日本臨床細胞学会雑誌
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63 巻, 6 号
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総説
  • 河原 明彦
    2024 年63 巻6 号 p. 277-284
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/08
    ジャーナル 認証あり

    頭頸部細胞診は,唾液腺病変をはじめとしてリンパ節や甲状腺の病変,あるいは鼻腔などから発生する腫瘍が対象となり,主に穿刺吸引細胞診を用いて診断を行う検査である.頭頸部細胞診は原発性腫瘍のみならず,転移性腫瘍あるいは炎症性・感染性を含めた疾患に遭遇することがあるため,観察者には幅広い知識と経験が求められる.唾液腺の腫瘍性病変は,多形腺腫やワルチン腫瘍をはじめとして,粘表皮癌や腺様囊胞癌など数多くの組織型が分類されている.発生頻度が高い腫瘍の特徴は確実に把握しておく必要があると同時に,穿刺吸引細胞診における唾液腺病変の診断の限界についても理解しておくことも大切である.実際の細胞診断では,パパニコロウ染色を中心とした形態観察に加え,メイ・グリュンワルド・ギムザ(MGG)染色による異染性所見を観察することが基本となる.MGG 染色の長所はリンパ腫などの血液系疾患および非腫瘍性病変の推定診断に役立つため,乾燥標本を作製しておくとよい.悪性腫瘍の中には異型に乏しく一般的な悪性判定所見では,「悪性」と診断できない症例がある.したがって,唾液腺腫瘍の診断方法は,パパニコロウ染色で個々の細胞異型の観察にとどまらず,出現細胞の分化方向を推察しながら,MGG 染色を用いた粘液や細胞外間質をみていくことが肝要である.

原著
  • 白濱 幸生, 野口 裕史, 徳満 貴子, 森田 勝代, 峰松 映子, 黒木 栄輝, 黒木 奈瑞菜, 齋藤 嬉和, 盛口 淸香, 佐藤 勇一郎
    2024 年63 巻6 号 p. 285-294
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/08
    ジャーナル 認証あり

    目的:迅速細胞診(rapid on-site cytology evaluation:ROSE)の有用性と異型細胞の細胞所見について検討した.

    方法:経気管支生検と超音波気管支鏡ガイド下針生検に ROSE が施行され,組織診断が確定した 254 例を用いた.ROSE と細胞診最終報告(final cytology report:FCR)で,悪性疑い以上の組織診断一致率と判定別の悪性危険度を検討した.異型細胞は良性群と悪性群に分類し,背景,出現パターン,大型孤立性細胞の有無,細胞質の所見を比較した.さらに悪性群で有意差のあった壊死と大型孤立性細胞を,悪性を疑う所見として再評価した.

    成績:ROSE は FCR と比べ感度と特異度に差はなく良好だったが,悪性危険度は異型細胞で 18/28(64.3%)と高い傾向にあった.異型細胞の悪性群は壊死と大型孤立性細胞が有意に多く,化生性細胞質は良性群で有意に多かった.再評価では感度が FCR と同程度に上昇し,異型細胞の悪性危険度は 6/14(42.9%)と改善された.

    結論:ROSE の診断精度は高く,壊死と大型孤立性細胞の所見で再評価することで悪性危険度は改善し,診断精度は向上する.

  • ―オートスメア標本での検討―
    川崎 隆, 北澤 綾, 齋藤 美沙紀, 弦巻 順子, 佐藤 由美, 木下 律子, 西村 広栄, 桜井 友子, 三尾 圭司, 西田 浩彰, 渡 ...
    2024 年63 巻6 号 p. 295-305
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/08
    ジャーナル 認証あり

    目的:The URO17® bladder cancer test(URO17 test)は,免疫染色で尿中の keratin 17(K17)陽性の尿路上皮癌細胞を検出する新しい検査法である.今回,尿細胞診と URO17 test の精度の比較を行った.

    方法:自然尿細胞診が行われ,1 年以内に臨床・病理学的に良悪が確定した 176 例を対象とした.塗抹標本はオートスメア法で作製し,マウス抗ヒト K17 抗体である URO17®抗体を持いて免疫染色を行った.細胞質に強陽性の細胞 20 個以上を URO17 test 陽性と判定した.

