規則違反(violation)を,個人が故意に起こした規則に反する行為と捉え,その生起メカニズムを検討 した.代表的な規則違反の形態を整理し,それらを考察すると,その根底には,利益,コントロール,バリアの三つの感情が共通しており,規則違反を抑止するためには,前二者の感情を減少させ,後者の感情を増強させることが重要であることを指摘した.さらに規則違反の基本モデルを提案した.そのモデルをもとに,規則違反の抑止においては態度変容が必要であることを指摘し,社会心理学においての態度変容モデルをもとに,その方策について考察した.さらに,規則違反と企業風土,安全文化の関係,規則改定の仕組み,規則改定の仕組みの監査の重要性について指摘した.
大規模プラント運転の課題として,より一層の安全,安定運転の実現と運転員の運転スキルの維持が必要である.そのための今後の運転員支援システムの考え方の一つとして,コオペレータの概念を紹介する.つぎに,機能の情報を今後のプラント運転に活用することがプラントの安全性向上に寄与するとの観点から,機能の概念と機能モデルを用いることの意義を述べる.そして,これまで著者らが進めてきた機能モデル(MFM モデル)を基礎とした推論手法とその応用について述べる.
橋梁工事において,橋桁の仮受け台として,サンドルと呼ばれる仮設構造物が使用される場合が多い.サンドルは,高さと幅が150 mm のH 形鋼に鋼製の材を部分的に溶接して補強した部材を,井桁状に組み上げて使われている.サンドルには,橋桁の自重などにより鉛直方向の荷重が作用するが,荷重を除去した後もH 形鋼部材に変形が残ることもある.この変形は残留変形と呼ばれているが,サンドルは繰り返し使用されることが多く,中には残留変形のあるH 形鋼部材が使われることもある.しかし,研究データが少ないため,残留変形のあるH 形鋼部材がサンドルの安定性に及ぼす影響は不明である.一方で,過去には,橋桁工事中にサンドルが崩れ15 名が死亡するという事故も発生している.このため,サンドルの安定性に関する解明が急務であると考える. そこで本研究では,サンドルの性能を確かめる基礎的な研究として,H 形鋼部材の残留変形がサンドルの安定性に及ぼす影響を数値解析によって検証した.そしてこれらの結果から,H 形鋼部材の残留変形に対する管理基準値を提案した.
文献等から得られた海外での内部浮き蓋付きタンクの火災事例を紹介する.合計20 件の火災例が見つかった.内部浮き蓋が明らかに火災に結びつく例は少ないが,今後とも内部浮き蓋付きタンクの設置は続くことから防災対策を進める必要がある.
これまで経済産業省および環境省では,実効性のある公害防止に関する環境管理体制の構築に向けて,事業者が取り組む際に参考となる行動指針を示すことを目的に種々の検討を進めてきた.平成19 年3 月には「公害防止ガイドライン」をとりまとめ,①事業者がガイドラインを踏まえ,主体的に公害防止に関する環境管理に取り組めるよう,事業者に対してガイドラインの普及啓発を進めていくこと,②事業者の公害防止に関する環境管理の具体的な取組みについて情報収集を図り,成果をあげている取組事例に係る情報提供に努めていくことの二点が方針として掲げられている. これらの方針を踏まえ,関東経済産業局では昨年度,管内の事業所を対象として,ガイドラインの普及啓発および先行事例の情報収集を目的にアンケート調査を実施した.その概要を紹介する.
本稿では,物質安全の基礎の最終回として,混合危険の定義,一般的特徴,法規制,評価試験方法,注意点,事故事例等について概説する.薬品類の混触による発火が,火災の原因になるという事実は,地震の際の化学実験室等で観測されているが,このような発火現象に代表される混合危険は,地震時以外にも災害をもたらす可能性があり,注意が必要である.