日本臨床細胞学会雑誌
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51 巻, 4 号
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原著
  • 西村 理恵子, 寺本 典弘, 山本 珠美, 香川 昭博, 森田 佐智子
    2012 年 51 巻 4 号 p. 235-240
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    目的 : 細胞検体のセルブロックは, 塗抹標本よりも組織構築の判断が容易で, 特殊染色の追加も容易である. しかし, 通常の細胞診標本よりも作製に手間がかかるため普及していない. 当院では, 塗抹標本では診断が難しい穿刺吸引細胞検体について, セルブロックを用いている. そこで, 有用であった例を呈示するとともに, その有用性について考察する.
    方法 : 通常どおり穿刺吸引した細胞検体を, Ebis 1 セルブロック作製キット (アジア器材, 東京) を用い, 添付マニュアルに沿って, セルブロックを作製した. パラフィン包埋ブロックから, HE 標本と未染色標本を作製し, HE 標本を観察後, 必要な免疫染色を行った.
    成績 : 2008 年 5 月∼2009 年 10 月の間に, 頸部病変 25 件 (リンパ節 17 件, 甲状腺 3 件, 頸部腫瘤 5 件) と軟部腫瘤 2 件のセルブロックを作製した. リンパ節は, 癌の転移巣診断 11 件, 原因不明のリンパ節腫大 5 件と悪性リンパ腫治療後再発疑い 1 件であった. リンパ節 17 件中 12 件で癌の転移が確認された. 甲状腺と頸部腫瘤は, いずれも腫大の原因判定目的であった. セルブロック診断は, 癌 2 件, 悪性リンパ腫 2 件, 診断不能 1 件であった. 軟部腫瘤は癌の既往のある患者の転移の判定であった.
    結論 : 穿刺吸引細胞検体のセルブロックは, 生検が困難な部位, あるいは生検が困難な状態の患者の病変の病理診断に有用である. 病変としては, 転移性腫瘍の原発巣推定と, 悪性リンパ腫と癌の鑑別には有用であったが, 炎症性病変の診断は難しかった.
  • 瀬山 幸子, 政岡 秀彦, 土居 美枝子, 望野 唯明, 金野 美年子, 金 玲, 茅野 秀一, 新井 栄一, 佐々木 惇, 清水 道生
    2012 年 51 巻 4 号 p. 241-247
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    目的 : ワルチン腫瘍の典型例では, 好酸性細胞とリンパ球からなる two cell pattern の細胞像を示すが, 上皮の化生や壊死がみられる場合には診断が困難なこともある. 今回, ワルチン腫瘍の穿刺吸引細胞診での正診率上昇を目的とし検討を行った.
    方法 : 病理組織学的にワルチン腫瘍と診断された 45 例を対象とし, その穿刺吸引細胞診標本を用いて, 細胞像と組織像との比較検討を行った.
    成績 : 好酸性細胞が採取された症例は 31 例 (69%) で, そのうち 19 例は two cell pattern が認められ, 診断は容易であった. 残りの 12 例はリンパ球が目立たないものの, 背景に壊死様物質, 顆粒状物質, 一部には変性した円柱状の好酸性細胞も認められた. 扁平上皮化生細胞は 8 例にみられ, 形態は多彩であった.
    結論 : 好酸性細胞が採取されていても, two cell pattern が目立たない場合には, 嚢胞内容物由来の所見である背景の壊死様物質, 顆粒状物質, 変性した円柱状好酸性細胞が診断の手掛かりになると考えられた. 扁平上皮化生細胞の形態は多彩であったが, 好酸性細胞の存在を見落とさなければ他疾患との鑑別は可能と考えられた.
  • —中枢型肺扁平上皮癌と比較して—
    田口 明美, 柴 光年, 田島 ひとみ, 早田 篤子, 桑原 竹一郎, 渋谷 潔, 中谷 行雄, 藤澤 武彦
    2012 年 51 巻 4 号 p. 248-255
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    目的 : 肺癌検診喀痰細胞診で発見された末梢型肺扁平上皮癌の細胞像を明らかにするため, 中枢型肺扁平上皮癌との比較検討を行った.
