日本では「安全で安心な社会」の実現が重大テーマとなっている.日本人は世界一の長寿国であるが,交通事故や家庭内の事故,労働災害,自然災害などの不慮の事故等によって年間約4 万人が亡くなっており,取り組むべき課題は多い.「安全で安心な社会」の実現のためには,社会全体の総意として安全目標を掲げつつ,安全対策に合理的にコストを投入していく必要がある.具体的には,市民のリスク・リテラシーの涵養,安全に優れた商品開発と安全性能評価,社会全体での安全対策コスト議論,企業での安全会計の導入と合理的な投資といった取組みを進めていくべきと考える.
石油タンクのスロッシング予測に決定的に重要な周期数秒から十数秒の帯域のやや長周期地震動の強さを,経験的手法に基づいて推定する手法を示すとともに,地震地体構造区分ごとに与えられている最大期待地震規模の地震に対する全国32 地点でのやや長周期地震動の予測結果に基づき,石油タンクのスロッシングに係るやや長周期地震動の地域別補正係数を提案した.
配管等の亀裂の非破壊検査法の一つである浸透探傷試験用スプレー缶を噴霧中に発生した爆発・火災事故の原因調査の一環として,国内で一般的に使用されている浸透探傷試験用スプレー缶ならびに関連のスプレー缶の噴霧帯電量を測定した.その結果,噴射剤の極性,固形分の有無,ノズルの材質および使用時の温度によって帯電量が大きく異なることが判明し,使用条件によっては短時間で爆発を引き起こすに十分な静電エネルギーが人体に蓄積され得ることが明らかとなった.さらに,ノズル孔径をわずかに増加させることにより帯電減少効果が期待できることを示した.
日本化学工業協会が開発を進める化学物質のリスク評価システムの主要項目であるフィジカルリスク評価について概説した.このシステムは化学会社等のリスクアセスメントに対する支援ツールとして位置づけられ,①環境中に放出された化学物質の環境生態とヒト健康へのリスク評価,②事業所内で取り扱う化学物質が,そこで働く人々に与えるヒト健康リスク評価,③フィジカルリスク(火災,爆発,有害物の拡散による急性暴露)評価を行う.可燃性の液体や気体,自己反応性物質などの定量的なリスク評価が可能であり,事故データ,ETA を活用して頻度と影響の大きさから個人の死亡確率を求め,リスクの判定を行うこととした.
最近,米国を中心に,反応性化学物質に関係する事故を防止するために,化学反応危険性を特定し,安全管理する必要性が指摘されている.本稿では,4 回に分けて,反応性化学物質の安全管理と危険性評価手法について概要を紹介する. 本号では,化学反応危険性に関するプロセスハザード解析手法の概要と手順を紹介する.
平成15 年8 月14 日に「三重ごみ固形燃料発電所」のRDF 貯蔵槽において火災が発生し,作業員4 名が負傷した.さらに,8 月19 日には,消防隊の消火活動中に爆発が起こり,消防職員2 名が死亡し, 作業員1 名が負傷した.また,総務省消防庁がRDF 関連施設における発熱,発火事象について全国調査を行ったところ,RDF 関連施設における火災頻度は,危険物施設における火災頻度より高いことが明らかになった.本報告では,研究論文,調査報告をもとに,RDF に関する情報を提供するものである.