警察は産業事故についても事実を明らかにし,原因を究明して安全を確保する責務がある.対象となる事故は,死傷者を伴う事故や,社会的に関心の高い事故となる.現場検証は裁判所の令状に基づく公式な事故を記録するものである.関係者の供述についても証拠化され,他の調査機関と異なり,人に関する事故に至る背景,事情までも含めて調査を行うことになる.事故原因を明らかにして,責任を明確にすることが求められている.責任者の処罰ではない.
タンカーには,二重船殻化が義務づけられ,効果を上げている.また,環境FSA(リスク評価手法)といって船舶からの油流出リスクの環境影響評価基準を策定しようという動きもある.一方,深海掘削の安全対策は自己規制に委ねられており,経済発展・エネルギー供給と安全性のバランスをいかに図っていくかは,難しい問題である. メキシコ湾原油流出事故では,危機時指揮システムであるICS(危機時指揮システム)が効果的に機能し,膨大な資機材,人員が迅速に投入された.今回,効果的だった現場焼却については,日本でも導入を検討する必要がある. 一方,我が国の油流出事故に対する備えを考えると,物人金,全てが不足している.これに加えて,HNS(油以外の危険物質及び有害物質)とサハリンプロジェクトへの対応という新たな問題が出てきて いる.効率的な物人金の整備とともに,まずは危機管理体制の確立が急務である.
野生動物は環境化学物質に汚染された環境下で棲息をしており,常にこれらの化学物質に曝露されている.本節では,野生動物の化学物質感受性と生体防御機構について,外来化学物質を代謝する主要酵素シトクロムP450 を中心に概説する.また,汚染環境下で棲息する野生の動物が,環境に適応する為にどのような変化を示すのか,野生のドブネズミを例に最近の研究を報告する.
今から14 年前の冬,日本海でタンカーが沈没し,流出したC-重油が日本海側沿岸に大量に漂着した.それまで原油の回収に効果を発揮した手法や機材も,原油より遥かに粘度が高いC-重油には殆ど機能せず,回収は人力作業に頼った.漂着した油は,岩や礫・石の海岸,特に手前に岩礁を有する遮蔽海岸に長期残存する傾向があった.C-重油に含まれる多環芳香族炭化水素類を指標にして,油の異同識別や汚染状況の把握が行われた.C-重油で汚染した海水を清浄海水に混ぜてヒラメの卵を飼育したところ,孵化した稚魚に脊柱彎曲が現れた.酵母two-hybrid 法を適用して調べた結果,水酸化多環芳香族炭化水素の中に強い攪乱作用を有する化合物があり,さらに構造活性相関があることがわかった.また,最近,日本海の多環芳香族炭化水素類の汚染の現状調査を開始した.
一般的なシステムではその作業段階(フェーズ)に応じて要求される機能が変化するのでシステム機能構造も変化する.リスク評価等を行う場合には,要素故障の影響を単一のシステム機能構造ではなく,フェーズに応じて機能構造が変化するフェーズドミッションシステム(PMS)として分析する必要がある.従来のPMS 分析では,複数故障モードを持つPMS における各構成要素の重要度評価法はこれまで提案されていなかった.本研究では,現実のシステムをより正確に分析するため,各要素は複数個の故障モードを持つと仮定する.要素異常の生起条件を状態変数表現に変換して,状態変数表現の論理積より得られる各フェーズで初めてシステム異常が発生する条件から各要素の重要度を評価する方法を示す.航空機の事例分析より,提案方法の有効性について検証並びに考察を行う.
死傷者7 名を出した石油タンク火災の出火原因の究明を行った.災害発生時に使用されていた絶縁性被覆を有する清掃用具(ワイパー)の帯電に着目し,操作方法と帯電量の関係,放電による可燃性物質への着火の可能性を実験的に調べた.その結果,清掃作業において作業者が柄から手を離した瞬間にワイパーの電位が数kV に帯電すること,原油が柄に付着すると石油ワックス層が形成され,電気抵抗が増加して帯電量が飛躍的に増加することが明らかとなった.着火実験の結果,作業中に想定される帯電量で着火する可能性が高いことを確認した.
安全管理はトップの熱意と社員一人ひとりの気づきが大切であると言われています.東レ(株)岡崎工場ではこの考え方に基づき,安全風土醸成のために,工場長・管理職の率先垂範と社員一人ひとりの安全意識の向上活動の2 つの主活動を通じて安全のPDCA を廻し続け,安全風土をステップアップさせて世界一の安全工場となることを目指しています. 工場長・管理職の率先垂範活動では①「決めたことを100%徹底して守る活動」,②毎朝,工場門で行う「工場長の挨拶立哨」,③毎日赤ヘルメットを着用してベルを鳴らしながら行う「赤ヘル・ベルパトロール」,④「安全の気づき掲示板」活動,を行っています.また,社員一人ひとりの安全意識向上活動では①安全の基本の徹底活動の一環として位置づける「指差呼称の徹底活動」,②社員一人ひとりの本音から抽出した「作業標準書を守りにくい作業の本質安全化」,③安全のメッカと位置づける「安全道場」の活用を行っています.
平成22 年9 月20 日から21 日にかけて,イタリア・トリノのInternational Training Center of the ILO(以下ITC-ILO)に訪問した.そこでは,児童労働や雇用政策,労働安全衛生の監査システムなど,労働問題に関する授業が世界各国からの受講生に対して行われており,世界の労働基準の向上に関する働きかけの一端を見ることが出来た.