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佐藤 康美, 高橋 珠美, 加藤 幸一, 上坂 佳敬, 五十嵐 信一, 田中 俊誠
1998 年37 巻3 号 p.
275-278
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
子宮外妊娠症例18例に対し, 手術時の患側卵管捺印細胞診を施行し, 術後組織診と比較しての成績および術中細胞診としての役割を果たし得るかを検討した.
子宮外妊娠の手術時に, 卵管破裂例では破裂部位を捺印した. 卵管流産の場合は患側卵管を縦切開した後, 捺印し, 簡易Papanicolaou法にて染色し, 鏡検した.
肉眼的に絨毛が認められた例は18例中11例であった. 肉眼的に絨毛を確認できなかった7例のうち3例に組織学的に絨毛を確認した. 細胞学的には肉眼で絨毛を確認し得なかった7例全例に絨毛細胞を確認した.
卵管全体および付着した凝血塊までも広く捺印する細胞診は, 臨床上, 組織診に優る診断率であり, 細胞診の簡便性, 迅速性, 正確性を最も発揮できる検査方法と考えられた.
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組織学的所見との相関および患側腎機能と尿中剥離腫瘍細胞出現率について
古賀 文隆, 佐藤 豊彦, 佐々木 英夫, 細谷 吉克, 梅田 宏, 北原 聡史, 吉田 謙一郎
1998 年37 巻3 号 p.
279-285
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
過去17年間に病理組織学的に上部尿路移行上皮癌と診断された38症例を対象とし, 腫瘍の組織学的背景と自然尿細胞診所見の相関および腫瘍による患側腎機能廃絶が剥離腫瘍細胞出現率に及ぼす影響を検討した. 細胞診所見は剥離細胞の異型度と出現様式を考慮に入れた福井の膀胱癌における細胞診判定基準に従った.
陽性率は38例全体では63%であり, そのうちG1では0%, G2では50%, G3では81%であった. G2では陽性症例全例がclass IV (小型悪性細胞) であったのに対し, G3ではclass V (大型悪性細胞) が過半数を占めた (p=0.0002). Class IVb以上 (孤在性出現) は分化型表在癌に認めなかったが, 浸潤癌では過半数に認めた (p=0.006). また剥離腫瘍細胞出現率は, 排泄性尿路造影上患側腎孟が造影された21例ではG2, G3でそれぞれ57%, 92%であったのに対し, 造影されなかった17例ではそれぞれ57%, 67%を示した (N.S.).
上部尿路上皮癌における自然尿細胞診は著しい患側腎機能低下症例においても高い感受性を示し, その診断のみならず細胞診陽性例の組織学的背景の推定にも有用であると考えられた.
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中野 祐子, 大田 喜孝, 伊藤 園江, 原武 晃子, 大田 桂子, 楳田 明美, 塚本 孝久, 高橋 光彦, 伊藤 裕司, 中村 康寛
1998 年37 巻3 号 p.
286-291
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
白血球ならびに悪性リンパ腫の髄膜浸潤症例について臨床像を背景とした細胞形態学的検討を行った. 白血病ならびに悪性リンパ腫を基礎疾患とした髄液細胞診50例のうち腫瘍細胞を認めたものは12例 (24.0%) であり, これらの例すべてに過去に化学療法が施行されていた.病型別に陽性率をみるとALL 12例中3例 (25.0%), AML 6例中2例 (33.3%), AMMoL 4例中2例 (50.0%), CML 5例中2例 (40.0%), 非ポジキンリンパ腫17例中2例 (11.2%), ポジキン病2例中1例 (50.0%) であった. また12例中6例は化学療法後の寛解中の症例であり, 経過を追った繰り返した髄液細胞診では化学療法剤の髄腔内注入により短期間で腫瘍細胞は消失した. 髄液細胞診陽性12例中半数は髄液細胞数が正常~軽度増加に留まり, しかも腫瘍細胞の占める割合は平均25.4%と低率であり, 髄液細胞数が増加するに従い腫瘍細胞の占める割合も増加する傾向を認めた. これらの所見より白血病ならびに悪性リンパ腫の髄膜浸潤の早期発見と的確な治療のためには髄液細胞診がきわめて有効な手段となりえるものと考えた.
