日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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ISSN-L : 0387-1193
33 巻, 4 号
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  • 藤吉 啓造, 田中 博志, 田崎 民和, 蓮尾 泰之, 森 一朗, 黒松 肇, 江口 博敏, 薬師寺 道明, 藤吉 りさ
    1994 年 33 巻 4 号 p. 599-603
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    進行子宮頸癌症例に対しNeo-Adjuvant Chemotherapyとして白金製剤による動注化学療法を施行し, 子宮膣部剥離細胞の経時的変化を観察することにより, 治療効果判定の可能性を検討した.
    対象は1989年7月より1992年5月までに当科において診断された進行子宮頸癌患者14例である. 治療法は, シスプラチンもしくはカルボプラチンを左右の内腸骨動脈より注入した. 動注化学療法は3週ごとに2コース行い, 動注前および動注1コース後1週目, 2週目, 動注2コース後1週目, 2週目に子宮膣部病巣部より綿棒i擦過による細胞診を行った.
    細胞診では腫瘍細胞数および正常細胞数の推移, また, 細胞変化の個々の所見として, 腫瘍細胞における核腫大, 核濃縮, 空胞変性, 多角化の4つの所見の出現頻度に注目した.
    治療の経過に伴い腫瘍細胞数の減少および正常細胞数の増加傾向が認められ, 治療効果として治療開始後より核腫大, 核濃縮細胞の出現が著明で治療の経過に従い, 核濃縮細胞の出現頻度は減少した. また空胞変性細胞も治療開始後より認められたが増加傾向はみられず出現頻度は低かった. 多核細胞の出現頻度は治療の経過とともに増加し, 抗腫瘍効果を反映していると考えられ, 最も客観的な指標となりうると考えられた.
  • 鳥居 貴代, 布引 治, 甲斐 美咲, 野田 定
    1994 年 33 巻 4 号 p. 604-611
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    性周期各相の子宮内膜変化について, 内膜細胞診と同時に施行された内膜組織診とを比較し, 性周期各相に対応する細胞集団および構成細胞の形態変化から組織構築を推定し得る細胞診断基準を求め, 内膜細胞診における性周期推定の応用を試みた.
    性周期は, 増殖期は前期・後期, 分泌期は前期・中期・後期にわけ, それぞれの特徴的所見をNoyesのDating the endometriumや五十嵐のEndometriogramを参考として10項目-(1) 腺細胞の核分裂 (2) 核の偽重層 (3) 核下空胞 (4) 分泌像 (5) 間質の浮腫 (6) 間質の偽脱落膜様変化 (7) 問質細胞の核分裂 (8) 白血球浸潤 (9) 腺管の蛇行 (10) 螺旋動脈-からなる診断基準を作成し, その有用性を検討したととろ, 個々の細胞所見のみならず被覆上皮, 腺管, 間質細胞などの組織構築をふまえた出現様式を判定基準に取り入れたことで, より組織診に近い診断が得られることがわかった.
  • 渡辺 明彦, 佐々木 寛
    1994 年 33 巻 4 号 p. 612-619
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮内膜癌 (29例) と子宮内膜増殖症 (17例) のパラフィン包埋切片を用いて, Feulgen染色による核DNAの定量および免疫染色によるHER-2/neu protein (HER-2) の定量を行い, DNAPloidyおよびHER-2過剰発現と腫瘍の進展および予後との関連を検討した.なお, それらの定量には顕微鏡画像解析装置 [Cell Analysis Systems (CAS)] を用いた.
    DNA ploidyについては, aneuploidyの例は内膜癌の37.9%(11/29) に認められたが, 内膜増殖症では腺腫性増殖症の1例のみで5.9%(1/17) であった.内膜癌の5年生存率はdiploidy群が88.9%, aneuploidy群が63.6%であり, 両群間の予後に差のある傾向が示唆された (0.05<P<0.1). HER-2過剰発現は内膜癌の13.8%(4/29), 内膜増殖症の5.9%(1/17) に認められた. そしてHER-2過剰発現例においては, 病理組織学的に脈管侵襲, 高度の筋層浸潤および卵巣転移が多くみられた.特に卵巣転移とHER-2過剰発現との間には有意な相関が認められた (p<0.05).
