西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
54 巻, 6 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
図説
症例
研究
  • —培養内皮細胞を用いた検討—
    有沢 祥子, 有沢 富康, 浅井 淳平
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1098-1104
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    血管新生における内皮細胞内アクチン骨格形成の重要性につき, 牛大動脈由来培養内皮細胞を用い検討した。対数増殖期における内皮細胞では, 細胞を縦断するように, または細胞の中心から辺縁に向かって放射状に, 十分に発達したアクチン線維が観察された。Cytochalasin Bで処理することにより, 用量反応性に細胞の伸展不良, アクチン線維の形成阻害が観察され, 10-6Mにおいてはほとんどすべての細胞に, 細胞の円形化とアクチンの凝集像が観察された。一方, matrigelを用いた3次元培養では, 内皮細胞は培養開始7日目にほぼプレート全域にわたる内皮細胞networkを形成した。Cytochalasin Bは10-8M以上の濃度では, network形成を有意に抑制したが, 10-6Mでは細胞増殖も阻害されたのに比し, 10-8Mでは細胞は敷石状の増殖を示した。以上の結果より, 血管新生において内皮細胞アクチン骨格の形成が重要であることが結論された。
  • 南波 正, 市来 善郎, 高木 肇, 浦田 裕次, 森 俊二, 澤 赫代, 澤村 治樹, 野間 昭夫, 三浦 宏明, 江崎 孝行
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1105-1110
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    岐阜大学皮膚科において, 最近MRSA検出患者が急増し, 細菌検査を施行したので, 分離状況を含めて報告する。1989年1月より1990年12月までの2年間のMRSA検出患者を, 外来, 入院別に中央検査部の報告書より集計し汚染状況を検討した。また, 医療従事者25名の前額, 鼻腔, 肘窩と, 病棟の環境20ヵ所より検出調査を行い分離株の細菌学的検討を加え, 感染経路の検討を行った。患者から分離される黄色ブドウ球菌に占めるMRSA株の割合は, 1990年には外来37%, 入院78%と高値を示した。入院患者由来株の薬剤感受性は, ミノサイクリン(MINO)耐性株は少なかったが, 最近バンコマイシン(VCM)以外すべての耐性株が増加してきた。疾患別では, 悪性腫瘍, 水疱症に多く, 化学療法やステロイドの内服で免疫能の低下した患者に検出された。細菌調査で鼻腔3名(医師1名, 看護婦2名)と面会室の床よりMRSAが検出された。看護婦2名および床のMRSAは, すべてエンテロトキシンC, toxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)産生, コアグラーゼII型であり, 入院患者由来株と細菌学的パターンが一致することより特定菌株の病棟内流行が強く疑われた。そのため病棟の定期消毒および保菌者対策を行い, さらに抗生物質の使用方法を限定し院内での流行をコントロールする試みを行っている。
  • 久保田 由美子, 今山 修平, 橋爪 民子, 宮原 裕子, 棚橋 朋子, 古賀 哲也, 堀 嘉昭
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1111-1117
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)患者家庭55例と健常者家庭16例を対象に, 寝具(敷布団)·寝室·居間の家塵に含まれるダニ抗原量をELISA法により定量し, ダニ抗原の量およびその変化と皮膚炎症状との関係を検討し, 以下の結果を得た。
    1)患者家庭では健常者家庭に比べ, 布団·寝室·居間ともにダニ抗原量の多い傾向があり, 特に寝室では有意差(p<0.05)があった。
    2)ダニ抗原を用いたパッチテストの陽性群と陰性群にAD患者を分けた場合, ダニ抗原量は布団·寝室·居間ともに陽性群に多く, 特に居間では有意差(p<0.05)があった。
    3)床材別にダニ抗原量を比較したところ従来の報告と同様, 板や畳よりもカーペットにダニ抗原が多く検出された。
    4)掃除などによる家庭内ダニ抗原の減少·除去に伴って患者の皮膚病変は軽快傾向を示した。とりわけ血中IgE低値の患者では比較的簡単なダニ除去で皮疹は軽快したが, IgE高値の患者では徹底したダニ除去が必要であった。
  • 広瀬 寮二, 堀 真, 本田 実, 伯川 純一, 田中 敬一, 前田 啓介
