安全工学
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53 巻, 6 号
安全工学_2014_6
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
会告
巻頭言
次世代エネルギーの現状と安全性 特集
  • 石原 顕光, 太田 健一郎
    2014 年 53 巻 6 号 p. 359-365
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    世界的に再生可能エネルギーの本格利用に関心が高まっているが,そのためには,二次エネルギーとしての物質が必要となる.再生可能エネルギーから製造される水素は,特に「グリーン水素」と名づけられ二次エネルギーとしての活用が期待される.人類のエネルギーシステムが,地球環境に負荷を生じさせないためには,エネルギー供給が物質循環に依拠する必要がある.グリーン水素は水を生成物とするため,地球環境の水循環に依拠した,理想のエネルギーシステムになる可能性がある.しかしながら,局所的な環境に与える影響は評価が必要である.そこで,エネルギー環境負荷係数を導入し,炭素と水素をエネルギーキャリアとした場合に,それらが環境に与える影響の評価を試みた.
  • 竹村 哲治
    2014 年 53 巻 6 号 p. 366-372
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    水素燃料電池自動車用の燃料水素ガスを供給する水素インフラを構成する水素源,輸送手段,貯蔵設備,供給設備がどの様なものであるかを示した上で,水素ガスの持つ特性に対して,安全性の確保の観点から,設備建設,設備管理,維持管理,保安管理をどの様に行う事によって,市街地における水素ステーションのガソリンスタンド並みの安全性を確保しているのかを説明する.
  • 小森 雅浩
    2014 年 53 巻 6 号 p. 373-379
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    水素スタンドが社会に受容されていくためには,そのリスクを十分に低減することが必要条件である.本稿では,高圧の可燃性ガスである水素を相当量取り扱う設備である水素スタンドで発生が想定される漏洩事象を整理し,漏洩事象毎に影響の大きさを示す.その上で,水素スタンドの安全管理上のポイントについて概説を試みる.
  • 田村 陽介
    2014 年 53 巻 6 号 p. 380-385
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    本稿では,日本自動車研究所が実施した燃料電池自動車の火災安全に関わる研究活動を取り上げ,既存の安全対策を取り混ぜながら,試験の概要と今後の課題を概説する.燃料電池自動車に搭載される水素容器には火災による容器の破裂を防ぐため,火災を検知して容器内のガスを抜く安全弁が装着される. 70 MPa 水素容器が破裂すると,そのエネルギーはTNT 当量約2.4 kg になるため,容器の破裂を防ぐ安全弁は重要な部品である.しかし,安全弁が作動すると,車両から水素のジェット火炎が形成される.ただし,その火炎は約1分間で収束すること.また,燃料電池自動車の火災時の周囲の熱的影響は,CNG 車やガソリン車のそれに比べても同等レベルであること.また,消火活動は,燃料電池自動車であっても,ガソリン車と同様な対応で良いことなどについて紹介する.
  • 岡田 佳巳, 細野 恭生
    2014 年 53 巻 6 号 p. 386-392
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    Safety of massive hydrogen storage and transportation technology by Organic Chemical Hydride( OCH) method is reviewed. In the method, hydrogen is chemically fixed to toluene and converted to methylcyclohexane( MCH) which are component of gasoline. The potential risk of massive hydrogen storage and transportation can be reduced to conventional gasoline or crude oil by this method, since hydrogen is fixed to gasoline component chemically and storage and transportation as same as gasoline under ambient pressure and temperature in the liquid state. Chiyoda Corporation has established the system technology for massive hydrogen storage and transportation by OCH method through the novel dehydrogenation catalyst and process. In this paper, OCH method and status of the system is also introduced.
  • 難波 哲哉
    2014 年 53 巻 6 号 p. 393-399
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    産業技術総合研究所は福島県から再生可能エネルギー技術を世界に向けて発信する研究機関として, 2014 年4 月に福島再生可能エネルギー研究所を開所しました.「世界に開かれた再生可能エネルギー研究開発の推進」,「関連産業の産業集積により復興へ貢献」を目的として太陽光発電の高効率化・長寿命化のための技術,地中の熱の利用による発電・節電技術,風力発電の効率化,水素キャリアによるエネルギー貯蔵技術を含んだエネルギーネットワーク技術,これらの技術開発により再生可能エネルギーの大量導入に貢献します.本稿では,産総研福島再生可能エネルギー研究所におけるこれらの再生可能エネルギー研究について概略を紹介します.
