まれなIntravascular bronchioloalveolar tumor (IVBAT) の微小孤立腫瘤例を経験したので, その細胞像を中心に報告した. 症例は61歳, 女性. 検診異常影にて, 当院内科初診. 画像上, 右S2末梢の肺腺癌が疑われ, 穿刺吸引細胞診ではClass IV. 右上葉切除と縦隔リンパ節廓清を施行され, 術後の組織検索にてIVBATと診断された. 術後4年9ヵ月の現在に至るまで, 転移, 再発はない.
穿刺吸引材料では, 腫瘍細胞はシート状ないし小集塊状に存在し, 核は類円形, 単核から多核で, 軽度の大小と不整があった. 核小体はやや腫大し, 1ないし少数明瞭にみられた. クロマチンは微細~細顆粒状で軽度増量し, 分布は均一であった. 胞体はライトグリーンに淡染性, 空胞状で, 細胞境界は不明瞭であった. 胞体内は複数の小空胞や腺腔様で輪郭明瞭な大きな空胞を認め, 特に後者は, 組織像との対応から, 血管腔を模倣するものと判断された.
本例の細胞像は, IVBATおよびその同義の疾患であるepithelioid hemangioendotheliomaも含め, これまで報告された6例の細胞像と, ほぼ一致した. IVBATの診断のためには核所見よりも胞体像が重要で, 1) 空胞状で淡明な胞体, 2) 血管腔を思わせる輪郭明瞭な空胞の存在, の2点が, 特に重視されるべき所見と思われた.
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