日本臨床細胞学会雑誌
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26 巻 , 4 号
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  • 藤本 郁野, 郭 宗正, 平井 康夫, 浜田 哲郎, 荷見 勝彦, 増淵 一正, 福田 耕一, 都竹 正文, 南 敦子, 池永 素子, 古田 ...
    1987 年 26 巻 4 号 p. 515-522
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1954~1986年までに癌研婦人科にて治療した漿液性嚢胞腺癌は118例であった.そのうち術前および術中に腹水細胞診を施行したものは88例であった.この88例につき, 細胞診所見と予後との関係を中心に検討し, 以下の結果を得た.
    1. 腹水細胞診陽性群と陰性群の1~5年までの各年生存率はそれぞれ1年日75.7%, 100%, 2年目53.5%, 91.0%, 3年目43.8%, 76.9%, 4および5年目30.6%, 66.7%であり, 陽性群の予後は明らかに不良であった.
    2. 背景細胞は食細胞, リンパ球, 好中球, 中皮細胞の割合について検討したが, I・II期の予後不良群では同期の2年以上生存した群に比べ食細胞, リンパ球の割合が減少し, 好中球は増加した.これに対し, III・IV期の予後不良群ではIII期の2年以上生存した群に比べ, 好中球は減少し, 食細胞とリンパ球の割合が増加した.
    3. 癌細胞の出現形態のうち単離細胞の占める割合が多くなるほど, 予後は不良となった.
    4. 癌細胞所見のうち, 予後不良群では核形不整, 3μ 以上の核小体出現が多く認められた.
    5. PAS反応陽性群と陰性群の2年生存率はI・II期でそれぞれ25.0%, 88.9%, III・IV期でも12.5%, 60.0%と, 有意にPAS反応陽性群の方が予後不良であった (p<0.001).
  • 熊井 健得, 工藤 隆一, 水内 英充, 田村 元, 橋本 正淑
    1987 年 26 巻 4 号 p. 523-531
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    腹水中に出現する腺癌細胞, 中皮細胞, 組織球, リンパ球, 好中球などを光顕で同定し, その同一細胞の表面微細構造を観察した. また, 一部腹水細胞と由来組織の表面微細構造と対比観察を行い, 以下の結果が得られた.
    1. 腹膜の組織と腹水中の中皮細胞の表面微細構造は, 同様の所見を示した. 腹水中の中皮細胞はシート状の配列を示し, 細胞質は平板状で核が隆起し, microvilliが粗に配列していた.
    2. 漿液性嚢胞腺癌, 類内膜腺癌の癌組織および腹水中の腺癌細胞像は, 緊満した球形で核の隆起は認められなかった. 腹水中の腺癌細胞は球状の小塊を作り細胞相互はmicrovilliで密に接していた. 細胞の表面は種々の変化に富んだmicrovilliが, 密から粗な配列を呈していた. 漿液性嚢胞腺癌の細胞表面にはciliaが一部の症例に認められた. Krukenberg腫瘍の腹水中の細胞には細く長く密に配列されたmicrovilliが観察された.
    3. 腹水中の正常細胞と腺癌細胞の表面微細構造では, 癌細胞は緊満し核の膨隆もみられず細胞表面には種々のmicrovilliが密に配列しており両者の鑑別は可能であった.
  • 福島 溪二
    1987 年 26 巻 4 号 p. 532-536
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    内分泌細胞診の検体採取部位は腟側壁であるが, 妊婦初診時の子宮頸癌スクリーニングで採取する子宮頸部擦過スミア (cervical scraping smear) から, 同時に内分泌異常をもスクリーニングすることは可能か否かに筆者は関心をもったが, そのためにはまず両採取部位におけるスミア所見の差異を検討する必要があった.非妊婦についてはすでに検討されているが, 妊婦に関しては詳細に比較検討した文献が見当たらないことから, 筆者は自院での妊娠5週から12週までの正常妊婦222例に, 腟側壁上部1/3からも検体を採取してPapanicolaou染色を行い, 両者のkaryopyknoticindex (KPI), Eosinophilic index (EI), navicular cell index (NI) を算定して比較検討した.その結果, KPI, EIは子宮頸部擦過スミアに腟側壁スミアより高値を示す例が多く, ことにEIに著しかったが, 切迫流産のおそれのある両指数値50を越える例はほとんどなく, また両採取部位で差異のある例はSoostの非妊婦症例についての報告よりも多くみられたが, それでも全症例の73%は著しい差異を示さなかった.NIについては採取部位による差異はほとんど認められなかった.
