西日本皮膚科
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74 巻, 2 号
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図説
症例
  • 大久保 佑美, 小川 文秀, 小池 雄太, 冨田 元, 岡崎 志帆子, 鍬塚 大, 宇谷 厚志, 佐藤 伸一, 岡崎 寛士
    2012 年 74 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    47歳,女性。24歳時(1987年)に右頚部皮膚悪性黒色腫の診断で,長崎大学病院にて皮膚悪性腫瘍切除術と頚部リンパ節郭清を施行された(Breslow tumor thickness 0.6 mm, pT1aN0M0, Stage IA)。術後,外来でピシバニール®局所注射による化学療法を受けていたが,1年後の全身精査で異常を認めず,通院を中断していた。45歳時(2008年),健康診断で胸部異常陰影を指摘された。胸部CTを施行し,右肺S2領域に転移を疑う結節影が認められ,PET-CTでも同部位に集積像が認められた。増大傾向のため,翌年,右上葉切除術と縦隔リンパ節郭清が施行され,病理にて悪性黒色腫の肺およびリンパ節転移と診断された(pTxN0M1b, Stage IV)。術後,6回のDAC-Tam療法が施行され,現在まで再発は認められていない。右頚部皮膚悪性黒色腫の皮膚悪性腫瘍切除術・頚部リンパ節郭清後,22年が経過して肺に転移した症例を報告した。悪性黒色腫は,早期病変であっても,本症例の様に長い経過を経て再発する症例があり十分な注意が必要と考えられた。
  • 前 賢一郎, 入澤 亮吉, 三橋 善比古, 坪井 良治, 佐藤 俊次, 加瀬 佳代子
    2012 年 74 巻 2 号 p. 142-145
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    ダーモスコピーが診断に有用であった,径2mm以下の微小な基底細胞癌(BCC)の3例を報告した。症例1:45歳,女性。右頬部の径1.5mmの黒色小結節。症例2:79歳,男性。左頬部の径2mmの黒色小結節。症例3:58歳,男性。鼻背部の径2mmの黒色小結節。3例ともにダーモスコピーでBCCに特徴的な所見を認めた。病理組織像は,solid type BCC の所見であった。自験3例は腫瘍から1~2mm離して切除したが,3例ともに,2年以上の経過観察で再発はみられなかった。ダーモスコピーを使用することで,ごく早期のBCCを臨床的に疑うことが可能であるため,顔面などの黒色結節では,積極的にダーモスコピーを行って,小さいうちに完全切除した方がよいと考える。
  • 米倉 直美, 古場 慎一, 篠田 洋介, 三砂 範幸, 成澤 寛, 鈴木 久美子, 倉富 勇一郎
    2012 年 74 巻 2 号 p. 146-148
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    52歳,男性。左頚部の皮下結節を近医で全摘された。病理組織学的所見では,病変は表皮との連続性のない真皮下層から皮下脂肪織に孤立性に存在し,大小様々な細胞が充実性に増殖し,異型性のある核を有していた。免疫組織化学染色ではMelan-AおよびHMB-45が陽性であった。以上の所見より転移性悪性黒色腫が考えられた。しかし,身体診察では原発巣を疑う所見はなく,各種画像検査でリンパ節腫大や多臓器への転移を示唆する所見はなくprimary dermal melanoma (PDM)と診断した。PDMは,2000年にBowenらが真皮内または皮下組織を原発巣とする悪性黒色腫の特徴をまとめて報告し,その後PDMの名称で報告がなされている悪性黒色腫の新しい亜型である。また,PDMとして報告されたものは,比較的長期予後が良好なものが多い。自験例では,拡大切除術および頚部リンパ節郭清術を施行後,術後化学療法を行った。術後約4年半が経過したが,再発転移なく経過している。
  • 瓜生 美樹, 久場 洋子, 里村 暁子, 三苫 千景, 高原 正和, 師井 洋一, 古江 増隆
    2012 年 74 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    61歳,女性。肛門近傍の褐色局面を主訴に受診した。皮膚生検を施行したところ,表皮肥厚,異型角化細胞の増殖,核分裂像,clumping cellが認められ,Bowen病と診断した。HPV抗体染色は陰性であった。5%イミキモドクリーム外用を開始したところ,8週間後には肉眼的に病変が消失した。中止後約3ヵ月半の時点で再度皮膚生検を施行し,組織学的に表皮異型細胞は消失していた。
