日本臨床細胞学会雑誌
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55 巻 , 6 号
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原著
  • 北山 美佳, 今井 裕, 柴原 亜希子, 金山 和樹, 米田 操, 小川 朋子, 白石 泰三
    2016 年 55 巻 6 号 p. 365-369
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/12
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    目的 : 当院では乳腺穿刺吸引細胞診 (fine needle aspiration cytology : FNAC) に全例簡易ギムザ染色を併用したベッドサイド細胞診を行っている. 当院における乳腺 FNAC の精度管理を行い, 検体不適正率の改善における有用性について検討を行った.

    方法 : 三重大学医学部附属病院乳腺センターにおいて 2006 年 1 月から 2010 年 12 月の 5 年間に施行された 3034 件の乳腺 FNAC を対象とした. 乳腺 FNAC は乳腺外科医が全例超音波ガイド下で穿刺を行った. ベッドサイドで簡易ギムザ染色による採取物の確認を行い, 採取量および仮診断を術者にフィードバックした. パパニコロウ染色標本とともに最終診断を行った.

    成績 : 当該期間における検体不適正率は 7.8%であったが, 年度別には 3.9%から 16.4%まで変動し, 穿刺施行者の熟練度による影響があった.

    結論 : 簡易ギムザを併用したベッドサイド細胞診は, 細胞採取量や仮診断をその場で術者にフィードバックすることができるため, 十分な採取細胞量の確保と術者の穿刺技術の向上に有用と考えられた.

  • 森村 豊, 栗田 和香子, 塚原 孝, 佐藤 奈美, 佐藤 美賀子, 神尾 淳子, 小島 学, 添田 周, 渡辺 尚文, 藤森 敬也
    2016 年 55 巻 6 号 p. 370-375
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/12
    ジャーナル 認証あり

    目的 : Atypical squamous cells undetermined significance (ASC-US) 判定の適用の整合性向上を目指し, ASC-US 判定の状況の変化を, The Bethesda System (TBS) 導入時から経時的に分析する.

    方法 : 子宮頸がん検診への TBS 導入後の, 2008~10 年と 2011~13 年の前後 3 年間で, ASC-US 判定例の頻度, 年齢分布や human papillomavirus (HPV) 検査, 組織診の結果を比較し, 判定の適正度を検討した.

    成績 : ASC-US 判定は, 前 3 年間では 236121 人の受診者中 309 例 (0.13%), 後 3 年間では 221143 人中 341 例 (0.15%) であった. 細胞診異常例中の ASC-US の割合は, 18.6%から 16.8%へと減少傾向がみられた. ASC-US から cervical intraepithelial neoplasm 2 (CIN2) 以上の検出例は, 前期で 85 例 (30.7%) が, 後期は 45 例 (19.7%) で有意に減少した (p=0.006).

    結論 : TBS 導入当初は, 細胞診異常例中の ASC-US 判定例の頻度や ASC-US 判定例に占める CIN2 以上の検出率が高かったが, 年次を経て, ASC-US 本来の概念が普及し, ASC-US 判定の適用の整合化, 適正化に向かっている.

症例
  • 河合 穂高, 伏見 聡一郎, 板倉 淳哉, 井上 博文, 藤井 昌江, 武部 祐一郎, 松川 昭博
    2016 年 55 巻 6 号 p. 376-381
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/12
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    背景 : Gangliocytic paraganglioma (GP) は, 十二指腸乳頭部に好発するまれな腫瘍で, 主として粘膜下に存在するため, 生検による確定診断は困難なことが多い. EUS-FNA は術前診断の有効な方法として期待されるが, その報告は少ない.

    症例 : 60 歳代, 男性. タール便を主訴に上部消化管内視鏡が施行された. 生検では十二指腸粘膜のみしか得られなかった.

    EUS-FNA 検体では, 細顆粒状クロマチンを有する短紡錘形~類円形の核をもつ紡錘形細胞に加え, 少数ながら核小体の目立つ大型細胞も認められた. 多彩な細胞像を呈し, 核所見などから神経内分泌系の腫瘍が疑われた.

    膵十二指腸切除検体では十二指腸乳頭部の近傍に粘膜下腫瘍が認められた. 組織学的に腫瘍は, Zellballen 配列をとる上皮様細胞, 明瞭な核小体をもつ神経節細胞様細胞, 束状の紡錘形細胞 (支持細胞) の 3 成分から構成されていた. 最終的に GP と病理診断された.

    結論 : EUS-FNA 検体では必ずしも 3 成分の細胞が採取されない可能性がある. しかし, 3 成分の細胞が正しく採取され, さらにセルブロックの免疫組織化学的検討を加えれば, 診断は可能と思われた.

