。
講座
統計
  • —疼痛の治療について—
    宿輪 哲生
    1996 年 58 巻 3 号 p. 460-464
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    平成5年4月より7年3月までに国立佐賀病院皮膚科を受診した帯状疱疹患者75例について統計的観察を行い次の結論を得た。1) 男性:女性=2:3と女性に多く, 年齢別では60歳代が最も多かった。2) 躯幹上部, ついで躯幹下部, 下肢·臀部の順に好発し左右差はなかった。3) 78.6%の患者は発症より7日以内に受診していた。4) 46例(61.3%)に合併症を認め, 疾患別では肝疾患が最も多かった。5) 疼痛に対する中等度以上の改善率はアミトリプティリン80.9%, ノイロトロピン®72.7%, 柴苓湯45.5%であった。6) プレドニゾロン内服により16例中10例に中等度以上の改善を認めたが, 2例では投与後も強い疼痛が持続した。7) 発症より治癒までの期間は40歳以上で40日を越え, 加齢に従い長期化する傾向がみられた。8) 帯状疱疹の再発は4例(5.3%)にみられ, 再発までの期間は7ヵ月∼25年であった。
  • 西山 貴郁, 石井 則久, 中嶋 弘, 岩田 政則, 中村 泰子, 城武 昇一
    1996 年 58 巻 3 号 p. 465-468
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    横浜市立大学医学部附属病院皮膚科開院以来3年間の入院患者について臨床統計的に解析した。入院患者の延べ数は男性285人, 女性251人, 計536人であった。入院患者の実数は男性204人, 女性172人, 計376人であった。男性は延べ数·実数とも50歳代が最も多く, 女性は延べ数では60歳代, 実数では70歳代が最も多かった。疾患別入院患者数は悪性腫瘍や難治性慢性疾患が多かった。また悪性腫瘍では高齢者が多かった。在院日数は悪性腫瘍や慢性疾患では長期化する傾向がみられた。治療は「皮膚科的療法」が多かったが, 「検査」や「化学療法」, 「手術療法」が続いていた。1人当たりの入院回数は1回が多かったが, 悪性腫瘍では数回のことも多かった。死亡例は計14例であった。
治療
  • 黒瀬 浩一郎, 蜂須賀 裕志, 笹井 陽一郎
    1996 年 58 巻 3 号 p. 469-471
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    自己免疫性水疱症10例に対して免疫抑制剤ミゾリビンを投与し, その効果について検討を行った。症例は尋常性天疱瘡4例, 落葉状天疱瘡1例, 水疱性類天疱瘡4例, 瘢痕性類天疱瘡1例であり, ステロイドホルモン剤の全身投与と共にミゾリビンを併用した。本剤投与の主な理由としてステロイドホルモン療法に抵抗した事, 糖尿病の合併を認めた事であった。ミゾリビン投与の結果天疱瘡群では全例で有効, 水疱性類天疱瘡と瘢痕性類天疱瘡では1例ずつが有効であった。骨髄抑制や肝機能障害は全例において認められなかった。以上より自己免疫性水疱症の治療においてミゾリビンの併用療法は, ステロイドホルモン治療に抵抗する例や糖尿病の合併症例などに試みるべき有用な併用療法のひとつと考える。
  • —当科における2年間の単独療法と間歇療法との比較—
    中山 樹一郎, 堀 嘉昭
    1996 年 58 巻 3 号 p. 472-478
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    乾癬患者のシクロスポリン療法を2年間施行し臨床効果と副作用を観察した。寛解の維持療法としてシクロスポリンを減量後低用量で維持する方法(単独療法)と, 中止してコルチコステロイド外用で維持する方法(間歇療法)とを比較した。初期用量は2.5∼4.5mg/kg/dayで行い3∼6ヵ月の間にPASIスコアの80%以上の改善を得た。単独療法では平均2.5mg/kg/dayの用量で寛解の維持ができた。間歇療法ではコルチコステロイドの外用にて1∼3ヵ月間は寛解を維持できたが, 再発がみられ初期用量のシクロスポリンの再投与を行った。全般改善度は両群間で有意差はなかった。臨床検査値異常は両群とも1年間は特に目立ったものはなかった。2年目に入ると両群とも腎機能異常, 特に明らかなBUNの上昇が一部の患者にみられた。血清マグネシウムの低下も認められた。副作用は高血圧が最も多かったが, カルシウム拮抗剤の降圧剤でコントロールができ治療の継続が可能であった。ほかに軽度の倦怠感, 吐気, 嘔吐, めまいなどがあったが一過性であった。重篤な感染症や悪性腫瘍の発生はなかった。両群間で概括安全度, 有用度に有意差は認められなかった。以上の結果から乾癬に対する2年間のシクロスポリン療法では単独療法, 間歇療法ともに有効性や副作用の発生に差はなかったが, 今後臨床検査値異常や副作用が認められた時点でどのくらいの期間シクロスポリン療法を中止すべきかという点について更に検討を要すると考えられた。
