日本臨床細胞学会雑誌
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57 巻, 3 号
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原著
  • 丸田 淳子, 廣川 満良, 佐々木 栄司, 越川 卓, 加藤 良平, 坂本 穆彦
    2018 年 57 巻 3 号 p. 151-158
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    目的 : 甲状腺髄様癌の細胞診所見について検者間誤差の生じにくい細胞所見と核の計測値を用いて診断に有用な所見を検索し, 診断率向上と診断のアルゴリズムの提案を検討する.

    方法 : 髄様癌 78 例, 乳頭癌 20 例, 低分化癌 20 例, 濾胞癌 20 例の細胞診標本を対象に, 細胞形態学的鑑別, 細胞計測, 統計学的解析を行い, 髄様癌の鑑別に有用な項目を求めた.

    成績 : 髄様癌の診断に有用な所見は, 1) 粗顆粒状のクロマチン, 2) 4 核以上の多核腫瘍細胞, 3) アミロイド, 4) 核の縦横比 1.6 以上, 5) 核の縦横比 CV 25%以上, 6) 核の長径の最小値と最大値の比 3.7 以上であった. これらの所見は髄様癌 59 例に認められ, 乳頭癌, 濾胞癌, 低分化癌には認められなかった. さらに, ロジスティック回帰分析により髄様癌 7 例を推定した.

    結論 : 検者間誤差が生じにくい細胞所見および計測値を用いたアルゴリズムを用いることにより, 髄様癌の 84.6%が診断可能であった.

  • 小瀬木 輪子, 岩屋 啓一, 馬屋原 裕子, 森田 有香, 新井 美枝, 高杉 ゆかり, 菊池 良子, 三宅 清彦, 坂本 穆彦, 坂本 優
    2018 年 57 巻 3 号 p. 159-168
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    目的 : 風圧併用型フィルター転写法 (Cellprep 法) を用いた液状化検体細胞診 (LBC) の子宮頸部病変について, 細胞形態や病変検出率を明らかにする.

    方法 : 2014 年 3 月~2015 年 6 月の間, 子宮頸部病変を経過観察中の 223 例を対象とした. 従来法として直接塗抹標本を作製した後, 専用ブラシで採取した細胞を Cellprep Plus®にて標本作製した. Cellprep 標本を直接塗抹標本と比較検討し, 病理組織診断と照合した子宮頸部高度病変の検出精度を求めた.

    成績 : Cellprep 標本は壊死物質, 炎症性細胞, 病原微生物, および粘液などの背景情報が保存され, 細胞の大きさや形も従来法と比べて明らかな変化はみられなかった. そして従来法に用いた判定基準に準拠すると, 子宮頸部高度病変の検出感度は, 従来法と比べて Cellprep 法で有意に高く, 特異度, 陰性的中率, 陽性的中率には有意差はなかった.

    結論 : Cellprep 法は, 従来の細胞判定基準を踏襲することが可能であり, 直接塗抹標本から LBC 標本に切り替える際に適した方法の一つと考えられた.

症例
  • 田口 明美, 柴 光年, 金親 久美, 渋谷 潔, 中谷 行雄, 中島 崇裕, 吉野 一郎, 藤澤 武彦
    2018 年 57 巻 3 号 p. 169-176
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    背景 : 上咽頭癌は, 本邦では年間罹患数 500 例のまれな腫瘍で, 多くは進行癌で発見される. 肺小細胞癌も早期診断が困難で, 手術施行例はまれである. 喀痰検診によりⅠ期上咽頭癌が発見され, その精査中にⅠ期肺小細胞癌が診断された 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 68 歳, 男性, 喫煙指数 900. 喀痰検診 D 判定 (高度異型細胞) にて当施設を受診. 胸部 CT 検査は陰性で, 紹介病院での気管支鏡検査でも異常所見は認められなかった. 2 年後の喀痰集検が E 判定 (癌細胞) のため, 紹介病院にて内視鏡検査を再施行し, 生検組織診を行ったところ, Ⅰ期上咽頭癌が診断された. また胸部 CT 検査にて出現した肺小結節が経過観察中に増大したため, 胸腔鏡下右中葉切除術を施行した結果, Ⅰ期肺小細胞癌の診断が得られた. 細胞像ではライトグリーン好性の異型扁平上皮細胞および癌細胞が判定に有用であった.

