近年,環境問題,エネルギー問題の重要性が叫ばれる中で,それらに対する一つの回答として水素エネルギーを利用する燃料電池自動車(FCV)が注目を集めている.そして,燃料電池自動車に燃料水素を供給する設備である水素ステーションに関わる高圧ガス保安法等の安全関係諸法規の改正が,2005 年3 月に行われた.今回,(財)石油産業活性化センター(PEC)では,リスク評価手法を用いた安全性検討を通して水素ステーションに必要な安全対策(案)を策定する作業を行い,この案をベースとして高圧ガス保安法等の規制の見直しに深く関与する機会を得た.本稿では,この水素ステーションのリスク評価検討について報告することとしたい.
燃料電池自動車の普及実現のために注意深く検討しなければならない問題の一つとして,水素ステーションのリスク評価がある.リスク評価によって明らかにされたリスクをどのように制御・低減していくかがプロジェクトの成否を左右すると言っても過言ではない.市街地設置を前提とした水素ステーションの設置場所選定と設計に必要な対策を,設置場所の立地環境・関与する人・設備(必要な安全対策レベル)の面からリスク評価することによって,実規模水素ステーションの設計へ反映させることが望まれる.
自動車用燃料電池として固体高分子形が実用化されており,その燃料として水素が用いられている.燃料電池自動車の普及に向けては,安全性確保のため基準や規格等の整備が急務であり,そのためのデータが必要である.しかし,自動車社会において,燃料として水素が実用化された例はなく,その安全性,特に,火災安全に係る知見はほとんどない.本編では,燃料電池自動車の水素利用に伴う高圧安全,火災安全等に関わる試験実施のために建設した水素・燃料電池自動車安全性評価試験施設および世界に類を見ない耐爆火災試験設備について紹介する.
本研究は,鉄道会社に勤務する労働者を対象として,予備調査から構成された職場の安全行動評価尺度の信頼性・妥当性を明らかにし,その職種差を検討することを目的とした.鉄道会社およびその関連会社182 社に勤務する労働者717 名に実施した質問紙調査をもとに分析を行った結果,「安全に関するコミュニケーション」,「日常的な安全維持活動」,「個人の安全確保」,「使用器具の安全確保」,「安全に関する情報収集」の5 因子が抽出された.α信頼性係数は0.70 ~0.86 の範囲,確認的因子分析モデルを構成した際の適合度指標はGFI =0.88,AGFI =0.86,CFI =0.88,RMSEA =0.049 であり,本尺度の信頼性と妥当性が確認された.また,職種差を検討した結果,運転士は他の職種よりも安全行動の頻度が高いことが明らかになった.
パラニトロトルエン(p─NT)およびパラニトロフェノール(p─NP)を含む着色廃液の処理について電解酸化法,光触媒酸化法およびこれらを組み合わせたハイブリッド法により検討した.これらの廃液は,いずれの酸化法によっても徐々に脱色されるとともにニトロ基は脱離して,硝酸イオンとなる.また,ベンゼン環は脂肪族カルボン酸類や二酸化炭素にまで酸化分解された.特にハイブリッド法においては単独処理に比べて脂肪族カルボン酸類が二酸化炭素と水にまで酸化されることがわかった.これは,両者を組み合わせることで単独の方法よりも有機物酸化に寄与する活性種が多く生成したためであると推察した.
静電気の放電は,帯電物体の導電性および形状ならびに接地導体の形状によってコロナ放電,火花放電,ブラシ放電,およびブラシ放電の4 形態に分けられる.それぞれの実験方法を解説する.また,火花放電による溶剤蒸気への着火実験および粉じん爆発実験方法を解説する.
“化学関連事故のさまざま”の連載第一回として,化学関連の事故が全体としてどのように起こっているか,また,化学物質のライフサイクルのどこで起こっているかを簡単に解析し,考えてみたい.その材料として失敗知識データベース整備事業化学物質・プラント分野で登録した330 件の事例を使った.1 件ごとの事故を解析すると基本要因から事故に至る連鎖と事故を未然に防止するヒントが得られるが,その前に事故に共通した防止のポイントになるようなキーワードを探しながら,化学事故の全貌を見てみよう.