日本臨床細胞学会雑誌
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44 巻, 2 号
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  • 川辺 民昭, 黒木 登美子, 三宅 秀一, 古市 佳也, 金岡 明博, 浦田 洋二, 鷹巣 晃昌
    2005 年 44 巻 2 号 p. 49-55
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:ネフローゼ症候群 (NS) の尿中に出現する卵円形脂肪体 (OFB) の細胞学的特徴および細胞起源, 臨床的意義について検討した.
    方法:尿中にOFBを認めたNS患者31例を対象とし, 細胞学的に検討を行った. うち15例については免疫組織化学的に検討し, 腎生検が施行された16例には組織学的検討と臨床経過を調査した. 対照にはOFBの出現を欠くNS患者15例を用いた.
    結果:OFBは孤立散在性または細胞集団として出現した. 細胞集団のOFBのなかには, 核の重積性や核濃染を示すものがみられた. 免疫組織化学的には, 集団を作るOFBはCK陽性・CD15陽性・EMA陰性を示し, 孤立散在性のOFBの大部分はCD68陽性・CK陰性を示した. OFB出現症例の腎生検組織には, 尿細管萎縮・間質線維化・間質CD68陽性細胞などが多く認められ, 透析療法に移行した例が対照より有意に多かった.
    結論:OFBの細胞由来として近位尿細管上皮細胞とマクロファージが示唆された.NSにおけるOFBの出現は, 予後不良を示す因子と考えられた.また細胞集団で出現するOFBのなかに異型性を示すものがあるので, 注意する必要がある.
  • 癌未確定例由来の異型細胞との比較
    佐藤 美賀子, 二瓶 憲俊, 千葉 聖子, 室井 祥江, 塚原 孝, 高橋 一弘, 村岡 英夫, 冨田 健, 森谷 浩史, 森村 豊
    2005 年 44 巻 2 号 p. 56-62
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:癌未確定例に出現している肺扁平上皮由来の異型細胞 (非癌例に出現する可能性のある異型細胞) と上皮内癌例中の異型の弱い癌細胞を比較することで, 上皮内癌に出現する細胞像の特徴を明らかにした.
    方法:1992~1995年の集検喀痰細胞診で要精検例のなかで, 手術で上皮内癌が確認された4例と精査追跡したが癌が認められなかった13例 (以降癌未確定例) で, 高度の異型を示す細胞の大きさやN/C比を計測し, 核, 細胞質所見を観察し比較した.
    結果:上皮内癌例では出現異型細胞が有意に多かった (P<0.005). 上皮内癌例ではオレンジG好性細胞に, 切り立つ細胞辺縁をもつ細胞と細胞質に光輝性を示すものが31.1%, 66.7%と癌未確定例の4.0%, 15.4%に比して有意に高かった (P<0.005).
    結論:上皮内癌例に出現する異型細胞は, 細胞質の厚みや光輝性が増した細胞の割合が非癌例より高く, これらの所見をとらえることが早期癌発見に必要である.
  • Thinlayer法と従来法の比較
    赤松 節, 姫路 由香里, 長澤 優子, 山田 美弥子, 板垣 由香里, 筑後 千得子, 丸岡 央, 児玉 省二
    2005 年 44 巻 2 号 p. 63-68
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:子宮頸がん検診における標本の適正状況について, Thinlyer法と従来からの塗抹法を比較検討した.
    対象:平成15年度に当施設で行った検診標本1万7972件を対象とした.
    方法:標本作成法別に, Thinlyer法 (Cervexブラシ採取1万2601件, 綿棒採取4448件) と綿棒採取による直接塗抹法 (従来法) 923件についてBethesda Systen 2001の標本不適正の基準で年齢別, 項目別に比較検討した.
    成績:Thinlyer法は, Cervexブラシでは扁平上皮細胞 (上皮細胞) 不足72件 (0.6%), 移行帯由来細胞なし148件 (12%) で総数216件 (1.7%)(2項目あり4件) であった.同法の綿棒では上皮細胞不足316件 (7.1%), 移行帯由来細胞なし453件 (10.2%) で総数706件 (15.9%)(2項目あり61件) であった. 従来法は, 上皮細胞不足159件 (17.2%), 移行帯由来細胞なし66件 (7.1%), 乾燥8件 (0.9%) で総数180件 (19.5%)(2項目以上あり53件) であった. このように, Thinlyer法は従来法に比し不適標本が有意に少なかった (P<0.01%). 年齢別の不適標本数は, Thinlyer法は年齢間に差がないが, 従来法は高齢化とともに増加し, 60歳代では42%の出現率であった.
    結論:Cervexブラシ法によるThinlayer法は, 適正標本の作製に優れている.