  • 牧野 典子, 中山 秀夫
    1996 年 58 巻 3 号 p. 479-485
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    1992年第18回世界皮膚科学会において人蔘エキス外用にて動物の実験的面皰の予防治療効果が著明であるとのSuhrらの報告があった。我々はこの研究を参考に2%高麗人蔘エキス加10%エタノール含有水溶液(G-lotion)及び2%高麗人蔘エキス含有イオウカンフル液(GK-lotion)の2種の外用剤を作成し, ざ瘡の外来患者157例に投与した。有効性評価対象は4週以上使用例とし, それ以下は脱落例とした。G-lotionは投与群85例から脱落36例を除く49例, GK-lotionは投与群72例から脱落24例を除く48例であった。その結果G-lotion有効率は49例中34例, 69.4%, 有用率は51例中34例, 66.7%, 副作用は51例中1例, 2.0%であった。GK-lotionの有効率は48例中40例, 83.3%, 有用率は53例中40例, 75.5%, 副作用は53例中10例, 18.9%であった。抗生物質及び, ジオール®の全身投与併用例を除くと, G-lotionは有効率は42例中29例, 69.0%, 有用率は43例中29例, 67.4%, 副作用は43例中0例, 0%であった。GK-lotion有効率は35例中28例, 80.0%, 有用率は38例中28例, 73.7%, 副作用は38例中6例, 15.8%であった。またGおよびGK-lotionの投与により抗生剤全身投与を中止できた症例が多くあり実用化に有意義な外用剤であると考える。
  • —投与回数の検討—
    HOC-155用法研究班
    1996 年 58 巻 3 号 p. 486-492
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    抗真菌剤硝酸オモコナゾール(HCC-155)1%クリームの「1回/1日投与」, 「1回/2日投与」それぞれの投与法における足白癬に対する臨床的有効性, 安全性, 有用性を封筒法を用いて検討した。試験実施症例数は217例(1回/1日投与群108例, 1回/2日投与群109例)であった。皮膚所見と菌所見より判定した最終総合効果は1回/1日投与群78.4%, 1回/2日投与群75.3%と両群で高い有効率が得られ両群間に有意差は認められなかった。副作用は脱落例などを除いた207例中7例(3.4%)に認められ, すべて塗布部皮膚の局所症状であった。両群間の副作用発現率に有意差は認められなかった。有用率は1回/1日投与群79.2%, 1回/2日投与群80.9%と両群で高く両群間に有意差は認められなかった。以上の成績から1%HCC-155クリームは「1回/1日投与」および「1回/2日投与」の両投与法において足白癬に対し有用な薬剤であると考えられた。
  • 米田 和史, 柳原 誠, 森 俊二, 桑原 まゆみ, 井奈波 こと, 坂 昌範, 山本 明史, 藤広 満智子
    1996 年 58 巻 3 号 p. 493-498
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    慢性のそう痒性皮膚疾患を対象に常用量のオキサトミド(セルテクト®)を投与し軽快の後, 半量1日1回投与による維持療法の検討をおこなった。回収症例89例中1例を除く88例について解析した。皮膚症状は痒疹群を除く蕁麻疹群, 湿疹·皮膚炎群および皮膚そう痒症群において不変あるいは軽快を示した。疾患群別再燃率は痒疹群で85.7%, 湿疹·皮膚炎群で33.3%, 蕁麻疹群で16.7%, 皮膚そう痒症群で15.3%, 全症例では30.7%であった。有効率は蕁麻疹群が79.2%, 皮膚そう痒症群が76.9%, 湿疹·皮膚炎群が55.6%, 痒疹群が14.3%, 全症例では62.5%であった。副作用としては88例中1例にのみ浮腫と肝機能異常が認められた。有用度は極めて有用が44.3%, 有用が39.8%であった。以上の結果からオキサトミドの1日1回減量維持療法は痒疹群を除く慢性のそう痒性皮膚疾患に対し試みる価値のある方法であると考えられた。
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