「人間工学」という言葉は最近よく聞かれるようになったが,その利用については今一歩の感がある,作業形態がコンピュータ技術などの急速な進歩により大きく変容をしている一方で,現在ぽど作業の安全性や快適性が求められている時代はないと考える.従来,安全はおもにエ、学や技術を中心とした考え方や手法により不安全行動や事故の発生を防止することを試みてきたが,現在では物と人の両方から危険性を予知し,予見して安全を確保しようという考え方になってきている.すなわち,われわれ人間が作業や機器操作をする処理過程の流れの中で人間のもっている特性に基づいた安全確保をすることにより,より快適に作業ができる機器や機器環境を設計しようとするものである.機器が高度化,精密化,巨大化をする中で人間が関係する部分は小さく評価され,また軽視される傾向が認められる.しかしながら人問の取扱う機器システムはすべて人間能力の代替であり,人間を機器システムに適合させようとすることは本末転倒である。人間、工学の視点に立って作業や機器操作の安全性や快適性向上を考える場合,人の生体特性や行動特性への理解,社会環境への調和,機器と人問の至適インタアクション,マクロ的視点に立ったシステム改善などが将来的に人間工学の分野ではますます重要になるものと考えられ る.
モデルナフサとメタノールからなる高濃度メタノール燃料(M85,M90,M95)につき,その蒸気組成をUNIFAC式により,また蒸気の拡散現象を1次元モデルにより計算した。さらに気相組成と爆発範囲の関係を検討した.その結果,M85,M90の爆発危険性については,通常の温度範囲ではナフサに近いものと考えて良いことを明らかにした.
クロム(VI)含有排水は,従来,還元・中和処理,または,C1型陰イオン交換樹脂により吸着処理されていた.これらの方法は,有害なクロム(VI)の処理はできても,多量の処理排水とスラッジ発生を伴うので,水質汚濁,スラッジ処分地の確課,生活環境の悪化など,いくつかの問題をかかえている. 本研究ではイオン交換樹脂を用いて,表面処理におけるタロム(VI)含有排水の再利用化と,クロムの再資源化について検討を行った.その結果,実用規模でのリサイクルシステムを実現した.
海外に工場や商業施設を建設する場合,建築主や経営者が,その施設や設備の設計段階から検討しておくべきリスクとして『火災・爆発・労働災害』め三つが挙げられる. シリーズ第2回目は,「アメリカ」を取り上げ,上記三つのリスクに関する安全防災法令規則の種類と概要,その運用実態にっいて紹介する.
1976年にイタリア・セベソで発生した毒性物質放出事故を契機として,ヨーロッパ共同体(EC)はセベソ指令を発令した.一方米国では,1984年のインド・ボパールでの事故を契機として,環境庁(EPA) および労働安全健康庁(OSHA)が法規制の見直し作業を開始した.OSHAは1992年に労働安全健康 法の下に化学プラントの安全性を確保するための基準を制定しており,またEPAドは現在リスクマネージメントプログラム発布の最終段階にある.本稿では,欧米における最近の法規制の動向,およびこれに対する産業界の対応などについて紹介する.
近年,先端技術産業などで使用されている化学物質による環境汚染が顕在化し始め,多くの関心をよんでいる.これら化学物質の中には,有害でありながら,排出や廃棄にかかわる法規制の対象とならないものが多数確認されている.いくつかの地方自治体は,個々の化学物質による規制では現状に十分対処できないことから,環境汚染の未然防止と自主管理の強化を目的に,包括的な施策を講じ始めている.本稿では,地方自治体による化学物質対策のあり方を探るため,神奈川県,千葉県,埼玉県および川崎市が施行している指針ならびに大阪府が策定した条例を取り上げ,対策の手法,管理物質選定のための毒性評価方法,指導対象とする事業所,指針または条例の規定事項,指導遂行のための行政の役割について紹介と比較検討を行う.
化合物名の不明な試薬を焼却,不溶性化などにより廃棄処理をする場含の定性分析システムを提案した.システムは,試料を固体と液体に分け,一般化合物試験と特定化合物同定のためのフローチャート,操作手順と判定表から構成されている.試験操作は固体試薬を対象とした炎色反応を含む燃焼試験,沈殿生成反応を含む水溶性試験,気化試験と液体試薬を対象とした燃焼試験,水溶性試験,酸同定試験,ヘッドスペース試験である.現場用でビーカーやバーナー,pH試験紙など簡単な器具のみで操作できる.