    方法 : 平成 7∼16 年度における当施設の喀痰集検受診者のうち, 喀痰細胞診が契機で発見された, 気管支鏡無所見の末梢型肺扁平上皮癌 22 例と気管支鏡有所見の中枢型肺扁平上皮癌 22 例を対象とした. 集細胞法による蓄痰標本 1 枚に出現した中等度異型以上の異型扁平上皮細胞および扁平上皮癌細胞の, 出現数・異型度・形状・染色性・変性について比較検討を行った.
    成績 : 平成 7∼16 年度の喀痰集検の発見肺癌 156 例中 84 例は扁平上皮癌で, そのうち気管支鏡無所見の末梢型扁平上皮癌は 16%であった. 末梢型IA 期と中枢型早期癌表層型では癌を疑う異型上皮細胞の出現が少数で, 進行癌に比較し変性の程度が弱かった. また, 末梢型では中枢型に比較し, オレンジ G 好性円形異型細胞が優位に出現し, 細胞像の特徴の一つと考えられた.
    結論 : 喀痰細胞診における末梢型肺扁平上皮癌の細胞像を検討した結果, 異型扁平上皮細胞のタイプ別出現様式が, 腫瘍の進行度, 発生部位 (中枢型・末梢型) 推定の一助となる可能性が示唆された.
  • 前田 智治, 木藤 克己, 古谷 敬三, 加藤 真紀子, 森 理恵, 高石 裕子, 兵頭 直樹, 井上 信行, 木下 幸正, 高石 修
    2012 年 51 巻 4 号 p. 256-260
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    目的 : 乳腺穿刺細胞診において, 液状処理細胞診 (Liquid Based Cytology, 以下 LBC) の p63 免疫染色について検討した.
    方法 : 乳腺穿刺細胞診の従来法標本を作製後, 注射器に残った材料より LBC 標本を 2 枚作製した. 1 枚は Pap 染色し, 十分な上皮細胞数がみられた場合, 残りの 1 枚に p63 の免疫染色を行った.
    成績 : 2010 年 9 月∼2011 年 5 月に施行された乳腺穿刺細胞診 248 例中, LBC 標本に十分な上皮細胞が得られた 100 例を検討対象とした. 100 例中組織学的検討がされた症例は 63 例で, 悪性 57 例, 良性 6 例であった. 悪性の p63 陽性細胞数は, 良性のそれと比較して少なく, 細胞診で鑑別困難, 悪性疑いとした症例は LBC-p63 免疫染色が診断の向上に有用であった.
    結論 : 悪性例は, LBC-p63 染色で p63 陽性細胞数が低下していた.
  • 涌井 架奈子, 松井 成明, 梶原 博, 伊藤 仁, 菊池 公孝, 村上 優, 佐藤 慎吉, 中村 直哉
    2012 年 51 巻 4 号 p. 261-266
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    目的 : 子宮内膜細胞診の診断精度の向上を目的として, Ebis 1 ver. 2/Hold Gel 110 を用いたセルブロックの検討を行った.
    方法 : 当院にて 2008∼2009 年に子宮内膜細胞診が実施された 193 例を対象とした. 子宮内膜細胞診の塗抹標本を作製後, エンドサイトに残存する試料を用い, ホルマリン浮遊液を作製. Ebis 1 ver. 2/Hold Gel 110 にてセルブロックを作製した. 同一時期, 同一部位より採取した細胞診とセルブロック標本それぞれの結果の一致率を評価した.