  • 山家 公雄
    2014 年 53 巻 6 号 p. 400-409
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    再生可能エネルギーが注目されている.再エネは国産資源でCO2 を排出せず,分散型で防災対策にもなり,これを普及していくことは世論になった.一方で,コスト低減,出力不安定への対策が課題となっている.本論文では,世界で急速に普及しコスト低下が進む現状,3.11 後漸く積極策に転じたものの不透明感が漂う日本の状況,系統接続留保問題の解釈と解決策の解説を行う.また,課題を乗り越えていくために必要な技術,システムの検証を行う.
  • 岩田 雄策
    2014 年 53 巻 6 号 p. 410-417
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    近年,種々の再生資源燃料等が開発されているが,それらは貯蔵中に発熱し蓄熱した後に自然発火を引き起こし,火災に至る可能性があるものがある.そのため,それらの火災危険性を適正に把握しておくことが火災予防上重要である.しかし,再生資源燃料の蓄熱発火による火災の初期段階の発熱は非常に微少であることから蓄熱発火の危険性を従来の手法のみでは適正に評価することは困難である.そのため,少量の試料で安全に火災危険性を評価できる高感度の熱分析機器は,化学物質の火災危険性評価手法にとって有効な手段である.本報告では再生資源燃料等の火災危険性について各種熱量計等を用いて測定データを基に議論した.また,測定結果を基に再生資源燃料に対する総合的な火災危険性の評価手法の試みについて紹介する.
  • 鈴木 健
    2014 年 53 巻 6 号 p. 418-424
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    RDF の火災事例,製造・貯蔵に関する安全対策,火災性状に関する情報を示した.RDF 関連の火災が起きたときの対処に役立てば幸いである.
  • 西岡 賢祐
    2014 年 53 巻 6 号 p. 425-430
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    太陽光は新エネルギーとして期待されている.レンズやミラーで太陽光を集光することにより高密度なエネルギーを得ることができ,その活用範囲がさらにひろがる.集光型太陽光発電や,集光によって得られる高温を活用する太陽炉についての研究開発が近年さかんに行われており,実用化されている.集光型太陽光発電は,安価な光学系で太陽光を集光し小さな太陽電池に照射することで,高価な太陽電池の使用量を劇的に減少させコストを下げることができる次世代の太陽光発電である.また,太陽炉により 1 800℃以上の高温を得ることが可能であり,高温が必要な化学反応に使用されている.集光太陽光の活用技術について説明するとともに,その安全対策についても述べる.
  • 金子 宏
    2014 年 53 巻 6 号 p. 431-437
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    水素は主に化石燃料の改質により製造されており,CO2 排出削減の観点から,将来的には再生可能エネルギーから生産することが望まれる.再生可能エネルギーのひとつである集光太陽熱を用いた二段階水分解反応は,反応器内において高密度の太陽エネルギーを化学エネルギー(水素)に変換することが可能であり,CO2 フリーのソーラー水素を大量に製造することが期待されている.太陽エネルギーを有効利用し,ソーラー水素の製造単価を低減するためのエネルギー変換効率向上のカギは,二段階水分解反応用金属酸化物と太陽反応器の性能である.国内の大学が所有する太陽集光システムとしては唯一となる,宮崎大学のビームダウン式太陽集光装置を使用した金属酸化物と太陽反応器の開発の現状と,研究開発における安全対策について述べる.
  • 田村 裕之
    2014 年 53 巻 6 号 p. 438-444
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    太陽光発電システムの普及が急速に拡大している.しかし,火災事例や消防活動事例を調べると,太陽光発電システムからの出火や消火活動中の消防隊員の感電などが起こっており,火災や感電の面で安全対策が不十分なことが分った.そこで,太陽光発電システムが設置されている建物での出火危険性や消防活動時の危険性について,太陽光発電システムの構造や火災事例から課題を見出し,火災実験や発電実験を行った.その結果,火炎からの光でも発電すること,モジュールの一部が脱落しても発電を継続すること,モジュール表面の強化ガラスが熱によりフロートガラスに戻ること,人体に危険を及ぼす感電が起こりうること,などが分かった.これらを基に安全な消防活動を行うための対策をまとめた.