    成績:悪性 101 例中 98 例が尿路上皮癌(UC)であった.UC の検出感度,特異度は,尿細胞診が 63.3%,82.1%,URO17 test は 83.3%,76.9%であった.UC 細胞の出現数,UC の K17 低発現や反応性尿路上皮の K17 発現が URO17 test の精度に影響した.低異型度 UC の検出については,URO17 test の感度は 77.8%と尿細胞診の 33.3%を上回る結果であった.

    結論:URO17 test は,既存の設備を利用して行える検査法であるが,液状化細胞診の手法でより高い精度が得られる可能性がある.

  • 河原 邦光, 廣島 健三, 吉澤 明彦, 南 優子, 羽場 礼次, 竹中 明美, 柿沼 廣邦, 三宅 真司, 澁木 康雄, 佐藤 之俊
    2024 年63 巻6 号 p. 306-314
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/08
    ジャーナル 認証あり

    目的:日本肺癌学会・日本臨床細胞学会の新呼吸器細胞診報告様式の異型細胞にみられた反応性異型細胞の特徴を明らかにする.

    方法:非喀痰・非良性腫瘍症例 28 枚に出現した反応性異型細胞の種類を判定した.この際,気管支上皮細胞を,通常は線毛を有する大型細胞の A 型と線毛を有さない小型細胞の B 型に分けて判定した.さらに 7 人中 4 人以上の観察者が悪性疑い/悪性とした過剰診断(OD)12 例の背景,標本上の出現細胞数,異型細胞数,集塊の大きさ,集塊の重積性,N/C 比,核の大小不同,線毛,核形,核縁,核クロマチン,核小体,細胞質を検討した.

    成績:杯細胞,A 型および B 型気管支上皮細胞,Ⅱ型肺胞上皮細胞,肺胞マクロファージ,扁平上皮細胞がみられ,気管支上皮細胞は 64%を占め B 型が多かった.気管支上皮細胞がみられた OD 症例では標本上の出現細胞数,異型細胞数,大型集塊が非 OD 症例に比し多かった.

    結論:反応性異型細胞は 6 種あり,気管支上皮細胞が優勢であった.気管支上皮細胞の診断には B 型の認識と過剰診断をきたす 3 つの細胞所見への留意が必要である.

症例
  • 室木 魁人, 坪佐 朱莉, 西川 裕子, 岩﨑 由恵, 南部 尚子, 久保 勇記, 本間 圭一郎, 瓜生 恭章, 寺田 信行, 中塚 伸一
    2024 年63 巻6 号 p. 315-320
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/08
    ジャーナル 認証あり

    背景:胸部 SMARCA4 欠損未分化腫瘍は重喫煙歴の成人男性に好発するまれな腫瘍であり,胸郭内に大きな腫瘤を形成する.われわれは胸水穿刺液セルブロックを用いて診断した本腫瘍の一例を報告する.

    症例:重喫煙歴を有する 80 歳代,男性.CT で左肺門から縦隔にかけて広がる巨大腫瘤および胸水貯留を指摘され,左胸水穿刺を施行した.細胞診では細胞結合性に乏しい腫瘍細胞が孤立散在性に,または細胞結合性の弱い集塊を形成して出現していた.細胞診,セルブロック HE 標本ではラブドイド細胞が認められた.免疫細胞化学染色では,腫瘍細胞は cytokeratin AE1/AE3,TTF-1,claudin-4,E-cadherin 陰性であった.SMARCA4,SMARCA2 の発現は消失し,SMARCB1 は保たれていた.幹細胞マーカーの CD34 はびまん性に,SOX2 は部分的に,SALL4 は散在性に陽性であった.以上より,本腫瘍を胸部 SMARCA4 欠損未分化腫瘍と診断した.

    結論:胸部 SMARCA4 欠損未分化腫瘍は高悪性度であり,受診時にすでに全身状態が悪いことも多い.組織検体の採取が困難であっても,胸水穿刺液のみで本腫瘍を診断できる可能性を示した.

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