西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
75 巻, 4 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
図説
総説
症例
  • 石上 剛史, 古北 一泰, 村尾 和俊, 久保 宜明
    2013 年 75 巻 4 号 p. 301-303
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    50 歳,男性。14 歳時,左下肢深部静脈血栓症を発症しワルファリンカリウム内服を開始したが,その後自己判断で中止していた。19 歳頃から左下腿に浮腫と潰瘍を生じ,複数の医療機関で治療を受けたが改善しなかった。45 歳時に左下腿潰瘍が悪化し,この時は下肢の安静挙上のみで潰瘍は改善したが,この頃より左下肢の静脈瘤および左胸部から腹壁にかけての表在静脈の怒張,蛇行が目立ってきた。また同時期に右下肢深部静脈血栓症を併発したためワルファリンカリウム内服を再開した。50 歳時,左下腿潰瘍が再燃したが,その時の精査で下大静脈が先天的に著しく狭窄していることが明らかになり,深部静脈血栓症とその後の下腿潰瘍の発症に深く関与していると考えられた。
  • 内海 大介, 仲村 郁心, 山口 さやか, 眞鳥 繁隆, 宮城 拓也, 苅谷 嘉之, 高橋 健造, 上里 博
    2013 年 75 巻 4 号 p. 304-308
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    74 歳,男性。約 5 年前より特に誘因なく右拇指の爪甲が肥厚し,同爪甲下に膿疱が出没を繰り返していた。近医皮膚科にて爪白癬と診断され,抗真菌薬の外用,内服治療を受けていたが,症状が改善しなかったため当科を紹介され受診した。病変は右拇指の 1 指のみに限局し,右拇指末端の腫脹,爪甲の肥厚および粗造化,爪甲下膿疱,爪周囲の紅斑,落屑を認めた。複数回の爪甲の真菌直接鏡検,真菌培養検査はいずれも陰性であった。2 回行った膿疱の細菌検査では有意な細菌は検出されなかった。爪の病変部より皮膚生検を施行し,病理組織学的所見では角質の増生および不全角化,表皮突起の規則的な延長,Kogoj 海綿状膿疱が認められた。以上のことから Hallopeau 稽留性肢端皮膚炎と診断した。プロピオン酸クロベタゾールおよびカルシポトリオールの外用治療にて,爪甲の肥厚および粗造化の改善,膿疱の消失を認めた。自験例と併せて,1984 年以降に本邦で報告された Hallopeau 稽留性肢端皮膚炎の 17 症例の集計を行った。初診時に爪甲の変形が 1 指に限局していた症例は 10 例であり,決して稀ではないことが示唆された。
  • 米倉 直美, 三砂 範幸, 古場 慎一, 山内 寛子, 蘆田 健二, 成澤 寛
    2013 年 75 巻 4 号 p. 309-312
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    28 歳,女性。幼少期より体幹に色素沈着を自覚していた。初診時,頚部・腋窩・体幹・鼠径部に,自覚症状のないびまん性または斑状網状の色素沈着および皮膚の粗造がみられた。臨床像および病理組織学的所見から generalized acanthosis nigricans と診断した。Acanthosis nigricans は通常,症状が間擦部にみられるが,自験例は,皮膚症状が汎発性にみられる非常に稀な acanthosis nigricans であった。自験例は同症の家族歴はなかったものの,幼少期より皮膚症状が出現していたことから,良性型の可能性が考えられた。しかし,橋本病を合併しており症候群性の可能性も否定できなかった。エトレチナート全身投与およびカルシポトリオール外用にて皮膚症状が軽快し,病理組織学的にも改善がみられた。汎発性の acanthosis nigricans は非常に稀であり,治療も難しい症例が多いが,自験例のようにエトレチナートの使用も考慮すべきであると考える。
  • 神尾 芳幸, 廣瀬 寮二
    2013 年 75 巻 4 号 p. 313-316
