日本臨床細胞学会雑誌
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62 巻, 1 号
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原著
  • 北 健二, 小川 隆文, 山崎 未夢, 河野 徳子, 榊原 稔子, 川越 道夫, 圓井 知江, 西川 美咲, 石川 良侑, 内藤 子来, 松 ...
    2023 年 62 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    目的:LSIL/CIN1,HSIL/CIN2,HSIL/CIN3 について,細胞形態の特徴の差を明らかにする目的で検討を行った.

    方法:2013 年 4 月~2016 年 3 月の期間に,子宮頸部細胞診で LSIL,HSIL と診断後,生検組織診断が行われた LSIL/CIN1:42 例,HSIL/CIN2:37 例,HSIL/CIN3:24 例を検討した.

    成績:LSIL/CIN1〈HSIL/CIN2〉〔HSIL/CIN3〕の検討結果を示す.傍基底系異型細胞の出現率(実数)は 0.5%(9/1948)〈2.9%(77/2671)〉〔49.7%(804/1619)〕であった(各 p<0.01).傍基底系異型細胞数のカットオフ値は,LSIL/CIN1 vs. HSIL/CIN2:2.0,HSIL/CIN2 vs. HSIL/CIN3:9.0 が得られた.扁平上皮癌を疑う細胞の出現率は〔37.5%〕となり,HSIL/CIN3 に特徴的にみられる所見であった(各 p<0.01).

    結論:本研究にて見出された特徴の差は,傍基底系異型細胞数,扁平上皮癌を疑う細胞の出現であった.

  • 中村 豊, 河合 美穂, 臼井 美希, 朝川 可奈, 馬場 洋一郎, 矢納 研二, 村田 哲也
    2023 年 62 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    目的:Trefle®を用いた胆管細胞診において,同一デバイスによって採取された細胞診と組織検体の診断結果が不一致となった症例について検討を行った.

    方法:2014 年~2019 年の期間に当院において Trefle®を用いて得られた胆道狭窄病変 252 例(悪性 206 例,良性 46 例)を対象とした.同一デバイスにより同時に得られた結果を比較し,細胞診が良性,組織診が悪性(C−H+)のグループ,細胞診が悪性で組織診が良性のグループ(C+H−)について,不一致となる要因について検討を行った.

    成績:細胞診と組織診が不一致であった症例は 21 例(8.3%)あり,そのうち C−H+は 11 例,C+H−は 10 例であった.C−H+11 例のうち 8 例で高分化型腺癌と診断され,2 例は High grade BilIN であった.一方,C+H− 10 例のうち 6 例が胆管上皮下への浸潤を示す膵癌症例であった.

    結論:Trefle®胆管細胞診において,病変が高分化型腺癌の場合,偽陰性の可能性が含まれ注意が必要である.また,胆管浸潤を伴う悪性腫瘍では,組織診断が良性であっても細胞診が悪性となる症例が存在することを念頭に置く必要がある.

  • 大西 雅子, 梶尾 健太, 木佐 京子, 飯田 健斗, 鈴木 秀和, 上田 佳世, 河原 邦光
    2023 年 62 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    目的:当センターで実施している超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)施行時のサイトクイック染色(以下 CQ)を用いたオンサイト迅速細胞診(ROSE)の有用性について検討した.

    方法:2018 年 4 月から 2019 年 7 月の 16 ヵ月間で,EBUS-TBNA 施行時に ROSE が実施され,同時に実施された病理組織診にて診断が確定した 89 例を対象とした.ROSE 施行時に CQ 標本と同時に作製されたパパニコロウ染色(以下 Pap)標本,ならびに病理組織標本の三者の比較検討を行った.

    成績:CQ 標本と Pap 標本の判定区分が一致した症例は 94.3%であった.また CQ 標本で陽性であった 64 例の推定組織型と同時に採取された病理組織診との組織型の一致率は 89.1%であった.

    結論:CQ 染色は染色操作が簡便で Pap 標本との判定区分や病理組織診との組織型一致率も良好であった.CQ 染色は ROSE に有用な染色法であると考えられた.

  • 丸田 淳子, 伊藤 有紀子, 山本 加菜, 横山 繁生, 内野 眞也
    2023 年 62 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    目的:甲状腺 MALT リンパ腫の細胞診断に有用な判定基準を設定し,正診率の向上と観察者間変動の減少を図る.

    方法:MALT リンパ腫 23 例と慢性甲状腺炎 22 例の計 45 例を対象とした.最終的に両疾患の鑑別に有用な 7 所見を選定,その定義を明確化し,数値化可能な所見には cutoff 値を設定した.