    成績 : 細胞診の結果は陰性 174 例, 疑陽性 8 例, 陽性 3 例, 判定不能 8 例. 一方, セルブロック法は, 正常または良性 143 例, 増殖症疑い 6 例, 悪性疑いまたは悪性 3 例, 判定不能 41 例であった. 細胞診陰性でセルブロックにより増殖症または悪性と判定されたものはみられなかった. 細胞診陽性 3 例中, セルブロックで悪性と判定されたものは 2 例みられた. 細胞診とセルブロックの一致率は, 細胞診陰性でセルブロック良性が 100%. 細胞診疑陽性でセルブロック増殖症が 37.5%. 細胞診陽性でセルブロック悪性が 66.7%であった. 細胞診およびセルブロックで増殖症以上とした 11 例の組織診断は, おおむねセルブロックと一致した結果を示していた.
    結論 : 本法の併用は, 組織診同様に構造異型の観察が可能となり, 子宮内膜細胞診の欠点を補う有効な検査手技と考えられた.
  • 山口 知彦, 河原 明彦, 多比良 朋希, 安倍 秀幸, 内藤 嘉紀, 真田 咲子, 大田 俊一郎, 牛嶋 公生, 嘉村 敏治, 鹿毛 政義
    2012 年 51 巻 4 号 p. 267-274
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    目的 : 子宮内膜病変における glucose transporter-1 (GLUT-1) の発現について検討した.
    方法 : 類内膜腺癌 34 切除例の GLUT-1 発現と他の臨床病理学的因子との関連について検証した. また, 内膜生検組織と内膜細胞診が施行された内膜増殖症 14 例と類内膜腺癌 Grade 1 の 15 例を用いて GLUT-1 発現を比較した. 内膜組織は発現強度と発現範囲をスコア化して 4 点以上を陽性とし, 内膜細胞診は強発現を示す細胞を 50 個以上認めた症例を陽性と判定した.
    成績 : 類内膜腺癌切除における GLUT-1 陽性率は 71% (24/34) で, GLUT-1 発現は HIF-1αと腫瘍径に関連を認めた (P<0.05). 内膜生検組織における GLUT-1 陽性率は, 内膜増殖症 0% (0/14) および類内膜腺癌 Grade 1 が 53% (8/15) であった. 同様に内膜細胞診は 7% (1/14) および 60% (9/15) であり, 類内膜腺癌 Grade 1 の GLUT-1 発現は内膜増殖症に比べ陽性率が多かった (P<0.05).
    結論 : 子宮内膜病変において, GLUT-1 発現が診断の補助となる可能性があり, 内膜細胞診への応用も期待できる.
  • 立花 美津子, 吉田 美紀子, 大木 洋子, 黒川 祐子, 早田 篤子, 武田 敏, 河西 十九三, 桑原 竹一郎, 藤澤 武彦
    2012 年 51 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    目的 : ASC-US と診断された症例に HPV-DNA テストを行い, ハイリスク HPV 陽性群と陰性群での細胞像の違いを明らかにすることにより ASC-US の診断基準の狭義化を目的とした.
    方法 : 2009 年 2 月∼2010 年 4 月に当財団で施行した子宮頸部細胞診において ASC-US と診断された症例のうち, HPV-DNA テストを施行した 117 例を対象として, ハイリスク HPV 陽性群と陰性群の細胞像の違いを核所見と細胞質所見について比較検討した.
    成績 : ASC-US におけるハイリスク HPV テストの結果, 陽性 51 例 43.6%, 陰性 66 例 56.4%で陰性例が多かった. ハイリスク HPV 陽性群は陰性群に比べて, 核腫大 84.3%, クロマチン増量 80.4%, コイロサイトーシス 43.1%, 部分的な核縁肥厚 35.3%が有意に多く認められた.
    結論 : ASC-US と判定する際, クロマチン増量, 部分的な核縁肥厚, コイロサイトーシスの所見が不明瞭なものはハイリスク HPV 陽性である頻度が低く, NILM と判定してもよい可能性が示唆された.
