日本臨床細胞学会雑誌
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58 巻 , 3 号
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原著
  • 成澤 邦明, 小澤 信義
    2019 年 58 巻 3 号 p. 103-108
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル 認証あり

    目的 : わが国の子宮頸がんの一次スクリーニングの細胞診に HPV 検査を加えた際の有効性を検討する.

    方法 : 今回の HPV 検査用検体は細胞診で使用した残存液状検体である. HPV の検査法は PCR 産物を電気泳動で分離する MPM テストを使用した. MPM テストは, 13 種類の hrHPV (high risk HPV の略 ; 16, 18, 31, 33, 35, 52, 58, 39, 45, 51, 56, 59, 68 型を含む) のうちわが国で子宮頸がんになりやすい 7 種類の HPV 型 (Super hrHPV と称し, Sup hrHPV と略す) をタイピングし, 残りの 6 種類の hrHPV (Other hrHPV と称す) を一括測定した.

    成績 : 検診 1 年目で, ≧CIN3 を示した件数は細胞診によるより MPM テストによるほうが多く検出された. CIN3 への HPV 型の進展リスクは Sup hrHPV に含まれる HPV 型であった. 今までの文献によれば日本女性の ≧CIN3 の HPV 型はほとんどが Sup hrHPV に含まれている HPV 型である. 一方, 精検への分別時の Total hr HPV (文献上の多数の HPV 型のうち hr HPV の 13 種の HPV 型のみを Total hr HPV と称す) 中の S-hrHPV (文献上の HPV 型のうち Sup HPV に含まれる 7 種類の HPV 型を S-hrHPV と称す) の割合は 70%弱であり, 残りの 30%強は CIN3 以上に悪化していない. NILM で hrHPV が陰性となる多くの検診受検者の検診間隔は 3 年ごととする.

    結論 : HPV 検査の導入による過剰診断は MPM テストの sup hrHPV を使用することで避けることができ, NILM で hrHPV が陰性となる検診受診者の検診間隔は 3 年ごとにする.

調査報告
  • 松本 英雄
    2019 年 58 巻 3 号 p. 109-115
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル 認証あり

    目的 : 子宮頸がん検診受診率の推移と細胞診・HPV 陽性率について, HPV 検査併用検診を行った 2012 年から 2016 年までの 5 年間の調査結果について検討した.

    方法 : 対象は, 20 歳, 25 歳, 30 歳, 35 歳, 40 歳で, LBC 細胞採取法で細胞診とハイリスク HPV の有無を検討した. 2014 年と2015 年の 20 歳受診者は HPV ワクチン接種を受けた年代であった.

    成績 : 2011 年と HPV 検査を併用した 2016 年を比較すると, 受診率は全年齢平均で, 23.9%から 33.5%へ増加した. 年齢別では, 20 歳で受診率 11.2%, 25 歳で 23.0%, 30 歳で 36.0%, 35 歳で 40.2%, 40 歳で 49.0%と受診率の向上を認めた. 細胞診 ASC-US 以上は, 5 年間の平均で, 4.9%, HPV 陽性率は 8.7%であった. HPV ワクチン接種年代の 2014 年の細胞診陽性率は 7.8%, 2015 年は 0%で, HPV 陽性率は, 2014 年は 11.1%, 2015 年は 3.1%であった.

    結論 : 検診受診率は全体では約 10%の増加を認め, HPV 検査の陽性率は細胞診より高かった. HPV ワクチン接種の効果は今後とも期待される.

症例
  • 倉澤 佳奈, 島津 宏樹, 立石 愛美, 下山 玲子, 佐々木 志保, 藤中 浩樹, 伏見 博彰
    2019 年 58 巻 3 号 p. 116-119
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル 認証あり

    背景 : MALT (mucosa associated lymphoid tissue) リンパ腫は, リンパ節のみならず, 胃, 唾液腺などの節外臓器にも発生する. 今回, 多数の組織球の出現を伴っていたため, 術前穿刺吸引細胞診 (ABC) にて耳下腺 MALT リンパ腫の推定が困難であった 1 例を経験した.

    症例 : 70 歳代, 男性. 左耳下腺と左頸部リンパ節腫大あり. 左耳下腺 ABC にて洞組織球症疑いとなった. しかし, MRI にて悪性リンパ腫を除外できず, 左耳下腺摘出術が施行され, 捺印細胞診, 組織診を行った. 捺印細胞診では多数の組織球とともにやや大型のリンパ球が単調にみられた. 組織診では多数の組織球とともに centrocyte-like cell (CLC) や単一クローン性の形質細胞浸潤がみられ, MALT リンパ腫と診断された. 術前 ABC では多数の組織球が主に採取されており, CLC の単調な増殖像が確認できず, MALT リンパ腫を推定できなかった.

    結論 : 多数の組織球の出現を伴う悪性リンパ腫では単調な細胞像を確認することが難しく, 正確な病変推定が困難になる可能性がある. 臨床所見を併せた注意深い観察が必要である.