  • 礒部 宏昭, 前田 昭太郎, 細根 勝, 片山 博徳, 山王 直子, 志村 俊郎, 横山 宗伯, 内藤 善哉
    2005 年 44 巻 2 号 p. 69-71
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:毛様細胞性星細胞腫は, WHO分類Grade Iの星細胞腫であり, Grade II星細胞腫との鑑別が治療上重要である. 今回われわれは, 圧挫細胞診による術中迅速細胞診が有用であった毛様細胞性星細胞腫の1例を報告する.
    症例:12歳, 男性. 交通事故による頭部外傷の検査目的で行われた頭部CTで, 偶然小脳腫瘍が発見された. 年齢, 部位, 臨床経過, MRI画像などより星細胞腫と診断し, 腫瘍摘出術を施行した. 術中迅速診断時に圧挫細胞診を行った. 腫瘍細胞は楕円形~紡錘形で, 細長い突起を有していた. また, オレンジG好染性の, いわゆるRosenthal fiber (凍結切片HE標本では不鮮明) を認め, 毛様細胞性星細胞腫と診断した.
    結論:毛様細胞性星細胞腫の術中迅速診断ではRosenthal fiberを同定できる圧挫細胞診が有用で, Grade II星細胞腫との鑑別が容易となる.
  • 兵頭 隆史, 小濃 啓子, 河野 哲也, 山田 茂樹
    2005 年 44 巻 2 号 p. 72-76
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:Anaplastic large cell lymphoma (ALCL) はその特徴的な細胞像, 組織所見により近年診断概念が確立された悪性リンパ腫の1亜型である.
    症例:23歳の男性で, 右肩甲骨部の皮下腫瘤として発症した. 2002年5月頃より右肩甲骨部の圧痛, 腫脹が出現し近医で抗菌薬を投与され症状は一時改善したが, 同年10月に再燃し, 同月, 右肩甲部膿瘍の疑いで当院整形外科に紹介された. 切開排膿が施行され細菌培養は陰性で, 細胞診では好中球背景で散在性に異型細胞が疑われた. 入院後の組織診にてALCLと診断された. 画像診断では腫瘤は胸腔内にわたり径10cm大に及んでいた. 化学療法に一時的に反応したものの, 翌年3月呼吸不全のために死亡した.
    結論:症例はneutrophil-rich CD30+ALCLと考えられ, 高度の好中球浸潤を炎症性背景と解釈したために, 細胞診断にて確定に至らなかったと推測される。
  • 樋口 佳代子, 中山 淳, 南口 早智子, 岩佐 葉子, 中野 聡, 石橋 恵津子, 堀川 美栄子
    2005 年 44 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:唾液導管癌 (Salivary duct carcinoma) は比較的まれな高悪性唾液腺腫瘍である. 耳下腺に発生した唾液導管癌3例の穿刺吸引細胞像を報告する.
    症例:症例1;49歳, 男性.左耳下腺腫瘍. 穿刺吸引細胞像では, 壊死物質とともに結合性が強く節状構造を示す上皮性大細胞集団を認めた. 細胞は多辺形から円柱形の豊富で厚い細胞質を有し, まれにintracytoplasmiclumina (ICL) を認めた. 核は遍在傾向を示し円形から楕円形で細顆粒状のクロマチンを有し, 腫大した核小体を認めた. 症例2;76歳, 男性. 左耳下腺腫瘍. 細胞像では壊死物質を背景に結合性が低下した充実性の上皮性細胞集団を認めた. 細胞の細胞質は厚く, 核細胞質比は高く, 核の配列不整や核小体の腫大が目立った. 症例3;66歳, 男性. 右耳下腺腫瘍. 細胞像ではきれいな背景中に結合性の低下した上皮性集塊が少量認められた. 腫瘍細胞は多辺形で顆粒状の細胞質を有し, 変性のため核が濃縮状で核細胞質比が低かった.
    結論:唾液導管癌の細胞診断では, 典型的な細胞像とともに症例間の細胞像の差異や壊死による細胞像の変化も念頭におくことが重要と考えられた.
  • 井上 信行, 古谷 知子, 木下 幸正, 大泉 えり子, 前田 智治, 古谷 敬三, 岡本 賢二郎
    2005 年 44 巻 2 号 p. 84-87
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:セミノーマの発症を契機にして精巣性女性化症候群と診断された症例を経験したので報告する.
    症例:62歳, 表現型女性. 平成14年8月より右鼠径部腫瘤を自覚し近医泌尿器科受診し, 当院外科に紹介された. 悪性リンパ腫を疑い, 穿刺吸引細胞診を施行した. 小型リンパ球を背景に大型で核小体の明瞭な細胞が散見され, 未分化胚細胞腫, 未分化癌, 悪性リンパ腫等が考えられた. 生検組織材料では大型の腫瘍細胞とリンパ球が混在してみられ, 硝子化した曲精細管も認められた. 腫瘍細胞はグリコーゲンを豊富にもち, 免疫染色では胎盤性ALPが陽性で, リンパ腫マーカーが陰性であり, 停留精巣に発生したセミノーマと診断した. その後の染色体検査では46XYの男性型であった.