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1118-1124
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    基底細胞上皮腫(BCE)は, 1986年から1990年の5年間に長崎大学附属病院において105名, 133個を数え, 皮膚悪性腫瘍中第1位を占めたが, そのうち15%は鼻翼部であった。そこで鼻翼部に生じたBCEの自験4症例につき, 鼻翼再建を含めた適切な手術法について検討した。まず手術前にnasofacial grooveとalar marginが腫瘍切除により消失するか否かを決定した。通常surgical marginは4mmとしているが, 上記2つの部位のいずれかの温存が可能ならば, 2-3mm marginを容認し, 腫瘍の直径が5mmを越す場合は粘膜面を含め鼻翼部の皮膚全層を切除した。鼻翼再建法としては, もっとも有用性が高いとされるnasolabial cheek flapを基本作図とし, transpositionあるいはsubcutaneous pedicle flapのいずれかの方法を用いた。鼻腔粘膜面の形成には, 皮弁先端の折返しによるhinge flapを用いると容易であった。また比較的若年者の場合, 皮膚の緊張が強いため, 皮弁基部の捻転によるbulge形成が生じ, 二次手術による修正がしばしば必要であったが, 緊張の弱い老人では, 一次手術のみで満足できる結果が得られた。なお鼻翼粘膜の温存は, 腫瘍取残しによる再発や, 血行障害による手術成績の不良を招来しやすいので, 極力避けるべきと考えた。
講座
  • —T細胞レセプター—
    島田 眞路
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1125-1135
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    T細胞はB細胞の免疫グロブリン産生を促したり, キラーT細胞として標的細胞を除去したり, アレルギー性接触皮膚炎を惹起するなど各種免疫反応の中心的役割をはたしている。T細胞の抗原認識の根幹がT細胞レセプター(T cell receptor, 以下TCR)である。TCRは通常αβへテロダイマーからなり, 抗原と主要組織適合性抗原(major histocompatibility complex, 以下MHC)を認識する1)。ヘルパーT細胞は主として抗原とMHCクラスII分子を, キラーT細胞は主として抗原とMHCクラスI分子を認識する。本稿ではTCRの構造, T細胞の胸腺内での分化, T細胞の活性化とトレランスの分子論, スーパー抗原, 2種類のヘルパーT細胞—Th1とTh2, 自己免疫疾患, AIDSなどとの関連, 最後にγδT細胞について述べたい。
治療
  • 繁田 達也, 小林 まさ子, 寄藤 和彦, 永井 秀史, 繁田 美香, 藤田 優, 岡本 昭二
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1136-1140
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    千葉大学医学部皮膚科で加療した外陰部Paget病39例の治療結果をまとめ, 治療方針の検討を試みた。自験例は, 男性29例, 女性10例で, 男女共に60歳代が最も多かった。原発巣の深達度は, (1)表在性10例, (2)面皰癌11例, (3)真皮乳頭層までの浸潤癌7例, (4)真皮網状層より深い浸潤癌11例であった。深達度(4)の11例中9例に鼠径リンパ節転移が認められ, 後腹膜リンパ節の郭清も施行した2例では大動脈下部リンパ節まで転移が認められた。リンパ節転移陽性例は原発巣に硬結や腫瘤, 潰瘍形成を伴っていた。原発巣の大きさ, 発疹に気づいてから受診までの期間, 臨床的なリンパ節腫脹は, 必ずしもリンパ節転移の目安にはならなかった。鼠径リンパ節郭清を施行する目安は, 原発巣の浸潤が真皮網状層におよぶ場合であり, 郭清したリンパ節の中に, 構築の破壊された進行したリンパ節転移が1個でもあれば, 骨盤内リンパ節郭清を追加した方がよい。しかし, それが数個におよぶ場合は, 化学療法や放射線療法のような他の治療法を選択した方が, 生命予後のために良いのではないかと考えられた。
  • 臨床効果と作用機序の検討
    今山 修平, 久保田 由美子, 古賀 哲也, 宮原 裕子, 橋爪 民子, 棚橋 朋子, 堀 嘉昭
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1141-1147
