安全工学
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62 巻, 2 号
安全工学_2023_2
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
会告
安全への提言
効果・効率・魅力を高める安全教育の設計 小特集
  • 「人として正しい」判断ができるようにするための教育訓練
    河野 龍太郎
    原稿種別: 総説
    2023 年 62 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル 認証あり

    良好な安全文化醸成のためには,管理者自身が,すべては人間の判断や行動によって引き起こされていることを理解し,当事者意識を持ってエラー対策を実施することである.特に,トップ・リーダが,安全を重視していることを行動で示すことである. トップ・リーダのコンピテンシーを具体的な行動として整理し,知識カタログを作り,教育研修を行い,能力管理をすることである.また, 組織内に安全推進担当者を置き,具体的な対策を立案し行動できる仕組みを構築する必要がある.知識カタログの中には,人間の持つ基本特性や行動モデルの基礎知識や判断への影響因子などを含め,体系的な知識として理解することである.「人として正しい」という判断基準が特に重要であり,組織を構成する全員がこの判断基準を持ち,実行できる仕組みを構築する必要がある.

  • 効果・効率・魅力を高めるために
    鈴木 克明
    原稿種別: 総説
    2023 年 62 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル 認証あり

    インストラクショナルデザインの分野では教育工学の知見をもとに教育を効果的・効率的・魅力的にするための汎用的理論やモデルが提案されてきた.安全工学の研究成果を安全・安心の実現に向けて広く伝えるためには,インストラクショナルデザインで論じられる教育理論やモデルに基づいた科学的根拠を有する教育実践の構築が重要である.本総説論文では,まず,教育実践の効果を確認するための枠組みである「学習成果の5 分類」を示す.そして,教育の効率を高める仕組みのモデルである「TOTE モデル」とID の第一原理」,および教育の魅力を高める要素を論じた「ARCS モデル」を紹介する.

  • 淺田 義和
    原稿種別: 総説
    2023 年 62 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル 認証あり

    遠隔学習やコンピュータ支援教育などの観点から,様々な教育場面においてeラーニングが活用されている.医療教育の分野では,知識に加えて技能・態度の学習も必要であり,昨今のCOVID-19 の影響と合わせて多数の教育実践に関する知見がみられるようになった.特にCOVID-19 後はオンラインでの教育が増加し,座学や実習のみならず,指導者育成の場面にも利用がみられる.また,症例に基づいたシナリオ型教材の開発,さらには国家試験のCBT(Computer Based Testing)化に関する応用などの研究も進んでいる.医学教育等のモデル・コア・カリキュラムでもICT を活用した学習の必要性などが提示されており,eラーニングの重要性はさらに高まっている.一方,すべての学習がeラーニングのみで完結するわけではない.座学や対面実習などと組み合わせた教育の設計・展開が必要不可欠である.

  • 藤本 徹
    原稿種別: 総説
    2023 年 62 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル 認証あり

    ゲームやゲーム的な手法を取り入れた教育・研修の取り組みは長年行われてきたが,近年ゲーミフィケーションという概念が提唱されて以降,新たな特徴や可能性が期待されている.本稿では,まずゲーミングシミュレーションやシリアスゲームなどの以前からのゲームの教育利用からの変遷の中にゲーミフィケーションを位置づけて概観する.ゲーミフィケーションのデザイン手法としての特徴を解説した上で,安全教育におけるゲーミフィケーション導入の方向性として,安全訓練・実地演習の活性化,安全意識啓発活動のアウトリーチ向上,安全教育の課題解決に向けた参加促進の3 つの観点から,関連事例を交えてその可能性を論じる.

総説
  • 消火戦略の重要性
    鳥飼 宏之, 廣田 光智, 斎藤 寛泰
    原稿種別: 総説
    2023 年 62 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル 認証あり

    近年,大規模林野火災やガソリンを用いた放火大量殺人など,従来の消火法では迅速に対応できない火災現象が現れてきている.そのため消火法の改善・改良や新消火法の開発を行う上で,火災域で形成されている火炎に,どのような消炎を引き起すかという議論と共に,その燃焼領域にどのように消火剤を輸送するかという消火戦略の検討が非常に重要である.そこで,このような観点を踏まえて,本報では,著者らが行っているABC 消火器の消火戦略,水損回避を目的とした超音波を用いた消火法についての消火戦略,さらに,広域火災を対象とした消火法として,爆薬による爆風と高粘度流体を用いる新しい消火法の消火戦略について紹介した.