  • 橋本 哲也, 金室 俊子, 野並 裕司, 山本 智子, 澤田 達男, 長嶋 洋治
    2016 年 55 巻 6 号 p. 382-387
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/12
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    背景 : 乳腺原発 carcinoma with neuroendocrine features (CNF) は, 比較的まれな乳腺腫瘍の一つであり, 細胞像の報告は少ない. われわれは病理組織学的に CNF と診断された 4 例を経験したので報告する.

    症例 : 全例が女性, 年齢は症例 1~3 は 70 歳代, 症例 4 は 40 歳代であった. 主訴は, 症例 1~3 が乳房のしこり, 症例 4 は褐色乳頭分泌物であった. 全例で穿刺吸引細胞診 (FNAC) が施行された. 症例 1 の細胞像は, 肺などに原発する小細胞癌に類似していたため, CNF, neuroendocrine carcinoma poorly differentiated/small cell carcinoma (NEC) との推定診断が可能であったが, 症例 2~4 では, 多彩な細胞像であり推定診断は困難であった. 組織標本では腫瘍細胞の増殖に加え, 全例で 50%以上の腫瘍細胞が神経内分泌マーカーに陽性を示し, CNF と診断された.

    結論 : 乳腺原発 CNF4 例の細胞像について報告した. 症例 1 は小細胞癌に類似する細胞像から組織型を推定しえたが, 他症例は多彩な細胞像を示し, 組織型推定が困難であった.

  • 本田 恭子, 牛島 友則, 宮崎 小百合, 斉藤 美紀, 井上 正年, 本告 匡, 松本 光司
    2016 年 55 巻 6 号 p. 388-394
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/12
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    背景 : 明細胞肉腫 (clear cell Sarcoma) は若年成人の四肢に好発し, 分化未定腫瘍群に分類され, メラノサイトへの分化を特徴とするまれな軟部悪性腫瘍である. 今回, 高齢男性の胸部に発生した 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 76 歳, 男性. 右側胸部の腫瘤に気づき, 近医を受診し当院を紹介され, 精査加療目的で入院となった. MRI で右側胸部皮下脂肪深層に腫瘤を認め, 辺縁やや不整, 内部不均一で出血を伴うことから, 悪性腫瘍が疑われた. 生検の後に腫瘤が全摘され, 捺印細胞診ではライトグリーン好染性の細胞質と類円形核, 明瞭な核小体を有する細胞が認められ, 核内封入体も観察された. メラニン色素は確認できなかった. 組織診では異型細胞の充実性増殖がみられ, 免疫組織化学的に vimentin, S-100 蛋白, Melan-A が陽性を示し, さらにEWSR1-ATF1キメラ遺伝子が検出され明細胞肉腫と診断された.

    結論 : 年齢や部位が非典型的で, 腫瘍細胞にメラニン色素が確認されない場合は明細胞肉腫の診断に難渋するが, 本例のような細胞像, 組織像に遭遇した場合には, 明細胞肉腫の可能性も念頭におくことが必要である.

  • 森 正樹, 岩崎 和美, 前川 秀樹, 鈴木 佑梨, 森 和枝, 小上 瑛也, 酒井 康弘, 今村 好章
    2016 年 55 巻 6 号 p. 395-400
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/12
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    背景 : 右下顎骨および甲状腺左葉からの Liquid based cytology (LBC) で原発巣と組織型が短期間に診断できたことで, 治療の奏効につながった TX 肺癌症例を経験したので報告する.

    症例 : 80 歳代, 女性. 右頬部腫脹と疼痛を主訴に当院を受診した. 頭頸部 CT・MRI・FDG-PET 検査で右下顎骨, 第一頸椎および甲状腺左葉に腫瘤を認めたが, 両肺野に病変はなく, 当初原発不明癌が疑われた. 右下顎腫瘍の生検術が施行され, 同時に採取された LBC 標本から上皮性結合を有する腫瘍塊を認め, 免疫染色で TTF-1, Napsin A が陽性であった. これらの所見は甲状腺左葉の LBC 標本にも認められ, 同様の結果は右下顎の組織診でも追認されたことより, 最終的に右下顎骨と甲状腺左葉転移を伴った TX 肺癌 (腺癌, Stage Ⅳ) と診断できた. さらに, LBC 残余検体から EGFR 遺伝子変異がすみやかに検出されたことで, 早期の gefitinib 治療につながり奏効した.

    結論 : LBC は迅速, 簡便, 低侵襲性, かつ細胞の保存にも優れることから, 原発巣不明症例の診断にも組織診に先駆けて積極的に活用されるべきと考えられた.