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    成人の難治性アトピー性皮膚炎患者13名(男11/女2; 20-69歳)の協力を得てサイクロスポリンの臨床効果を検討した。治療開始直前まで8例がステロイド剤, 5例が抗ヒスタミン剤を全身的に使用し, 全例がステロイド外用剤を使用していた。12例で投与開始後3∼4日目にはそう痒が著明に低下したが, 臨床的にも投与開始1週間後には明らかな皮膚病変の改善が確認された。効果の得られた段階では全症例において外用剤を全く必要としなかった。興味深いことに臨床皮疹の病型による効果の差がみられた。即ち, 顔面(とくに眼囲), 頚, 臍周囲, 腋窩, 肘, 膝屈側にみられる, 糜爛と痂皮を伴う, 小水疱と丘疹からなる湿潤局面が最も著しく改善した。次に腋窩, 肘, 膝屈側にみられる苔癬化局面が良く反応し, 略治に2週間を要した。他方, 躯幹や四肢関節伸側に散在する, 紅斑を伴った苔癬化局面または結節病変の改善にはしばしば4週間以上を要した。このような治療応答性の違いは同一個体においても観察され, 顔面などの小水疱, 丘疹局面が1∼2週間で完全に消退した後も, とりわけ手指背などの亀裂を伴う苔癬や結節病変の消退には更に6∼8週間を要した。
  • IPD-1151T研究会
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1148-1155
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎患者40例に抗アレルギー剤であるIPD-1151 T(トシル酸スプラタスト)を8週間投与し, その臨床効果を検討した。その結果, 皮膚症状は, そう痒, 皮疹とも明らかな改善を示し, 最終全般改善度において中等度改善以上の改善率で79.4%と高い値を示した。背景因子別では, 重症度別あるいはIgE-RIST値の高低別にみても, また病悩期間10年以上といった長期慢性化した症例においても改善率は70%以上と高い有効性を示した。副作用および臨床検査値異常が4例に認められたが重篤な症状は認められなかった。以上の結果より, IPD-1151 Tは, アトピー性皮膚炎に有用な薬剤と考えられた。
  • 吉田 彦太郎, 前田 啓介, 大神 太郎, 高木 博徳, 鳥山 史, 清水 和宏, 大野 まさき, 藤田 和夫, 村山 史男, 西本 勝太郎 ...
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1156-1161
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    難治性アトピー性皮膚炎患者を対象に, clobetasol propionate(デルモベート®軟膏·同スカルプ, 以下CPと略)1日2回単純塗擦により7∼47日間治療し, 略治に至った症例に対して, 4週間にわたってCPを週2日, 1日2回間欠塗擦し, その再燃抑制効果を検討した。
    1. 検討症例は, 収集症例27例のうち除外例を除いた21例であった。
    2. 略治に至るまでの治療期間は, 平均3.2週であった。
    3. 間欠塗擦による再燃抑制効果は, 85.7%(18/21例)に認められた。
    4. 臨床検査値において, 「再燃なし群」と「再燃あり群」とで比較検討した結果, 略治時のLDH値および治療前, 略治時, 終了時のIgE値について「再燃なし群」が「再燃あり群」に比べ有意に低値を示した。
    5. 副作用は27例中, 毛嚢炎1例, 尋常性疣贅および毛嚢炎1例, 小水疱·丘疹1例, 血清コルチゾール値の低下1例の4例に認められたが, いずれも軽度で投与継続あるいは中止により回復した。
    以上の結果から, 難治性アトピー性皮膚炎の再燃抑制に対してCPによる週2日, 1日2回の間欠塗擦は有用であると考えられる。
  • シロスタゾール膠原病研究班
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1162-1173
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    シロスタゾールの膠原病に伴う末梢循環障害に対する臨床使用上の至適用量を検索する目的で, 多施設共同の研究班を結成し, シロスタゾール100mg/日と200mg/日のレイノー現象または皮膚潰瘍に対する有用性を二重盲検試験により検討した。レイノー現象に対する効果には, 100mg/日群, 200mg/日群, プラセボ群の間で有意差は認められなかった。皮膚潰瘍に対しては100mg/日群でプラセボ群に比して優れているとの傾向が認められた(p<0.10)。全調査項目総合では3群間に有意差は認められなかった。副作用は200mg/日群では72.7%にみられ, 副作用出現率および概括安全度において200mg/日群が他の2群より劣っていた。有用度については3群間に有意差は認められなかった。以上の結果より, シロスタゾール100mg/日投与の膠原病に伴う皮膚潰瘍に対する有用性が示唆されたが, 膠原病に伴う末梢循環障害全般に対する至適用量の決定には至らなかった。
  • 大畑 恵之, 中山 秀夫, 森島 隆文, 藤澤 重樹, 北村 啓次郎, 平井 昭男, 義沢 雄介, 河野 映理, 菅原 信, 小野寺 有子, ...
