安全工学
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39 巻, 6 号
安全工学_2000_6
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
21世紀への労働安全衛生 特集
  • 尾上 史江
    2000 年 39 巻 6 号 p. 356-361
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    近年の欧米の安全衛生は,ローベンス報告に基づいた自主対応型の取り組みが基本である.その具体的な現れが労働安全衛生マネジメントシステム,リスクアセスメントである.これらに対するEU加盟国やアメリカの対応は,規制と自主的な取り組みとの相克の過程にあるといえる. さらに,最近では,安全衛生対策の対象が作業負荷という観点から作業条件や作業方法の見直しへといっそう広がる傾向にあり,その典型例がエルゴノミクス的アプローチである,エルゴノミクスについては,日本ではまだ行政としての対応は端緒についたばかりである. 本稿ではこのような欧米の動きを追いつつ,現在の安全衛生の課題を追求してみた.

  • 松本 俊次
    2000 年 39 巻 6 号 p. 362-367
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    労働安全における安全の確保には,リスクァセスメント作業が不可欠である.そのため危険源の特定作業には,欧米の安全確保にかかわる基本的な考え方がないと,危険源を見落とすおそれがある.また,特定した危険源に起因するリスクの評価にかかわる国際規格の規定事項には,欧米の製造物責任に関する判例法の考え方が導入されている.このため残存リスクの評価に際しては,製造物責任に関する法理とのかかわりを知らねばならない.

  • 米丸 恒治
    2000 年 39 巻 6 号 p. 368-374
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    労働安全衛生の現在の法システムは,伝統的な命令・監督型の規制手法を中心としている.それは,不確実性を伴う先端的な分野の規制においては規制内容の不確定性などの基準の欠陥と,規制基準を執行する段階の人的リソース不足などからの執行の欠陥という二大欠陥をともないうる.国際的に展開しっっある規格の利用とOHSMSは,これら現行法システムの限界を補完し・それと相補的に作用し・労働安全衛生の向上をもたらすことが期待される仕組みであるが,そのために法的に検討すべき課題も 多い.

  • 雫 文男
    2000 年 39 巻 6 号 p. 375-382
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    労働安全衛生マネジメントの世界にも,国際標準化の波が押し寄せている,この間,労働安全衛生行政の積極(国際)派の対応により,労働大臣告示の策定,OHSAS18000策定作業への中央労働災害防止協会の参加,ISOでの議決に関する対応(条件付棄権),ILOドラフトに対する幹事国参加などによ り,国際標準化を先取りした展開がなされてきた, 本稿では,激変する権力構造と行政の課題を解説し,労働安全衛生行政が国際標準化にどのように対応してきたのかを,オブザーバーの視点も踏まえ概説する,そして,今後の動向から,行政機関だけでなく非政府機関(NGO)の参加の重要性,解決すべき諸課題について提言を行う.

  • 風間 慶一
    2000 年 39 巻 6 号 p. 383-388
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    中災防では,平成9年より日本の職場におけるリスクァセスメント手法のあり方について調査研究を進めてきたが,その集大成として一般製造業におけるリスクアセスメントの標準モデルを作成した。このモデルは,これから職場にリスクアセスメントを導入しようとする企業にとってのガイドブックとしての位置づけで作成したものである. ここでは,調査研究の経過とその過程で明らかになった,リスクアセスメントを日本の職場に適用する際に解決しなければならない課題,および標準モデルの概要について報告する.

  • 粂川 壯一
    2000 年 39 巻 6 号 p. 389-392
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    労働安全衛生法の施行により労働災害発生件数は減少してきているが,近年ではその傾向が鈍化してきており,この状況をいかに打破するかがこれからの労働安全の取組みの大きな課題となっている。本 稿では,機械作業に伴って生ずるリスクの生成を機械自体に起因するリスクと機械を使用する人間の行動に起因するリスクに大別して,それぞれに対してのリスク低減対策を「機械安全」と「使用安全」に明確に分け,機械災害を防止するためには,両者が必須のものであることを認識して対策することが必 要であると論じた.

  • 梅崎 重夫
    2000 年 39 巻 6 号 p. 393-398
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    21世紀を見据えたプレス機械の災害防止対策では,国際的な安全技術規格であるISO12100およびその関連規格を考慮した方策が重要である.このため,本稿では,この規格体系の根底にある設計原則の明確化を図った,また,この原則に基づくプレス関連規格の代表例として,今後ISO化が見込まれるEN692とわが国の関係法令の比較を行い,今後わが国で望まれる安全方策を検討した.さらに,プ レス機械用の安全システムとして,筆者らが考案したブランキングシステムを示した.

