日本臨床細胞学会雑誌
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37 巻, 4 号
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  • 乳管内病巣の推定と細胞像
    山登 直美, 南雲 サチ子, 宝来 威, 春日井 務, 小山 博記
    1998 年 37 巻 4 号 p. 383-388
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳房温存療法後の局所再発の高危険群 (comedo type) を推測するために, 乳癌細胞におけるc-erbB-2遺伝子蛋白 (ErbB-2蛋白) 発現を免疫細胞学的に検索した. 乳癌67例の腫瘤穿刺吸引および腫瘍捺印の細胞診材料でErbB-2蛋白の検索を行った. 陽性例17例 (25%) のうち10例 (59%) は乳管内にcomedo typeの病巣を有していた. 一方, ErbB-2蛋白陰性例50例のうち47例 (94%) がnon-comedo typeの乳癌であった. したがって, 細胞診材料のErbB-2蛋白の染色性と, comedo typeの乳管内病巣との関係が示唆される. ErbB-2蛋白陽性例の癌細胞は, 豊富な細胞質をもち, 大小不同がみられる大型核で, 核小体著明な異型の強い癌細胞が多く, 壊死物質は半数の症例に認められた. ErbB-2蛋白陰性例では, N/C比は大きいが核は比較的小さい異型の乏しい癌細胞が多かった. しかし, ErbB-2蛋白陽性のcomedotypeの症例の中には, 核の大小不同や核形不整が軽度の癌細胞や壊死物質を認めない症例もみられた. 細胞所見のみからcomedo typeの乳癌を推定することは困難であり, 細胞診材料でのErbB-2蛋白の検索は, 乳管内病巣の推定に役立つものと考えられた.
  • 岡本 聡, 今野 良, 高野 忠夫, 我妻 理重, 永瀬 智, 吉田 祐司, 五十嵐 司, 佐藤 信二, 矢嶋 聰
    1998 年 37 巻 4 号 p. 389-393
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腹水 (腹腔洗浄液) に出現する卵巣癌細胞と中皮細胞の鑑別診断法として, 免疫組織化学染色を行い細胞診への応用の可能性を検討した. 40例の悪性卵巣腫瘍 (漿液性腺癌11例, 粘液性腺癌9例, 類内膜腺癌5例, 明細胞腺癌9例, 未分化胚細胞腫3例, 卵黄嚢腫瘍1例, MMT2例) の手術標本 (ホルマリン固定パラフィン包埋) を対象として, Ber-EP4, HBME-1, CA125, EMAのモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行い卵巣癌細胞と中皮細胞の鑑i別に有用な抗体を選択した. その結果Ber-EP4とEMAが卵巣癌に対して高い陽性率を示したが, 特にBer-EP4は卵巣癌すべてにおいて80%以上を示した. 卵巣癌の組織特異性をみると, Ber-EP4は粘液性腺癌, EMAは漿液性腺癌に対し高い陽性率を示すことから, 術中所見により漿液性, 粘液性の判断を行い, 使い分けをすることの有用性が示唆された. 卵巣癌細胞と中皮細胞の鑑別に, 中皮細胞陰性であるBer-EP4を用いた免疫細胞化学染色は有用であると考えられた。
  • 河原 明彦, 横山 俊朗, 吉田 友子, 杉島 節夫, 鹿毛 政義, 原田 博史, 中島 明彦
    1998 年 37 巻 4 号 p. 394-399
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    化生性の扁平上皮細胞や粘液細胞を伴ったWarthin腫瘍2例を経験したので, その捺印細胞像を併せ報告する. 症例はともに73歳, 男性と女性. 耳下腺腫瘍の診断にて浅葉切除術が施行され, 捺印細胞診標本を作製した. 症例1の捺印細胞診では壊死物質・リンパ球・好中球などを背景に化生性の扁平上皮細胞が大~小集塊または孤在性に多数出現し, 核には変性が認められた. また同一標本には好酸性に染まる細胞質を持つ好酸性細胞が出現していた・症例2では多量の粘液物質・リンパ球を背景に化生性の粘液細胞が小集塊または孤在性に出現しており, 核クロマチンの増量はみられなかった. 組織学的には腺管は著明に拡張し, 間質内の壊死は認められず, 腺管上皮は化生性の扁平上皮細胞や粘液細胞から構成されていた. 腺管には壊死変性様物質や多量の粘液物質としてみられた.
