安全工学
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41 巻, 6 号
安全工学_2002_6
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
リスク評価とリスク対策特集
  • 木下 冨雄
    2002 年 41 巻 6 号 p. 356-363
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    本論文では,まず客観的リスクの定義について複数の立場を紹介したのち,客観的リスクと主観的リスク(リスク認知〉の違いについて言及した.次いでリスク認知を構成する主要な3成分について述べ,さらにリスク認知にかかわる要因として,入びとの性格,感情,価値観,態度,知識水準,職業的立場,デモグラフィック特性などといった個人側にある要因,大規模災害の経験,社会・文化・歴史的特性など環境側にある要因,それに対象の性質や事故特性といったリスク対象側の要因の働きを説明した.またリスクの受容水準が,タテマエ的にはゼロリスクを主張されながら,実際には10-5から10-6 程度であることを明らかにした.最後に,文化的要因の一つとして,リスク認知が国によってどのように異なるかを,国際比較データをもとにして解説した.

  • 高橋 英明
    2002 年 41 巻 6 号 p. 364-370
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    リスクという言葉が社会の中で身近なところでも使われるようになり,安全性や安全投資を判断する際の指標として利用されるようになってきている.リスクは基本的には定量的な指標であり,これによって安全性の直接的な比較が可能となる.リスクの許容という観点から,数多くの先進国においては産業施設などにおける安全レベルが定量的な目標値として策定されたり,基本思想として策定されたりしている.このような安全目標はリスクマネジメントの一環として策定されており,多くの場合,安全目標に則ってリスクマネジメントが行われている. 本稿においては,社会環境に存在するさまざまなリスク源を対象としてリスクレベルの現状を把握し,リスクベースの定量的安全目標の考え方について解説した.

  • 高木 伸夫
    2002 年 41 巻 6 号 p. 371-378
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    欧米においてはリスクをべ一スとした意思決定の風土が長い年月をかけて醸成されており,行政の政策決定にも取り入れられている.一方,わが国においては絶対安全の考え方が長年にわたり続いていたが,近年の規制緩和と自主保安という大きな変動の中で,絶対安全要求という情緒的で観念的な議論から抜け出し,リスクをべ一スとした論理的な議論の必要性が認識されつつある.リスクを論じる場合,リスク評価の手法,社会的に受容されるリスクレベル,リスク認知の現状などにつきさらなる調査研究が必要となろうが本稿では化学プラントにおいて使用されているリスクアセスメントの基本的な手順,欧米における許容リスクレベル,リスク認知などについて概説する.

  • 政友 弘明, 石丸 裕
    2002 年 41 巻 6 号 p. 379-386
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    運転中のプラント設備の安全性や劣化を評価する方法の一つとしてRBI(Risk Based Inspection l リスク基準検査)が注目を浴びている. 本資料では,API(American Petroleum Institute:アメリカ石油協会)が発行したRBIの規格に関して,その内容と適用手法をわかりやすく説明した.また,当社でRBI定量評価を実際のプラントに適用して評価した例を示し,この手法が日本国内の実プラントにも適用可能であることを示した.

  • 花井 荘輔
    2002 年 41 巻 6 号 p. 387-392
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    日化協で開発中の化学物質リスク評価システムの概要を述べる.PRTR対象物質簡易評価システムは,PRTR法対応の排出シナリオに沿って事業所周辺の健康・環境影響を簡便に評価するシステムである.事業所周辺の気象データを応用して,周辺の2次元年問平均濃度分布を推定するなどの機能をも 別に,リスクの考え方の三っのレベルおよび今後の人材育成のありかたについて個人的見解を述べ た.

  • 池田 博康
    2002 年 41 巻 6 号 p. 393-399
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    機械設備の安全設計を行うためには,設計者が可能な限りの対策を講じて,なお残るリスクに対して使用者に委ねるという関係が国際的な認識である.そこには絶対的な安全ではなく,止むを得ない事故を明らかにするというプロセスが存在し,国際安全規格ではそのような考え方の上で,体系的な手順を示している,さらに,このような体系を拡張して,リスクの受容を行って従来にない機器に対するリスク 低減の方法を提案する.