  • 渡辺 英彦
    2000 年 39 巻 6 号 p. 399-405
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    製造業に限らず,建設業においてもグローバル化の波が押し寄せてきており,ISO9000s,!4000s などの導入が多くの建設会社.で推進されている.「労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)」の導入もそうした潮流を受けての動きである.また,建築生産の合理化を目的として,種々の工法が開発されている.これらによって,口本の建築生産システムは,安全性の向上,合理化・省力化・自動化の 進展など,大きく変革、していくであろう.

  • 磯﨑 哲
    2000 年 39 巻 6 号 p. 406-413
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    鉄道輸送において「安全」はすべてに最優先するものである.また,その「安全」を支える社員ならびに協力会社社員の「安全」も重要である.「労働災害」の発生はケガをした本人はもとより,家族を不幸に,そして会社の信用失墜につながるものである.安全にそしてより良い仕事をするためには,協力会社を含め一体となった取組みを進めなければならない. 労働災害を防止するためには,基本ルールを定め,そのルールを遵守させる.また作業員一人ひとりが未然に危険を予知する感受性を高めることが必要である.当社では,鉄道における労働災害の特異性から「列車との接触事故」「高圧電線等による感電事故」「高所からの墜落・転落事故」「事業用自動車での交通事故」の四大事故を防ぐために各種取組みを行っているところである.特に列車との接触事故防止として社内マニュアルの整備,列車見張員の使用するダイヤのきめ細かい使用方法とその使用後のチェック,ハード対策のひとっである列車接近警報装置の開発などを積極的に推進している.その結果,社員の最近の労働災害発生状況はきわめて安定した状況となっている.しかし協力会社の労働災害は4年連続で死亡災害が発生しており・指導および支援の強化を図っているところである. また,永遠のテーマであるヒューマンエラー防止については,安全風土の醸成と人材を育てる意味から,KY活動,安全衛生業務研究発表会,全国産業安全衛生大会,洋上研修,事故防止ビデオの取組みなどがあげられる.安全に即効薬はなく,地道な活動の積重ねが大切である.ゼロ災を目指し,社員と家族の幸せを願うものであり,努力し続けていくことを誓うものである.

  • 橘 良彦
    2000 年 39 巻 6 号 p. 414-421
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    労働安全衛生に対する世界的動向が労働安全衛生もマネジメントシステムの時代,安全は技術で創る時代となってきている.その背景を振り返り,これからの労働安全衛生の進め方を説明する.労働災害が減少してきている製造現場においては,リスクという概念を導入し,重大災害に的を絞り,体系的かつ論理的に安全を立証できる技術を使った設備・作業の安全化を優先的に実施する必要がある.これらを継続的に実施していくための方策として,リスクアセスメントに基づく安全対策とOHSMS構築へ の取組みについて説明している,

  • 大久保 祐子
    2000 年 39 巻 6 号 p. 422-428
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    看護職は労働安全衛生上リスクの高い職場で勤務している.感染の危険を伴う病原体への曝露,労働形態・作業に伴う危険,医薬品などへの曝露,医療機器・材料の使用にかかわる危険,患者・同僚および第三者による暴力やその他の危険といった広範囲の危険を含んでいる.これらの解決のために,医療制度の改革と看護職の適正配置により看護が手薄な状態を改善し,看護基礎教育を充実させたうえで,労働安全衛生の規制が看護職にも具体的に適用されていくことが必要となる.

  • 岸本 充生
    2000 年 39 巻 6 号 p. 429-434
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    近年,公共政策や公的規制の非効率性が問題視され,経済分析を含む定量的な政策評価手法に注目が集まっている.欧米では,環境規制とともに,労働安全衛生規制にも,経済効率性の考え方が定着しつつある。本資料では,労働安全衛生分野において利用される社会経済評価手法のうち,特に費用便益分析,および労働に起因する事故と疾病の社会的総費用の推計を取り上げる.理論的な側面を説明するとともに,特に欧州諸国,そのなかでも英国で実際に計算された事例を紹介する.

  • 平野 敦史
    2000 年 39 巻 6 号 p. 435-446
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    (社)日本化学工業協会労働安全衛生部会では,会員会社および協力会社の労働災害発生状況より,発生率の多い「はさまれ・巻き込まれ災害」「有害物等との接触災害」を取り上げて,対策指針を作成し た. 本稿では,会員会社および協力会社のはさまれ・巻き込まれ災害事例や参考文献をもとに,化学工業で多く使用される装置・機器および作業にっいて,ハード面およびソフト面から災害防止の基本的考え方や参考となる対策指針などをまとめた「はさまれ・巻き込まれ災害対策指針」を紹介する.

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