  • Yasuhiko Kiyozuka, Haruo Nishimura, Fumihiro Murakami, Kazuo Imamura, ...
    1994 年 33 巻 4 号 p. 620-627
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    神経芽細胞腫は一般に副腎や交感神経節あるいは後腹膜腔を起源として小児に発生し, 成人での報告はまれである. また, 卵巣に発生した神経芽細胞腫は過去に7例の報告があるが, うち, 成熟嚢胞性奇形腫からの悪性転化によることが確認されたのは, わずか2例にすぎない. 今回, 不明熱と貧血を主訴とした23歳の女性の末梢血所見 (leukoerythroblastic picture). 骨髄穿刺標本および腹水細胞診より神経芽細胞腫を疑い, 骨盤内腫瘍として卵巣原発病変を認めた症例を経験した. 摘出卵巣腫瘍組織は成熟嚢胞性奇形腫と神経芽細胞腫の2成分より構成され, 後者は, 奇形腫を構成する正常神経組織からtransitioalに発生している像が観察されたことより, 奇形腫の悪性転化によるものと診断した. 細胞診所見では, クロマチンに富む核を有し胞体に乏しい円形ないし楕円形の異型細胞が, rosette様配列に近い集族傾向を呈し, ときにsyncytialな融合を示すという特異な像が観察された. 神経組織関連抗原および中間系フィラメントを中心とした免疫染色では, NSE (neuron-specific enolase), laminin, fibronection, CK-BB (creatinine kinase) に強陽性であった. 臨床経過と文献的考察を詳述し, 希少例として報告する.
  • 広川 満良, 大畑 純子, 伊禮 功, 三上 芳喜, 物部 泰昌, 森谷 卓也, 定平 吉都, 清水 道生
    1994 年 33 巻 4 号 p. 628-630
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    われわれは甲状腺の乳頭癌に特徴的であるといわれているropy colloidを細胞診学的, 病理組織学的に検討した.穿刺吸引材料ではropy colloidは乳頭癌82例中24例 (29%) に出現した. 組織学的には51例 (62.2%) に同様の形態をしたコロイドを認め, ropy colloidはすでにin situの状態で存在していると考えられた. ropy colloidの発現にはコロイドが濃縮することと, 乳頭状に増殖する腫瘍の組織構築が関係していると推測された.
  • それらの鑑別におけるLeu-M1の有用性
    丹原 美佳, 大杉 典子, 広川 満良
    1994 年 33 巻 4 号 p. 631-634
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    われわれは乳頭状増殖を示す甲状腺疾患を鑑別する目的で, 乳頭癌, 腺腫様甲状腺腫, バセドウ病の組織標本と捺印塗抹標本を対象に, 組織化学的, 免疫組織化学的検討を行った.Alcian blue染色および抗EMA抗体, 抗Leu-7抗体, 抗Leu-M1抗体などを用いた免疫染色において, 乳頭癌に対する感度と特異性はLeu-M1がもっとも高かった. われわれは日常の外科病理診断や細胞診断において, Leu-M1を用いた免疫組織化学的検索が乳頭状構造を示す甲状腺疾患の鑑別に有用であると考える.
  • 管内性乳頭腫と乳頭腺管癌の比較を中心に
    北村 隆司, 光谷 俊幸, 清野 重男, 土屋 眞一
    1994 年 33 巻 4 号 p. 635-644
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳頭状病変の鑑別点を探る目的で, 組織学的に診断が確定している管内性乳頭腫 (IDP) 12例と乳頭腺管癌 (PTC) 55例 (計67例) の穿刺細胞診を用いて, その特徴を明らかにするとともに, IDPとPTC両者の細胞学的差異について比較検討を行い, 良・悪性の鑑別点を探った. その結果, IDPの出現形態は8型に分類された. このうち多くの症例に共通した出現形態は間質成分随伴状配列であった. さらに上皮増生があるIDPには紡錘形核からなる重積性集団や大型核や核の大小不同がみられる乳頭状配列を認めた. PTCの出現形態は9型分類された. 組織亜分類別にみると乳頭型, 面疱型では細胞異型が強く, その細胞診断は容易であった. 大多数の節状型および乳頭管状型, さらに半数の低乳頭型や乳頭型の一部の症例は細胞異型が乏しく, under-diagnosisされやすい傾向があった. 特に節状型, 乳頭管状型は核異型が軽度であり, 良・悪の鑑別には構造異型を踏まえた細胞診断が必要であった. その構造異型のポイントは節状型では類円形細胞が規則正しく配列し, 腺腔への極性がみられる点であり, 乳頭管状型は筋上皮細胞を伴わない腺管状配列であると考えられた. 乳腺乳頭状病変の細胞診断には組織像を十分に理解し, 構造的な異型を念頭において観察することが重要と思われた.