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    63 歳,男性。2001 年より右足底に痛みが出現し,2003 年に右足底に痛みを伴う腫瘤が 1 個あるのを自覚した。無治療で放置していたが徐々に腫瘤が増大し疼痛が増強してきた。受診時,右足底母趾球部に圧痛を伴う 25 × 30 mm のなだらかに隆起する紫紅色腫瘤を1 個認めた。画像所見では,内部エコーが不均一な hypo-echoic mass を認め,MRI では内部信号が T2 強調脂肪抑制画像で不均一,拡散強調画像で高信号を呈する腫瘤であった。病理組織学的には,毛細血管周囲に短紡錘形,卵円形の異型性に乏しい腫瘍細胞が同心円状に増殖しており,筋周皮腫と診断した。本邦で報告されている筋周皮腫で,疼痛の記載のあるものは,41 例中 25 例 (61%) と高率であった。皮膚の疼痛を伴う腫瘍では筋周皮腫も鑑別に挙げられるべき疾患と考えた。
  • 佐々木 美紀, 大歳 晋平, 内田 隆夫, 松野 良介, 光谷 俊幸, 末木 博彦
    2013 年 75 巻 4 号 p. 317-320
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    2 歳,男児。約 2 週間前より下腿に自覚症状のない皮疹が出現した。近医皮膚科を受診し,吉草酸ベタメタゾン・硫酸ゲンタマイシン軟膏を外用したが皮疹の数が増加した。4 日前 38.9°C の発熱があり,皮疹が更に増加したため他院皮膚科を受診。Henoch-Shönlein 紫斑病を疑われ,当科を紹介された。初診時,四肢に爪甲大までの浸潤の強い鱗屑を伴う暗紅褐色調の紅斑と紫斑が多発・散在していた。皮膚生検を念頭に同日血液検査を施行したところ,白血球増多,特に芽球の著増と血小板減少がみられた。急性白血病の皮膚浸潤を考え,同日当院小児科へ依頼。骨髄穿刺検査でリンパ芽球が 98.6%を占め,また末梢血の白血病マーカー検査でも B 細胞マーカーの CD79a,CD10,CD19 や DNA 合成のマーカーである TdT (terminal deoxynucleotidyl transferase) 陽性細胞がいずれも 80%以上を占めた。以上より,B 細胞型の acute lymphoblastic leukemia と診断し,当院小児科で化学療法を開始した。皮膚の病理組織学的所見では,真皮から一部皮下組織にかけて脈管・付属器周囲に巣状に異型を伴うリンパ球様細胞が浸潤しており,免疫染色では L-26(CD20)・CD79a・TdT が陽性であった。B 細胞マーカーである L-26・CD79a と TdT の二重染色を施行したところ,両者に陽性で,DNA 合成の盛んな白血病細胞がごく少数みられた。本症例では,皮膚病変が acute lymphoblastic leukemia の診断契機となった。
  • 内藤 玲子, 徳丸 良太, 藤崎 亜紀, 藤崎 伸太, 中山 樹一郎
    2013 年 75 巻 4 号 p. 321-325
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    症例 1:19 歳,男性。初診の 2 年前より体幹に褐色斑が出現した。腹部,背部,頚部に軽度のかゆみと鱗屑を伴う網状の褐色斑を認め,直接鏡検にて癜風菌陽性であったが,抗真菌剤内服・外用は無効であった。組織学的に表皮肥厚,乳頭腫症を認め融合性細網状乳頭腫症 (confluent and reticulated papillomatosis : CRP) と診断した。ミノサイクリン内服にて著明に改善し,内服を中止したところ,中止 1 ヵ月半後より皮疹が再発したため,再度ミノサイクリン内服後,軽快した。現在までに再発を計 4 回認めているが,ミノサイクリン内服で軽快している。症例 2:17 歳,女性。症例 1 の妹。初診の 1 年半前より体幹に褐色斑が出現した。腹部,背部に鱗屑を伴う網状の褐色斑を認め,直接鏡検にて真菌陰性。組織学的に表皮肥厚,乳頭腫症を認め CRP と診断した。ミノサイクリン内服を開始したが,めまい出現のためドキシサイクリンへ変更し,内服 4 週間後より症状の改善を認めた。その後,計 4 回の再発がみられたが,自然軽快しない場合はドキシサイクリン内服にて症状は軽快している。CRP はまれとされる疾患であり海外例を含め家族例の報告は少ない。
  • 仲村 郁心, 山口 さやか, 苅谷 嘉之, 眞鳥 繁隆, 平良 清人, 山本 雄一, 高橋 健造, 上里 博
