リスクコミュニケーションの重要性は指摘されるものの,実践は数少ない.実践を躊躇させる理由としては,行政・企業・専門家が市民のリスクの理解や市民意見の有用性に対して疑問を持っていることがあげられる.本稿では,調査や実例に基づいて,これらの疑問に答えるとともに,リスクコミュニケーションを実践する上での行政・企業・専門家に必要な姿勢を示す.
近年,わが国においても,危機管理に対する関心は高まってきているが,個人の資質やその場限りの成功・失敗に矮小化された議論も少なくない.危機管理は組織の総合力が問われるマネジメント活動であり,危機管理システムをもって臨むべき対象である.本稿では,行政や企業の現状を踏まえ,わが国における危機管理システムの全体像および個々の構成要素について紹介する. また,危機管理システムの実効性を検証する手法として,萌芽的段階ではあるが,クライシスアセスメント手法を二つ紹介する.
石油タンク底板の内面側からの有効な非破壊検査技術の一つとして,far─side 漏洩磁束探傷法(far─side MFLT)がある.本手法を実タンク底板の検査に適用する場合,十分な磁化が得られず,きず信号のS/N 比が低くなることが予想される.したがって,本研究では有限要素法を利用して,鋼板中の内部磁場およびきず漏洩磁界を解析し,得られた結果をもとに測定システムを検討した.また,離散ウェーブレット解析法を用い測定信号のきず位置情報に影響を与えない信号処理手法の適用を試みた.これによりきずに起因する信号のみを精度よく抽出し,きず検出精度を向上させることができることが分かった.さらに石油タンク底板を想定した面積の広い実腐食の試験片に対して実験を行い,きずを検出,評価できることを確認した.
平成16 年4 月から国立大学は法人化された.それに伴い,労働安全衛生法が適用になるなど,安全衛生管理において変化が生じている.国立大学では,設備,管理組織,管理業務などにおいて種々の対応が必要となった. 実際の例として,東京大学における安全衛生管理の法人化対応の状況について紹介した.東京大学では,安全衛生管理の実務の統括を行う安全衛生管理室を各部局に設置した.さらに全学を統括する全学安全衛生管理室を設置し,安全衛生教育,化学物質管理などの安全衛生管理を進めている. また,大学という教育研究機関の特徴と,そこに適した安全衛生管理の方法について述べた.
住宅防火対策については,消防行政における最重要課題の一つとして,これまでにもさまざまな施策に取り組んできた.しかし,東京消防庁管内の住宅火災による死者数は,近年,年間100 人前後を推移し,特に,平成15 年には大幅に増加し,前年比31 人増の124 人もの尊い命が失われる結果となった.このため,第15 期火災予防審議会(都知事の諮問機関.平成15 年3 月答申)の検討結果等を踏まえ,平成16 年3 月,火災予防条令の一部が改正され,新築住宅等への住宅用火災警報器の設置義務化や消防設備業者の適切な業務遂行のための仕組み等が規定された.当庁としては,本年を「住宅防火元年」と位置付け,これまで以上に積極的に住宅防火対策を推進していく.
最近,米国を中心に,反応性化学物質に関係する事故を防止するために,化学反応危険性を特定し,安全管理する必要性が指摘されている.本稿では,4 回に分けて,反応性化学物質の安全管理と危険性評価手法について概要を紹介する. 本号では,具体的な危険性評価手法について,その手順を簡単なフローチャートにまとめた例を紹介 する.