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呉共済病院法
山本 津由子, 青木 潤, 佐々木 なおみ, 谷山 清己, 難波 紘二
1998 年37 巻3 号 p.
292-297
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
スクリーニングしやすい標本が簡便にできる尿細胞診標本作製法を開発したので報告する. 細胞の固定は第1固定と第2固定の2段階に分けて行う. 第1固定液の組成は0.2%アジ化ナトリウム, 0, 8%EDTA-3Kを含む50%エタノール, 第2固定液の組成は2%ポリエチレングリコールを含む95%イソプロピルアルコールである. 第1固定液20m
lを入れた蓋付き50m
lプラスチック・スピッツの採尿容器を作製しておく. 採尿後ただちに20m
lの尿をこの採尿容器に入れて1時間以上固定する.遠心後沈渣を水洗して再度遠心し, 得られた沈渣に第2固定液を数滴加える. 剥離防止処理済み (シランコーティング) スライドグラスにPAPペンで枠を囲み, ピペットにて沈渣を枠内に塗抹する. 十分乾燥し, Papanicolaou (Pap.) 染色をする.この方法の利点は, 1) 特殊な機器を使わず操作が簡単である, 2) 細胞をほぼ100%回収できる, 3) 細胞の塗抹密度が高いので効率の良いスクリーニングができる, 4) 赤血球の保存が良い, 5) 尿採取後の細菌増殖がない, 6) 無晶塩類の析出が抑えられ鏡検しやすい, 7) 標本作製は1週間以内にすればよく, 検診などへの応用も可能であるなどがあげられる. この方法は日常業務の精度向上と省力化において大変有用である.
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佐藤 之俊, 上野 真由美, 藤山 淳三, 出井 禎, 石川 雄一
1998 年37 巻3 号 p.
298-304
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
胸部CT検査によって発見された肺の末梢発生小型腺癌 (CT発見肺腺癌) 手術例10例の細胞所見について, 最大径20mm未満の高分化腺癌との比較を中心に検討を加えた. CT発見肺腺癌は大きさ10~20mmで, いずれも高分化腺癌であり, 乳頭型と気管支肺胞上皮型がそれぞれ5例であった. 細胞診所見では, 対照症例の高分化腺癌に比較して異型が弱いが,(1) 腫瘍細胞は孤立散在性に出現する場合が多く, また集塊を形成するときは平面的で小集塊のことが多い,(2) 個々の細胞は小型で, N/C比はやや低い,(3) 細胞質はライトグリーン淡染性で泡沫状のものが多い,(4) 核は円形~類円形で, 軽度の大小不同性を認める. また, 核縁はやや肥厚しているが平滑のものが多く, 一部に切れ込みを認める,(5) 核クロマチンは微細顆粒状~細顆粒状で, 分布は均等である,(6) 核内封入体を有する例が目立つ,(7) 核小体は目立ち, 1個~ 数個認められる,(8) 背景に大食細胞を認める場合が多い, などが特徴的であった. とくに, 核所見において核クロマチンの増量, 核縁の切れ込み, 核小体が目立つこと, などの所見は診断上特徴的であり, かつ細胞診検査は本症のような診断困難な小型肺病変に対し有用であると考えられた.
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山城 勝重, 川村 直樹, 松林 聡, 土田 貴美子, 岩本 和彦, 広瀬 徹, 村山 正文, 小田 由紀子, 藤岡 貴枝
1998 年37 巻3 号 p.
305-312
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
北海道に以下のような静止画テレパソロジー・システムを構築した. 1) FTPサーバはインターネット上ならびにダイヤルインサーバを通してデジタル公衆回線に接続されたクライアントと通信できる. 2) デジタルスチルカメラで取り込んだ画像の質はHDTV相当のものである. 3) システムは非常に安価で, 操作が容易, さまざまなコンピュータ・ハードウェア・プラットフォームから独立している.
