使用済み乾電池に含まれる水銀が新たな環境汚染を生む恐れがあると一時期話題になったが,口本の火山から放出される水銀量に比べれぼ,乾電池に用いられる年間100tあまりの水銀の寄与率は問題にならないと明言された.このような誤った論拠が導かれる裏には,水銀の地球化学的発生源の基礎研究記録が乏しいことがある.このため本稿では,大気中水銀の地球化学的バックグラウンド濃度を把握するとともに,大気中水銀のほぼ100%が人為的発生源に起因するものであることを解説した.
n一ブタソー空気混合気の最小発火エネルギーを,温度範囲:室温~343K,圧力:大気圧,0.168MPaにおいて測定した。室温・大気圧下で得られた最小発火ニネルギーは,文献値とよい一致を示した,同一組成の混合気の最小発火エネルギーは,初期温度の上昇や初期圧力の増加に対し減少した。初期圧力の増加による最小発火エネルギーの減少の程度は,最小発火エネルギー値の大ぎい場合ほど著しかった.
自然発火は熱の発生速度と逸散速度の競合の結果,熱の発生速度が大の場合に生ずる現象と考えられる.Lたがって,熱の発生速度も逸散速度も同程度に重要であるが,.熱の逸散速度に関する研究は少ない、特に,粉体堆積体の有効熱伝導率を温度の関数として取り扱った報告は見当たらない. 本報文では,まず粉体堆積体の有効熱伝導率を温度の関数として,かつ高精度で測定する方法について述べ,粉炭とイタコン酸粉末についての測定結果を報告する.さらに,粉体堆積体の有効熱伝導率が温度とともに変化することが自然発火の発生に及ぼす影響について,モデル計算による検討を行った.その結果,自然発火に及ぼす熱伝導率の影響は大で,したがって,高精度測定と温度依存性の重要性が明らかに なった.
本稿で 酸化剤と可燃物との混合物を長時間放置すると,自然発火または自然発熱する危険性がある.は,この危険性を予測する手段として, 小形混触発熱試験を行った結果について検討を行った.その結果, は,10℃/min昇温速度のDTAでは155℃以下で発熱し,DTA発熱開始温度が混触発熱の予測手段と なり得ることが示された.100℃混触発熱試験で発熱する酸化剤一エチレングリコール混合物については,DTA発熱開始温度と100℃発熱試験における最高温度到達時間の間には相関が認められた.
本稿は,科学技術庁科学技術振興調整費によるプ・ジェクト「首都圏における直下型地震の予知及び総合防災システムに関する研究」のなかのr毒劇物の危険度の把握手法の開発」に対し,昭和56年度より 昭和60年度までの5年間にわたり,厚生省より安全工学協会へ委託された調査研究の結果をまとめた報 告書の概要を紹介したものである.
都市ガスと液化石油(LP)ガスを用いた自殺行為は,年間約千件発生しており,約250人が死亡している(消防白書,昭和60年度),特に,集合住宅でのLPガス自殺行為は,隣接住居を損壊する危険を持っている。この防止対策を考える目的で,事故調査報告書などを基に発生現況,自殺企図者の挙動を調べた.特異な挙動は予告電話などがあるが非常に少ない.おもな放出箇所が限定されていることより,既存の安全機器の併用によって未然にガス自殺は防止でぎると考えられる.
著者はかねてから,可燃性液体を取り扱う上での下部引火点と上部引火点の重要性を認識した結果,多くの物質についてこの数値の実測による検討を重ねてきた.本稿ではその成果を,蒸気の爆発危険性状が一べつして理解できるように,蒸気圧線に基づく引火温度と爆発限界の関係線図という形態で,各物質について順次紹介することとした.