    結論 : 喀痰細胞診と胸部 CT 検査の併用による精査および経過観察は, 重複癌の早期発見に有用であった. 喀痰細胞診では黄色調のみならずライトグリーン好性の異型細胞にも留意する必要があった. 喀痰細胞診は発見が困難な頭頸部癌の早期発見に貢献できる可能性が示唆された.

  • 竹渕 友弥, 佐野 孝昭, 後藤 優典, 星川 里美, 栗原 康哲, 伊古田 勇人, 平戸 純子, 小山 徹也
    2018 年 57 巻 3 号 p. 177-182
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    背景 : ランゲルハンス細胞組織球症 (Langerhans cell histiocytosis : LCH) は, ランゲルハンス細胞の増殖と周囲の炎症性細胞浸潤によりさまざまな部位や臓器を傷害する疾患である. 今回われわれは 17 年の経過で症状が悪化し, 皮膚や甲状腺, 腋窩, 脊椎, 肛門へと浸潤した LCH を経験したので報告する.

    症例 : 40 歳代男性. 20 歳代の時に気胸で他院に入院し, 肺好酸球性肉芽腫症と診断されたが, 経過観察は行われなかった. 最近になって両側腋窩のしこりと右肩から背部にかけての皮膚の腫れに気づき, 当院に紹介受診となり皮膚生検が行われた. それから 2 週間後に気胸を発症し, 肺部分切除を行った. いずれの検体も病理組織学的に LCH と診断された. さらに画像診断で甲状腺への転移が疑われ, 甲状腺穿刺吸引細胞診が行われた. 細胞像は淡く泡沫状の細胞質と核に切れ込みをもった細胞が, 結合性の緩い集塊や孤立性にみられた. 免疫染色は CD1a, Langerin が陽性で, LCH に相当する所見であった.

    結論 : 甲状腺穿刺吸引細胞診においても LCH の細胞像の特徴を把握することで, 診断推定は可能であると思われる.

  • 瀬戸口 知里, 明石 巧, 櫻井 聖, 中嶋 裕, 坂田 泰子, 関根 正喜, 安藤 登, 菅原 江美子
    2018 年 57 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    背景 : 線維形成性小円形細胞腫瘍 (desmoplastic small round cell tumor : DSRCT) は主に若年男性の腹腔内に発生するまれな腫瘍であり, 進行が早く予後不良である. 他の小円形細胞腫瘍との鑑別には, 免疫染色と遺伝子解析が有用である. 今回われわれは, 縦隔リンパ節の細胞診にて DSRCT と推定しえた 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 15 歳, 男性. 健診で胸部異常陰影を指摘され, 胸腹部 CT, PET にて肺, 肝, 腹腔内の多発腫瘤, 両肺門・縦隔・鎖骨上窩リンパ節腫大と FDG の異常集積を認めた. 縦隔リンパ節に対して超音波気管支鏡ガイド下針生検 (EBUS-TBNA) が施行され, 細胞診標本では細胞質は乏しく, 核は円形~類円形で, 軽度の核形不整やクロマチン増量を示す腫瘍細胞が認められた. 免疫細胞化学染色では cytokeratin, desmin (一部球状) が陽性, CD56, CD3, CD20 は陰性であったことから DSRCT と推測した. 鑑別疾患として横紋筋肉腫の可能性が考えられた. 同時に行われた病理組織検体を用いた FISH で EWSR1 遺伝子の分離シグナルを, RT-PCR で EWSR1-WT1 融合遺伝子を認め DSRCT と確定診断した.

    結論 : 細胞形態に加えて免疫細胞化学染色を行うことによって細胞診で DSRCT を推定することが可能であった 1 例を報告した.

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