  • 小室 邦子, 小野寺 博義, 武田 鐵太郎, 大沼 真喜子, 村田 孝次, 松田 尭, 中村 克宏, 立野 紘雄, 佐藤 郁郎, 山田 章吾
    1994 年 33 巻 4 号 p. 645-649
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    体腔液細胞診において, 細胞集塊内の結合組織の存在が中皮細胞の同定に役立つと思われたので報告する.
    対象は大腸癌症例の腹水24例.内訳は, 細胞診陰性であった16例 (術中採取13例, 穿刺採取3例) と陽性の8例 (術中採取4例, 穿刺採取4例) である.形態的に中皮細胞と判定できる上皮様中皮細胞集塊55個と明らかな癌細胞集塊87個について, Papanicolaou染色標本脱色後, 銀染色を施行し細胞集塊内の線維性結合織の有無を観察した.
    中皮細胞集塊では, 55個中37個 (67.3%) に線維性結合織を認めた.術中採取に限らず穿刺採取でも高率に線維性結合織を認めた.癌細胞集塊では, 濃染のため判定不能な集塊が32個 (36.8%) あったが, 残りの集塊55個 (63.2%) には, 明らかな線維はみられなかった.また, いずれの集塊でも細胞集塊辺縁が黒く縁どりされたように染まるものが少数みられた.
    癌細胞か中皮細胞か問題となるような異型細胞集塊の内部に線維性結合織を認めるとき, 中皮細胞である確率がきわめて高く, 癌細胞との鑑別に応用できる所見と思われた.
  • 松田 壮正, 松田 真弓, 工藤 里美, 山田 智恵子, 川村 知正, 針生 秀樹, 井筒 俊彦, 利部 輝雄, Heinz-Ulrich ...
    1994 年 33 巻 4 号 p. 650-656
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞遺伝学的知識の集積に伴って染色体分析の必要性と需要が増し, 簡便で迅速な検査法の確立が望まれている.しかし, 分裂した細胞のみを対象とする従来の染色体分析法では熟練と時間が要求され, また培養に伴う細胞群の選択がおこる.
    蛍光インサイツーハイブリダイゼーション (FISH法) は間期細胞核においても染色体分析を可能にした (間期細胞遺伝学).ハプテン化染色体特異的プローブを用いたFISH法は, 染色体数の計算と数的異常の検出に汎用されてきたが, 約48時間を要し, ハプテン検出に伴う煩雑な免疫細胞化学的処理過程が必要である.
    この煩雑さを解消するため, 蛍光色素直接標識セントロメアプローブを用いて, 18トリソミー, 21トリソミーおよびXXYの染色体異常患者の末梢リンパ球にFISH法を適用したところ, おのおのの症例に対応するコピー数が得られた.しかも所要時間を2時間まで短縮できたうえ, 操作段階を半減することが可能であった.このように, 蛍光色素直接標識プローブによるFISH法は, 染色体の数的異常の, 迅速かつ手技的間違いのない簡便な検査法として, 染色体数異常疾患の診断に有用であることを明らかにした.
