西日本皮膚科
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79 巻, 1 号
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目次
図説
綜説
  • 夏秋 優
    2017 年 79 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
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    マダニ類は野外の草地,笹藪,林内の下草などに生息し,その幼虫,若虫,成虫が野生動物に寄生して吸血するが,人間にも寄生して吸血することで種々の皮膚疾患や感染症を引き起こす。マダニ刺症の原因として東日本ではシュルツェマダニやヤマトマダニが多く,西日本ではタカサゴキララマダニやフタトゲチマダニが多い。マダニが媒介する感染症としては,国内ではライム病,日本紅斑熱,重症熱性血小板減少症候群が特に重要である。ライム病は北海道,本州中部山岳にみられ,原因ボレリアを保有するシュルツェマダニ咬着後に出現する遊走性紅斑が特徴である。日本紅斑熱は主に関東以西にみられ,原因リケッチアを保有するチマダニ類(主に幼虫と推定)によって媒介される。臨床的には高熱,発疹,刺し口が特徴である。重症熱性血小板減少症候群は主に西日本にみられ,原因ウイルスを保有するマダニ類が媒介する。高熱,消化器症状などが特徴で,死亡率が高い。タカサゴキララマダニ刺症に伴ってライム病類似の遊走性紅斑を生じた場合,tick-associated rash illness と考えられるが,現時点ではその病態は不明である。咬着したマダニは皮膚ごと切除するのが確実であるが,ワセリンや除去器具を用いる方法もあり,口器を含めた虫体の除去を確認する必要がある。マダニ刺症に対する予防的抗菌薬投与は原則として不要と思われる。マダニ刺症を診療した場合,確実な除去と感染症のリスク評価が重要である。
  • ―― 新島伊三郎と博多人形の伝統(九州大学皮膚科学教室) ――
    石原 あえか
    2017 年 79 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
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症例
  • 田﨑 典子, 鍬塚 大, 東 美智子, 鍬塚 さやか, 鈴木 貴久, 波多 智子, 宇谷 厚志
    2017 年 79 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
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    71 歳,男性。2010 年 7月,再発性多発軟骨炎を発症し,内科でプレドニゾロン 20 mg/day の内服治療が開始された。2012 年 3 月,Mycobacterium intracellulare による肺非結核性抗酸菌症を発症し,プレドニゾロンに加え,3 剤併用療法が開始された。2013 年 8 月,発熱と皮疹が出現し皮膚科を紹介された。皮疹は無痛性の 2 cm までの紅色結節で,頚部,上肢,体幹に散在していた。病理組織で真皮浅層から脂肪織にかけ好中球を主体とする密な細胞浸潤を認めた。一般細菌培養,真菌培養,抗酸菌培養はすべて陰性であった。以上より皮疹は Sweet 病と診断した。貧血と血小板減少のために行った骨髄穿刺にて骨髄異形成症候群も同定され,最終的に再発性多発軟骨炎と骨髄異形成症候群を合併した Sweet 病と診断した。 プレドニゾロンを増量,ステロイドミニパルスを行うも効果は一時的で浸潤性紅斑,結節の出没を繰り返し,2014 年 1 月に永眠した。本症例では約 4 カ月の間に臨床的には多彩な皮疹が出現したが,病理組織像はいずれも真皮から脂肪織に至る好中球浸潤であった。このように再発性多発軟骨炎,骨髄異形成症候群,Sweet 病の 3 者を合併する症例は過去にも報告されており,これらの症例につき文献的考察を行った。
  • 中川 理恵子, 一木 稔生, 陣内 駿一, 幸田 太, 三苫 千景, 古江 増隆
    2017 年 79 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