症例
  • 刑部 光正, 鈴木 裕, 斎藤 由紀, 植松 美由紀, 田村 元
    2012 年 51 巻 4 号 p. 281-285
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    背景 : WHO 分類では悪性リンパ腫の診断・治療に染色体検査なども含めて行うことを推奨しているが, 肺原発節外性濾胞辺縁帯リンパ腫 (肺 MALT リンパ腫), いわゆる BALT リンパ腫は術前診断が困難であるといわれており, その診断は切除検体の組織診断によってなされることが多いため, 染色体検査等に供する検体を用意することができないことがある.
    症例 : 症例は 42 歳の男性で, 検診で右上肺野の結節影を指摘された. CT などで肺腺癌が疑われたが, 術前に気管支鏡下に採取された細胞診および組織診では腫瘍を指摘しえなかったため, 開胸生検が施行された. 術中凍結組織診断ではアーチファクトもあり, 上皮の異型と間質への小型円形細胞の集簇を指摘するにとどまり, リンパ腫の断定には至らなかったが, 術中迅速組織診用検体から作製した捺印細胞診により肺 MALT リンパ腫を推定し, 染色体検査等に供する生検体を準備しえた. 術後病理診断も肺 MALT リンパ腫であった.
    結論 : 迅速組織診断時の補助として, 捺印細胞診標本を作製しておく利点は大きいと考えられた.
  • 藤中 浩樹, 松井 美智代, 下山 玲子, 佐々木 志保, 西原 和代, 島津 宏樹, 伏見 博彰
    2012 年 51 巻 4 号 p. 286-289
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    背景 : 乳腺分泌癌は非常にまれではあるが, 比較的予後の良い腫瘍として知られている. そのため, 術前の穿刺吸引細胞診にてその可能性を示唆することができれば治療上有用である. 今回われわれは穿刺吸引細胞診にて本症例を 2 例経験したのでその診断のポイントを指摘して報告する.
    症例 1 : 30 歳代後半, 女性. 右乳房腫瘤に対して穿刺吸引細胞診が施行された. 採取細胞量は豊富であり, 細胞集塊は重積性, シート状, ごく一部に粘液小球状構造 (mucous globular structure ; MGS) や腺房様構造を呈し, 不規則配列が認められた. 核異型は軽度で分裂像もほとんど認めらないが大小不同は伴っていた. 細胞質は広く泡沫状であり N/C 比は高くなかった. また少数だが印環細胞も認められた. その後切除された標本にて組織学的に分泌癌と診断された.
    症例 2 : 40 歳代前半, 女性. 左乳房腫瘤に穿刺吸引細胞診が施行された. 細胞量は豊富で比較的豊富な細胞質内に細胞質内小腺腔 (intracytoplasmic lumina ; ICL) がみられる細胞や印環細胞, MGS が多数認められた. またごく少数だが MGS が集簇したブドウの房状構造がみられた. 切除後分泌癌の診断が確定された.
    結論 : 乳腺穿刺吸引細胞診にて分泌癌の可能性を示唆するポイントは MGS や印環細胞, ICL を有した細胞である.
  • 植田 清文, 木村 雅友, 筑後 孝章, 土橋 千琴, 上杉 忠雄, 佐藤 隆夫
    2012 年 51 巻 4 号 p. 290-294
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    背景 : アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 (allergic fungal rhinosinusitis : AFRS) は真菌に対するアレルギー反応が原因とされる再発率の高い難治性鼻副鼻腔炎である. 本邦では AFRS の存在があまり認識されておらずまれな疾患と考えられている. 今回 AFRS を経験し副鼻腔内容物を材料とする塗抹細胞診が実施されたので報告する.
    症例 : 42 歳, 女性. 2 年前に左副鼻腔真菌症と診断され手術されたが完全な治癒にはいたらず, 今回その再発と考えられる真菌性汎副鼻腔炎となり内視鏡手術が施行された. 副鼻腔からピーナツバター様物質が採取されその組織標本に散在する菌糸を含むアレルギー性ムチンが確認された. その 1 週間後, 前頭洞から鼻腔内に漏出した同様の検体の塗抹標本で組織標本同様にアレルギー性ムチンがみられ少数の真菌が散在していた.