  • 細胞診標本による免疫染色の試み
    程 修司, 紀川 純三, 皆川 幸久, 石原 浩, 板持 広明, 寺川 直樹
    1994 年 33 巻 4 号 p. 657-659
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    78歳婦人に発症した膣原発悪性黒色腫の1例を経験し, その細胞診標本に免疫染色を試みた.膣後壁に小豆大の表面平滑な嚢胞性腫瘤形成と周辺部の色素沈着を認め, 擦過細胞診で胞体内に褐色小穎粒を有する腫瘍細胞がみられた.細胞診標本を用いて漂白法とS-100蛋白, neuron性specific enolase, neuro-filament 蛋白による免疫染色を施行した結果, 腫瘍細胞はすべて陽性であった.本症の診断に際して, 細胞診標本におけるこれら免疫染色の有用性が示唆された.
  • Shinichi Igarashi, Keiji Naito, Shigeo Sato, Koichi Nara, Sadahiro Hos ...
    1994 年 33 巻 4 号 p. 660-663
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    68歳の女性に生じた子宮頸部悪性黒色腫の1例を報告する: 奇異核をもった巨細胞, 著明な核小体, 異常細胞質, メラニン色素がみられた. 免疫細胞化学的に, 腫瘍細胞はHMB. 45を発現してした. 本腫瘍の診断とbiological behaviorの把握に細胞診および免疫細胞化学が有用である.
  • 伏見 博彰, 中室 嘉郎, 西山 茂, 西原 和代, 藤中 浩樹, 虎頭 廉
    1994 年 33 巻 4 号 p. 664-668
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    内膜擦過細胞診および組織診にて癌と誤診される可能性がある多種の化生上皮を伴った子宮内膜増殖症の1症例を経験したので, その細胞像および組織像を報告する. 症例は53歳, 主婦. 性器出血を主訴として来院し, 子宮内膜の擦過細胞診, 組織診検体が採取された. その後子宮摘出術がなされ, 内膜組織診, 捺印細胞診検体が採取された. これらの検体には, 子宮内膜増殖症の所見に加え, 大型細胞の出現が認められた. これらの大型細胞は,(1) 淡明で豊富な明るい細胞質と中心位の核を有するeosinophilic metaplasia,(2) それに加えて細胞表面に線毛を有するciliated cellmetaplasia,(3) 著明な粘液産生による偏在性の核を有するmucinous metaplasiaの3種類に大別された.
    子宮内膜増殖症には種々の化生上皮が出現することが知られており, この症例の化生上皮は主として卵管上皮への分化をとっていると考えられた.
    そして, これらの化生上皮は大型細胞からなることもあって, 癌と誤診される可能性がある. 化生上皮の種類, 形態を熟知し, 癌との鑑別を厳密に行うことが重要である.
  • 石倉 浩, 櫻木 範明, 十亀 真志, 野村 英司, 大河内 俊洋, 石黒 達也, 藤本 征一郎, 吉木 敬
    1994 年 33 巻 4 号 p. 669-672
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    AFPを産生する子宮内膜癌を経験したので報告する.患者は63歳女性.主訴は不正出血.術前血清AFP値は173,000ng/mlであった. 子宮体部は内向性・び漫性の体部癌により置換され, 右卵管周囲には静脈内腫瘍塞栓が認められた.捺印細胞診ではやや小型ないし中型の異型上皮細胞の小集族が多数みられた. 病理組織学的には腫瘍細胞の大部分はグリコーゲンを豊富に含み髄様増殖を示す低分化腺癌で, 一部に管状構造形成を伴う高分化・中分化腺癌が認められた. 腫瘍細胞はAFPの免疫組織化学染色で強陽性であった. 血清中AFPのレクチン結合性は卵黄嚢腫瘍型であった. 以上から本子宮内膜癌は肝様腺癌の組織像と一致するものの, AFPのレクチン結合性が胃などでみられる典型的な肝様腺癌とは異なり, その発生に興味がもたれた.