    Warthin腫瘍にも化生性変化として扁平上皮細胞や粘液細胞が認められることがあり, このような変化が起こり得ることを認識しておく必要があると思われた.
  • 川本 雅司, 島澤 晴彦, 松原 美幸, 渡曾 泰彦
    1998 年 37 巻 4 号 p. 400-404
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞質内小腺腔 (intracytoplasmic lumina, 以下ICL) の存在は乳癌診断上の有効な指標とされている. ただしICL自体は, 出現率はきわめて低いが乳腺症, 線維腺腫 (以下FA) などの非悪性病変にも認められる. 症例は32歳, 女性. 妊娠中より右乳腺内に腫瘤を触れ, 離乳後3ヵ月では直径1cmで, 穿刺吸引細胞診が行われ2種類の細胞集団が認められた. 一方はFA相当の多数の細胞よりなるクラスターであった. 他方の細胞集団は50個以内の単一な細胞よりなり, 大小不同・不整形を示す核とともに一部の細胞ではICLがみられた. 乳腺上皮におけるICLの出現頻度は, FA相当の大型クラスターでは0.3%, 小クラスターでは4.4%であった. 局麻下腫瘤摘出術が行われ, 管内型を主とするFAと, 明瞭な分泌像を一部に伴う離乳後乳腺が観察され, 両者ともICLの出現をみた。異型細胞群は主に非腫瘍部由来と考えられ, 妊娠・授乳による修飾が細胞異型に関与していると推察された. またICLはFA部, 非腫瘍部とも過去の報告に比し多く観察されたが, これも離乳早期の乳管分泌充進が影響を及ぼしていることが推察された.
  • 神崎 由佳, 稲本 和男, 木村 洋一, 杉下 友紀, 布村 眞季, 藤田 葉子, 永田 文雄, 若田 泰
    1998 年 37 巻 4 号 p. 405-408
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    比較的まれな病変である乳腺梗塞の1例を経験したので報告する. 症例は28歳女性, 2妊1産. 妊娠29週時に右乳腺BD領域に腫瘤を触知するため乳腺外来を受診し経過観察されていた. 出産後の穿刺吸引標本には, 豊富な上皮細胞とともに壊死物質も多数出現しており, 癌との鑑別が困難であった. 壊死性の背景に明らかな悪性細胞が認められない場合, 乳腺梗塞の可能性も念頭におく必要があると思われた.
  • 清田 秀昭, 山田 昭二, 高橋 みどり, 工藤 玄恵
    1998 年 37 巻 4 号 p. 409-412
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    授乳期両側性小葉癌の1例を経験したので報告する.患者は両側乳房の腫張と痺痛を主訴とする授乳期の35歳女性.初診時の穿刺吸引細胞診で授乳期腺腫と診断したが, 一週後の再来時, 臨床的に強く悪性を疑わせたため再度の穿刺吸引細胞診と新たに針生検組織診が施行された.その結果, 両側とも悪性で浸潤性小葉癌と判明した.同時に行われた精査にてすでに全身転移が認められた.細胞診では壊死のない背景に軽い重積性とゆるい結合性のシート状配列の小集団と孤立散在性の腫瘍細胞がみられた.細胞質は広く泡沫状でN/C比は小さく, 小型円形核を有していた.核の大小不同, そして核小体の腫大とその周囲明庭を一部に認めた.クロマチンは微細で核縁の肥厚はなかった.また双極裸核も認めなかった.組織学的に粘液様背景に浸潤性発育を示すシート状~索状配列の腫瘍細胞を認めた.胞体は分泌空胞に富み, その一部は印環細胞様で, 小型円形核は軽度の核形不整があった.授乳期におけるホルモンの影響を持つ両側性の浸潤性小葉癌と診断したが, 授乳期の小葉癌は授乳期腺腫にきわめて類似する細胞像を呈することがわかった.本例は授乳期小葉癌における穿刺吸引細胞像の最初の報告例と考える.