    2013 年 75 巻 4 号 p. 326-330
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    ミクロネシア連邦出身の 28 歳の男性。沖縄在住の米軍兵士である。約 2 ヵ月前から四肢に自覚症状を欠く淡紅色から紫紅色の小豆~大豆大の結節性病変が出現し,徐々に全身へ拡大した。皮膚組織像では,真皮全層に空胞状ないし泡沫状の組織球がびまん性で密に浸潤し肉芽腫を形成していた。表皮と肉芽腫との間には僅かながら subepidermal clear zone がみられた。Fite 染色では赤色に染まる桿菌が泡沫細胞の細胞質内に多数存在し,球状の菌塊(らい球)を形成していた。皮膚スメア,鼻汁の Ziehl-Neelsen 染色でも抗酸菌が多数みられた。皮疹とその周囲の知覚(温痛覚)は軽度鈍麻がみられたが,神経肥厚はなかった。臨床症状,病理組織学的所見,PCR 検査より LL 型ハンセン病と診断した。自験例は所属基地のあるグアムへ帰任し治療する方針となった。日本人の新規ハンセン病患者は非常に稀であるが,世界的には減少傾向ではあるものの,現在でもハンセン病患者が多く発症する地域がある。患者が罹患したと思われるミクロネシア連邦は 1980 年代から 90 年代にかけて多数のハンセン病患者が発生し,今なおハンセン病患者の多い国である。
  • 北 和代, 武下 泰三, 権藤 久司, 古閑 靖章, 古江 増隆
    2013 年 75 巻 4 号 p. 331-335
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    46 歳,女性。胸椎椎間板ヘルニアにて近医整形外科に入院し,鎮痛剤,点滴による治療を受けた。退院 2 日後に顔面にそう痒を伴う皮疹が出現し当科を受診した。発熱,全身の紅斑,顔面の腫脹・紅斑・膿疱,肝機能障害,頚部リンパ節腫脹を認め,薬剤性過敏症症候群 (DIHS) と診断し,入院後,プレドニゾロン 50 mg/日の内服を開始した。発症 25 日目に HHV-6 IgG 抗体価はペア血清で 8 倍上昇し,再活性化を認めた。44 日目に皮疹は消失した。その後全身倦怠感が出現し,発症から 60 日目に劇症型急性心筋炎と診断。治療を行い軽快した。DIHS ではサイトメガロウイルス (CMV) の再活性化による心筋炎が報告されているが,本症例でも同ウイルスの再活性化により心筋炎が引き起こされたと考えられた。
講座
統計
  • 御子柴 育朋, 久保 仁美
    2013 年 75 巻 4 号 p. 342-345
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    慢性 C 型肝炎に対する,テラプレビル (テラビック®) を含む 3 剤併用療法が 2011 年 11 月に保険収載された。治験にて,皮疹の出現や貧血などの副作用が多いことが知られている。2012 年 12 月までに当院では 3 剤併用療法を 28 症例経験した。約 70%の症例で何らかの皮膚症状を認めた。重症度分類 Grade1,2 の症例がほとんどであったが,Grade3 の症例も経験した。多くの症例はステロイド外用や抗ヒスタミン薬の内服など対症療法にて治療を継続することが出来た。3 剤併用療法は持続的ウイルス学的著効率が高く,副作用出現後も治療継続が望まれるため,肝臓専門医と皮膚科医との連携が大切である。
  • 小林 彩, 吉川 美香, 小川 英作, 奥山 隆平
    2013 年 75 巻 4 号 p. 346-349
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    基幹病院とクリニックが連携して患者の治療を進めることは,地域医療を充実する上で大変重要である。慢性皮膚疾患の一つである乾癬の診療では,生物学的製剤が近年使用できるようになり,高い治療効果を得ることが可能となってきた。そこで,私たちは長野県内の皮膚科医 (皮膚科を標榜する病院,クリニック) にアンケート調査を行い,乾癬治療の現状を把握することを試みた。 159 施設へアンケートを郵送し,各診療施設での患者数,現在の治療法,生物学的製剤に対する各医師の考えなどに関して,質問を行った。その結果,87 施設 (回答率 55%) から回答が得られた。アンケート結果からは長野県内の乾癬患者数は約 3000 人,その 7 割近くはクリニックで診療を受けていた。全体の 8 割以上の患者は外用剤のみで加療されていた。クリニックでは,生物学的製剤投与の対象となる患者が 15 施設 34 人いることがわかった。また,副作用への懸念や患者への説明時間が確保できないといったことがクリニックでの生物学的製剤導入を阻む要因となっていた。これらの結果から,生物学的製剤を含めた乾癬の診療を進める上で,クリニックと基幹病院の間の連携が大変重要であると考えた。