  • 伏木 弘, 藤村 正樹, 山川 義寛, 堀 慎一, 泉 陸一
    1994 年 33 巻 4 号 p. 673-678
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    古くから顆粒膜細胞腫と子宮内膜癌の合併例についての報告があるが, 本邦においてはわれわれの検索する限りでは8例にすぎず, 術前に高エストロゲン血症を確認した報告がない. 今回われわれは, 閉経後に高エストロゲン血症を呈する64歳の本症例を経験した. 患者は不正性器出血を主訴に来院し, 子宮内膜生検で内膜型腺癌, 高分化型, 血中ホルモン測定でE2: 56pg/ml, FSH: 15.8mIU/ml, 画像診断にて右卵巣が栂指頭大の一部嚢胞性の腫瘤としてみられ, ホルモン産生腫瘍合併子宮内膜癌の診断のもとに手術を行った. 術後診断は, 栂指頭大の顆粒膜細胞腫を伴う子宮内膜癌であった. 子宮内膜癌組織のエストロゲンレセプターとプロゲステロンレセプターは高値を示し, 内膜癌および顆粒膜細胞腫のp53蛋白, c-erbB-2蛋白, 上皮増殖因子受容体 (EGFR) の発現を免疫組織化学的に検討したところ, p53蛋白のみが顆粒膜細胞腫で陽性であった. さらに顆粒膜細胞腫のフローサイトメトリー分析よりDiploidpatternでS期が26.5%と高比率を示したので文献的考察を加えて報告する.
  • 子宮外臓器原発の悪性細胞が子宮頸部および内膜細胞診に出現した症例の検討も加えて
    加藤 久盛, 西中 健二, 仲沢 経夫, 中山 裕樹, 岡島 弘幸, 中村 満美子, 亀田 陽一, 飯田 萬一
    1994 年 33 巻 4 号 p. 679-686
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1. 昭和59年から平成元年の間に, 当科において経験した転移性子宮癌のうち4例を症例報告した. 1) 原発巣は胃癌2例, S状結腸癌1例, 卵管癌1例であり, 全例転移巣である子宮病変から発見された. 2) 細胞診の所見としては, 子宮内膜まで広く腫瘍細胞が浸潤している場合は子宮原発腫瘍の所見と同様に腫瘍性背景がみられ, 印環細胞のような特徴的なものを除くと明快に鑑別することは困難であった.
    2. 平成元年1月より平成4年10月までに施行した婦人科細胞診21137例のうち子宮外臓器原発の悪性腫瘍26例につき検討した.1) 手術および剖検によって子宮への転移の有無を確認できたのは19例であった. うち子宮転移がなかった10例は, 全例に少量ながらも腹水が存在していたため内膜吸引細胞診にて経卵管的に細胞を採取し得たものと思われた.2) 腫瘍性背景は子宮転移がない症例にはほとんどみられなかったが, 転移のある場合には腫瘍性背景は浸潤の強弱により異なった.3) 細胞診所見を契機として原発巣を検索し得た症例や, 腹腔内播種が予想できた症例を経験したので, 的確な臨床情報を得ながら, 各臓器の腫瘍の組織学的, 細胞学的特徴を認識し判定にあたることの必要性を感じた.
  • 伊禮 功, 広川 満良, 真鍋 俊明, 畠 栄
    1994 年 33 巻 4 号 p. 687-690
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腺腫様甲状腺腫内に転移した大腸癌の1例を報告した. 患者は肝硬変と肝細胞癌を有する70歳, 女性で, 肝性昏睡のために死亡した. 剖検を行うと, 大腸と甲状腺の腺腫様甲状腺腫内に高円柱状異型細胞よりなる腺癌がみられた. その他の臓器には腺癌はみられなかった. 腺腫様甲状腺腫内腺癌の鑑別診断としてcolumnar cell variantの乳頭癌と大腸癌の転移が考えられた. 免疫組織化学的検索にて, 腺癌はCEAに陽性で, サイログロブリンに陰性であったことより, われわれは大腸癌が腺腫様甲状腺腫内に転移したと結論づけた. このような症例の鑑別診断においては免疫組織化学的検索が有用と思われた.