    結論 : 副鼻腔炎からの検体において細胞診での背景が粘液の場合, AFRS を念頭におき, アレルギー性ムチンを確認することが重要である. 細胞診標本は組織標本より厚みがあり, 菌を見出す確率が高く, また菌糸形態の観察に有用である.
  • 籠谷 亜希子, 石田 光明, 吉田 桂子, 岩井 宗男, 宮平 良満, 奥村 寿崇, 岩本 望, 岡部 英俊
    2012 年 51 巻 4 号 p. 295-298
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    背景 : 巣状亜型尿路上皮癌 (NV-UC) は, 尿路上皮癌の非常にまれな亜型で, 核異型に乏しい腫瘍細胞が, ブルン細胞巣に類似した小型胞巣を形成する. NV-UC の細胞像に関する報告は少ない. 今回, 膀胱 NV-UC の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 70 歳, 男性. 画像検査で膀胱壁の不整な肥厚を指摘され, 紹介受診した. カテーテル洗浄尿検体では, 尿路上皮細胞の小型集塊が散見された. 集塊を構成する尿路上皮細胞の核のサイズは 14∼17μm で, N/C 比が軽度上昇し, 核クロマチンは軽度顆粒状に増量し, 核小体がみられる尿路上皮細胞が少数存在した. 全体的に核異型は軽度であったが, 集塊内での核間距離は不規則で, 軽度の重積がみられたことから, 尿路上皮癌の可能性が疑われ, 疑陽性と判定した.
    膀胱生検で, NV-UC と診断され, 膀胱全摘術が施行された. 腫瘍は, 膀胱外膜の脂肪組織や前立腺に浸潤していた.
    結論 : NV-UC は細胞学的に異型性に乏しく, 予後の良い低異型度乳頭状尿路上皮癌 (LG-UC) との鑑別は重要である. LG-UC では異型性に乏しい腫瘍細胞が乳頭状の集塊を形成するのに対して, NV-UC では軽度核膜不整な細胞が小型集塊を形成する点が鑑別点になるかと思われるが, その鑑別は困難である.
  • 鳥居 裕, 長谷川 清志, 石川 くにみ, 大江 収子, 加藤 利奈, 小宮山 慎一, 宇田川 康博, 黒田 誠
    2012 年 51 巻 4 号 p. 299-304
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/09
    ジャーナル フリー
    背景 : 卵巣原発の扁平上皮癌はまれで, その発生母地は奇形腫, ブレンナー腫瘍や子宮内膜症などが報告されているが, それらを伴わない純粋型も存在する. われわれは本疾患の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 51 歳, 女性, 2 経産. 腹部膨満と頻尿を主訴に紹介受診となり, 画像診断にて径約 18 cm の嚢胞部分と充実部分の混在する卵巣腫瘍を認めた. 充実性部分は術中迅速病理にて扁平上皮癌と診断され, 卵巣癌標準手術を施行した. 術後 paclitaxel+carboplatin 療法を施行し, 18 ヵ月間再発を認めていない. 捺印細胞診所見は紡錘形, 長楕円形でライトグリーンあるいはエオジン好性の細胞質を有し, クロマチン増量と軽度の核異型を示す異型扁平上皮細胞がシート状に出現していた. 病理組織学的には著明な角化を示す胞巣を形成する高分化型扁平上皮癌Ia 期 (pT1aN0M0) と診断された. 嚢胞壁の扁平上皮化生が著明であり, 病理組織学的には本腫瘍の組織発生として, 移行像は確認できないものの子宮内膜症が関与している可能性が示唆された. なお, CIN の合併はなく, 腫瘍組織に HPV-DNA は検出されなかった.
    結論 : 卵巣原発扁平上皮癌は進行癌が多く, 予後不良とされているが, 今回早期癌の症例を経験し, その捺印細胞診を報告した.
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