安全工学
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57 巻, 6 号
安全工学_2018_6
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
会告
巻頭言
環境・安全・防災のシミュレーション技術 特集
  • 吉田 喜久雄, 桑 詩野
    2018 年 57 巻 6 号 p. 415-423
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    化学物質によるヒトの健康リスクを評価するには,化学物質への曝露と健康影響の量-反応関係に関する情報が必要となる.しかし,これらの情報は多くの物質で不完全または皆無である.このため,化学物質のヒト健康リスク評価では,欠損情報を補完するために,数理モデルが一般的に使用され,地域特異的なリスク評価,リスク判定結果の不確実性の低減等に大きな貢献をしている.本稿では,排出源からヒトに至るまでの物質移動を定量的に推定し,地域特異的な曝露評価を可能にする環境動態・曝露モデル,そしてヒトでの曝露後の標的臓器・組織への移動を定量的に推定し,量-反応評価における不確実性を低減する生理学的薬物動力学モデルについて紹介する.

  • 近藤 明
    2018 年 57 巻 6 号 p. 424-432
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    大気汚染に係る環境基準は,二酸化硫黄(SO2),一酸化炭素(CO),浮遊粒子状物質(SPM),二酸化窒素(NO2),光化学オキシダント(Ox),小粒子状物質(PM2.5),ベンゼン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,ジクロロメタン,ダイオキシン類に対して定められている.2016 年度の観測によると,Ox とPM2.5 が環境基準を満たしていない.本報では,環境アセスメントでSPM とNO2 の大気質評価で使用されている拡散モデルであるプリューム・パフモデルを解説し,ジャカルタ市に適応した計算事例を紹介する.次に,長距離輸送される汚染物質であるOx とPM2.5 の評価に用いられる気象モデルWRF(Weather Research Forecasting)と大気質モデルCMAQ(Community Multiscale Air Quality Modeling System)を解説し,東アジアを含む計算領域でOx とPM2.5 の予測精度について計算事例を用いて紹介する.

  • 梶野 瑞王
    2018 年 57 巻 6 号 p. 433-441
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    大気エアロゾルは,環境と健康に大きな影響を及ぼす.大気エアロゾルの動態の理解とモデル化のためには,地球物理,大気化学,粒子素過程それぞれの理解が必要である.本稿では,大気エアロゾルの発生源からの一次生成と大気中での二次生成,エアロゾル動力学過程と雲過程を通しての成長・変質,大気中からの様々な除去過程について,詳細は省きながらも,網羅的かつより本質的な事項についての解説を心がけた.また2011 年3 月の福島第一原発事故に伴い放出された放射性セシウムの拡散・沈着シミュレーションを例にとり,エアロゾル特性と沈着過程の地域性について紹介した.最後に将来の大気エアロゾルモデリングの方向性について議論した.

  • 駒井 武, 坂本 靖英
    2018 年 57 巻 6 号 p. 442-450
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    有害化学物質の地下水中の移動および反応を考慮した数値シミュレーションの方法と事例について紹介 した.まず,土壌および地下水を起点とした化学物質の曝露評価の基本的な考え方を整理するとともに,化学物質のカテゴリーに応じた曝露シナリオの設定について述べた.また,様々なタイプの曝露評価手法や数値モデルを紹介し,それらを実際のリスク評価に適用した場合の問題点について論じた.さらに,地下水・土壌汚染に起因する有害化学物質のリスク評価を行う上で不可欠な地下水中の移動を評価するシミュレーションモデルを紹介し,合理的なリスク管理を実施することの重要性を指摘した.

  • 磯辺 篤彦
    2018 年 57 巻 6 号 p. 451-457
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    東アジアや東南アジアから発生する大型プラスチックごみ(マクロプラスチック)は,世界の合計値の55%を占める.マクロプラスチックの海洋での移動は海流と風による.海洋に流出したマクロプラスチックは,海岸に漂着したのち,紫外線や物理的な刺激によって破砕され,プラスチック微細片(マイクロプラスチック)となる.海洋に浮遊するマイクロプラスチックは海流とストークス・ドリフトによって輸送されるが,生物付着に伴う沈降など,表層からの様々な消失過程を伴う.マイクロプラスチックの行方,すなわち海洋での移動や消失過程を包括する海洋プラスチック循環の全容は,まだよくわかっていない.

  • 金 佑勁
    2018 年 57 巻 6 号 p. 458-464
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    ガス爆発の影響度評価を行うために,ガス爆発時に大きな被害をもたらす爆風圧を予測することは必要不可欠である.本稿では,数値流体力学計算に比べ爆風圧を簡易的に予測できるモデルについて解説する.特に,火炎の不安定性による火炎伝播の加速現象は爆風圧に大きく影響を与えることを述べる.これは,火炎のスケールが大きくなると流体力学的不安定性による火炎伝播加速の影響が非常に大きくなるためである.さらに,火炎伝播の加速現象を考慮した爆風圧予測手法を解説し,高い精度でガス爆発時の爆風圧を予測できることを示す.

  • 松尾 亜紀子
    2018 年 57 巻 6 号 p. 465-470
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    化学プラントは大規模構造物であり,反応槽の事故等により火災・爆発へと至る大規模災害が発生することがある.火災・爆発の原因や被害を知るためには再現実験は必要ではあるが容易にはできない.そのため,シミュレーションによる大規模災害の再現には大きな期待が寄せられている.今回は爆発のシミュレーション,特に爆発発生時における燃焼過程のシミュレーション技術に着目し,3 種類の燃焼形態を取り上げ,その特徴に応じた解析手法について説明する.爆燃では乱流燃焼速度をモデル化し燃焼波の進行を直接解く.爆轟では素反応からなる化学反応に基づき各化学種を解く.粉塵爆発では粒子をDEM でモデル化し圧縮性流体と一緒に解く.このように適切な手法の選択が解析には必要であることから,爆発物理の理解がシミュレーション技術と共に必要である.

  • 加藤 倫与, 小木曽 良治
    2018 年 57 巻 6 号 p. 471-476
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    国内石油・石油化学産業などにおいて,火災や爆発による重大事故が依然として発生している.理由として,ベテラン運転員のリタイア等による技術的背景(Know-Why)の理解・伝承の不足などが挙げられており,以前にも増して,リスクアセスメント等安全に対する様々な取組みがなされている.特にリスク評価の一要素である影響度解析技術については,影響範囲の算定だけでなく,現象の理解や緊急対応を具体化するための情報共有の手段としても,その重要性が認識されつつある. 本報では,火災や爆発といった重大事故につながる可能性が高い事象を例にして,より現実に近い形での災害の再現・可視化を行える3 次元熱流動解析を利用した先進的な影響解析技術の現状と,エンジニアリング産業におけるその活用状況を報告する.

  • 牧野 秀成
    2018 年 57 巻 6 号 p. 477-484
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    巨大自然災害発生時における港湾全体の保全と港湾機能の停滞防止策の構築が求められており,その中でも特に,主要な機能を担う船舶の安全避難が重要である.近年,世界各所で巨大自然災害が頻発しており甚大な被害が出ている.そうした災害は,それ自身がもたらす一次的な災害に加え,その一次的災害を起因とした二次的・三次的な災害が被害状況を更に悪化させる.特に,船舶や港湾はその行動や機能の大部分が自然界の外的要因に影響されるため,そのような状況下では気象・海象情報をいち早く入手し,それらに対して最適な対策を講じなければならない.本報告では平成30 年台風21 号が大阪湾を通過した際の船舶の避難行動を解析し,潜伏するリスクを明らかにした.

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