  • 金城 光幸, 平 圭子, 照屋 彰, 饒平名 長令, 喜納 治男, 上原 哲夫, 内間 久隆, 国島 睦意
    1994 年 33 巻 4 号 p. 691-696
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    男性乳癌で非浸潤性アポクリン癌と分類した方がよい症例を経験したので報告する.症例は74歳男性. 右乳房腫瘤を主訴として来院した. 迅速病理診断が施行され悪性と診断された. そのときの生検材料より捺印標本を作製しさらに一部を電顕用に固定した. 細胞像は, 散在性あるいはゆるやかな結合性の集塊として認められた. 腫瘍細胞は大小不同が強く, 大きさは13-58μ, 平均30μであった. 細胞質は広く明瞭な好酸性顆粒がびまん性に認められた. 核は顆粒状クロマチンが増量し, 明瞭な核小体を1ないし2個認めるものもあった. 切除乳房は約300gで最長径約18cmで, 乳頭部の下層には約8cmの大きな嚢胞がありその内面より多発性乳頭状の腫瘍性病変が認められた. 組織学的には, 細胞質が強く好酸性の腫瘍細胞が主として乳頭状構造をとっており, 腫瘍細胞は嚢胞内に限局していた. 組織学的にアポクリン癌の形態を示す非浸潤性乳管癌であった.また, 抗gross cystic disease fluid protein 15 (GCDFP-15) による免疫染色を行ったが, 腫瘍細胞のほとんどが抗GCDFP-15に弱陽性から一部強陽性を示した. 電顕的観察では, 腫瘍細胞の細胞質内にはきわめて多数のミトコンドリアが認められ, 他に少数個のオスミウム濃染の円形分泌顆粒を認めた. したがって本症例の強く好酸性の細胞質内顆粒はミトコンドリアが主体であると考えられた.
  • 中原 保治, 中原 由紀子, 木下 晴希, 三村 拓郎, 桂 栄孝
    1994 年 33 巻 4 号 p. 697-700
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    気管支肺胞洗浄液中に泡沫状物質 (foamy alyeolar casts) を認めたことが診断のきっかけとなったPneumocystis carinii肺炎の1例を経験した.
    症例は36歳女性.労作時呼吸困難, 乾性咳漱を自覚, 胸部X線上, 両肺びまん性微細粒状影がみられた.生来健康で, X線所見, 臨床症状から過敏性肺臓炎を疑った.しかし細胞診に提出された気管支肺胞洗浄液のパパニコロー染色で泡沫状物質が認められたことがきっかけでPneumocystis carinii肺炎と診断し得た.迅速に泡沫状物質の存在を指摘できる点で, 気管支肺胞洗浄液の細胞診が果たす役割は大きいと思われる
  • 神尾 多喜浩, 須古 修二, 吉田 慎一, 川村 房子, 一門 美江, 井東 さやか, 田上 圭二, 中島 昌道
    1994 年 33 巻 4 号 p. 701-705
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    心外膜に発生したきわめてまれな悪性リンパ腫を経験したので, その細胞診所見および組織学的所見を述べるとともに, 心臓原発悪性リンパ腫の診断における捺印細胞診の有用性, さらにその組織発生についても若干の文献的考察を加えて報告した.
    症例は63歳, 男性. 労作時の呼吸困難を主訴に当科受診. 画像上, 腫瘍は心臓の壁外性に発育増殖しており, 周囲の大血管に浸潤していた. 転移性腫瘍が疑われ, 精査されたが原発巣は確認されなかった. 確定診断のため試験開胸され, そのとき術中凍結標本が提出された. 捺印細胞診では, 核径は10-30μmと多彩で, 粗顆粒状の核クロマチンと1ないし数個の核小体を有する腫瘍細胞が散在性に出現し, ときに深い切れ込み核を認めた. 組織学的には心外膜の間質に中等大から大型の異型リンパ球が混在しながら増殖し, 核の切れ込みや核分裂像を認めた. 悪性リンパ腫が強く疑われ, 後に免疫組織化学的検索によりLCA, L 26陽性が確認され, B細胞由来の悪性リンパ腫 (diffuse, mixed type) と診断した.
  • 北村 幸郷, 元井 信, 加藤 雅子, 市原 冏一, 殿本 詠久, 浜崎 尚文
    1994 年 33 巻 4 号 p. 706-711
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    術前に穿刺吸引細胞診が施行された副腎褐色細胞腫の1例について病理組織学的, 免疫組織化学的および電子顕微鏡的に検索を加えて報告する.