われわれは静止画テレパソロジーを細胞診の遠隔診断に最初に応用すべきと考えた. 札幌から280km離れた市立稚内病院の細胞検査士が転送してきたモニター上の画像を観察するだけでこの5ヵ月間に140以上の症例の診断を日常業務として行った. 電子メール (メーリングリスト) での細胞所見や診断についての討論は迅速かつ十分に行われた. テレサイトロジーは細胞診断を専門に'する医師のいない地域医療に有効なだけでなく, 離れた地域における多数の細胞診断医, 細胞検査士の問の討論, コンサルテーションに有用であると考える.
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望月 衛, 高橋 勝美, 江尻 晴博, 細川 洋平
1998 年37 巻3 号 p.
313-317
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
圧挫標本と捺印細胞診標本の併用が術中迅速診断に有用であった, 単房性成人型顆粒膜細胞腫の1例を報告する.症例は53歳, 女性.急性腹症で入院.開腹時の肉眼所見は右卵巣嚢胞捻転.嚢胞は単房性で, 大きさは直径約15cm, 内部に漿液性の内容物を入れていた.嚢胞壁の内外におのおの大きさ1.5cm, 2.0cm大の合計2個の結節性病変を認めた.同結節の術中迅速診断を施行.腫瘍捺印細胞診標本では, 不整形核と, 繊細かつ明るい核クロマチンを持つ, N/C比の高い腫瘍細胞が小細胞集塊を形成し出現していた.圧挫標本中には, 捺印標本の所見に加え, 小卵胞様構造と問質細胞の混在が認められた.凍結切片では, 核形不整の目立つ腫瘍細胞が充実性ないし索状配列を呈し増殖していた.圧挫標本は, 組織像と捺印細胞像の中間的な情報を提供するものとして, ある種の卵巣腫瘍の術中迅速診断に応用が可能であると考えた.
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大崎 博之, 高田 多津男, 中村 宗夫
1998 年37 巻3 号 p.
318-322
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
乳腺に発生した線維腫症Fibromatosisを経験したので報告する.
症例は56歳の女性, 左乳腺腫瘤を主訴に当院受診. 穿刺吸引細胞診では, 裸核状の小型紡錘細胞が孤在性に少数出現していた.明らかな細胞異型はなかったため, 細胞診では陰性と診断した. その後, 実施した部分生検でも悪性所見は認めなかったが, 臨床所見として皮膚の発赤, 陥凹, 超音波検査にて約7cm大の辺縁不整な低エコー領域を認めたため, 臨床的に強く乳癌を疑い手術を行った. 術中の迅速診断でも悪性像はなく, 手術はQuadrantectomyにとどめた. 手術材料の組織学的, 免疫組織化学的検索の結果, 線維腫症と診断した.
乳腺の線維腫症は, 臨床的に癌との鑑別が困難である. しかし, 穿刺吸引細胞診では, 異型のない紡錘細胞が比較的多数出現する程度で, 細胞学的に悪性を示唆する所見はない. したがって, 臨床的に乳癌を強く疑っている症例の穿刺吸引細胞診で, 異型のない紡錘細胞が出現細胞の主体を占めている場合には, 線維腫症を鑑別診断に加える必要がある. また, 線維腫症はしばしぼ再発するため, Follow upが必要で, 細胞診は再発の診断にその効果が期待できる.
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梅澤 敬, 木村 絵里子, 新崎 勤子, 宮沢 善夫, 遠藤 泰彦, 牛込 新一郎, 池永 素子
1998 年37 巻3 号 p.
323-327
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
比較的まれな筋上皮腫を細胞診にて推定し得たので報告する. 症例は47歳男性, 1年前より口蓋腫瘤を自覚し, 近医にて口蓋腫瘍を指摘され当院耳鼻科を紹介受診. 穿刺吸引細胞診を施行しclass IIIa・筋上皮腫と推定診断の結果, 口蓋腫瘍摘出術を施行. 組織学的に悪性筋上皮腫と診断された. 細胞像はライトグリーン好染の線維状物質やヘマトキシリン淡染性の粘液様物質を背景に, 小型で比較的均一なplasmacytoid cellを集簇性~孤立性に多数認めた. 組織診ではmyxoidな基質を伴って, 核は偏在性, 好酸性の細胞質を有する腫瘍細胞を索状~ 胞巣状に認めた. 免疫組織化学的にS-100蛋白, vimentin, cytokeratin (CAM 5.2) が陽性であった. 形質細胞型を呈する筋上皮腫の特徴的な細胞像や免疫組織化学的染色態度などを認識しておくことが正確な診断への重要なポイントであると考えた.
