日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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60 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 山本 愛奈, 南雲 サチ子, 田畑 弥生, 芦村 純一, 春日井 務, 芝 英一
    2021 年 60 巻 4 号 p. 205-211
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    目的 : 穿刺吸引細胞診 (fine needle aspiration : FNA) 標本における平坦型上皮異型 (flat epithelial atypia : FEA) の細胞学的所見の検討を行った.

    方法 : 2019 年に当クリニックにおいて乳腺 FNA が施行され, 病理組織学的に FEA と診断された 5 例を対象とした.

    成績 : 細胞診判定は, 鑑別困難が 3 例, 悪性疑いが 2 例であった. 細胞所見は, 背景がきれいであった症例が 3 例, また石灰化が 3 例に認められた. 上皮性の細胞集団では, 単調な細胞集団を全例に認めた. また細胞質が円柱状で N/C 比の大きい細胞は, 一列に並ぶ柵状配列を呈する集団が 3 例に, 孤立散在性に出現する細胞が 4 例にみられた.

    結論 : 今回の検討から, FNA において FEA を考慮した診断および針生検を推奨することは可能であった. また今後, 症例の蓄積により, 推定組織型の一つとして FEA を挙げることは十分可能となってくると思われる.

  • 安倍 秀幸, 河原 明彦, 貞嶋 栄司, 村田 和也, 髙瀬 頼妃呼, 牧野 諒央, 吉田 友子, 福満 千容, 篠田 由佳子, 内藤 嘉紀 ...
    2021 年 60 巻 4 号 p. 212-218
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    目的 : 核酸解析は疾患の特徴や治療選択のための重要な診断手段である. 本検討の目的はサイトリッチレッドを用いた細胞検体の保存状態における核酸品質に与える効果を調査することである.

    方法 : われわれは, DNA 量や DNA の純度 (A260/A280) と DNA integrity number (DIN) 値における保存温度の効果について検討した. 培養細胞 (PC9) および臨床検体 11 例をサイトリッチレッドで 1 晩固定した後, 室温と低温 (4℃冷蔵) でそれぞれ 10 日間保存した.

    成績 : サイトリッチレッドで固定した培養細胞は, 室温保存で DNA 品質に影響を示し, 10 日間冷蔵保存された未固定およびサイトリッチレッド検体は, DNA 品質に影響を示さなかった. 臨床検体の DNA 抽出量は, 室温保存において減少し (p<0.001), 低温保存は DNA の断片化を防ぎ DIN 値や純度 (A260/A280) のような DNA の質を安定させた (p<0.001).

    結論 : 保存温度は細胞検体の核酸品質に影響を与えるので, 細胞検体は 4℃冷蔵のような低温で保管すべきである.

症例
  • 満下 淳地, 岡本 三四郎, 小松 京子, 古田 則行, 竹島 信宏, 杉山 裕子, 竹内 賢吾, 高澤 豊
    2021 年 60 巻 4 号 p. 219-223
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    背景 : 卵巣ブレンナー腫瘍は, 良性, 境界悪性, 悪性が混在することが多いため, 術中迅速組織診断だけでは全体像をつかむことが難しい. 今回, 左卵巣腫瘍に対し, 術中迅速組織診断で境界悪性ブレンナー腫瘍と診断し, 捺印細胞診で悪性所見を認めなかったことで術式決定できた症例を経験したので報告する.

    症例 : 患者は 51 歳, 女性である. 腹部膨満感を自覚したため近医を受診し, 当院を紹介された. Magnetic Resonance Imaging (MRI) で充実性部分を伴う左卵巣多房性腫瘍を認め, 手術を実施した. 左卵巣腫瘍に対する術中迅速組織診は境界悪性ブレンナー腫瘍であった. 術中捺印細胞診では, 核の軽度の大小不同, 1〜2 個の明瞭な核小体, 微細顆粒状の核クロマチン, 核溝が観察された. 悪性を示唆する細胞像は得られなかった. 左卵巣境界悪性ブレンナー腫瘍と術中診断し, 腹式単純子宮全摘術および両側付属器摘出術および大網部分切除術を実施した. 左卵巣腫瘍の永久標本では境界悪性ブレンナー腫瘍部分と良性ブレンナー腫瘍部分を認めた.

    結論 : 多彩な組織像をもつブレンナー腫瘍では, 術中迅速組織診断に加え, 術中捺印細胞診を行うことが術式決定のために有用である.

