癌の精密検査は受診者に強い苦痛を与えるため,高年令者はこの精密検査により致命的な健康被害を受けることがある.しかも,高年令者では癌の進行が遅いため,癌の発見により受けるメリットは若年者におけるほどは大きくない.そこで,比較的苦痛の少ない血液検査のデータから癌の診断に関する有用な情報を得ることにより,高年令者が精密検査を受ける確率を下げようと企て,データの統計的拠理によりその目的を達した.ここに,この着想の理念はシステムの安全設計立案の理念に一致するものである.
ClO-を酸化剤としてNO2-の酸化反応が研究された.次亜塩素ソーダ溶液およびサラシ粉溶液を酸化剤として選び,、両者の比較を行ない,次の結果をえた. 1)反応の化学量論方程式は両者とも共通して ClO-+NO2-=NO3-+Cl- とあらわせる. 2)速度式は酸化剤によって異なったが,pH依存性は同一であった.しかし酸化反応速度は両者について大差がないようである.すなわち,酸化剤としてC1O-を用いるとき,次亜塩素ソーダ溶液でも,サラシ粉溶液でも,どちらを使ってもNO2-の酸化について効果にかわりないようである.
ディーゼル車の排出ガス中の硫酸ミスト及び硫酸塩を定量した.定量はR.W.Westらの方法によった.排出ガスは孔径0.45μmのフロロポアフィルタを用いて直接採取した.アイドリソグ状態における総硫酸塩濃度は4mg/m3であり,硫酸ミスト濃度は0.5mg/m3であった.登り坂走行時には,硫酸ミスト濃度はアイドリング状態の2倍に増加し,硫酸塩濃度は3倍に増加した.これらはいずれもエンジン空ぶかし時には,アイドリング時の約1.5倍に増加した.また酸性ミスト検知板により,黒煙粒子に付着した硫酸ミストを検出した. 排出ガス凝縮液のpHを測定したところ1.2であった,定性分析によりSO42-及びNH4+イオンを検出したが,NO3-イオンは検出しなかった.この点からも,(NH4)2SO4のような硫酸塩及び硫酸ミストの存在が確認された.
ガソリン燃焼時に発生する煙の粒径分布をHe-Neレーザを光源とするオプティカルカウンタおよび吹付け法により測定した.煙の屈折率補正および同時計数損失の補正を行なって得た煙の粒径分布を,煙の重量および濁度と比較した結果,複索屈折率の物質粒子に対してこの装置で得られる粒径分布の信頼性が確認された.トンネル内のガソリンの燃焼に伴った発生煙は初期の凝集後は変化が少なく遠方まで伝播するので危険性がないが,コロナ放電を行なうことによって凝集を速め,煙の沈降を促すことができることが判明した.
写真による炎の高さの決定は,今後も続けられるであろう.しかし,タンクの直径が大きくなると,黒煙が多くでるため,この方法による高さの判定は難しくなってくる.本報では,炎から任意の距離はなれた2点における放射照度をもとに,炎の高さを推定し,従来からの写真による方法と比較している.
オペラビリティ・スタディはシステム工学に基づく危険度評価手法の一つであり,化学プラントの設計・運転に際して,プラントの危険を明らかにし,必要な対策を講ずるための実用的手法である.本稿では,この手法の原理,解析手順を解説するとともに,実際問題への応用例を示し,これより,手法の問題点・特長を明らかにする.
1979年3月28日,米国ペンシルバニア州のスリーマイル原子力発電所2号炉で発生した事故の概要および米国大統領の命令により設置されたTMI事故調査特別委員会の最終報告書の概要紹介である.この事故は原子力発電史上最悪のものと言われ,世界の原子力關発に少なからぬ影響を与えている.特別委員会の結論は,原子力発電所の許認可停止には至らなかったものの,原子力規制委員会(NRC) の全面改組など原子力行政に対して根本的な変革を要求しており,米国内外に与える影響は大きいものがある.