治療
  • —— 適正な使用方法の検討 ——
    持田 耕介, 天野 正宏, 飯川 まどか, 石井 千寸, 瀬戸山 充
    2013 年 75 巻 4 号 p. 350-356
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    症例1,56 歳,女性。灯油にて火炎熱傷を受傷した。気道熱傷あり,熱傷面積 67% (II 度 : 20%, III 度 : 47% Burn index : 57, PBI : 113) であった。全身麻酔下にて手術を合計 6 回施行し,その内,3 回自家培養表皮「ジェイス®」を使用した。自家培養表皮は非荷重部,人工真皮を使用し肉芽が形成良好であった部位,壊死残存なかった部位には生着良好であったが,荷重部である背部やエアーベッドによる物理的刺激が加わった側腹部,肉芽形成が不良であった部位,壊死の残存があった部位の生着は不良であった。症例 2,4 歳,男児。なたね油を 100°C 近くで精油中の釜に頭から転落した。熱傷面積 60% (II 度 : 55%,III 度 : 5 % Burn index : 32.5, PBI : 36.5) であった。全身麻酔下にて手術を合計 3 回施行し,その内,1 回自家培養表皮「ジェイス®」を使用した。症例1の経験を加味し,非荷重部,人工真皮を使用し肉芽が形成良好であった部位,壊死残存なかった部位の条件を満たした前胸部と右上肢に自家培養表皮を使用した。生着は良好であり,受傷 90 日目に退院となった。自家培養表皮の適切な使用方法とは,組織学的には基底板と真皮の係留を促す工夫が有用であり,解剖学的には非荷重部で,人工真皮を用いて良好な肉芽を形成し,壊死残存なく炎症のない部位に使用することが重要である。
  • 大嶋 雄一郎, 玉田 康彦, 横関 博雄, 前田 俊夫, 遠藤 輝, 千田 朋子, 長岐 為一郎
    2013 年 75 巻 4 号 p. 357-364
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/07
    ジャーナル 認証あり
    原発性腋窩多汗症に対する A 型ボツリヌス毒素 (以下,BoNTA) による治療は,海外では広く実施され,有効性および安全性はすでに検証されている。今回,日本人の原発性腋窩多汗症患者に A 型ボツリヌス毒素製剤を投与した際の有効性について,重量測定法による発汗重量を指標として,プラセボに対する優越性を検証した。また,BoNTA を最大 2 回,反復投与した際の有効性および安全性を検討した。原発性腋窩多汗症患者 152 例に二重盲検下で BoNTA 50 単位/片腋窩(左右腋窩合わせて合計 100 単位)またはプラセボを単回投与し,16,20,24 週後に再投与基準を満たした被験者には BoNTA 50 単位/片腋窩を投与して,初回投与 40 週後まで観察を行った。BoNTA 初回投与 4 週後の重量測定法による発汗重量のレスポンダー率は,BoNTA 群で 96.2%,プラセボ群で 45.9%であり,BoNTA 群のレスポンダー率は,プラセボ群と比べ有意に高く (P<0.001),BoNTA のプラセボに対する優越性が認められた。また,反復投与した場合でも初回投与と同様の効果が認められた。初回投与後の副作用の発現頻度は BoNTA 群 (3%),プラセボ群 (3%) と差はなく,BoNTA の反復投与においても有害事象の発現頻度の上昇は認められなかった。今回の結果より,日本人においても,腋窩多汗症患者に対する BoNTA 単回投与により発汗量を抑制する効果が得られ,反復投与においても有効で安全であることが示された。
世界の皮膚科学者
feedback
Top