石油精製では原油中の不純物である硫化物,塩化物を主体とする腐食聞題が多く,また油と水の共存下で複雑な環境を形成し,他ではみられない独特の腐食事例がある,これらはプ・セスと共にその対策技術も一応導入されたが,予期Lない腐食事例も多かった。さらに高度成長期には生産性,経済性重視の傾向もあり,その結果の事例も散見された.本稿ではこれらの代表的な腐食事例をその背景と共に紹介した.
化学プラント機器材料のうち,ある種の材料は特定の環境下で時間の経過と共に劣化することが認められており,この劣化は時とすると装置の破損にもつながる場合が生じる. 化学プラントの安全性を確保するためには,装置材料のこの種の環境経年劣化を把握し,その対策を立 てることが必要である. ここでは化学プラント機慕材料の使用環境下で発生する主な劣化とその原因を紹介すると共に,現状での検知方法と対策について解説する.
近年,危険物地下タンクあるいは地下埋設配管の腐食に起因する漏えい事故が増加する傾向にあり,過去5年7箇月の聞に東京消防庁管内だけでも132件を数えている,幸いにして,火災の発生等はないものの土壌汚染,井戸への流入等生活環境に与える影響を考慮すると,これら危険物施設の規制行政庁としては,早急に有効な対応を図る必要があり,防食措置の義務化から!1年経過したことなどとあわせて対象となる施設の点検を実施させ,改修の促進を図っているところである、このことを踏まえて,事故の実 態,対応等について触れてみたい.
微生物腐食とは金属・ガラス・プラスチヅク製品の表薗に微生物が繁殖し,微生物の作用で材料が変形・腐食の害を受ける現象で極めて新しい学術である.工学系のいままでは微生物とは全く縁がないと考えられてきた工業材料・精密機械・エレクト・ニクス・建築・土木などの分野に発生する微生物による損失をわが国で初めて組織的に解明している.日本には公的な研究機関もなく著者の研究所は唯一のもので ある.
本稿ではまず,腐食モニタリングという用語がこの10年のうちに急速に浸透してきた背景を述べた後,各種腐食モニタリング手法の特徴を概観した. 次に・今後現場で腐食モ昌タリソグを行う際主流を粛めるようになると考えられる多角的モニタリソグ法を,次の三つを例にあげて述べた.i)地下埋設配管の腐食診断ii)燃焼機需の露点腐食診断 iii)コソクリート埋設鋼の腐食診断
主として孔食及びすぎま腐食と呼ばれる局部腐食の試験法について述べたものであるが,応力腐食割れや粒界腐食の試験法についても触れた. 局部腐食の現象,電流一電位曲線との関係を述べた後,それぞれの腐食の試験法を紹介している. 孔食試験には“ステンレス鋼の孔食電位測定法”及び“ステンレス鋼の塩化第二鉄腐食試験”の二つ のJISイヒされた方法がある. すきま腐食試験はまだJISには定められていないが,“すきま腐食の再不動態化電位ERの測定”,“活性炭加速試験”などが有望である・ 応力腐食割れ試験及び粒界腐食試験は,JIS法のほかに,SSRT法やEPR法を紹介した.
この特集号に,腐食防食に関する諸外国の動向を掲載することは意義あることと考えられる, 著者の一人(朝倉)は腐食に関する共同研究と講義を行うためにモソトリオール大学から招へいされ,出張している.そこで,カナダの腐食防食技術の動向を共同研究者であるD、L Piron教授に尋ね,その あらましをまとめた. 平素,米国やヨーロッパ各国の技術動向には接する機会が多いが,カナダの事情には堵較的疎いように思われる.我が国の今後の腐食防食技術について,参考になることも多いので報告する次第である.