日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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46 巻, 1 号
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原著
  • 河野 健史, 山崎 一人
    2007 年 46 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2007/01/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 甲状腺癌の穿刺吸引細胞診では, 甲状腺髄様癌と乳頭癌との鑑別に苦慮する場合があり, 電子顕微鏡および免疫細胞化学などの補助技術を併用し, 診断向上の可能性を検討した.
    方法 : 過去10年間に細胞診断された631例の甲状腺腫瘍症例のうち, 甲状腺髄様癌の3例を対象として, 電顕標本との対比観察に加え, Papanicolaou染色脱色後の標本を用いて, calcitonin, chromogranin AおよびCEAの3種類の抗体による免疫細胞化学的検索を施行, 有用性を検討した.
    成績 : 電顕像との対比では, 腫瘍細胞質内の小顆粒, アミロイド物質の細線維構造の光顕標本上での反映がうかがわれた. また, Papanicolaou染色脱色後の標本に, 免疫細胞化学的検索を併用することで, 組織型診断の確実性を高めることができた.
    結論 : 穿刺吸引細胞診における甲状腺髄様癌の診断においては, 電顕像および免疫細胞学的検討結果を考慮に入れた詳細な細胞診標本の観察と, それらに対する解釈や対応の方法にさらに検討を加えることが, 一層の精度向上に重要である.
  • 内藤 嘉紀, 岡部 義信, 河原 明彦, 多比良 朋希, 草野 弘宣, 鹿毛 政義
    2007 年 46 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2007/01/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 複数の方法で採取された癌細胞の核クロマチン染色性について評価し, 各採取法の細胞学的有用性を検討したので報告する.
    方法 : 2005年1~12月に久留米大学病院で通常型膵管癌と診断された症例のうち, 内視鏡的逆行性膵管造影 (以下ERP) 下で病変近傍までカニューレ深部挿管が可能であり, 複数の細胞採取が施行された18例57検体について検討した. 採取方法は, 純粋膵液細胞診 (Pure Pancreatic Juice Cytology, 以下PPJC), 膵管擦過細胞診 (Pancreatic duct Brush Cytology, 以下PBC), ブラシ洗浄細胞診 (Brush Wash Cytology, 以下BWC) および膵管内洗浄細胞診 (Pancreatic duct Lavage Cytology, 以下PLC) とした. 本検討における核クロマチン染色性の定義は, 不鮮明化および濃縮化とした.
    成績 : 核クロマチン染色性の不鮮明化および濃縮化は, PPJC, PBC, BWCおよびPLCで54% (6/11), 43% (6/14), 7% (1/14) および30% (3/10) 認められた. 内容は, PPJC, BWCおよびPWCは消化酵素による核クロマチン濃縮化, PBCは塗抹時の乾燥による核クロマチン染色性の不鮮明化であった.
    結論 : 採取法の違いにより核クロマチン染色性に違いがみられ, なかでもブラシ洗浄細胞診は評価しやすい癌細胞が採取できる可能性が高いといえる.
  • 岩本 明美, 広岡 保明, 尾崎 佳三, 吉岡 志津江, 遠藤 財範, 堅野 国幸, 池口 正英
    2007 年 46 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2007/01/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 乳癌手術におけるセンチネルリンパ節生検の術中迅速組織診断には, さまざまな問題点がある. 今回われわれは, 術中迅速組織診断の問題点を改善する目的で術中迅速捺印細胞診断の有用性について検討した.
    対象 : 2003~2005年に当科で術前にN0と診断され乳癌手術を施行された乳癌患者17名.
    方法 : アイソトープ法および色素法にて同定したセンチネルリンパ節を1.3mm間隔に切断し, 捺印細胞診標本を作製した. 術中迅速組織診, 捺印細胞診 (Papanicolaou染色, 免疫組織染色), PCRについて永久組織診と比較検討した. また, 山陰地方の主要病院にセンチネルリンパ節の術中迅速診断についてアンケート調査を行った.
    成績 : センチネルリンパ節は42個が同定され, そのうち5個で転移がみられた. 1切片のみの術中迅速組織診の感度は60%であったのに対し, 術中迅速捺印細胞診では感度100%であった. 免疫染色, PCRについても迅速捺印細胞診と同様の結果であった. また, 山陰の主要病院へのアンケートの結果, 乳癌手術を年間20例以上行っている11施設のうち, 術中迅速組織診断において一度に診断できる切片数に制限がないのは3施設のみであった. 一方, 細胞診専門医および臨床細胞士が常駐し多数検体の術中迅速細胞診断が可能であったのは10施設であった.
    結論 : 術中迅速捺印細胞診は多くの施設で可能であり, 病理医の少ない地域でのセンチネルリンパ節術中迅速診断に有用であると考えられた.
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