  • 伊藤 絵里子, 中尾 匡孝, 安川 史子, 高原 正和, 師井 洋一, 古江 増隆
    2012 年 74 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    症例1:75歳,男性。半年前に左こめかみに紅色結節が出現し,急速に増大した。症例2:68歳,男性。頭頂部に小結節が生じ急速に増大,出血を伴うようになった。2例とも切除し,病理組織学的に真皮から一部は皮下脂肪織に至る境界やや不明瞭な腫瘍性病変が認められ表皮にはepidermal collaretteもみられた。腫瘍細胞は異型性に富む線維芽細胞様細胞,組織球様細胞が主体で,核分裂像も認められた。免疫組織学的には,いずれもvimentin,CD10が陽性,CD99が一部陽性で,cytokeratin,S100蛋白,desmin,CD34は陰性であり,atypical fibroxanthoma (AFX)と診断した。2例とも,現在まで再発や転移は認められていない。AFXはしばしば組織学的に他の悪性腫瘍との鑑別が困難であるが,自験例ではいずれもCD10,CD99が陽性であり免疫染色を組み合わせることで,より鑑別に有用と考えられた。
  • 北 和代, 内 博史, 辻田 淳, 権藤 寿喜, 田代 あかり, 中原 剛士, 高原 正和, 師井 洋一, 古江 増隆
    2012 年 74 巻 2 号 p. 158-160
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病を有する89歳の男性。鯉を食べた数日後,肛門部に疼痛が出現し近医外科を受診した。肛門内歯状線の上部に刺入していた魚骨を摘出された。摘出8日目に臀部痛が出現し,蜂窩織炎の診断で抗菌剤内服にて加療されるも症状は改善しなかった。摘出10日目に施行されたCTにてガス壊疽が疑われたため,当院へ救急搬送され,ガス壊疽,肛門周囲膿瘍,フルニエ壊疽と診断された。肛門直腸膿瘍切開術,デブリードマンを施行し,抗菌剤投与を開始。入院8日目に人工肛門造設術,27日目右除睾術,創閉鎖術を施行した。以後,経過良好であり,入院90日後に他院へ転院した。
  • 堀本 浩平, 米田 大介, 加賀谷 真起子, 高橋 博之, 佐藤 俊也
    2012 年 74 巻 2 号 p. 161-164
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    79歳,男性。完全右脚ブロックに対し,1989年に左胸部にペースメーカーを埋設。2010年5月にリード線埋設部に沿って発赤腫脹と排膿が出現した。抗生剤投与に反応せず,創部培養も陰性であったため,ジェネレーターとリード線を除去し,右胸部に新たなペースメーカーを埋設した。しかし発赤排膿が持続し,さらに新設部にも膿瘍を形成した。膿瘍部から吸引した膿汁の培養にてMycobacterium abscessus が検出されたため,開胸下にペースメーカーを全抜去した。海外・本邦を含めて抗酸菌によるペースメーカー感染の報告は極めて稀であるが,抗生剤に反応せず感染が長期間持続する場合は念頭に置く必要がある。
  • 高田 智也, 樽谷 勝仁, 佐野 栄紀
    2012 年 74 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    日本紅斑熱とツツガムシ病はともにダニ類を介して発症するリケッチア感染症であり,両者とも発熱,皮疹,肝障害を呈するなど類似点の多い疾患である。我々は同時期に発症した日本紅斑熱とツツガムシ病の各1例を経験したので,臨床的相違点を主眼に症例報告を行う。症例1:59歳,女。2009年7月末より微熱と倦怠感あり。8月上旬より39℃台の発熱と手掌を含む全身に淡紅色の小型の紅斑が出現した。右背部に,中央に壊死を伴う小豆大の丘疹あり。血液検査では血小板減少と肝・腎機能障害を認めた。表在リンパ節は触知しなかった。臨床所見より日本紅斑熱を疑い,ミノサイクリンおよびレボフロキサシンを投与した。血清中の特異的抗体価は初診時に比べ,2週間後のペア血清でIgGとIgMの上昇を認め,日本紅斑熱と診断した。症例2:59歳,男。2009年7月末より38℃台の発熱があった。8月上旬に全身の紅斑が出現した。左背部に,周囲に発赤を伴う爪甲大の黒色壊死あり。表在リンパ節はすべて腫大しており,CT画像では縦隔,腹部など全身にリンパ節腫大を認めた。臨床所見よりツツガムシ病を疑い,ミノサイクリンを投与した。血清抗体は初診時採血でKato,Karp,およびGilliam株のIgMの上昇を認め,ツツガムシ病と診断した。2症例とも比較的典型例であり,刺し口の大きさや手掌の紅斑,全身性リンパ節腫大の有無で両疾患の鑑別が可能であった。