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    35 歳,女性。28 歳頃より両下腿に褐色斑,紅斑が出現し,徐々に拡大してきたため当院を受診した。 初診時,両下腿に浸潤を触れる紅斑,褐色斑が散在していた。皮膚生検では,皮下脂肪織内の血管腔,血管壁と血管周囲にリンパ球,組織球を主体とした細胞浸潤がみられ,内腔にフィブリン血栓を伴っていた。Elastica van Gieson 染色では,血管壁に内弾性板がみられ,弾性線維が乏しく動脈炎と判断した。全身の血管炎を示唆する所見はなく,皮膚型結節性多発動脈炎と診断した。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),ジアフェニルスルホン,循環改善薬,プレドニゾロン内服など行うも改善しなかったが,補助療法として宮古ビデンス・ピローサ®茶を飲用し始めたところ,紅斑は消退,痛みも改善した。現在,宮古ビデンス・ピローサ®茶の飲用だけを継続し再発はみられていない。我々は最近,宮古ビデンス・ピローサ®茶に含まれる薬草成分が内皮細胞に働きかけ,活性酸素産生を低減することを報告している。皮膚微小循環障害がみられる皮膚型結節性多発動脈炎に対して,症例によっては有効な補助療法である可能性が考えられた。

  • 野上 京子, 新原 寛之, 中谷 俊彦, 岸本 晃司, 中村 恩, 松木 真吾, 森田 栄伸
    2017 年 79 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
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    67 歳,男性。喫煙歴あり。初診の 7 カ月前から,冷刺激および温刺激で左第Ⅰ,Ⅱ指に Raynaud 現象が出現するようになった。左前腕の橈骨動脈拍動低下を認め,血管造影検査 (digital subtraction angiography ; DSA) にて橈骨動脈の著明な狭小化を認めた。カテーテル治療,バイパス術のいずれも適応外と考えられた。CT ガイド下胸部交感神経ブロックを施行し,サーモグラフィーにて患指の皮膚温上昇を確認した。Horner 徴候や代償性発汗などの副作用はみられなかった。クリッピング術を併用した胸腔鏡下胸部交感神経遮断術 (endoscopic thoracic sympathectomy ; ETS) を施行し,術直後から著明な患指の皮膚還流圧 (skin perfusion pressure ; SPP) 上昇を認め,自覚症状の改善も確認できた。Buerger 病では,カテーテル治療やバイパス術の適応となりにくいことが多いが,今回,ETS により改善した上肢動脈閉塞症について報告する。
  • 山手 朋子, 中村 優佑, 伊藤 亜希子, 波多野 豊, 上原 幸, 佐藤 精一, 清水 史明, 藤原 作平
    2017 年 79 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり

    12 歳,男児。7 月の昼頃に自転車で帰宅途中に停車していた自動車に衝突し,腹臥位で倒れているところを発見された。近医で前頭骨骨折・脳挫傷および両下肢の水疱を指摘され,当院へ搬送時,両側大腿に六角形格子状の水疱と潰瘍がみられ,倒れていた場所にあったマンホールの蓋の模様と一致した。このことから,蓋の上に長時間臥床したことにより生じた接触熱傷と診断した。熱傷深達度は浅達性から深達性Ⅱ度で熱傷面積は 4%BSA (body surface area),burn index は 2 であった。フィブラスト®スプレーやプロスタンディン®軟膏を用いた保存的治療で,潰瘍は約 1 カ月半で上皮化したが,一部は肥厚性瘢痕を形成した。熱傷が深達化した機序として,①夏季日中に,高温となりうるマンホールの蓋に接触し圧迫されたこと,②転倒後の頭部外傷により意識障害を来したため,それが長時間続いたこと,③半ズボン着用のため直接大腿部が熱源に接触したことを考えた。

  • 東 美智子, 東 江里夏, 宇谷 厚志
    2017 年 79 巻 1 号 p. 38-40
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり

    47 歳,男性。家族歴や既往歴に特記すべき事項なし。2010 年頃より野菜ジュースを飲み始め,2011 年より毎日 900 ml 以上摂取するようになった。2012 年より手掌や足底の皮膚の黄染を認めた。初診時上下眼瞼を含む顔面にも黄染がみられたが,眼球結膜に黄染はなく,肝機能検査は正常であった。カロチノイドを多量に含むジュースの大量摂取による柑皮症と考えた。柑皮症は主に手掌や足底に皮膚の黄染を来すが,皮下脂肪組織の多い顔面に及ぶこともある。柑皮症は皮膚の黄染が主たる症状で全身症状はないことが多いが,糖尿病,甲状腺機能低下,腎機能障害などの内科疾患や神経性食欲不振症に合併することが知られており,注意が必要である。

  • 前村 紘美, 古賀 文二, 正木 沙織, 古江 増隆, 今福 信一