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1174-1181
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    マイザー®軟膏を用いて広範囲, 中等症以上の皮膚炎を治療し, その必要量と改善度を求めて検討を加えた。Rules of ninesにより罹患面積を, また皮疹の程度を3∼0として表し, それらの積により求められた値をスコアとした。1日に1∼3回のマイザー®軟膏の単純塗布で, 使用量とスコアの変化を観察したところ, 体表面積9%に1日あたり2.63gのマイザー®軟膏が必要で, それによりスコアは3.28改善した。全身性の皮膚炎を治療するにあたって1日25g以上の軟膏が必要であり, 現在の健康保険制度より定められているステロイド外用剤の制限量は見直しの必要があると考えられた。
  • —神奈川県下多施設における臨床試験—
    安瀬 正紀, 千島 康稔, 西篠 正城, 吉田 豊一, 青木 文彦, 西海 智子, 大塚 桂子, 石田 寛友, 熊谷 憲夫, 田辺 博子, ...
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1182-1189
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    ベスキチンW®は創傷被覆保護材として, 多くの臨床応用がなされ, また, さまざまな動物実験により, その創傷治癒促進効果が明らかにされている。今回はこのベスキチンW®の特性をさらに明らかにし, 従来の創傷被覆保護材との違いや, ベスキチンW®の好適な適応を検討するため, 多施設による臨床試験を行った。その結果, ベスキチンW®は創面にしっかりと密着して止血を行い, 融解せずに創面を保護し, 治癒まで湿潤状態を保ち, 上皮化と共に乾燥する理想的な創傷被覆保護材であると考えられた。また, DDBの保護材としても治療初期に十分な注意を払えば使用可能であり, さまざまな創傷に対して, ファーストチョイスの材料であると考えられた。
  • 山中 清光, 大河原 章
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1190-1193
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    乾燥肌用入浴剤バスキーナをアトピー性皮膚炎ならびに化粧品による接触性皮膚炎の既往歴のある患者を中心に, 48時間の閉鎖貼付試験を行った。その結果, バスキーナは実用濃度およびその濃度の10,000倍の濃度においても全例陰性であり, 皮膚に対する刺激性は低いものと評価した。
  • —第2次研究—
    —連日外用と隔日外用における有用性の比較—
    コルチコステロイド外用剤乾癬治療研究会
    1992 年 54 巻 6 号 p. 1194-1200
    発行日: 1992/12/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    コルチコステロイド剤の長期外用が必要な乾癬患者に対する維持療法としての適切な外用方法を, プロピオン酸デキサメタゾン(メサデルム®)クリームを用いて検討した。導入療法により寛解した症例を封筒法によりランダムに2群に分け, 各群の再発·再燃時期を指標として, 有用性を比較した。その結果12週における再発·再燃率は, 隔日3日週6回外用で81.7%, 毎日1回週6回外用で69.9%であった。なお導入および維持療法の期間中に, 重篤な副作用は認められなかったが, 毎日外用群は局所における副作用がやや多かった。
世界の皮膚科学者
feedback
Top