    結語:今回われわれはセミノーマを合併した精巣性女性化症候群を経験した. 女性で鼠径部にセミノーマの細胞像を認めた場合は, 卵巣の未分化胚細胞腫の転移だけでなく, 本疾患も念頭におく必要がある.
  • 小田 夫, 中沢 有希, 立矢 裕子, 二木 敏彦, 有賀 美紀子, 河村 常作, 二上 文夫
    2005 年 44 巻 2 号 p. 88-91
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:まれな乳腺良性病変である乳腺過誤腫を経験したので, その細胞および組織所見を報告する.
    症例:30歳, 女性. 検診で右乳腺腫瘤を指摘され, 来院した. 右乳腺B領域に最大径2.5cmの腫瘍が認められ, 穿刺吸引細胞診と腫瘍切除術が施行された. 穿刺吸引細胞診では, 散在する裸核状細胞 (双極裸核) を背景に, 二相性の保たれた結合性の強い上皮細胞集団が散在していた. 大型の上皮集団は, 乳管・腺房からなる小葉単位に類似した構造をとっていた. いずれにも, 細胞異型はなかった. 脂肪細胞や平滑筋細胞は確認されなかった. 腫瘍切除標本では, 拡張した乳管と腺房からなる乳腺小葉が複数集簇した結節で, 小葉問には線維性組織が介在し, 一部で成熟脂肪細胞が少量混在していた. 腫瘤は, 境界明瞭で, 薄い線維性組織で覆われていた.
    結論:乳腺穿刺吸引細胞診にて, 乳腺過誤腫と診断することは困難であり, 最も鑑別を要する病変は線維腺腫である. 乳管・腺房からなる小葉単位に類似した上皮細胞集団の出現が, 線維腺腫と異なる重要な細胞診所見と考えられた.脂肪細胞は, 必ずしも採取されるとは限らず, 鑑別診断に常に有用な所見とはいえなかった.
  • 大森 真紀子, 端 晶彦, 奈良 政敏, 弓納持 勉, 中澤 久美子, 石井 喜雄, 星 和彦
    2005 年 44 巻 2 号 p. 92-95
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:子宮頸部上皮内腫瘍cervical intraep ithelial neoplasia (CIN) grade IIIの治療は, 挙児を希望する場合には円錐切除術が第一選択である. しかし子宮を温存した場合には再発の可能性があるので, 定期的follow upが重要である。
    症例:36歳, 未婚女性. 31歳のときCINIIIのため円錐切除術を施行したが, 約1年7ヵ月後にCIN IIIが再発したため再び円錐切除術を施行した. 2回の手術とも断端は陰性であったが, さらに3年後に膣上皮内腫瘍 (vaginal intraepithelial neoplasia; VAIN) grade IIIが発生したため拡大子宮全摘術を行った. 本症例では3回の手術検体すべてにおいてHPV 16型が陽性であった.
    結論:CIN IIIに対し円錐切除術を行った場合, 断端が陰性であっても頻度は低いがCIN IIIや浸潤癌が再発することがある. またまれではあるが膣や外陰部に上皮内腫瘍や癌が発生したという報告もある. 円錐切除後は断端が陰性であっても, high risk HPV感染の症例では子宮頸部に限らず膣や外陰部を含めた長期的な追跡が必要と考える.
  • 本間 隆志, 福永 真治, 小林 久仁子, 塩森 由季子, 加藤 弘之
    2005 年 44 巻 2 号 p. 96-97
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    A case of glycogen-rich cell carcinoma in a 47-year-old woman is described with cytological features. Aspiration cytology showed sheet-like clusters of relatively uniform tumor cells with round or oval nuclei. Cytoplasm was pale to palely eosinophilic and contained diastase-sensitive periodic acid-Schiff-positive vacuoles. A differential diagnosis should include lipid-rich carcinoma, secretory carcinoma, and signet-ring cell carcinoma, and ancillary stains should be carefully applied. The cytologic features of glycogen-rich carcinoma should be also kept in mind to avoid misdiagnosis due to the relative uniformity of tumor cells.
  • 小林 久仁子, 福永 真治, 本間 隆, 塩森 由季子, 加藤 弘之
    2005 年 44 巻 2 号 p. 98-99
    発行日: 2005/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We report a case of diabetic mastopathy in a 67-year-old woman, together with cytological features. A diabetic patient treated with insulin for 7 years noticed a poorly circumscribed 2.6cm mass in the left breast. Physical examination, mammography, echography, and CT indicated a malignant tumor. Fine-needle aspiration biopsy showed sheet-like clusters of benign ductal cells, lymphocytes, and epithelioid fibroblasts. Needle biopsy showed features of diabetic mastopathy. The integration of clinical history and features with cytologic findings thus leads to a more accurate diagnosis of diabetic mastopathy and avoids needless surgey.
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