    2017 年 79 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり
    71 歳,男性。2007 年頃より左側頭部に軽度圧痛を伴う結節を自覚した。結節は徐々に増大したため, 2014 年 11 月に当科を紹介され受診した。左側頭部に約 1.5 cm の隆起性淡紅色結節があり,近傍にも紅色小結節がみられた。隆起性淡紅色結節の病理組織学的所見は,真皮内に基底細胞様細胞に囲まれた腫瘍胞巣がジグソーパズル様に多発し,胞巣間に好酸性のヒアリン鞘がみられ,皮膚円柱腫と診断した。近傍の鮮紅色小結節は病理組織学的所見より老人性血管腫と考えたが非典型的であった。また,自験例は耳下腺腫瘍の既往があり,遺伝性の Brooke-Spiegler syndrome (BSS) の可能性も考えたが,家族歴はなかった。しかしながら過去の本邦報告例を検討したところ,非遺伝性の孤発性皮膚円柱腫の報告の中にも,BSS でみられる付属器腫瘍,耳下腺腫瘍,肺癌などが併存していた例があり,孤発例の円柱腫においても身体の部分的,または全身的な CYLD 遺伝子変異が関与する可能性が考えられた。
  • 宮崎 玲子, 内 博史, 伊東 孝通, 石井 武彰, 山田 裕一, 小田 義直, 古江 増隆
    2017 年 79 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり
    69 歳,男性。当科初診の半年前に背部の腫瘤に気づき,その後急速に増大したため近医を受診した。 皮膚生検の結果,悪性線維性組織球腫 (malignant fibrous histiocytoma : MFH) が疑われ,切除目的に当科紹介となった。広範切除時の病理組織像で,多形性を有する肉腫の像を認め,免疫組織化学染色から MDM2 (murine double minute-2) 陰性および CDK4 (cyclin dependent kinase-4) 陽性の結果が得られたため,脱分化型脂肪肉腫 (dedifferentiated liposarcoma : DDLS) の可能性も否定できないと考えた。しかし,最近の知見をもとに症例を再度検討したところ,FISH (fluorescence in situ hybridization) 法にて,MDM2 遺伝子増幅を認めず,未分化多形肉腫 (undifferentiated pleomorphic sarcoma : UPS) と再診断した。免疫組織化学染色において,MDM2,CDK4 は上記 2 疾患の鑑別に有用な検査であるが,脂肪肉腫では MDM2 より CDK4 の感度が高いことが知られている一方,CDK4 の特異性には議論がある。
  • 石田 倫子, 松田 知与, 高松 紘子, 原田 佳代, 占部 和敬, 古江 増隆
    2017 年 79 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり
    79 歳,男性。初診の 4 カ月前,入浴後に失神発作があり転倒した。その後,右臀部痛が出現し,近医整形外科を受診したが骨 X 線撮影で異常所見は認めなかった。初診 1 カ月前,整形外科再診時に右臀部に多数の結節を指摘された。当科初診時,右腰臀部に疼痛を伴う多数の暗褐色結節を認めた。転移性皮膚腫瘍や痒疹を疑い,右腰部の結節より生検を施行した。病理組織学的所見では真皮内に異型細胞のびまん性増殖を認め,免疫染色で腫瘍細胞は AE1/AE3,vimentin,CAM5.2 が陽性,CD31 が強陽性を示し,スリット状の血管様構築を認めることから epithelioid angiosarcoma と診断した。画像検査より右腰臀部が原発巣と判断した。緩和的放射線照射後,化学療法を施行したが,初診 11 カ月後に永眠した。Epithelioid angiosarcoma は,本邦報告例の少ない稀な悪性腫瘍であり,自験例は上皮系腫瘍の転移との鑑別を要した。
  • 澤田 匡秀, 高橋 宏征, 米田 大介, 栁澤 健二, 加賀谷 真起子, 髙橋 博之
    2017 年 79 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり
    高齢者に発症した進行性有棘細胞癌 (squamous cell carcinoma:SCC) に対して cetuximab (Cet) を中心とする併用化学療法または併用放射線療法により良好な結果が得られた 2 例について報告する。症例 1: 85 歳,男性。右こめかみ部 SCC の耳下腺リンパ節転移に対して放射線療法を施行するも改善が乏しかったため,Cet+5-FU+CDDP (シスプラチン) 併用療法を開始した。3 コース施行後に完全奏効と判断したが,低 Na 血症のため治療を中断したところ約 1 カ月で再発した。その後,Cet と放射線併用療法 (CetR) に変更し,治療後 7 カ月の時点で腫瘍の増大を認めていない。症例 2:89 歳,女性。開瞼が困難なほど増大した右前額部の局所進行性 SCC に対して Cet-R を施行した。治療後,腫瘍の縮小と共に開瞼障害の改善を認めた。今回,Cet を併用した治療により良好な結果が得られ,症例 1 の低 Na 血症以外の深刻な有害事象も認めなかった。Cet 併用療法は今後,高齢者など手術治療が困難な症例において新たな治療の選択肢となる可能性がある。