  • 中西 さおり, 黒田 直人, 鷹井 敏子, 小嶋 真理, 大野木 美聡
    2021 年 60 巻 4 号 p. 224-228
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    背景 : 中枢神経系に発生する孤立性線維性腫瘍 (SFT) はまれな間葉系腫瘍である. 今回われわれは前頭部に発生した SFT の 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 45 歳, 女性, 進行性のうつ症状で治療するも増悪がみられ当院に紹介となった. 画像にて前頭部に 75 mm 大の不整形腫瘤を認めたため, 髄膜腫を疑い開頭腫瘍摘出術を施行, 術中迅速病理組織が提出された. 病理組織標本の腫瘍細胞は N/C 比の高い紡錘形細胞がシート状に増殖しており, 太い膠原線維が介在していた. 迅速捺印細胞診では N/C 比の高い裸核状の短紡錘形細胞が不規則に交錯し, ところどころに太い膠原線維を認めた. 髄膜腫に典型的な渦巻き状構造の出現はなく, 異型髄膜腫の像としても典型的ではなかった. その後, 永久標本の免疫組織化学染色で CD34, STAT6 に陽性を示し, SFT の確定診断となった.

    結論 : 髄膜腫瘍で, 裸核状の短紡錘形細胞の増殖がみられ, 髄膜腫を示唆する所見がない場合には SFT を念頭において細胞診断を心掛けるべきである.

  • 佐々木 健太, 中川 篤, 片桐 恭雄, 岩田 明子, 水野 加織, 安藤 咲恵, 北野 素子, 川村 勇人, 宮崎 龍彦
    2021 年 60 巻 4 号 p. 229-234
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    背景 : Langerhans 細胞肉腫 (Langerhans cell sarcoma : LCS) は, 明瞭な悪性の細胞形態と Langerhans 細胞類似の形質を示す高悪性度の極めてまれな腫瘍である. 脾臓に転移がみられた LCS を経験したので報告する.

    症例 : 70 歳代, 男性. 右肩腫瘤に対して切除術が行われ, LCS と診断された. 1 年半後の CT で脾臓に腫瘤性病変を指摘され, 超音波内視鏡下穿刺吸引術 (endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration : EUS-FNA) を施行, LCS の転移と診断された. その後摘出術を施行した. 細胞診では, ライトグリーンに好染し, 豊富な細胞質をもつ異型細胞が, 結合性に乏しく孤在性に多く出現していた. 細胞質は多彩な形態を示していた. N/C 比が高く, 核の大小不同, 切れ込みやくびれなどの核形不整がみられ, 多核の細胞も認めた. 核クロマチンは微細に増量し, 異常核分裂像を少数認めた. 組織診では比較的大きさの揃った淡好酸性細胞の増殖が認められ, 核のくびれや核溝などの核形不整が目立ち, 核分裂像を多数認めた. 免疫組織化学では CD1a, S100P が陽性, Langerin は一部陽性, Ki-67 陽性率は 60%程度であった. 以上より LCS の転移と診断した.

    結論 : 日常業務では遭遇する機会が少なく, 鑑別には苦慮すると思われる. 詳細な形態学的観察や免疫組織化学染色などの施行が診断の一助となると考える.

短報
  • 大池 里枝, 田中 瑞穂, 山田 知里, 佐藤 朋子, 佐竹 立成
    2021 年 60 巻 4 号 p. 235-237
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    We report a case of a 60-year-old woman who was admitted to our hospital with the chief complaint of abdominal pain. Both urothelial carcinoma and adenocarcinoma cells were identified in a cytological smear of a voided urine sample. The urothelial carcinoma cells showed an irregular nuclear margin and opaque cytoplasm. The urothelial carcinoma was eventually diagnosed as a non-invasive papillary urothelial carcinoma, low grade. The adenocarcinoma cells showed peripherally located nuclei and mucinous-like pinkish cytoplasm. The patient was diagnosed as having uterine cervical adenocarcinoma, which was resected, with no evidence of metastasis to the urinary bladder. Accordingly, the finding of adenocarcinoma cells in the voided urine was concluded as being a result of urinary contamination by vaginal secretions containing the cervical adenocarcinoma cells.

  • 菊地 美保, 腰髙 典子, 髙瀬 章子, 鷲見 公太, 大谷 方子, 稲山 嘉明
    2021 年 60 巻 4 号 p. 238-240
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    We report a rare case of primary synovial sarcoma of the kidney. A woman in her 70s, who presented with a history of right abdominal pain, was found, by abdominal CT, to have a tumor arising from the right kidney. Nephrectomy was performed. The histopathological diagnosis was synovial sarcoma. Imprint cytology of the tumor showed numerous small isolated atypical cells. The cells were monotonous and spindle-shaped, with indistinct cell borders. They had round- to oval-shaped nuclei, thin nuclear membranes, extremely fine granular nuclear chromatin, with the nuclei containing one or two small conspicuous nucleoli. The results of immunohistochemical analysis and DNA analysis of the tumor cells were consistent with the diagnosis of synovial sarcoma. Synovial sarcoma of the kidney is extremely rarely diagnosed by cytology.

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