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山田 直子, 野村 浩一, 高木 敬三, 小野 安雄, 本間 隆志, 井出 尚一, 牛込 新一郎
1998 年37 巻3 号 p.
328-332
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
肉腫様変化を伴った唾液腺導管癌を癌腫成分とする多形腺腫内癌腫の1例を経験したのでその細胞像を報告する. 症例は67歳女性, 左耳下部腫脹を主訴とし, 穿刺吸引細胞診にて悪性筋上皮腫が疑われ, 腫瘍摘出術が行われた. 摘出腫瘍の捺印細胞診では, 壊死性背景の中に一部に柵状構造をとる重積性集合性細胞と, 散在性類円形ないし紡錘形細胞が認められた. 組織学的には, 内腔に壊死物質を入れた管腔形成および乳頭状増生を示す唾液腺導管癌成分と類円形ないし紡錘形腫瘍細胞がびまん性に増生する肉腫様成分とが混在していた. 一部に両成分の移行像が認められた. 一部に多形腺腫を示唆する像が認められ, 肉腫様変化を伴った唾液腺導管癌を癌腫成分とする多形腺腫内癌腫と診断した. 細胞診での集合性細胞が組織診での典型的な唾液腺導管癌部分に, 散在性細胞が肉腫様部分に相当すると考えられる. 唾液腺細胞診にて壊死性背景の中に柵状構造を示す集合性異型細胞がみられた場合, 唾液腺導管癌の可能性を考える必要がある. また, 散在性類円形ないし紡錘形異型細胞がみられた場合, 唾液腺導管癌などの癌腫が肉腫様変化をきたした可能性も考慮しなければならない.
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同一腫瘍細胞の光顕的および電顕的観察を中心に
中村 純子, 大原 真由美, 田中 ふさよ, 池谷 武彦, 萩本 美都子, 松田 実
1998 年37 巻3 号 p.
333-338
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
われわれは喀痰中に腫瘍細胞が認められた悪性中皮腫の1例を経験した. パパニコロウ染色標本に見出された喀痰中の腫瘍細胞を電顕にて観察し, 悪性中皮腫細胞であることを確診し得た. 症例は, 67歳のアスベスト曝露歴のある男性で, 職場検診にて胸部異常陰影を指摘されて平成6年7月入院し, 胸水貯留が認められ胸水細胞診にて悪性中皮腫が疑われた. 治療により軽快退院したが翌年3月悪化して再入院し, この時喀痰細胞診にて腫瘍細胞が, 平面的で結合性の疎な集団として発見された. 腫瘍細胞はライトグリーン好性の重厚で豊富な細胞質と, 円形で中心性の核を有し, 明瞭な核小体が1ないし2個認められた. 電顕にて腫瘍細胞を観察した結果, 細胞膜表面の長いmicrovilliと核周囲の中間径線維が認められ, 悪性中皮腫細胞と確診された. 死亡時の胸膜穿刺生検から作成された標本では, 線維性結合織中に腫瘍細胞の蜂巣状増殖が認められ, 腫瘍細胞はアルシアン青およびコロイド鉄染色陽性で, ピアルロニダーゼにより消化された. このような所見および免疫組織化学的所見から, 病理組織学的にも悪性中皮腫と診断された.
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矢野 好人, 羽場 礼次, 野間 勝之, 小林 省二, 黒河 達雄, 梅田 政吉
1998 年37 巻3 号 p.