  • 湯夲 公庸
    原稿種別: 総説
    2023 年 62 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル 認証あり

    Many studies have been proceeded on the "combustion behavior" of liquid flammable substances (including petrochemical products, some fermentation products, naturally derived products, etc.). However, the observation of the behavior of radiant heat and the behavior of liquid flammable substance temperature profile and level change by combusting a substance occupies most of them, and there are few studies on the combustion behavior in the case of suppression of combustion or extinguishing a fire. Even in the case of some experimental conditions that can be extended to real-scale fires, there is a great danger of non-extinguishing fire. And a research has been delayed, especially in water-soluble/not ininsoluble liquid flammable substances, liquid flammable substances with high toxicity and harmfulness, and new substances that flammability is unknown. Under such circumstances, a fire extinguishing technology that covers a wide range of various liquid flammable substances has been established, and it has become possible to "consider the behavior of liquid flammable substances from the viewpoint of fire extinguishing".

論文
  • 崔 光石, 長田 裕生, 庄山 瑞季, 鈴木 輝夫
    2023 年 62 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,ピークホールド機能付の新型クーロンメータを使用して実規模サイロへの粉体投入時に金属球の突起物から発生する静電気放電の電荷量測定を試みた.実験装置としては実規模サイロを含む粉体空気輸送設備,粉体供給用ホッパー,金属製突起物(直径40 mm),放電観測システムなどである.粉体試料は3 mm のポリプロピレン(約800 kg)を使用した.結果によると,突起物で発生した静電気放電の電荷量を新型クーロンメータでリアルタイムに測定することができた.突起物で発生した静電気放電の電荷量は負極性の数十nC から数千nC であり,800 kg 投入終了後は-6045 nC の最大値が得られた.なお,今回の実験で得られた-6045 nC は放電エネルギーに換算すると87 mJ に相当し,可燃性ガス・蒸気だけでなく多くの可燃性粉じんの着火源となる可能性が高いので,極めて危険なレベルであると判断できる.

  • 沖汐 大志, 福島 祐子
    2023 年 62 巻 2 号 p. 122-129
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    近年は,複数の製品やサービスの連携により,新たな機能・価値を提供するサービスを構築することも少なくない.連携するサービスには,稼働中の既存サービスを含むこともある.一方で,既存サービスを含むサービス構築では,要求分析や安全分析の対象は,基本的に新サービスが優先されるため,既存サービスへの影響が見落とされる可能性がある. このような既存サービスへの影響は,サービス間の相互作用に起因することもある.相互作用に着目した安全分析にはSTAMP/STPA が有効であるが,分析対象とする損失の識別が前提になる.このため,既存サービスへの影響による損失を見落とさないように,要求分析の手法であるCATWOE 分析を利用して損失を識別する方法を考案した.その具体的な方法と,ケーススタディで効果を確認した結果を示す.

  • 渡辺 純哉
    2023 年 62 巻 2 号 p. 130-138
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    厚生労働省が毎年発表している労働災害統計によると,製造業では「はさまれ巻き込まれ」に分類される機械による労働災害が非常に高い割合で発生している.厚生労働省の「老朽化した生産設備における安全対策の調査分析事業」では,老朽化した機械の保護方策が不十分であることに起因する労働災害が多く発生していることを指摘している.本研究では,既存不適合老朽化機械として定義される保護方策が不十分な老朽化機械の残存台数を推定した. 続いて,推定残存台数の年次推移と,それによる死亡災害の年間発生率との相関を分析した.その結果,残存台数の推移は死亡災害発生率の推移とよく相関していることが明らかとなった.これらの不適合機械による労働災害を減らすには,老朽化した既存不適合機械の安全対策が不可欠であることが明らかとなった.

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