安全工学
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54 巻, 2 号
安全工学_2015_2
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
会告
安全への提言
総説
  • 中村 昌允
    2015 年 54 巻 2 号 p. 76-79
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    現場力低下が叫ばれる中で,製造現場からのアラームマネジメントへの期待は大きなものがある.化学プラントの重大事故に共通することは,関係者が事故直前まで「危ない」と思っていなかったことである.事故後,「リスク感性」の不足が指摘された.しかし,プラントの異常を知らせる重要アラームが低位レベルアラームの洪水に埋没,また,当該部の温度が操作画面上に表示されていなかったことなど,プラントの異常を適切に関係者に伝えることができなかった「アラームマネジメント」の問題もあった. これからのアラームマネジメントの課題は,(1 )非定常状態を想定したアラームの設定,(2 )重要アラームと低位レベルアラームとの層別,ならびに低位レベルアラームの閾値見直しと削減,(3 )緊急事態発生時における人と機械の役割分担である.
  • 樋口 文孝
    2015 年 54 巻 2 号 p. 80-86
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    欧米ではプラント運転の安全性強化のためにヒューマンファクターに起因する事故防止に着目したアラームマネジメントへの取り組みが盛んである.出光興産では,世代交代による熟練オペレータの運転ノウハウの喪失への対応の一つとして,これまでボトムアップで進めてきたアラーム削減活動を充実し,安全・安定運転を継続するためにアラームマネジメントへの取り組みを開始した.アラームマネジメントを日常業務として確立するために,アラーム基本方針の明確化,アラーム削減手法の標準化・統一化,日常管理の環境整備,ライフサイクルの仕組み構築に向けた検討を進めている.現在,オペレータ一人当たりの定常時平均アラーム発報数2 回/10 分の達成に向けた取り組みを展開している.また,非定常時では,大規模石油化学プラントで緊急停止時のアラーム発報数を約9 割削減した.
  • ―重要プロセス変数の変動監視
    小河 守正
    2015 年 54 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    本稿ではまず,プラントオペレーションの三つの課題を指摘する.第一に,人の役割の明確化と自動化システムの機能増強,第二に,非定常運転時のアラームマネージメント.そして第三に,重要プロセス変数の変動監視とチームオペレーションに適したヒューマンインタフェースである.次に,第三の課題解決の一手段として実用化した重要プロセス変数の変動監視システムについて,アルゴリズムを中心に概説する.これは,保安上重要なプロセス変数について,データ駆動型モデルにより未来トレンドを予測し,トレンド異常時には保安限界値への到達推定時間を与える.さらに,チームオペレーションに適した見逃しを誘発しないヒューマンインタフェースとして,大型ディスプレイを活用していることも特徴である.最後に,ベンチマークデータを用いて本システムの動作を数値検証する.
  • 楠神 健
    2015 年 54 巻 2 号 p. 92-100
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    組織の安全性向上のためにヒューマンファクター(HF)概念の導入は有効とされるが,第一線従事員にその理解や実務への適用を促すことはそれほど簡単でない.本稿では,HF 概念の浸透や実践に向けた課題および取組みについて考察する.まずJR 東日本におけるそれらの取組み例をみながら,その方法論について社員の自発性をキーワードに述べる.次に,それらの取組みを推進するマネジメントにおいて基礎となる「(相手に)伝える」と「(相手が)わかる」ことの理解の重要性について考察する.最後にこれらにもとづき,HF 概念の深い理解や作業への適用について,指示型の一方通行的な取組みよりは自発性にもとづく試行錯誤型の取組みの有効性について論じる.
  • 高木 元也, 大西 明宏, 高橋 明子
    2015 年 54 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    第三次産業の労働災害が増え続けている.中長期的にみると製造業や建設業の労働災害は顕著に減少する中,第三次産業の労働災害が未だ増え続けていることは極めて憂慮すべき事態である. このような状況の中,本稿は小売業を対象に,労働災害発生状況の中長期的推移,労働災害データの詳細分析等,労働災害の実態を把握し,加えて小売業の労働災害防止に係る各種行政施策のレビュー,労働災害防止団体,産業団体等へのヒアリング調査を行い,各種行政施策を講じても労働災害が減少しない原因を探った.さらに,大手企業における労働災害防止活動の先進的取組の調査,様々な業態をもつ小売業における業態別特性を踏まえた安全上の課題の抽出等を行い,これらを基に,今後の小売業の労働災害防止活動の推進方策を提示した.
  • 宇野 研一
    2015 年 54 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    1984 年のボパールの大災害を契機に設立されたCenter for Chemical Process Safety( CCPS)は,米国はじめ世界の化学産業のプロセス安全の向上を目的として各種の大会や教育プログラム,そして100 冊以上にも上る各種ガイドラインの発行を行ってきている.ここでは,まず,それらの活動の概要と,その原動力となっている組織運営の在り方についてまとめる.特に,その中核であるプロセス安全管理システムについては,安全工学会が推進する保安力の取り組みと比較検討する.CCPS のこれらの取り組みを踏まえて,我が国の化学産業の保安力に対する全般的なフィードバックについて考察した.
  • 山口 恭弘
    2015 年 54 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    民間航空機における「安全性」とは,妥協の許されない必達の要求である.いかに優れた性能/収益性を有する機体であっても,乗客の安全性を確保出来なくてはエアラインとして運航することは出来ない.民間航空機の開発においては,年々厳格化が求められる安全性要求をクリアした上で,どこまで快適性/収益性/運航性等の商品性向上を図れるかの競争となる.本稿では,YS-11 以来の国産民間旅客機開発となるMRJ(Mitsubishi Regional Jet)1)を題材として取り上げつつ,民間航空機を開発する際に考慮すべき安全性について概説する.
論文
  • 吉川 典彦・菅野  望・大澤 洋介・平田 将大・櫻木 健二, 大塚 輝人・高梨 成次, 斎藤 寛泰・栗原さゆり
    2015 年 54 巻 2 号 p. 122-130
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    原子力発電所建屋内で起きる水素爆発の被害を抑制するシステムを提案し,その開発経過を報告する.減災システムは,細孔金網を用いた消炎装置と外部に連結されたエアバッグから成る.火炎は建屋壁面に設置した消炎装置で消し,建屋内で起きた火炎伝播によって押し出される水素- 空気混合気をエアバッグで捕集する.エアバッグによって,放射性物質の大気への拡散を防止するとともに,建屋内の圧力上昇を抑制する.減災システムの基本原理と仕様,小型装置による動作確認,125 リッター鉄筋コンクリート容器を用いた野外実験,消炎装置の要素開発に付いて報告する.
  • 椿野 隆宣・倉敷 哲生・石丸  裕・花木 宏修・向山 和孝, 生和 光朗
    2015 年 54 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    石油化学プラントでは可燃性の高い物質が貯蔵されているタンクが多数存在し,事故により火災が発生すると,周辺地域に多大な影響を与える可能性がある.そこで,消防庁特殊災害室により,プラントの防災対策を構築するための評価手法が提示されている.しかし,この手法は簡易化されたモデルに基づいており,その適用の精度については検証の余地がある.特に,大型タンク火災では,直径による影響が考えられるが,従来の火炎モデルでは考慮されていない.本報では,数値流体解析による火炎挙動評価とモンテカルロ法を用いる倉敷の方法を併用し,タンク火災時のふく射熱を評価した.まず,タンク外周位置垂直方向のふく射熱分布を数値流体解析により求め,火炎モデルを作成した.さらに,得られた火炎モデルと倉敷の方法により,地表面で受けるふく射熱量を評価した.
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