日本臨床細胞学会雑誌
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最新号
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原著
  • 岩下 玄基, 大澤 幸希光, 寺尾 友伽, 小田嶋 広和, 大西 崇文, 岡田 仁克, 服部 学
    2024 年 63 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    目的:液状化検体細胞診(liquid-based cytology:LBC)は国際的に広く普及している.その中でも ThinPrep® 法は世界で最も用いられている標本作製法であり,ThinPrep® 法の悪性細胞検出の感度について検討を行う意義は大きいと考える.そこで本研究では ThinPrep® 法により作製した LBC 標本の悪性細胞の検出に必要な細胞数について検討を行った.

    方法:専用バイアル内の固定液に,口腔細胞 50 万個に対してヒト子宮頸がん由来細胞株(HeLa)がおのおの 5000 個,500 個,50 個,5 個となるように調整して混和し,試料とした.各条件につき 3 個の試料を用意し,計 12 枚の LBC 標本を作製した後に,標本中の HeLa の細胞数を算出した.

    成績:HeLa をおのおの 5000 個,500 個,50 個混和した条件では標本から悪性細胞が検出されたが,HeLa を 5 個混和させた条件では,悪性細胞が検出された標本と検出されない標本があった.

    結論:ThinPrep® 法では悪性細胞の検出には悪性細胞が 1 バイアルに 50 個以上含まれることが必要であることが示唆された.

症例
  • 吉田 由紀子, 照井 仁美, 尾原 健太郎, 坂井 健良, 亀山 香織, 深町 茂, 青木 大輔, 大喜多 肇
    2024 年 63 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    背景:子宮頸部腺扁平上皮癌と小細胞癌はまれな腫瘍である.今回,腺扁平上皮癌いわゆる “すりガラス細胞癌” と小細胞癌が共存した子宮頸癌の 1 例を経験したので報告する.

    症例:30 歳代,女性.不正出血を主訴に,直接塗抹法による頸部細胞診を施行.小型で裸核様,細顆粒状クロマチンを有する異型細胞と大型核で核小体明瞭な異型細胞がシート状配列で出現.小細胞癌疑い,腺癌の共存も否定できないと診断した.生検では神経内分泌分化を伴った浸潤癌と診断された.臨床進行期 IB2 期 子宮頸癌の診断となり,広汎子宮全摘出術を施行.小細胞癌成分を伴ったすりガラス細胞癌の診断であった.骨盤内リンパ節に転移は認めず,pT1b1N0M0 と診断された.術後化学療法を施行し,術後 6 年が経過した現在,再発・転移は認めていない.

    結論:すりガラス細胞癌はまれな腫瘍であるが,遭遇する機会があることを認識し,鏡検の際,扁平上皮癌と腺癌のどちらとも診断しえない細胞像に遭遇したときには,すりガラス細胞癌の可能性も考慮する必要がある.また子宮頸部小細胞癌は,複数の組織型と共存することが比較的多いことを念頭に置いて診断することが重要であると考えられた.

  • 今村 彰吾, 山口 夏帆, 谷川 雅彦, 中山 正道, 草野 弘宣
    2024 年 63 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    背景:子宮体部原発の奇怪核を伴う平滑筋腫を経験したので報告する.

    症例:40 歳代,女性.過長月経で近医受診し,平滑筋腫とされていたが,増大を認めたため,当院へ紹介受診となった.MRI では子宮に複数の腫瘤を認めた.術中迅速時の捺印細胞診では大型でクロマチン増量した異型細胞が散在性にみられた.異型細胞は核に多形性があり分葉状,核クロマチンは融解状,核内封入体や核小体を認め,細胞質はライトグリーン好性もしくは認められなかった.組織学的には平滑筋細胞に類似した奇怪な紡錘形細胞が増殖していた.異型細胞は大型で多形性の強い単核もしくは多核で好酸性の細胞質を有し,核内封入体も散見された.核分裂像や腫瘍壊死は認められなかった.免疫組織化学では p16 がびまん性に陽性,p53 は部分的に陽性(野生型),Ki-67 陽性率は 1%未満であった.

    結論:子宮内膜細胞診において平滑筋肉腫を疑うような異型細胞が採取されても,壊死や核分裂像,融解状の核クロマチン所見等を確認することで,本疾患を鑑別に挙げることができる.

  • 野口 裕史, 徳満 貴子, 森田 勝代, 峰松 映子, 白濱 幸生, 黒木 栄輝, 前川 和也, 佐藤 勇一郎
    2024 年 63 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    背景:肺の類上皮血管内皮腫(EHE)は細胞診において,腺癌に非常に類似する細胞像を示すが,特徴的な異染性を示す間質性粘液が認められた 1 例を経験したので報告する.

    症例:50 歳代,女性.以前より多発肺結節と肝腫瘤が指摘されていたが,左肺門部腫瘤が増大したため,EBUS-TBNA による細胞診と生検が施行された.細胞診で肺腺癌を疑ったが,生検では EHE 疑いで,その後肺下葉切除術が行われ,最終的な病理診断は EHE とされた.EBUS-TBNA の細胞像は,管腔様構造を示す上皮様集塊が観察され,核偏在性や核不整,核細胞質内空胞もみられた.本例では上皮様集塊とともに May-Giemsa 染色で異染性粘液様物質がみられた.当院で施行された肺・縦隔細胞診を再検討したところ,異染性粘液様物質は,本例以外に肺浸潤性粘液性腺癌症例で認められたが,腫瘍細胞内にも異染性物質をもつ上皮性粘液であり,異なる所見であった.

    結論:本例の細胞像は,腺癌細胞と類似点が多く鑑別が困難であったが,May-Giemsa 染色で異染性を示す間質性粘液は EHE を推定するうえで重要な所見になると思われた.

短報
  • 内田 準, 田中 小夜, 安河内 達郎, 甲斐 桜子, 村田 建一郎, 山田 優衣
    2024 年 63 巻 1 号 p. 25-27
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    背景:唾液腺領域でアミラーゼ結晶を伴う唾液腺結節はまれであり,その細胞学的所見を報告する.

    症例:70 歳代,女性.左耳下部の結節を指摘され,当院耳鼻科へ紹介受診となった.超音波検査および MRI では約 20 mm 大の境界明瞭な結節を認めた.穿刺吸引細胞診では,炎症細胞や組織球とともに多数の結晶成分が散見された.多彩な形状を示す結晶成分は免疫細胞化学にてα-アミラーゼ陽性であった.

    結論:穿刺吸引細胞診にて多彩な形状を示す結晶が採取された場合はアミラーゼ結晶を念頭に置く必要がある.

  • 伊佐山 絹代, 舟橋 幸子, 川口 宏美, 佐藤 沙知子, 李 治平, 安達 章子
    2024 年 63 巻 1 号 p. 28-30
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    背景:Primary sclerosing cholangitis(PSC)は予後不良のまれな疾患である.

    症例:30 代,男性.潰瘍性大腸炎の併発,肝機能障害,著明な胆管狭窄より PSC を疑い,肝生検で PSC の診断となった.経過中,胆汁細胞診においてやや大型の異型細胞が出現し,胆管癌との鑑別が困難であった.しかし,内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)による胆管ブラシ擦過の細胞には明らかな異型を認めなかった.

    結論:PSC における胆汁細胞診は胆管ブラシ擦過の細胞所見を併せて総合的に判断することが有用と思われた.

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