  • 舩越 真依, 石原 美佐, 井上 友佳里, 清水 理絵, 西田 稔, 毛利 衣子, 勝嶌 浩紀, 橋本 公夫
    2019 年 58 巻 3 号 p. 120-125
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル 認証あり

    背景 : 乳頭状腎細胞癌は淡明細胞型腎細胞癌に次いで頻度の高い組織型であるが, 細胞学的な報告例は少ない. 今回この 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 80 歳代, 男性. 腹部超音波検査で右腎上極に約 60 mmの腫瘤を認めた. 造影 CT で腎血管筋脂肪腫や後腎性腺腫が疑われ, MRI では乳頭状腎細胞癌も鑑別に挙げられた. 組織診断目的のため CT ガイド下生検が施行され, 針先洗浄液が細胞診検体として提出された.

    洗浄細胞診では血性背景に, ヘモジデリン貪食細胞とともに多くの腫瘍細胞が散在性や乳頭状集塊で出現していた. 細胞は高円柱状で, 細胞質はライトグリーン好性の顆粒状, 核は円形でクロマチンは微細顆粒状, 一個の小型核小体を認めた. 乳頭状集塊の一部の間質には泡沫細胞がみられた. 腫瘍細胞内にもヘモジデリン沈着がみられた. 生検および手術材料の組織診では 2 型乳頭状腎細胞癌と診断された.

    結論 : 背景のヘモジデリン貪食細胞, ライトグリーン好性かつ顆粒状の細胞質をもつ腫瘍細胞の乳頭状集塊や, 集塊内部にみられる泡沫細胞の集簇, 腫瘍細胞の細胞質内ヘモジデリン沈着は 2 型乳頭状腎細胞癌を示唆する細胞所見である.

  • 永田 郁子, 髙田 愛, 岡本 淳子, 井町 海太, 䑓丸 裕
    2019 年 58 巻 3 号 p. 126-132
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル 認証あり

    背景 : solid pseudopapillary neoplasm (以下, SPN) には clear cell variant (以下, CCV-SPN) が存在するが, その細胞形態学的特徴を報告した論文は限られる. 今回われわれは, 同亜型の 1 例を経験したので, 細胞像および鑑別疾患についてまとめ, 若干の文献的考察を行った.

    症例 : 患者は 38 歳, 男性. 膵頭体部に腫瘍を認め, 超音波内視鏡下穿刺吸引法 (以下, EUS-FNA) が施行された. 細胞診では, 細胞質の空胞化や核膜の不整, 微細顆粒状クロマチンを認める小型の腫瘍細胞が孤立散在性や小集団で多数認められた. 硝子様小球や偽乳頭状構造もみられ, SPN を疑った. 摘出標本の免疫染色で, 腫瘍細胞は β-catenin の核内集積を認め, CD10, vimentin が陽性, trypsin が陰性であり, CCV-SPN と診断された.

    結論 : 通常型 SPN は女性例が約 9 割を占めるが, 報告されている CCV-SPN は男性例が約半数を占めていた. 淡明細胞主体の膵腫瘍では, 男性例でも SPN を鑑別の一つにあげ, 積極的に免疫染色を行って確定診断することが重要である.

  • 吉田 (田中) 美帆, 倉岡 和矢, 安村 奈緒子, 菅 亜里紗, 佐伯 由美, 香川 昭博, 齋藤 彰久, 谷山 清己
    2019 年 58 巻 3 号 p. 133-138
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル 認証あり

    背景 : 毛母腫は, 小児や若年成人に好発する良性皮膚付属器腫瘍であり, 細胞診において誤診が生じる可能性が高い腫瘍とされている.

    症例 : 1 歳, 女児. 生後 2 ヵ月から左耳前部に腫瘤が出現, 経過観察中増大傾向がみられた. 前医の穿刺吸引細胞診で悪性リンパ腫疑いと診断され, 当院で腫瘍摘出術が施行され, 腫瘍部捺印細胞診標本を作製した. 捺印塗抹標本では, 微出血性で少量の壊死物質がみられる背景に, 孤立散在性や細胞密度の高い小集塊状に基底細胞様細胞が多数出現していた. 集塊は結合性が弱く, 個々の細胞は N/C 比が高くほぼ裸核状, クロマチンは細顆粒状で増加し, 1~2 個の核小体を認めた. 異物型多核巨細胞が少数みられた. 一部で基底細胞様細胞集塊に混在するように陰影細胞が認められ, 毛母腫に相当する細胞所見であった. また, 摘出された皮下腫瘍は 20 × 13 × 11 mm 大で, 真皮内に好酸性細胞と好塩基性細胞が認められ, 好酸性細胞周囲の間質に多数の異物型多核巨細胞浸潤が認められ, 毛母腫と病理組織診断された.

    結論 : 細胞診でみられた基底細胞様細胞は組織の好塩基性細胞に類似していた. 細胞密度の高い基底細胞様細胞の中に陰影細胞が混在する像は毛母腫と診断するうえで有用であった.

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