    症例は54歳の女性で右季肋部痛を主訴に受診し, 画像診断にて肝下縁から右腎にかけて巨大腫瘍が発見され, 細胞診を施行した後, 摘出術が行われた. 細胞所見では術前および術後摘出腫瘍の穿刺吸引により採取したものはいずれも, 大小不同を示す類円形の核をもち, 胞体の豊かな腫瘍細胞が弱い細胞間結合を示して平面的に認められ, 一部に多核細胞を伴っていた. また, 免疫染色でchromogranin Aが陽性であった.
    組織所見では, 腫瘍細胞が血管に富んだ広狭さまざまな結合織により分葉され, いわゆる胞巣状配列を示し, 胞巣周囲には紡錘形の支持細胞が認められた. 免疫組織化学的検索ではchromogranin A, neuron specific enolase (NSE) が腫瘍細胞に陽性で, 胞巣周囲の支持細胞にはS-100蛋白が陽性であった. 電子顕微鏡所見では, 細胞質にカテコールアミン分泌穎粒が多数認められた.
    術前に穿刺吸引細胞診が施行された副腎褐色細胞腫は本邦ではまれで, 本症例では他の腫瘍の穿刺吸引細胞診における鑑別診断や, 他疾患の精査時に偶然採取された場合の診断に役立つ所見が得られ, 貴重な症例と考えられた.
  • 竹内 啓晃, 平井 莞二, 藤井 華子, 竹内 隆子, 亀井 美由紀, 平田 祐子, 原田 美枝, 益田 道義
    1994 年 33 巻 4 号 p. 712-716
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    気管支炎治療後, 呼吸困難と胸水貯留が出現し細胞診にて悪性リンパ腫 (ML) と診断後にIn Situ Hybridization (ISH), Polymerase chain reaction (PCR), Southern-Hybridization法を用いてEBV関連MLと診断された.さらに免疫組織化学染色にて細胞障害性リンパ球 (CTL) の標的となりえるEBV核・膜蛋白を多量に発現しており, 宿主免疫機能を考えるうえでも非常に興味ある症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.患者は免疫不全・低下を認めず, MLと細胞診断後, CTにて縦隔腫瘍が指摘された.剖検後の摘出組織切片のISHにてEBER (EBV encoded small RNA) を, 免疫染色にてCD21, EBNA-2 (EBV determined nuclearantigen-2), LMP (latent membrane protein) を腫瘍細胞内に陽性所見として認めた.EBV核・膜蛋白発現細胞はCTL免疫機構で排除され, 伝染性単核症を初め疾患は寛解する.しかし本症例は免疫異常は認めず多量の核・膜蛋白を発現し, 全身転移を有する興味ある症例であった.EBV関与を細胞組織学レベルで検索することは臨床病態, 予後, 免疫機構などを考察するためにも重要であると考えられた.
  • 畠 榮, 鐵原 拓雄, 物部 泰昌, 広川 満良, 真鍋 俊明
    1994 年 33 巻 4 号 p. 717-721
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は33歳, 男性.左頸部腫瘤を主訴に近医を受診し, 本院呼吸器内科に入院となった.
    生検されたリンパ節の捺印細胞診では多数の好酸球を背景に, 不規則な深い切れ込みをもつコーヒー豆様核を有する細胞が多く認められた.一部の細胞はCharcot-Leyden crystalを貧食していた.これらの細胞は免疫組織化学的にS-100蛋白陽性, リゾチーム陰性で, 電子顕微鏡的にはBirbeck穎粒が認められ, 好酸球性肉芽腫と診断された.好酸球性肉芽腫でCharcot-Leyden crystalやそれらを貧食した組織球を認めることはまれであるが, それらの存在は好酸球性肉芽腫の診断に有用であると考えられた.
  • 甲斐 俊一, 石川 よしみ
    1994 年 33 巻 4 号 p. 722-725
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    近年, 画像診断法の発達により膵臓疾患の診断は著しく進歩してきた. しかし, それらの確定診断は困難をきたす場合が多い. 特に膵嚢胞性病変においては最終診断が病変部位から直接採取された細胞および組織を用いて行われるため, 術中の迅速細胞診を経験することもまれにあり, その重要度は高い.
