日本臨床細胞学会雑誌
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62 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
症例
  • 喜多 花緒, 植草 利公, 古澤 亜希子, 山下 和也, 吉田 功, 大部 誠, 前田 一郎
    2023 年 62 巻 4 号 p. 181-187
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/11
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    背景:孤在性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor:SFT)はまれな間葉系腫瘍である.われわれは右肺中葉に連続し,中下葉間に発生した SFT の 1 例を経験したので報告する.

    症例:40 歳代,女性.9 年前に胸部 CT で 17 mm 大の境界明瞭,辺縁整な結節影が認められ経過観察されていた.今回の検診で胸部単純 X 線において同部位の異常陰影が緩徐増大していたため,精査目的で当院を紹介受診となった.患者希望および胸膜腫瘍疑いにより胸腔鏡下右肺中葉部分切除術を施行した.腫瘍捺印細胞診では類円形や短紡錘形核をもつ比較的均一な細胞が散在性~シート状集塊で認められた.組織診断では膠原線維の介在を伴って増生していた紡錘形細胞と分岐した血管を認め,免疫染色の結果は CD34 陽性,STAT6 弱陽性であった.以上より SFT の診断となった.

    結論:SFT を診断するにあたり,細胞診所見だけでは間葉系腫瘍の診断にとどまるが,肉眼的所見や画像所見,組織学的所見,免疫組織学的所見を総合的に判断し,最終診断すべきと考える.

  • 浮ヶ谷 瑞希, 加藤 拓, 野口 雅之
    2023 年 62 巻 4 号 p. 188-192
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル フリー

    背景:副甲状腺腺腫の細胞診は日常的に鏡検する機会が少なく,また細胞形態が類似する鑑別疾患もあり,診断に苦慮することが多い.今回,甲状腺穿刺吸引細胞診に液状化細胞診(LBC)法を用いて副甲状腺腺腫と診断しえた 1 例を経験したので報告する.

    症例:82 歳,男性.PTH 値上昇で副甲状腺機能亢進症があるも画像上は右甲状腺腫瘍とされていた.この腫瘍に穿刺吸引細胞診を施行した.検体処理は LBC 法を用いて細胞診標本を作製した.出現細胞は淡明で豊富な細胞質を有し,核は小型円形単一であった.残検体より作製した免疫細胞化学的染色では TTF-1 と Calcitonin 陰性,Chromogranin-A 陽性,Ki-67 指数は 2%であり副甲状腺腺腫と考えた.後に腫瘍切除が行われ病理組織学的に副甲状腺腺腫と診断された.

    結論:甲状腺穿刺吸引細胞診にて副甲状腺腺腫と診断するのは容易ではないが,LBC 法を用いることにより細胞形態に免疫染色を加えることが可能となり,確定診断に結び付けることができた.

  • 藤澤 宏樹, 倉岡 和矢, 菅 亜里紗, 安村 奈緒子, 在津 潤一, 齊藤 彰久, 石川 洸, 谷山 清己
    2023 年 62 巻 4 号 p. 193-203
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル フリー

    背景:慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)における未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)の発症はまれである.今回,CLL/SLL の治療中に発生した ALCL の一例を経験したので報告する.

    症例:30 歳代,男性.2 年前に CLL/SLL と診断され,化学療法施行後である.リンパ節は縮小したが,頸部~鎖骨上窩,縦隔リンパ節の再腫脹を認めた.CLL/SLL の形質転換が疑われ,右頸部リンパ節生検が施行された.細胞像は,類円形~多形性核,明瞭な核小体を示す腫瘍細胞が孤在性に認められた.組織像では,多形性を伴う大型リンパ球のびまん性,充実性増生がみられた.免疫組織化学的検索では,ALK が陰性,CD4/30,TIA-1 が陽性,LCA,EBV-LMP1(CS1-4)が一部陽性であり,ALK 陰性 ALCL と診断された.

    結論:CLL/SLL における ALCL の発症は稀少であり,腫瘍細胞核の多形性および免疫染色を踏まえ慎重に診断する必要がある.

  • 岩瀬 大輔, 藤中 浩樹, 片平 くるみ, 立石 愛美, 倉澤 佳奈, 西尾 祥邦, 佐々木 志保, 島津 宏樹, 松岡 圭子, 伏見 博彰
    2023 年 62 巻 4 号 p. 204-208
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル フリー

    背景:印環細胞形態をとる癌は胃に発生する頻度が高く,肺原発のものはまれである.今回,endobronchial ultrasound-guided trans bronchial needle aspiration(EBUS-TBNA)で肺由来の印環細胞形態をとる充実型腺癌(ALK 陽性肺癌)を認めた 1 例を経験したので報告する.

    症例:50 歳代,男性.嗄声を主訴に受診し,CT 撮像後,fluorodeoxyglucose-positron emission tomography(FDG-PET)で左肺門部癌疑い,左鎖骨上~肺門縦隔に多発リンパ節転移および多発骨転移を認めた.

    EBUS-TBNA では,印環細胞形態をとる充実型腺癌のリンパ節転移と判断した.上部内視鏡検査が行われたが,胃癌は存在しなかった.

    左鎖骨上窩リンパ節生検では,異型細胞が免疫組織化学的染色で TTF-1 と ALK が陽性となり,ALK 陽性肺腺癌のリンパ節転移と診断した.

    結論:印環細胞形態をとる充実型腺癌はあらゆる臓器に発生する可能性がある.肺原発の場合は,ALK 陽性であることが多く,免疫染色にて ALK 陽性を証明することにより直接治療に結びつく.

  • 熊谷 天斗, 河原 明彦, 安倍 秀幸, 髙瀬 頼妃呼, 村田 和也, 牧野 諒央, 古田 拓也, 内藤 嘉紀, 秋葉 純
    2023 年 62 巻 4 号 p. 209-213
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/11
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    背景:唾液腺腫瘍はさまざまな化生性変化を示すことが知られている.化生性ワルチン腫瘍の中にはまれに粘液化生を伴う症例がみられ,ワルチン腫瘍様粘表皮癌との区別が困難なことがある.今回われわれは,耳下腺に発生した粘液化生を伴うワルチン腫瘍の 1 例を経験したので報告する.

    症例:患者は喫煙歴を有する 60 歳代の男性.右耳下部に約 30 mm の無痛性の腫瘤性病変が認められ,穿刺吸引細胞診が施行された.細胞像は少数のリンパ球を背景にライトグリーン淡染性の異型に乏しい細胞が大型シート状集塊で認められ,集塊内に粘液化生細胞が混在していた.ワルチン腫瘍の好酸性細胞が一部にみられ,粘表皮癌の特徴的所見である中間細胞/扁平上皮成分と粘液細胞はみられなかった.腫瘍はリンパ組織とともに好酸性細胞と基底細胞の二層構造を示すワルチン腫瘍の所見がみられ,粘液化生細胞は囊胞部と充実部ともに認められた.Fluorescence in situ hybridization 解析において MAML2 遺伝子転座は認められなかった.

    結論:唾液腺腫瘍の診断において低悪性粘表皮癌に類似するような粘液化生細胞を伴うワルチン腫瘍の存在を知ることは,正確な診断に役立つ.

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