安全工学
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59 巻, 3 号
安全工学_2020_3
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
会告
安全への提言
総説
  • 牧野 良次, 久保田 士郎
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 3 号 p. 146-152
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

    石油精製・石油化学プラントは設備の高経年化や熟練作業員の減少等による重大事故の増加等のリスクにさらされており,その対策としてIoT 機器の利用ニーズが高まっている.経済産業省は平成30 年度石油・ガス供給等に係る保安対策調査等事業(プラント内における非防爆機器の安全な使用方法に関する調査)(受託者:国立研究開発法人産業技術総合研究所)において,現行法令等に基づき関連指針等に示されている保安水準を維持するという前提のもと,プラント内での電子機器等の安全な使用方法に関する「プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン」をとりまとめた.本稿はその概要を解説するとともに,上記事業が終了した2019 年4 月以降の関連動向を紹介する.

  • 湯夲 公庸
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 3 号 p. 153-160
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

    情報技術の進展に伴い,事故の影響や化学物質の環境拡散のシミュレーションが,PC レベルで身近にでき,ソフトウェアーもインターネットの環境から,誰でも簡便に(中には無料で)入手できる状況が訪れている. 一方リスクの概念及びリスクアセスメントを軸に,安全を追求する方向性が強まっており,その緻密化,厳密化,定量化が求められている. また,産業界と社会,工場と周辺住民などの立場の異なる関係人どうしに,リスクの正しい,事実に基づいた,理論に基づいた,「把握」や「共有」が,アセスメントやコミュニケーションの基盤として求められている. これらを深耕強化する,便利なツールとして,PC レベルのシミュレーション技術が注目されている.本研究ではMETI-LIS1)に注目し,キシレンの放出リスクの長期評価を通じて,リスクアセスメントやリスクコミュニケーションへの在り方を検討した. さらに他の事例を交え,METI-LIS に於ける建物の影響を検証し,大気安定度の影響など,ガスの拡散現象について,短期評価の場合を取り上げた.これらを通じていくつかの課題を提起した.

  • 小島 義博
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 3 号 p. 161-169
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

    作成・導入の必要性が叫ばれながら,地震等の災害リスク対策に重点を置いた事業継続計画の策定の取組みが特に進んでいない中小企業の課題を明らかにするとともに,多様な経営リスク及び定常・非定常時のものづくり安全管理の対応アプローチを俯瞰し,異常時の防災・事業継続管理取組みとの共通性の確認を試みた.それに基づき異常時の防災・事業継続管理の取組みを,日常業務のものづくり安全管理と一体的に取組込む必要性について調査・研究を行った.更にものづくり安全管理の残留リスクの多くを占めるヒューマンエラー防止対策であり,かつリスクの不確実性にも臨機応変に対応できるレジリエンスの考え方の組込みによるものづくり安全・防災管理等の有効化を図るための調査・研究等を行い,関連の計画・管理が不十分なものづくり中小企業経営の持続可能な取組み推進への寄与を目指した.

  • 上村 靖司
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 3 号 p. 170-174
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

    降雪,積雪,融雪,寒さといった気象現象に起因する社会や人間に悪影響を与える事象を総称して雪氷災害と呼ぶ.特にその人的被害に注目して分析を行い,平成以降,死者数が100 名規模となった冬が9 回もあったこと,除雪作業の人口当たり労働時間当たりリスクが労働災害の20 倍以上であることなどを示した.豪雪地帯の過疎化・高齢化に伴う除雪の担い手不足を補うため、平成18 年豪雪以降,地域でまとまって除雪に当たる共助除雪が国・自治体および民間団体で促進されつつあることを紹介した.また除雪中の事故を防ぐための設備(屋根アンカー),装備(雪下ろし用安全帯、倒れにくいハシゴ)などの開発が進められ,それらの普及啓発が進められていることを本稿で紹介する.

論文
  • 遠藤 雄大
    2020 年 59 巻 3 号 p. 175-183
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

    可燃性液体を取り扱う労働現場において火災・爆発事故の原因となり得る噴霧帯電現象(液体の静電気帯電)について,筆者らの先行研究では帯電量が液体の導電率に依存する可能性が示唆された.そこで,本研究では両者の関係についてより詳細に調査するため,絶縁性液体の一種であるミネラルスピリット(ターペン)に導電性添加剤を混合し導電率10-13 ~10-6 S/m の液体試料を複数作成し,1 流体ノズル(SUS303 製,PTFE 製)から噴霧させた時のノズルおよび噴霧液体の電荷量を測定した.その結果,10-9 ~10-7 S/m で各帯電量がピーク値を示し,SUS303 製ノズルからの噴霧時には,10-6 S/m の高導電率の液体においてもピーク値の1/2 程度の大きな帯電量を示すことが確認された.以上の結果から,液体の導電率を10-10 S/m 程度に調節することで,噴霧帯電量をピーク値から1 桁程度低減できる可能性が示された.

資料
  • 杉本 泰治, 福田 隆文, 佐藤 国仁, 森山 哲
    2020 年 59 巻 3 号 p. 184-188
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

    福島原子力事故の原因解明に向けて,政府・国会・IAEA の事故調査報告の事実にもとづきつつ,第1 に,科学技術に法と倫理を加えた三元観,第2 に,古来の倫理を再構成した,科学技術に携わる者の行動の倫理,第3 に,組織と個人の関係を可視化した組織モデル,第4 に,安全文化の分析にもとづくモデルから見いだされる,規制行政のあり方の合理的なルール,以上の検討により,事故の全体像と原因が見えてくる.この事故の原因は,規制行政のあり方の学問に空白があり,合理的なルールの不明が規制の迷走となって,当事者の注意を妨げ,その上,技術者の努力が安全確保のとりで(砦)となるところ,技術者と経営層の関係においてそれが機能せず,津波による電源喪失により原子炉の制御不能となり事故は起きた.そこから,将来に向けたメッセージが導かれる.

  • 荒井 保和
    2020 年 59 巻 3 号 p. 189-194
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

    前報までで具体的な形には示せないものの,安全文化の要目,そしてそれが育っている状態についての概要を,安全文化を整理しようとする立場から示してきた.今回は少し視点を変え,事故を防止する要素をテクニカルな面も配慮して整理した時,安全文化がそこにどのように関わるのか,どのような役割を果たし得るのかについて簡単な俯瞰を試み,育まれた安全文化が事故防止の各要素構築にも重要な役割を果たしていることを示してみた.

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