    成績:MALT リンパ腫には山脈状集塊,lymphoglandular bodies,核線,核形不整+腫大核小体,核径増大,慢性甲状腺炎には濾胞上皮細胞集塊,線維組織片の出現頻度が高かった.前 5 所見をスコアー(+1),後 2 所見を(−1)とすると,MALT リンパ腫 23 例の平均合計スコアーは(+2.7),慢性甲状腺炎 22 例は(−0.8)であった.合計スコアーが 2 以上を MALT リンパ腫,0 以下を慢性甲状腺炎とすると,この判定基準で 39/45 例が正診できた.また,経験年数の異なる細胞検査士 3 名によるスコアー化前後の判定でも,意義不明の症例が減少し,正診率が増加した.

    結論:MALT リンパ腫の細胞診断には,上記 7 所見に着目することが重要である.判定基準の設定が正診率の向上と観察者間変動の減少につながった.

症例
  • 筒井 宏行, 小原 昌彦, 水野 圭子, 安岡 香, 和田 有加里, 覚道 健一, 賴田 顕辞
    2023 年 62 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    背景:甲状腺癌取扱い規約第 8 版(2019 年)で採用されている好酸性細胞型濾胞癌は,被膜浸潤や脈管浸潤の有無で好酸性細胞型濾胞腺腫と鑑別される.そのため細胞診では両者を鑑別できないとされているが,それを検討する論文はでてきている.当院で最近経験した好酸性細胞型濾胞癌の 1 例の穿刺吸引細胞診から組織型を示唆できるか,過去の論文のレビューを通じて検討した.

    症例:40 歳代前半の女性,甲状腺左葉の腫瘤に対して腺腫様甲状腺腫として近医で 10 年間経過観察されていた.腫瘍径が初診で 2 cm から約 6 cm となり,サイログロブリン値も高く,手術目的で当院に紹介となり,左葉切除後の病理診断で好酸性細胞型濾胞癌と診断された.当院で 11 年前にこの病変の穿刺吸引細胞診履歴があることが偶然判明し,その細胞診所見は好酸性細胞が孤立散在性を主体に多数出現しており,好酸性細胞に 4 核までの多核,腫大核小体,大型細胞異形成を認め,胞巣内を通過する血管も認めた.

    結論:好酸性細胞型濾胞癌を疑える穿刺吸引細胞像ではあったが,臨床所見も併せて総合的に判断する必要がある.

  • 梅澤 敬, 館川 夏那, 山本 容子, 林 榮一, 山村 信一, 熊谷 二朗
    2023 年 62 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    背景:液状化検体細胞診を用いた健診による子宮頸部細胞診で発見した,神経内分泌への分化を伴う HPV 関連子宮頸部低分化型腺癌,ⅠA1 期の 1 例を報告する.

    症例:50 歳代,女性.LBC による子宮頸部細胞診では,細胞の N/C 比が高い円形,卵円形,高円柱状,多核の小型腫瘍細胞が孤立散在性に散見された.核クロマチンは粗顆粒状に分布し,核小体が目立ち,一部に核分裂像やロゼット様構造を認め低分化型腺癌と判定した.子宮頸部円錐切除術の組織標本では,好酸性の細胞質をもった腫瘍細胞による充実性増殖で,水平方向 6 mm の早期病変であった.一部にスリット状の腺管様構造を認めた.腫瘍細胞はクロマチンが増加し,核小体は明瞭で,核分裂像やアポトーシスが目立った.基底膜の腫瘍胞巣辺縁が一部不整であり,間質内浸潤 3 mm 以内と判断した.免疫組織化学染色で腫瘍細胞は INSM-1,CD56,p16 が陽性で Ki-67 標識率は 90%以上であった.

    結論:高悪性度の形態を有し大細胞神経内分泌癌との鑑別を要した,ⅠA1 期の子宮頸部低分化型腺癌の細胞診・組織学的所見について報告した.

  • 梅澤 敬, 館川 夏那, 山本 容子, 林 榮一, 山村 信一, 瀬戸口 知里, 熊谷 二朗
    2023 年 62 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    背景:膵腫瘍に対する EUS-FNA 時の ROSE で,アミロイド沈着を伴う PanNET を迅速 CytoRichTM(CR)法にて推定したので報告する.

    症例:60 歳代,女性.検診時の腹部エコー検査で膵管拡張を指摘され,EUS-FNA による ROSE が施行された.迅速 CR 法では,ライトグリーン好染性の無構造物,小型裸核状腫瘍細胞,紡錘形の血管内皮細胞が付着する分岐・錯綜する裸血管が観察されアミロイド沈着を伴う PanNET と判定した.セルブロックで沈着物はコンゴ赤染色で朱橙色を,偏光顕微鏡下で黄緑色調の屈折光を呈しアミロイドと判断した.免疫組織化学染色で腫瘍細胞は INSM-1,Chromogranin-A,Synaptophysin,CD56,Insulin が陽性,Ki-67 index は 1%以下でアミロイド沈着を伴う PanNET G1(インスリノーマ)と診断した.

    結論:膵腫瘍に対する EUS-FNA で裸核状小型腫瘍細胞と分岐・錯綜する裸血管を含む無構造物は,アミロイド沈着を伴う PanNET G1(インスリノーマ)の重要な細胞診所見であると考えられた.

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