339-343
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
胸水細胞診で診断できた肺原発のatypical carcinoidについて, 術前の気管支擦過細胞像と再発時の胸水細胞像を対比し報告した. 症例は66歳の女性で, 術前の気管支擦過細胞診では小型の腫瘍細胞が散在性にみられ, その一部でロゼット様配列を示す集塊も認められた. 腫瘍細胞は多形性が軽度で, 細胞質は比較的豊富, 核は円形を基調とし, クロマチンは細穎粒状で均等に分布していた. 核分裂像は少数認められたが, 壊死は認められなかった. 組織学的には好酸性胞体を有するN/C比の高い腫瘍細胞が, 胞巣状や索状に密に増殖し, ロゼットの形成や核分裂像の増加が認められ, また免疫組織化学的にchromogranin Aが陽性でありatypical carcinoidと診断された. 一方再発時の胸水細胞診では, 重積性の強い細胞集塊と集塊の一部にロゼット様配列が認められた. 腫瘍細胞には中等度ながら多形性がみられ, クロマチンは粗穎粒状を示し, 中等度に核の大小不同性を認めるなど気管支擦過材料に比べて細胞に異型性がみられた. また核分裂像を認め, 免疫染色でもchromogranin Aが陽性でありatypical carcinoidと診断した.
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田島 紹吉, 渋木 康雄, 蛇沢 晶, 小松 彦太郎
1998 年37 巻3 号 p.
344-348
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
肺の粘表皮癌は太い気管支腔内に発生する比較的まれな腫瘍とされているが, 今回われわれは末梢発生と中枢発生の2例を経験したのでその細胞所見を中心に報告する.
細胞像は2例とも同様で, 異型の弱い扁平上皮に分化する細胞と, 細胞質内に多量の粘液を有する粘液細胞に分化する細胞と, 両者の特徴を持つ移行型細胞とが認められた.
扁平上皮系細胞と腺系細胞とが出現するため腺扁平上皮癌との鑑別が問題となるが, 粘表皮癌にみられる癌細胞は異型性に乏しい点が鑑別上重要と思われた.
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上條 聖子, 河野 尚美, 稲山 嘉明, 中谷 行雄, 神永 陽一郎, 佐藤 芳美, 白井 輝, 石ケ坪 良明
1998 年37 巻3 号 p.
349-352
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
穿刺細胞診で診断された耳下腺部ノカルジア症の1症例を報告する. 症例は51歳女性, 多発性筋炎および問質性肺炎にてステロイド療法を3年間受けていたが, 右耳下腺部の腫瘤を指摘された. 悪性腫瘍を疑い, 穿刺細胞診が施行された. 光顕的に, 壊死物質と多数の好中球の出現する膿瘍様の背景に, 分枝状, 放射状の繊細な菌糸を認めた. 菌糸は, PAS, Grocott染色に陽性で
Nocardiaを疑い, Gram, Fite-Faraco抗酸菌染色に陽性所見を示したため同菌と確定した. 培養後の生化学的性状から,
Nocardia asteroidesと同定された.
Nocardiaの菌糸は, Papanicolaou染色では見逃しやすいため, 入念な観察が必要である. ノカルジア症は, 近年免疫不全状態の患者を中心に増加傾向にあり, ときに重篤な経過をたどる. 特にこのような患者からの穿刺細胞診で, 膿瘍様の所見がみられた場合は, ノカルジア症を鑑別に入れて検討する必要がある.
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宮坂 美奈津, 平岡 伸介, 石森 弘孝, 丸茂 健, 橋口 明典, 細田 泰弘, 鏑木 淳一
1998 年37 巻3 号 p.
353-357
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
経尿道的膀胱腫瘍切除 (TUR-BT) 後7年目に, 自然尿細胞診により再発が発見されたまれな膀胱原発印環細胞癌の1例を報告する. 症例は67歳男性.初発時, 血尿と自然尿中の異型細胞の出現を来たし, TUR-BTを施行した.膀胱右側壁の0.5cm大の有茎性腫瘍は組織学的に印環細胞癌であり, 他臓器に原発巣を認めず膀胱原発と診断された. 補助的化学療法後も経過観察し, 膀胱鏡でも膀胱粘膜表面に異常を認めていなかったが, 術後7年目に再び自然尿中に印環細胞癌の出現を認めた. 再発から3ヵ月後に呼吸不全で死亡した. 剖検の結果, 印環細胞癌は膀胱粘膜に再発を認めず, 膀胱壁内および骨盤臓器の主としてリンパ管内に存在し, さらに傍大動脈~頸部リンパ節へとリンパ行性に進展していた. 肺, 肝など臓器への遠隔転移は認められず, 直接死因は急性問質性肺炎による呼吸不全であった.