  • 牧野 公治, 西 葉月, 尹 浩信
    2017 年 79 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり
    日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン第 3 版によると,体重が 15 kg 以上の患者にはイベルメクチン内服が強く勧められている治療である。一方,体重 15 kg 未満の患者については効果や安全性が確立していない薬剤が多く,治療に苦慮することも多い。フェノトリンローションが小児の疥癬治療に役立つことが期待されるが,安心して使用するためには一層の情報蓄積が必要と思われる。ある児童福祉施設で入所者である小児と職員である成人の通常疥癬集団感染が発生し,小児 9 例,成人 1 例を通常疥癬と確定診断した。うち 2 歳児が 3 例,3 歳児が 2 例で,この 5 例は全員体重 15 kg 未満だった。4 例はダーモスコピーにより虫体が検出された。3 歳以下の 5 例はフェノトリンローションとクロタミトンクリームを用いて治療した。1 例はフェノトリンローションによる接触皮膚炎ないし Mazzottio 反応が疑われ,使用は 1 回のみだったが,4 例は 1 週間間隔で 2 回外用し,5 例とも治癒した。他の症例もイベルメクチンを中心とした治療で全例治癒し,集団感染は 2 カ月弱で沈静化した。ダーモスコピーの使用によって小児の疥癬確定診断がより容易になり信頼関係の構築に役立った。フェノトリンローション使用中は,クロタミトンクリームも併用した上に冬季であったので皮脂欠乏症状が目立った。保湿剤を適宜併用したところ,先の 1 例以外は特に皮疹の悪化や他の症状はみられず,皮膚症状緩和につながった。フェノトリンローションは小児の疥癬治療についても有効性および安全性の高い薬剤と考える。
  • 膳所(岩﨑) 菜保子, 中尾 匡孝, 内田 勇二郎, 本下 潤一, 大楠 美佐子, 竹内 聡
    2017 年 79 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり
    77 歳,男性。幼少期からの気管支喘息の既往あり,繰り返す喘息発作に使用する経口ステロイド治療による続発性副腎機能低下症にてグルココルチコイド補充中であり,糖尿病も合併していた。慢性心不全の増悪で当院循環器内科に入院の際,右環指∼右手背の腫脹・熱感を認め,蜂窩織炎の診断で抗菌薬を投与されるも,新たに右上腕,左手背,左下腿に熱感を伴う紅斑が出現し,炎症反応も増悪した。皮膚生検にて当初結節性紅斑と診断され非ステロイド性抗炎症薬を開始されるも気管支喘息の増悪のため中止した。その間にも皮膚病変は次第に増悪し,一部自壊してきたため病変局所の切開・デブリードマンを施行した。各種培養にて,右手皮下膿瘍より Cryptococcus neoformans,右前腕潰瘍ポケット部より Micrococcus sp.,左下腿膿瘍・潰瘍部より Methicillin-resistant Staphylococcus aureus および Citrobacter koseri が検出され,先の生検組織の再検でもクリプトコックスの菌体が確認された。フルコナゾールとドリペネム,バンコマイシン投与開始後も症状は増悪したため,抗真菌剤をアムホテリシン B に変更したところ,皮膚症状は軽快し,退院後はイトラコナゾール内服にて経過良好である。
  • 前村 紘美, 大賀 保範, 伊原 穂乃香, 古江 増隆, 今福 信一
    2017 年 79 巻 1 号 p. 70-74
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病を有する 59 歳の女性。2013 年頃より外陰部に瘙痒が出現し,搔破を繰り返していた。2015 年 9 月,発熱と外陰部の疼痛・腫脹が出現し,4 日後に近医を受診し,外陰部蜂窩織炎と陰部カンジダ皮膚炎と診断された。抗菌薬内服と抗真菌薬外用を処方されたが改善しないため,翌日当科を紹介され受診した。初診時,外陰部に発赤・腫脹・硬結があり,造影 CT で同部位の皮下にガス像を認め,フルニエ壊疽と診断した。抗菌薬投与とデブリードマンを施行したが,入院後も壊死の進行を認めたため,陰部から季肋部までの皮膚を大きく皮弁状に切開し,腹直筋膜を含め徹底的なデブリードマンと人工肛門造設を行い,壊死の拡大を抑えることができた。創部は分層植皮で閉創し,入院 93 日目に自宅退院となった。本邦報告 182 例を集計したところ,フルニエ壊疽の女性例は 11 例 (6%) と稀であった。
