平成11 年10 月に福岡市の産業廃棄物の安定型最終処分場で作業員が硫化水素中毒で死亡して11 年が経とうとしている.この間,未だに現場では根本的な硫化水素ガスの防止対策がなされていない.そこで,埋立廃棄物の搬入管理手法や埋立技術について整理し,これらについて提案を行った.①搬入管理手法:廃棄物の簡易な溶出試験(L/S =10)を導入し,TOC 値25 mg/L 以下の廃棄物を埋め立てること(硫化水素ガスの発生が抑制されることを実験により証明した.)②埋立技術:廃棄物層に鉄粉廃棄物を混合し,覆土層に含鉄土壌などを用いること(相当量の硫化水素類を捕捉・固定できることを実験により証明した.)
食品業界において,食品偽装に代表されるコンプライアンス問題は過去,世代を超えて発生していた.食品の偽装,中毒,および有害物質混入など問題が多角化し,悪質化したのはここ数年である.しかし,この発生を未然に防止する決め手を欠いているのが現状である.本論文では,特に食品偽装を,だれでもが手掛ける可能性を持つコンプライアンス事象としてとらえ,実際の現場調査結果に基づき,偽装機会の分析の観点から実践的に取り組みを促進するための防止対策を提案した.
NBC 災害という言葉が使われて10 年近く経つ.東京消防庁ではそれ以前より危険物や毒物・劇物,RI 等を取り扱う施設や輸送中の火災,漏洩等に対応しており,1990 年には化学機動中隊を設立して消防活動体制の一層の強化を図った.しかし地下鉄サリン事件では原因物質不明のまま初動の活動を行い,結果として職員の受傷等数々の課題を残した.このため化学テロも踏まえた装備や資器材,教育訓練,活動体制等の強化を図るとともに,その後も茨城県での臨界事故や米国での同時多発テロ等を踏まえて様々な対策を講じてきた.NBC 災害を取り巻く環境は変化しており,最近では家庭用洗剤等の混触による硫化水素発生事故が多発するなど今後も新たな形態の災害の発生が懸念される.このような状況を踏まえ,東京消防庁が取り組んでいるNBC 災害対策の現状について紹介する.
IGUS は不安定物質の特性や試験方法に関する研究者の国際コンソーシアムであり,爆発性・酸化性物質作業部会(EOS)の年1 回の会合では有機過酸化物,自己反応性物質、その他エネルギー物質,肥料,硝酸アンモニウム、酸化剤の試験方法,分類,安全を取り扱っている.2010 年のEOS は東京で開催され, 12 カ国・地域から産官学の研究者が参加した. 本年は,不安定物質の試験方法や分類についての議論,ヨーロッパの法律についての紹介,国際ラウンドロビンテストの結果などについて情報交換が行われた.本稿ではEOS の議長Wehrstedt 博士を中心としたメンバーによるEOS の紹介及び本年の会議の議題についてのレポートも掲載している. EOS は規制当局からの出席者,大学,研究機関,民間企業からの出席者が個人的に親交を深めることができる場である.さらなる情報は本文中にあるHP をごらん頂きたい.