  • 小野 槙子, 織田 洋子, 右田 尚, 古場 慎一, 凌 太郎, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2012 年 74 巻 2 号 p. 170-173
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    症例は77歳の女性。2~3年前より左上腕に紅色結節を認めていた。徐々に拡大し,さらに潰瘍となり,周囲には衛星病巣を形成した。病理組織所見で類上皮肉芽腫とasteroid bodyを認めた。さらに,巨大培養およびスライドカルチャーの所見より起炎菌をSporothrix schenckii と同定し,スポロトリコーシス(固定型)と診断した。ヨウ化カリウム内服を開始し,2週間で病変は瘢痕化し,再発を認めていない。自験例は初診時よりしばらくの間,スポロトリコーシスを鑑別疾患に考えることができなかった症例である。その原因として,固定型の病型であったことや,近年スポロトリコーシスの症例数が減少していることを考えた。自験例の反省を踏まえ,難治性の結節や潰瘍をみた場合にはスポロトリコーシスを含む深在性真菌症を鑑別に挙げる必要があると考え報告する。
  • 秋本 成宏, 河合 幹雄, 水野 正晴
    2012 年 74 巻 2 号 p. 174-177
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    37歳,男性。40℃の発熱,右前額部の紅斑,腫脹が出現し,入院した。直後に腎不全,DICが判明し,急激なショック症状を来した。右眼瞼縁壊死部分の浸出液よりA群溶連菌抗原迅速検出キットで陽性反応を示したため,toxic shock-like syndrome (TSLS) と診断し,人工呼吸器管理下でカテコラミン投与,血漿交換および持続血液濾過透析を開始した。集中治療に加え,ペニシリンGおよびクリンダマイシンの投与を行い,全身状態は改善した。この抗原迅速検出キットは迅速性,感度および特異度から,TSLSの早期診断に極めて有用であり,自験例では患者の救命に寄与したと考えられた。
講座
治療
  • 石黒 麻友子, 森澤 有希, 松田 和美, 横川 真紀, 佐野 栄紀
    2012 年 74 巻 2 号 p. 185-188
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    顔面のざ瘡瘢痕に対するフラクショナルレーザー治療の有効性と安全性について検討した。患者29例を対象とし,Fraxel IITM(Solta Medical 社製)を用いて治療を行った。初回照射量は20~60mJとし,1ヵ月毎に2から7回(平均3.9回)施行した。3回以上治療した症例のうち,治療効果の評価が可能であった21例について検討した。医師による評価は著効29%(6例),有効52%(11例)と80%以上の高い有効性が示された。また治療効果に対する患者満足度も,非常に満足33%(7例),満足52%(11例)と高かった。小型の瘢痕は比較的少ない治療回数で改善したが,大きく深い瘢痕は浅くなるも残存するものが多かった。有害事象としては一過性の炎症後色素沈着を1例で認めたのみであった。フラクショナルレーザー治療はざ瘡瘢痕に対して高い有効性と安全性が期待できる治療であると考える。
  • 今福 信一, 久保田 由美子, 森 竜樹, 伊藤 宏太郎, 八坂 典子, 古賀 文二, 高橋 聡, 中山 樹一郎
    2012 年 74 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 2012/04/01
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル 認証あり
    25名のステロイド外用単独治療で効果不十分な局面型尋常性乾癬患者に対してドボネックス®50μg/g軟膏を併用して,皮疹の客観的評価とアンケートによる患者の外用習慣の改善や満足度について検討した。皮膚症状は浸潤,鱗屑については4週後から優位に改善し,8週後にもさらに改善がみられた。アンケートでは約6割の患者が2ヵ月後に改善を自覚しており,また1ヵ月後には55%の患者が医師の指示通りに外用するようになったと返答し,外用剤の薬理学的効果のみならず,患者のアドヒアランスも改善していると考えられた。また,67%の患者が治療を受けて良かったと返答した。ステロイド外用治療で効果不十分な乾癬患者においてカルシポトリオール軟膏の追加は皮膚症状と患者満足度を改善するよい治療と考えられた。
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