    今回われわれは健診時の腹部超音波検査で膵嚢胞性病変を指摘され, 良性を疑うも悪性を否定できず, 術中の迅速穿刺吸引細胞診でCystadenoma of thepancreasと診断し得たことにより, 診断および術式の決定に有用であった症例を経験した.
  • 前多 松喜, 夏目 篤二, 山本 明美, 内田 一豊, 伊藤 以知郎
    1994 年 33 巻 4 号 p. 726-731
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    膵のSolid and cystic tumorは主に若年女性に発生するまれな腫瘍である.今回34歳女性の膵体部に発生した, 著明な石灰化を伴い浸潤性発育を示したSolid and cystic tumorを経験したので報告する.腫瘍は4.5×4×3cm大, 割面は充実性で著明な石灰化や出血を伴っていた.組織学的にはやや好酸性の胞体を持つ腫瘍細胞が充実性ないし偽乳頭状に増殖する.一部に細胞異型がありさらに周囲組織へ浸潤するところもみられた.捺印細胞像では核は軽度濃染し大小不同があり, しばしば多核の細胞も混じえていた.免疫組織学的にはα-1-アンチトリプシン, 膵アミラーゼ陽性で電顕では少数のチモーゲン様顆粒がみられ, 膵腺房への分化を示していた.以上の所見から本腫瘍はSolid and cystic tumorに相当するものであり, 悪性の性格を有していると考えられた.
  • 稲山 嘉明, 北村 和久, 中谷 行雄, 石井 みどり, 藤田 浩之, 天野 皓昭, 井関 基弘, 大久保 隆男
    1994 年 33 巻 4 号 p. 732-738
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    後天性免疫不全症候群 (AIDS) 患者に発症した重症クリプトスポリジウム症の1例を報告した.
    患者は24歳男性.血友病の治療に用いた血液製剤よりHIVに感染, カリニ肺炎を併発しAIDSを発症.その後, 難治性下痢を主訴に抗生剤投与を受けるも改善せず, 糞便検査にて小形アメーバ様の構造物を認め, 直腸生検にてクリプトスポリジウム症の診断を受けた.十二指腸液の細胞診・電顕的検索により, クリプトスポリジウムのオーシストやメロゾイトないしスポロゾイトと思われる細長い三日月状の構造物を多数認めた.喀疾からもオーシストが検出された.細胞診断にはギムザ染色のほか, Kinyoun抗酸染色が有用であった.
    クリプトスポリジウム症は, ヒトではまれとされてきたが, 最近AIDS患者の増加に伴って慢性下痢症の原因の一つとして注目されてきている.細胞診検査においても遭遇する可能性があり, その形態に習熟が必要と思われた.クリプトスポリジウムは小型であり, 通常の染色法では見逃しやすいので, 抗酸染色やショ糖液遠心沈澱浮遊法などの本原虫検出のための方法を実施するなど, 十分な対応が必要と思われた.
  • 野村 将春, 中村 忍, 松田 保
    1994 年 33 巻 4 号 p. 739-740
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 中島 正光, 渋田 秀美, 真鳥 光弘, 小田 敏郎, 亀井 敏昭
    1994 年 33 巻 4 号 p. 741-742
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
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  • 渡辺 芳明, 本間 慶一, 根本 啓一
    1994 年 33 巻 4 号 p. 743-744
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 小林 照明, 三宅 洋子, 品川 美和子, 前田 陽子, 辻本 志朗, 三浦 妙太
    1994 年 33 巻 4 号 p. 745-746
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 中村 厚志, 小林 克己, 谷口 雅, 野崎 正行, 深澤 雄一郎
    1994 年 33 巻 4 号 p. 747-748
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 黒川 和男, 辻本 正彦, 滝 一郎
    1994 年 33 巻 4 号 p. 749-750
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 行岡 直哉, 松下 巌, 鈴木 博子
    1994 年 33 巻 4 号 p. 751-752
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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