  • 出射 由香, 釜田 里江, 平手 ゆかり, 南 香織, 北澤 荘平, 前田 盛
    1998 年 37 巻 4 号 p. 413-417
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    舌の小唾液腺から発生した筋上皮腫を経験したので報告する. 症例は60歳男性で, 平成8年7月に当院耳鼻咽喉科を舌腫瘤の精査目的にて受診し, MRIにてT1強調画像で低信号, T2強調画像で不均一な高信号を示す径3cm大の腫瘍を認めた. 穿刺吸引細胞診では出現細胞は比較的均一で, 孤立性, 一部集籏性に存在していた. 核は円形, 偏在性で一部に大型核を認めた. 腫瘍摘出術が施行され, 腫瘍は被膜を有し, 割面は灰白色充実性であった. 組織学的には好酸性の基質が広がり, その間隙に好酸性の胞体と偏在する核を有するPlasmacytoid cellの増生がみられた. 免疫組織化学にてS-100, ケラチン, ビメンチン, α-smooth muscle actinが陽性で, 電顕にて腫瘍細胞の胞体内に中間径フィラメントを認めた. 以上の所見より筋上皮腫と診断した. 唾液腺の穿刺吸引細胞診にてPlasmacytoid cellを認めた場合, 頻度としては多形腺腫が多いが, 筋上皮腫も鑑別疾患として念頭におく必要があると思われた.
  • 岡崎 哲也, 喜納 勝成, 奥山 直子, 風間 玲子, 古谷津 純一, 齊藤 啓, 鈴木 不二彦, 石 和久
    1998 年 37 巻 4 号 p. 418-422
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    膵原発リンパ上皮性嚢胞はきわめてまれな腫瘍で, その細胞学的報告例はほとんどない. 今回われわれは, 膵尾部に発生したリンパ上皮性嚢胞の1例を経験したので過去の文献的報告例と比較し, その細胞像を中心に報告する.
    症例は66歳, 男性. 大腸ポリープを認め, 術前検査にて, 血中腫瘍マーカーCEA, CA19-9, SPan-1の上昇を認めたため精査となった. 腹部超音波検査にて膵尾部に直径約4cmの内部エコー不均一な嚢胞性腫瘤, CTでは比較的境界明瞭で内腔に隔壁を有する多房性嚢胞腫瘤が認められた. 以上の所見より膵嚢胞腺腫または腺癌が疑われ, 膵体尾部脾臓合併切除術が施行された.
    術中腫瘤嚢胞内容液の細胞像は, 背景にヶラチン物質と少数のリンパ球および組織球, また, 扁平上皮細胞が散見された. またギムザ染色ではコレステリン結晶も認められた. 捺印細胞像は, 嚢胞内容液の所見に加え, オレンジG好染性で角化を示す扁平上皮細胞, 化生細胞および円柱状の細胞, また一部皮脂腺由来と思われる細胞もみられた.
    本症例はきわめてまれな病変であるが, 細胞学的診断は容易であるため, 術中内容液吸引または捺印細胞診が特に迅速診断に有用である.
  • 忠岡 好之, 広川 満良, 中村 悦子, 福岡 恵子, 物部 泰昌, 清水 道生, 鐵原 拓雄
    1998 年 37 巻 4 号 p. 423-426
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病患者の小腸にみられたgastrointestinal stromal tumorの1例を報告する.患者はvon Recklinghausen病を有する22歳の女性で, 小腸造影にて空腸に直径3cmの腫瘤が認められたため摘出術が行われた.摘出された小腸腫瘤は2.0×1.5×1.3cm, 灰白色充実性で, 周囲との境界は明瞭であった.免疫組織化学的に, 腫瘍細胞はS-100蛋白陰性で, CD 34が強陽性であったことから, gastrointestinal stromal tumorと診断された.腫瘤の割面から擦過した塗抹標本では, 紡錘形核を有する異型性の乏しい腫瘍細胞が裸核状, 孤立散在性に出現していた.短軸方向に鋭い切れ込み像を有する核も散見された.この核所見は神経鞘腫や平滑筋腫では配載がなく, 本疾患の診断に役立つか否かは別として, 大変興味深い所見と思われた.
