近年,装置産業だけでなく,廃棄物処理プラントの事故が急増している.事故を防ぐ基本は,プロセス安全管理であり,管理システムを構築するためのシステムアプローチについて解説した.安全管理に対する社会的要求は時代とともに変化するので,それに真摯に対応する仕組みが重要である.同時に,安全管理技術を総合技術として認識した上で,変更管理をも視野に入れて安全性評価(または,リスク評価)→対策→運用の一貫したエンジニアリングの体系を作り,かつ,コスト的にも実現することである.そのためには論理化した安全管理を技術情報基盤として構築する必要がある.
原子力発電所等において保管されているゴム等の高分子材料を溶融したスラグに投入して,ガス化するとともに残渣分(以下,灰分)はスラグ内に溶融する新しい処理手法(以下,スラグ流動床方式)を採用した実機規模のガス化炉を製作した.炉の運転より得られた結果はつぎのとおりである.(1 )ガス化炉に流入する空気流量が空気過剰率で0.5~0.7 と少ない条件下で,直径400 mm のスラグ面において50~70 kg/h といった大きなガス化速度が得られた.(2 )この条件下でガス化炉出口における未燃ガスおよび未燃固形分の特性を評価した結果,どちらも2 次燃焼に問題ないレベルであった.(3 )ガス化炉からの灰分の飛散を低減できることがわかった.以上より,本手法は大きな処理速度でかつオフガス系の規模,負荷を低減できるものと判断された.
煙火薬製造における静電気危険性を把握するために,主要な工程を対象に帯電量の測定等を行った.その結果,ふるい分け作業において原料粉体が強く帯電することが判明した.硫黄の帯電量は際だって大きく,過塩素酸カリウムおよびアルミニウムはほぼ同等の帯電量であった.作業者が帯電防止をしていない場合には,2 kg のアルミニウム粉体のふるい分け作業によって最大15 kV に帯電した.小分け作業においては,アルミニウムをポリエチレン製スコップで取り扱った際に大きく帯電した.帯電した煙火粉体を絶縁性容器に入れた場合には,接地導体を接近させると粉体表面との間で着火性のある静電スパークが観測された.通常の作業条件においては,3 ~10 kg 程度の雷薬をふるい分けて絶縁性容器に入れると,これに着火可能な放電が発生すると見込まれた.
安全工学会(当時安全工学協会)と日本人間工学会は,社会に有効な研究成果を提供することを目的として,安全とヒューマンファクターに関する共同研究を開始した.共同研究は,最初は円卓会議の形式をとり,双方から課題を持ち寄り,検討を行うこととした.さらに,その成果を生かすため学術会議と共催のシンポジウムを開催し,社会への問題提起を行うとともに両学会の共同研究の必要性を確認した.
化学プラントが有する危険性の一つとしてフィジカルリスク(化学物質の火災,爆発,有害物質の拡散による急性暴露)が挙げられる.リスクを評価するためには,想定される事象の発生頻度および被害(影響)の大きさを評価する必要があり,そのための評価ツールが数多く開発されている.本報では,化学プラントに対して影響評価ツールを活用することにより効果的な安全対策を検討する例を紹介するとともに,評価ツール利用時の注意点などを述べる.