  • 小林 彩香, 木村 雅友, 植田 清文, 田中 千琴, 榎木 英介, 筑後 孝章, 上杉 忠雄, 佐藤 隆夫
    2016 年 55 巻 6 号 p. 401-405
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/12
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    背景 : アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (allergic bronchopulmonary aspergillosis : ABPA) は, 気管支喘息患者の気管支にアスペルギルスが持続的に腐生し, これに対するⅠ型とⅢ型アレルギーが成立して発症する疾患群である. 臨床像, 血清検査, 画像をもとに診断されることが多く, 気管支内容物の細胞診を見る機会は少ない. 今回 ABPA の 1 例を経験し, その特徴的な細胞像について報告する.

    症例 : 79 歳, 女性. 喘息発作で入院した. Rosenberg の診断基準を満たし, ABPA と診断された. 気管支肺胞洗浄液細胞診で, 粘液を背景に好酸球が孤立性および集団で認められ, 隔壁を有する Y 字状分岐菌糸が散在し, シャルコー・ライデン結晶も認められた. 培養で Aspergillus 属真菌が分離された.

    結論 : 気管支内容物の細胞診で, 粘液を背景に好酸球の集団と隔壁を有する Y 字状分岐菌糸を認めた場合, ABPA を鑑別する必要がある.

  • 井関 文, 畠 榮, 小林 晴美, 原 稔晶, 下山 芳江, 中村 栄男
    2016 年 55 巻 6 号 p. 406-411
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/12
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    背景 : 乳腺 Collagenous spherulosis (以下, CS) は, 腺房内や管腔内で, 球体とそれを取り囲む細胞が篩状を模倣した構造を形成する. われわれは CS を認めた乳腺疾患の 1 例を経験し, 細胞像, 球体の構成成分と染色性に関して報告する.

    症例 : 50 歳代, 女性. 乳腺超音波検査で低エコーの腫瘤を認めた. 穿刺吸引細胞診では, 小型細胞の集塊内に, 間質性粘液球や硝子球を多数認めた. 粘液球は, 44~110μm 大で, うち中型の粘液球はヘマトキシリンに淡染し, 類円形核の立方状細胞に囲まれていた. 小型の粘液球はライトグリーンに好染し, 一部, 球体内に星状の構造物を認めた. 硝子球は, 約 40μm 大でライトグリーンに濃染した. また type Ⅳ collagen, laminin に強陽性, PAS 反応が強陽性で, CS の所見と一致した. 硝子球を囲む楕円形裸核細胞は p63 が陽性であった. 集塊内でも硝子球付近に p63 陽性細胞が多く, 硝子球から離れた類円形核の細胞は p63 が陰性であった.

    結論 : CS は, 筋上皮細胞が形成する球状の基底膜物質から構成される. CS の出現は成熟した筋上皮の存在を示すため, 良性疾患を判定する指標となる.

  • 岩本 望, 石田 光明, 籠谷 亜希子, 春日 希, 林 裕司, 岩井 宗男, 宮平 良満, 九嶋 亮治
    2016 年 55 巻 6 号 p. 412-415
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/12
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    背景 : 唾液腺腫瘍が胸水に出現することはきわめてまれで, 唾液腺導管癌 (salivary duct carcinoma ; SDC) の報告はわれわれが調べえた範囲内では 1 例のみである. 今回, 胸水に出現し, その診断に免疫細胞化学染色が有用であった SDC 胸膜転移の 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 57 歳, 男性. 4 年前右顎下腺腫瘍に対し, 手術療法が施行され, SDC と診断された. 3 ヵ月前に, 右胸水が貯留し, 胸水細胞診検査が施行された. パパニコロウ染色では, 炎症性背景に, 乳頭状または小型胞巣状集塊が多数出現していた. 腫瘍細胞の核は大型類円形~卵円形で, 偏在傾向がみられた. 核クロマチンは細顆粒状に増量し, 明瞭な核小体が認められた. 細胞質は比較的豊富で, 顆粒状や泡沫状などさまざまであった. また, 腺腔形成が観察され, 細胞質内小腺腔も認めた. 免疫細胞化学的に androgen receptor (AR) 陽性であったことと既往歴を考慮し, SDC と診断した. 胸膜生検にて SDC の胸膜転移と診断した.

    結論 : SDC が胸水中に出現した場合, 腺癌と診断することは容易であるが, 細胞像のみで組織型の確定は困難である. SDC の特徴的な細胞像に加え, 既往歴および AR の免疫細胞染色陽性所見が SDC の確定診断に有用であると考えられる.

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