  • 齋藤 健太, 岩田 洋平, 有馬 豪, 宮川 紅, 森田 雄介, 沼田 茂樹, 佐野 晶代, 矢上 晶子 , 松永 佳世子, 杉浦 一充
    2017 年 79 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり

    壊死性筋膜炎では広範囲デブリードマンが一般的とされているが,入院期間の延長,複数回の植皮術が不可避となる。今回我々は必要最小限のデブリードマンで良好な経過を得ることのできた 3 症例を経験したため報告する。症例 1:73 歳,女性。手背の擦過傷を契機に発症。発赤・腫脹・熱感・紫斑が前腕から上腕にかけて急激に拡大し当科へ救急搬送された。壊死の著しい手背のみの切開,抗菌薬投与と補液,尿量測定,バイタル管理で前腕から上腕にかけての紫斑と発赤は改善し最終的には手背部のみの植皮術で治癒した。症例 2:39 歳,男性。右膝から大腿の広範囲に圧痛を伴った紫斑,壊死を認めた。重度の糖尿病を合併していた。初期治療は局所麻酔下で壊死が著しく膿汁の貯留した部位のみ切開を行い,その後,抗菌薬投与,補液,尿量管理,バイタル管理で炎症反応は軽快した。重度の糖尿病に対して血糖コントロールを行い,入院 40 日後に全身麻酔下で植皮術を行い治癒した。症例 3:73 歳,男性。初診 2 日前より右手背の腫脹を自覚し,急激に右上肢全体に腫脹,発赤が拡大し敗血症性ショックに陥り当科を受診し,手背部のみの切開,抗菌薬投与,補液,尿量測定,バイタル管理にてショック状態から脱し切開部は外用療法のみで治癒した。壊死性筋膜炎のデブリードマンの範囲は患者の全身状態,重症度などを勘案して決定することが重要であり,皮膚所見に精通した皮膚科医は積極的に壊死性筋膜炎の診断や治療に参加すべきと考える。

  • 寺脇 志帆, 井上 義彦, 宮地 素子, 久保田 由美子
    2017 年 79 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり
    45 歳,女性。嘔吐,眩暈で入院し,突発性難聴の診断にて水溶性プレドニン®の点滴治療を開始した。 治療3日目に体幹,腋窩に境界明瞭な瘙痒を伴う紅斑が出現し,2 日後に当科を初診した。薬疹を疑い,リンデロン®内服へ変更し1 週間で皮疹はほぼ消退した。腹部紅斑の生検では表皮真皮境界部に液状変性と真皮浅層に好酸球の浸潤があり薬疹に矛盾しない所見であった。水溶性プレドニン®の薬剤リンパ球刺激試験は陰性。48 時間閉鎖式パッチテスト(PT)ではプレドニン®錠,メドロール®錠,水溶性プレドニン®,プレドニン®眼軟膏,ネオメドロール®EE 軟膏,金チオ硫酸ナトリウム,フラジオマイシン硫酸塩に陽性,治療に用いたベタメタゾン系外用剤は陰性であった。以上よりプレドニゾロンによる遅延型薬疹と診断し,メチルプレドニゾロンの PT 陽性所見は交差反応と考えた。副腎皮質ステロイド薬による薬疹の治療には交差反応の少ない薬剤への変更が重要であり,今後使用可能な薬剤の検索にステロイド外用剤による PT は簡便で陽性率も高く有用と思われた。
治療
  • 桑原 千晶, 筒井 貴子, 澤田 文久, 牧野 英一, 青山 裕美
    2017 年 79 巻 1 号 p. 86-89
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル 認証あり
    メラニン産生抑制作用のある,ロドデンドロール(商品名ロドデノール:4-(4-hydroxyphenyl)-2- butanol, Trade name ; rhododenol)を含む化粧品を使用した多くの消費者が顔,首や手背といった使用部位にほぼ一致した脱色素斑を生じた。この症状をロドデノール誘発性脱色素斑と診断することができる。 多くの例で,化粧品の使用中止により脱色素斑面積が縮小することが特徴とされるが,中には再生速度が緩やかになり露出部位に脱色素斑が残る症例も散見される。今回我々は,308 nm ターゲット型エキシマライトを用いてロドデノール誘発性脱色素斑に紫外線治療を行った。13 例中 10 例(76.9%)で有効であった。ターゲット型エキシマライトは,尋常性白斑と同様にロドデノール誘発性脱色素斑に有効性が期待できるので,積極的に試みる価値のある治療であると考え報告する。
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