  • 福田 久治
    2002 年 41 巻 6 号 p. 400-405
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    鉄道は過去の事故を教訓にあるいは技術革新により安全性を高め,今日,公共交通機関として大きな信頼を得ている.一方,各国輸送機関における国際化の進展,国土交通省設立,規制緩和の動きなど,わが国の鉄道を取巻く環境は大きく変わりつつある,このような状況に効果的・効率的に対応するためには,従来の事故再発防止的な考え方から一歩進めて,システムズアプローチによる合理的で体系的な安全管理手法が求められる。 そこでわれわれは鉄道における安全管理の高度化に資するため,規制緩和による自主保安の拡大や情報公開の推進を考慮しつつ,発生した個々の事故に対して原因分析・対策を行う事後対応型の安全管理から発生しうる種々の事故を想定し,事故原因の除去や被害の最小化を図るリスク管理のための手法確立を目指している.本稿では,鉄道のリスクの特徴,リスク管理の考え方,チェックリストおよび文書化方式による線区・駅のリスク管理などの試案について紹介する.

  • 遠藤 信介
    2002 年 41 巻 6 号 p. 406-414
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    航空機は,運航中に遭遇するさまざまな事態の下でも安全に飛行できるよう,システムごとに,故障解析,信頼性解析を行い,一定の安全目標が達成されていることを確認することが要求されているが,設計時に想定された安全性,信頼性を長期問維持するには,適切な検査,修復,交換などの整備を行う必要がある.本稿は,航空輸送の安全性について過去の実績とほかの社会’活動との比較を紹介し,設計における安全の目標の設定方法,設計・製造時に想定された安全性,信頼性を維持するための整備方式 などについて概説する.

  • 森澤 眞輔
    2002 年 41 巻 6 号 p. 415-422
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    一般廃棄物処理システムがその機能を喪失するリスクを,廃棄物の物質収支型動態評価モデルを構築することにより評価した.処理設備などの物理的被害からの復旧と臨時処理システムの併設を伴う災害時の廃棄物処理にモデルを適用し,その妥当性を確認した後,阪神淡路大震災における廃棄物処理実績を参照して,仮想「京都大震災」後の災害廃棄物処理の有り様を,災害後に採用されるであろう廃棄物対策の効果を比較する視点から,推定・評価した.また,廃棄物のフローとストック,焼却処理による減少・濃縮を允素レベルで解析する元素動態評価モデルを構築し,その適用例を示した. 構築したモデルは廃棄物処理システム内での廃棄物の種類および元素別動態を評価するのにほぼ十分な構造を有している.元素レベルでの動態解析は廃棄物処理に伴う物質型リスクの管理に貢献すると期 待される.

  • 平田 勇夫
    2002 年 41 巻 6 号 p. 423-429
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    欧米では大きな災害の教訓を環境保安規制に取り入れ,あわせて情報公開についても規定している.規制当局はリスクコミュニケーションのシステム作りや運用に大きな役割りを果している.事業者は規制への対応と自主活動を融合させ,積極的な取組みをしている. 法規制における情報公開の仕組みとリスクコミュニケーションの実例を紹介する.

  • 古屋 俊輔
    2002 年 41 巻 6 号 p. 430-434
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    原子力発電施設の点検・維持管理のトラブルや安全対策にかかわる意思決定の不透明さに関する問題などを契機として,設備産業における保安投資におけるリスク評価に基づく合理的な意思決定とアカウンタビリティーの必要性が再認識されている. 本稿ではライフライン設備/公益事業について,従来の設備リスク評価と損害算定のフレームを経営レベルの意思決定に適用した場合の問題点を論じ,拡張した損害算定のフレームを提案した.また,DCFによる中長期の企業価値評価の手法を紹介し,これに基づく設備維持管理,保安投資にかかわる 意思決定の手続きを述べた.

  • 三浦 光紘
    2002 年 41 巻 6 号 p. 435-441
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    損害保険の保険料は,将来的な事故の発生確率と損傷度を過去の実績から推測して設定されており,一般商品の価格と異なりあらかじめ販売時に価格は確定しない.ここに保険料設定の難しさがあり,保険料設定の根拠となるリスク評価による保険料率の算定に際し,適正な価格設定が求められる.本稿では,機械リスクについて実態の把握,評価とその結果の保険料率算定の仕組と機械保険で補償される損害・修理費用の範囲もあわせて紹介し,一般になじみの薄い機械リスク専用の保険である機械保険の理 解を深める一助としたい.

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