本稿は機械の安全性を高あることを目的とした最近の学説および具体的手法の紹介と解説である.前半は機械の事故を技術システムの普遍的性格としてとらえるべしとする学説であり,これによれば事前評価としての信頼性設計が一つの有力な方策として注目される.後半では機械類の経隼劣化の検査・監視における設備診断技術においても診断結果の信頼性評価が重要であることを指摘し,その診断アルゴリズムとして近年研究されている仮説検定およびカルマンフィルタの原理,歴史的背景を述べている.
相対的に低い引火点を持つ成分の含有量が少なく,粘度が高い可燃性混合液体について,タグ密閉式によって測定する引火点は,昇温速度が大きくなると,一般に低下する.これは,試料の動粘度および昇温速度に依存して大きくなる温度分布が試料内に存在するためである.このため,タグ密閉式の規格に従って,動粘度約1cSt以上の液体にっいて測定される引火点は2℃以上の誤差を有することが明らかとなった.タグ密閉式で昇温速度を0℃/minにしたときの引火点とセタ(Seta)密閉式の引火点がほぼ等しいとき,これらの引火点は,気液平衡が成立している条件下における真の引火点である.粘度が高い可燃性液体について,ペンスキー・マルテンス密閉式を用いて規格に沿って,引火点を測定すると,真の引火点より一般に約4.3℃低くなる.
粉じん雲の着火確率に及ぼす着火源の特性の影響を調べた.粉じん雲の着火は粉じんと着火源の接触時間,着火エネルギーの大きさ,粉じん雲濃度などに影響を受けるので,粉じん雲濃度を一定(150観憩3)にして,火花放電持続時問を2~10ms,放電エネルギーを最大1.37Jまで変化したときの着火確率を調べた,さらに,火花放電持続時間を2msに固定し,粉じん雲濃度を150~550g/㎥に変えたとき,着火 エネルギーと着火確率の関係も調べた・ この結果,粉じん雲の着火確率は,着火エネルギー供給時間,着火エネルギー供給速度および粉じん雲濃度に影響を受けること,火花放電持続時間が2ms以上では,粉じん雲の着火エネルギーは火花放電持続時問に影響を受けないこと,粉じん雲の着火エネルギーは粉じん雲濃度の大きいほど小さくなり,本研究に用いた微粉炭の最小着火エネルギーは約50mJであることなどを明らかにした。
気体管路輸送システムで送られた微粉炭をサイクロンで分離する場合,サイクロン通過分は通常バグフィルタで捕集されるが,そのバグフィルタ捕集炭はメディアン径が2~3μmときわめで細かい.した がって,その堆積体の有効熱伝導率は1.2×10-4ca1/(cm・s・K)程度と小さく,かつ酸化発熱速度は10-4cal/(g・s)程度と大きい.すなわち,一般の微粉炭に比べてきわめて自然発火を発生しやすいことが明らかになった.特に注目すべき点は,わずか1日という短い時間で発火に至る危険性があるということで ある.
工場事故等で有機可燃性物質が漏えいする可能性のある場含,あらかじめ爆発限界値を知っておく必要がある.通常,爆発限界値は文献から知ることができるが,すべての有機可燃性物質について記載されているわけではない。そこで記載のない物質を含めて,分子量と官能基のみから簡単迅速にパーソナルコンピュータを利用して近似の爆発上下限界値を求める方法について検討した.その結果,爆発下限界値は文献と比較的近い値が,爆発上限界値は一部文献と離れた結果を示すものもあったが,全体としては近似した値が得られた,このことから文献に記載のない物質についても十分惜頼できる値が得られ るものと考えられた.
著者ほかねてから,可燃性液体を取り扱う上での下部引火点と上部引火点の重要性を認識した結果,多くの物質についてこの数値の実測による検討を重ねてきた,本稿ではその成果を,蒸気の爆発危険性状が一べつして理解できるように,蒸気圧線に基づく引火温度と爆発限界の関係線図という形態で,各物質について順次紹介することとした.
FTAを効果的に活用するためには,適用する作業システムにより,異なる配慮が必要である.代表的事例として,(i)ハード中心のシステム,(ii)メカトロ自動化システム,(iii)在来形災害(ド ラグショベル),(iv)定常形作業における予想外の危険(碍子検出作業),(V)作業方法の選択の誤り,の5例について,事例を掲げて説明した.