工業施設の安全性を科学的根拠に立って確証するためには検査制度がいかにあるべきかとの論点に立ち,現状を分析し今後の検査機関の有るべき姿を求めた.すなわち,検査機関は関係方面から独立した中立の営利を目的としない第三者的な機関であり,高水準の技術を有するものでなければならないと結論した. また,現在の我国の現状に対する提言も行ない,第三者的検査機関の一日も早く誕生することを要望した.
石油タンク等構造物の安全管理を難しくしている現象の一つに腐食量のばらつきがある.本報ほ腐食環境を一定に保ち,材料自身に起因する腐食のばらつきを多数の試片を用いて実験的に調べ,腐食の機構を考察したものである.実験は密閉された3%NaCl溶液中で行なった.その結果,腐食速度は初期段階と第2段階に明瞭に区別されることがわかった.また,各腐食段階での腐食量のばらつきに関する知見が得られた.さらに各々の段階の腐食機構について考察を行なった.
家庭用ガス器具等の酸素不足下での燃焼に伴うCOの異常発生によって汚染の進行中の窒内に人がいたとき,CO中毒の進行の時間的経過について検討を加えた.家兎を用いた実験によって,室内酸素濃度ならびにCO濃度と生体の血液中のHbCO濃度との間には可逆平衡関係があり,HbCOの飽和濃度に至る時聞的経過は,従来から知られている吸入実験等によって得られた結果よりかなり急速に飽和濃度に至ることが明らかになった.このことは,CO中毒の危険性を論ずるときの時間に対する考えを再考する必要のあることを示している.また,室内酸素濃度の低下は同一濃痩のCOに対してもHbCOの飽和度を著しく高め一層危険性の増大することを示している.低酸素濃度下での燃焼(酸欠燃焼)の危険性はそのCO中毒のダイナミックな挙動を含めて考えるとき極めて大きいことを示している.
金属水銀の存在する水中にAg+を添加することにより金属水銀は溶解され液中水銀濃度を高め,そして液中への通気により水銀を高濃度で気相へ揮散する結果が得られた.これはAg+と金属水銀が反応してHg22+とAg(アマルガム)を生成する,そしてHg22+は不均化してHg2+とHgを生成し,Hgは気相へ揮散される,さらに,Hg2+はAgによって還元されてHg22+を生成する.同時にAgはAg+に酸化され再び金属水銀と反応する.以上のような反応サイクルをくりかえすことによって水銀を高濃度で気相へ揮散する.したがって,Ag+の存在は金属水銀を可溶化し水銀の気相への揮散量を増大することから十分考慮する必要がある.
磁気テープ用マグネタイトの自然発火事例に遭遇したので,発熱性状を調べたところ,この料品には固体酸化発熱性試料に特有なweathering効果,つまり,表面において酸化被膜層が形成されるにつれ,全体として酸化性が減少して行く現象,が認められた.X線分析により酸化生成物はγ-Fe2O3であって,主として顆粒の表面付近に生成することが確かめられた. また,その際の見掛けの活性化エネルギーを27.9kcal/mole,さらに,マグネタイトのα-Fe2O3への酸化にともなう発熱量を28.1kcal/moleと求めた.
ハンディ・レンジ用燃料として市販されている液化ブタンガスボンベ(耐圧缶)を,急激に周囲から加熱する火災実験で,内圧上昇による耐圧缶の破裂後ファイヤボールの発生をともなうBleve現象が見られた. ファイヤボールの一事例として,実験の概要と被熱開始かち缶破裂にいたる所要時間,観測されたファイヤボールの大きさ,爆風の発生の有無等について検討した結果を報告する.
直径5,10および30mの地中堀込槽を用い,アラビアンライト原油火災実験を行ない,火災性状への燃焼槽の大きさによる影響を調べた.その結果,火炎高さ,燃焼速度は従来知られているものと一致したが,火炎からのふく射熱の全燃焼熱に占める割合は,5m槽で14%だったのが,30m槽ではその21 %の3%にまで減少した. このためふく射熱も減少し,各槽からのふく射熱を,小規模実験から導かれた計算式による値と比較すると,5mではほぼ一致したが,30mでは大きく相違し,実測値は計算値の約25%にすぎなかった.
フォールト・ツリー解析は大規模システムの定量的危険度評価に応用されているが,その解析手順の中で,ツリー作成はもっとも困難な間題である.本稿ではツリー作成に関して,これまでの手法の紹介,その現状と問題点などを明らかにした.化学プラントに対するツリー作成法を提案し,その応用例も示した.
炭鉱の災害は,そのつど新聞紙上を賑わしている.過去5~6年の間に日本の炭鉱で重大災害を4件も起こしている.その中でも,水力採炭を行なっている砂川炭鉱のガス爆発(死者15名)並びに深部採掘 (-970m)を行なっている幌内炭鉱のガス爆発から坑内火災へと推移し,全鉱のほとんどを水没させた災害の両者を,調査報告書に基づいて災害の推移とその原因の推定について述べる.