  • 桜井 孝規, 広川 満良, 清水 道生, 寺山 清美, 鐵原 拓雄, 三宅 康之
    1998 年 37 巻 4 号 p. 427-430
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    色素嫌性腎細胞癌成分を伴った肉腫型腎細胞癌の1例を報告する. 患者は57歳の女性で, 右腎臓に12×8×8cm大の腫瘤が認められたため, 腎摘除術が行われた. 摘出された腫瘤の捺印細胞診では, 異型性に富む紡錘形細胞と核周囲明量や明瞭な細胞境界を特徴とする多稜形細胞の二種類の腫瘍細胞が観察された. 組織学的には腫瘍のほとんどは肉腫型の腎細胞癌で占められており, 一部に色素嫌性腎細胞癌の成分が存在した. 患者は腎摘除術から2ヵ月後に多発性の転移と癌性腹膜炎のため死亡した. 他の組織型よりも予後良好といわれている色素嫌性腎細胞癌が予後不良の肉腫型腎細胞癌に合併した症例の細胞像に関する報告はわれわれの調べた限りなく, 本例はきわめてまれな症例である.
  • 神田 美津子, 立石 英男, 佐藤 宗保, 安達 博信, 井藤 久雄
    1998 年 37 巻 4 号 p. 431-434
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮筋腫で子宮および附属器摘出14年後に発生した原発性膣腺癌を報告した.
    症例は58歳, 女性. 経膣超音波検査で膣断端部に2.5×2.9cmの腫瘍があり, 摘出術を施行した. 手術時, 左・内腸骨リンパ節に転移していた. その後, 肺・脳へ転移をきたし, 術後2年8ヵ月で死亡した. 術前の腫瘍部擦過細胞診では, 腫瘍細胞は孤立性, シート状または重積性を示して出現し, 背景は壊死性で好中球が浸潤していた. 腫瘍細胞の胞体は比較的大型で, ライトグリーンに好染し, 淡明であった. 核は辺縁不整で大小不同が強く, 偏在傾向を示し, 明瞭な円形の小体を有していた.
    腫瘍は乳頭状やcribriform patternを示す類内膜腺癌が大部分で, 一部に明細胞腺癌が混在していた. 深部にGartner管由来と思われる嚢胞があり, 周囲に癌細胞が浸潤していたが, 嚢胞との連続性はなかった. 組織発生としてはGartner管由来を疑うが確定し得なかった.
  • 藤田 葉子, 稲本 和男, 神崎 由佳, 木村 洋一, 若田 泰, 布村 眞季, 高橋 健司, 大田 美則
    1998 年 37 巻 4 号 p. 435-439
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣甲状腺腫3例の捺印細胞像を報告する.症例は34~47歳女性で下腹部腫瘤を指摘され来院, 卵巣腫瘍が疑われ摘出術が施行された.いずれも片側性で, 肉眼的には多胞性を呈し, 1例で一部に充実性部分を伴っていた.捺印細胞像では, 多くの泡沫細胞を背景に濾胞細胞集団が散見された.重積性を呈する小濾胞細胞集団がみられた例では, 組織学的には甲状腺小濾胞腺腫の像を伴う卵巣甲状腺腫の像であった.また, 核の肥大, 明瞭な核小体などの異型を呈するが, 核溝, 核内陥入, 微細クロマチンパターンなどの所見に乏しい乳頭状集団が多数みられた例では, 組織学的には著明な乳頭状増生がみられるが乳頭癌の所見に乏しい像であった.卵巣甲状腺腫の悪性診断基準に関しては十分な一致がみられていない部分もあり, このような症例の検討と蓄積が望まれる.
  • 舟橋 正範, 金子 千之, 加藤 一夫, 野村 七夫, 江崎 正則
    1998 年 37 巻 4 号 p. 440-441
    発行日: 1998/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We report a rare case of a 78-year-old woman with anaplastic carcinoma of the thyroid diagnosed by fine needle aspiration cytology. Cytological tumor features included many dispersed fusiform cells, a high N/C ratio, and oval nuclei with few nucleoli. Many tumor cells had hemosiderin granules in the cytoplasm. Granules were also observed in the resected thyroid tissue with Prussian blue stain. In cytologic examination of the thyroid anaplastic carcinoma, it is important to differentiate between tumor cells containing hemosiderin granules and cells of benign cystic change lesions.
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