本例はまれな膀胱原発印環細胞癌であり, その再発や進展様式に特徴を有した. さらに予後不良な膀胱印環細胞癌にあって7年 (80ヵ月) と長期に生存した症例であった. 文献的考察も加えて報告する.
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斉藤 忠, 田丸 淳一, 栢尾 純子, 葛生 吉彦, 佐藤 美雪, 脇田 久, 三方 淳男
1998 年37 巻3 号 p.
358-363
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
胸水の穿刺吸引細胞診が有用であった前駆Tリンパ芽球性リンパ腫 (Precursor T-lymphoblastic lymphoma, T-LBL) の1例を経験したので報告する.
症例は42歳, 男性.平成7年8月, 顔面浮腫と労作時呼吸困難を主訴に来院, 諸検査にて縦隔腫瘍が疑われたが, 胸水の免疫細胞化学とリンパ球表面マーカー解析でT-LBLと診断された.腫瘍細胞は円形から類円形の核を有し, 微細クロマチンが増量, 一部の細胞には核縁の切れ込みもみられた.免疫細胞化学ではMT-1 (CD43), CD3が陽性, L-26 (CD20), EMAがともに陰性であった.フローサイトメトリーによる表面マーカー解析ではCD2, CD5, CD7が高い陽性率を示した.診断後ただちに化学療法を施行し, いったんは完全寛解となったが, 平成8年8月定期検診で頸部リンパ節腫脹を認め再入院, リンパ節生検にて再発が認められた.リンパ節摘出材料で行った免疫組織化学と表面マーカー解析も, 胸水の検索結果とほぼ一致していた.
本症例のごとく, 表在リンパ節を触知出来ない悪性リンパ腫症例においては, 穿刺吸引材料による細胞学的検索, 免疫細胞化学, および表面マーカー解析を積極的に行うことが診断上特に肝要であると思われた.
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後藤 明輝, 石田 剛, 堀内 啓, 鈴木 由美恵, 久光 亜弥子, 坂本 穆彦
1998 年37 巻3 号 p.
364-369
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
フリー
喉頭に発生した胞巣状軟部肉腫 (Alveolar soft part sarcoma) の1例を経験し, その捺印細胞像を検討したので報告する.
症例は34歳, 女性.右声帯下の腫瘤を指摘され, 腫瘤部位の切開生検が施行された.捺印細胞標本にて, 平面的で重積性に乏しい疎な結合性を示す集塊を形成し, 類円形で大型の核を有する腫瘍細胞を認めた.大型の核小体を1個から数個認めた.腫瘍細胞は顆粒状でライトグリーン好性の豊かな細胞質を有し, PAS陽性顆粒状物質を含んでいた.組織学的には, 胞巣状に増生する好酸性で顆粒状の豊かな細胞質を有する腫瘍細胞を認めた.細胞質内にジアスターゼ抵抗性PAS陽性顆粒が認められた.免疫組織化学的にはvimentin, desmin, muscle specific actin, α-smooth muscle actinが陽性を示し, 胞巣状軟部肉腫と診断した.電子顕微鏡では, 縦走するフィラメントが凝集した針状結晶物が認められた.鑑別診断として, 顆粒細胞腫 (granular cell tumor), 傍神経節腫 (paraganglioma), オンコサイトーマ (oncocytoma), 腎細胞癌 (renal cell carcinoma) があげられるが, 細胞質内ジアスターゼ抵抗性PAS陽性顆粒の有無や核所見より胞巣状軟部肉腫とは細胞学的に鑑別可能であると考えられた.
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櫻井 信司, 川井 俊郎, 金井 信行, 久保野 幸子, 鈴木 光明
1998 年37 巻3 号 p.
370-371
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
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鐵原 拓雄, 大杉 典子, 三上 芳喜, 清水 道生, 広川 満良
1998 年37 巻3 号 p.
372-373
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
ジャーナル
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佐々木 政臣, 八幡 朋子, 若狭 研一, 伊倉 義弘, 濱田 智美
1998 年37 巻3 号 p.
374-375
発行日: 1998/05/22
公開日: 2011/11/08
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