  • 吉富 政宣
    2014 年 53 巻 6 号 p. 445-454
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    太陽光発電システム(PVS)には,陽が当たる限り発電を止めることが出来ない性質があり,火災時には消防隊員が感電する恐れから消火活動が困難になることがある.また,PVS は屋外に設置されているため,風・雪・地震と言った自然の作用による構造事故も引き起こしてきた.このようにPVS の危害は火災と構造事故とに二大別1)できる.PVS を健全なエネルギー源に成長させるためには,少なくとも個人財産保護の観点からこれらリスクを許容可能なレベルにまで低減する必要がある.そこでこれまで期待総費用最小化原理が提唱されてきた.しかし,火災・構造事故には期待利益の無い第三者を一方的に加害する恐れがある.そこで本稿では,公衆安全優先のための無加害原則を提唱する.この無加害原則は,期待総費用最小化原理に優先させる必要があると考える.
  • 匂坂 正幸
    2014 年 53 巻 6 号 p. 455-459
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    バイオマス利活用政策が進行している.バイオマスを効果的に利用することによる持続可能な社会構築の実現を期待し,その普及が図られようとしている.反面,バイオ燃料の利用拡大については,火災,異常燃焼や,燃焼排出物質のヒト健康への影響,食料供給への影響が懸念されている.また,目的としたバイオマス利活用の効果に対する疑念,限界も指摘されている.バイオマス利活用による持続的発展のある社会構築に向けた可能性の評価,それを巡る指標の現状や課題などを,著者の私見を交えて紹介する.
  • 松信 隆
    2014 年 53 巻 6 号 p. 460-466
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    風力発電は,化石燃料を燃焼する発電方式と異なり,運転に際して温室効果ガスの排出が無い安全な発電システムであり,自然エネルギーの中でも,発電単価が低く,有望な電源と位置付けられ導入が進んでいる.2014 年3 月時点で国内において2 715MW(271.5 万kW),1 948 基,447 発電所を超える風力発電システムが運転中となっていると推定されている.近年,一部の風力発電所において,風力発電システムの倒壊や部品の飛散事故が発生し,風力発電システムの安全対策についての課題が提起されている.ここでは,発電事業に供されている大型水平軸風車について,風車が電気事業法などの法令や基準を遵守し安全に設計されている実態と運転や保守管理がどのように寄与しているか解説すると共に最近の風車事故について安全面からの分析と対策について紹介する.
  • 山本 晃司
    2014 年 53 巻 6 号 p. 467-476
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    Gas clathrate hydrates of hydrocarbon, or methane hydrates, are regarded as a potential alternative energy resource of conventional oil and natural gas, but no technically or economically feasible production technique has been established. To consider the safety of a hypothetical gas production operation, thermodynamic nature of the material and petro-physical condition of host sediments should be considered as well as facility and devices in applied production systems. Its endothermic nature may avoid uncontrolled situation of gas hydrate dissociation process and subsequent hazards such as large-scale seafloor instability. There can be five modes of hazards related to methane hydrate, namely, 1) naturally happening gas hydrate dissociation that cause impacts of seafloor stability and climate, 2) accidental formation of gas hydrate in a flowline that prevents flow causes subsequent troubles. 3) unintentional methane hydrate dissociation by human activities and its impacts on safety of facilities and personnel, and eco-system, 4) intentional methane hydrate dissociation for gas production and impacts on safety of facilities and personnel, and eco-system, Moreover, common operational risks of offshore oil and gas drilling and production should be considered. For the first offshore production test of methane hydrate in 2013, a hazard identification work was done and recommendation from the analysis was implemented in the actual operation.
  • 梶川 武信
    2014 年 53 巻 6 号 p. 477-484
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    熱電発電とは,2 つの異種導体を接合し,閉ループを作り,この2 つの接合部間に温度差を与えると起電力が発生し電流が流れるというゼーベック効果を利用した直接発電である.近年,材料性能の向上による熱電技術の成熟とエネルギー有効利用技術への社会ニーズの高まりにより,従来の数100 W 級発電から1 桁以上大きい,数kW から10 kW 級熱電発電システムの実証実験が開始されつつあり,その事例を紹介している.熱電発電の実用化はまだ未成熟であり,安全性の観点からの分析は第一歩を踏み出したばかりである.熱電側のトラブルが排熱源である主システムの動作に影響を与えないという制約の下で,熱電発電の特徴とリンクしたシステムの安全性の考え方について紹介している.
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