産業公害や過密問題等の顕在化が国民一般のストレスを増大させ,それが科学・技術に対する不信を深めているが,一方では地域主義の台頭によって,各種の地域開発事業が円滑に進捗していない現況にある.本稿では,その要因を探り問題の所在をレビューしてから,今後の關発事業のあり方と一般公衆の 同事業に対する理解と了承(パブリック・アクセプタンス)について,一般論的に記述する.
液状各種市販有機過酸化物の分解温度,分解熱をピンホールパンを用いてTG-DSCで測定した.また,発火点を測定し,分解温度との関係を求めた.その結果,ピンホールパンを用いてのTG曲線,DSC曲線から,ピンホール径が適当ならば,適切な分解温度,分解熱が求まることがわかった.また,DSCにおける分解ピーク温度と発火点とは,相開性があり,直線関係が認められる.しかし,市販品の分解開始温度および発火点は,純品に比し若干低くでる傾向が認められる.さらに,市販品の分解熱も純品に比しー般に高くでることから,過酸化物と希釈剤との誘発分解による反応熱が大きく寄与してくることが認められた.
圧力容器試験装置の破裂板の代わりに圧力測定装置を取付け,約20種の有機過酸化物についてこれらが熱分解する時の圧力変化を測定し,これより圧力容器試験の値を求めた.この時の圧力変化は1段で上昇するものの他,2段で上昇するものがあり,2段で上昇するものは一般に分解がおだやかであった.一部の試料では試験ごとに1段で上昇したり2段で上昇したりするものがあり,そのたびに圧力容器試験の値も著しく異なるため,破裂板を使用する通常の試験方法では試験結果に大きな差を生じるおそれがある.1段上昇をする試料について,圧力容器試験の値と圧力上昇速度を比較したところ,庄力容器試験の値は圧力上昇速度の平方根に比例したが,発生圧力との関係は認められなかった.
ガス器具等の酸素不足下でめ,燃焼にともなうCOの発生の機構について検討を加えた.燃焼用空気中の酸素量とCO発生とは必ずしも一義的には結びつかず,むしろ器具の構造と深い関係にあることが明らかになった.また,燃焼にともなう汚染ガスの室内分布は相当時間を経過したのちにも均一には分布せず,器具より上部部分に偏在しており,室内全体の空気を燃焼用空気として安全のための換気率を考えるのははなはだ危険であることを指摘した.酸欠燃焼防止については,その時間的推移を考慮して再検討が必要である.
ガス爆発時の圧力変動と爆発に関与する混合気中の可燃性気体,あるいは酸化剤の濃度分布との関係を明らかにする目的で,濃度分布が比較的単純なメタンと空気の混合気を密閉容器中に形成させ,これに点火した場合の圧力変動を調べた.その結果,燃焼容器の容積に対する初期のメタン層の体積の割含ξ*が比較的大きく,拡散を開始してから点火するまでの時間tdiが比較的短い場合には,圧カー時間線図に二つの圧力の極大が見られることがわかった,最初の極大は,点火時までに燃焼容器内に形成された可燃性混合気中を予混合火炎が伝ぱする結果生ずるものと考え,その値が可燃層の厚さδfに依存することを確かめた.また,第二の極大は,予混合火炎が伝ぱする過程で消費されずに残ったメタンと酸素の間で拡散燃焼を起こす結果生ずるものと推定した.
さる昭和48年に続発した石油コンビナートの事故を契機に,化学工学協会内に学界,産業界のシステム工学研究者を中心に研究会として発足し,その後学術振興会で継続研究された労働省のセーフティ・アセスメント指針の研究を報告する.本報告は研究するにあたり,なんらかの具体的化学プロセスを用い,「指針」にそって安全評価の作業を行って問題点を抽出する立場から,硫酸製造プロセスを事例にした研究報告である.
化学工場において生ずる災害の中で,可燃性ガス蒸気の引火爆発に基づくケースの占める割合は,もとより大きなものであるが,一方,異常反応に基づく災害事例も決して少なくない.しかしながら,後者に対する取り組み方にはまだまだ十分でないところがあるように考えられる.本稿では,異常反応に基づく災害の実態を知るため,過去12年ほどの間にわが国で生じたこの種の代表的な事例につき要因別に分類し検討した結果を紹介しよう.