  • 夏目 園子, 新福 正人, 今井 律子, 平野 みえ, 佐竹 立成, 丸山 孝夫, 金子 正博
    1987 年 26 巻 4 号 p. 537-541
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部スメア中に, 腫瘍細胞が認められた転移性腫瘍の12例を細胞組織学的に検討した.
    1.スメア標本中の腫瘍細胞は, 比較的数が少なく, 孤在性ないし小集団を形成して出現する場合が多く, 印環型の腺癌細胞として認められる場合は, 胃癌が疑われる.
    2.転移性腫瘍が子宮腔内に露出するに至る経路として, 直接浸潤のほかに, リンパ管閉塞による, 腫瘍の逆行性の進展を考えさせる所見が認められた.また, 腫瘍が子宮頸部のみに限局する例は1例もなく, いずれも腟壁, 頸部, 体部, 卵管のうち2箇所以上に認められた.
    3.12例中5例は性器出血などの婦人科的症状を訴えておらず, 女性の担癌患者の場合には, 腫瘍の広がりを知るうえで, 子宮腟細胞診を含めた婦人科的な検索が必要と考えられた.
  • 脇田 邦夫, 佐々木 紀充, 蔵本 博行
    1987 年 26 巻 4 号 p. 542-550
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    異形成135例, 上皮内癌30例, 腟部びらん67例, 計232例の各種子宮頸部病変に蒸散法による各種レーザー療法を行い, 細胞診ならびにコルポ診で治癒経過を追跡した.
    1.YAGレーザー蒸散法で治療した65例につき細胞診所見の推移を追跡したところ, fiber様細胞は2週までにみられ, 直後では30例中70.0%, 全経過では65例中50.8%の頻度であった.遅れて出現する修復細胞は65例中29.2%, また化生細胞も30.8%に認められた.コルポ診所見では, 2週日に扁平上皮側より上皮化は開始し, 舌状に伸展しながら新たなSCJを形成した.
    2.治療後細胞診で異常を呈したのは, 異形成の19.3%, 上皮内癌の16.7%, 腟部びらんの7.5%であった.一方, コルポ診で異常を呈したのは, それぞれ19.3, 13.3, 3.0%である.
    3.細胞診異常を呈した36例のうち, 83.3%は治療後10週までに, 残りは11~44週の間に出現した.腟部びらんでは5週までに現れている.コルポ診でも所見を呈したのは, 異形成例の61.5%, 上皮内癌例の80.0%である.このうち11例に遺残が確認された.
    4.細胞診正常ながら, コルポ診で異常を呈したのは異形成の7.0%, 腟部びらんの3.0%にみられた.うち1例が遺残である.
    5.遺残例を検討したところ, 早期発見には5~6週から10~11週の細胞診が鍵を握っていた.koilocytosisとの関連も示唆される.
  • 計良 恵治, 堀内 文男, 武田 敏, 高見沢 裕吉
    1987 年 26 巻 4 号 p. 551-558
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部擦過スメアでkoilocytotic atypiaが観察された, condyloma 6例の生検組織を電子顕微鏡 (以下電顕と略) 的に観察した.
    1. 電顕的に観察した6例すべての重層扁平上皮の中層~表層細胞にかけて, 核周囲に細胞小器官に乏しい明庭領域を伴う細胞が観察され, また明庭領域の形成過程を示唆させるさまざまな移行像が観察された.
    2. 電顕的に明庭領域を伴う部分に, 細胞診でのenlargement, bi or multinucleation, hyperchromasia, diskeratotic changeにほぼ対応した形態変化が観察された.
    3. HPV粒子は6例中1例の, 核異型や核肥大あるいはクロマチン増量のみられる表層細胞に観察され, またHPV粒子の量は細胞核によりさまざまであった.
    4. HPV粒子の大部分は, 直径約40~50nmの類円形で, 核内に散在性~一部集合性を有し, 多くはヘテロクロマチン領域に接してみられ, またHPV粒子は核内の微細繊維や微細繊維よりなる網目様構造と密接に関連して観察された.
    5. まれに幅約20nm, 長さ約100~150nmの棒状のHPV粒子が類円形粒子と混在し, 不規則~柵状配列を呈して観察された.
  • 千綿 教夫, 杉下 匡, 石田 禮載, 柳沢 弥太郎, 蓮尾 泰之, 天神 美夫
    1987 年 26 巻 4 号 p. 559-565
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    mild dysplasiaを合併せる子宮頸部human papillomavirus (HPV) 感染症9例について, 経過観察中の細胞診所見の推移を検討した.
    1. koilocyteは, 合併症なき子宮頸部HPV感染症症例と同様に, 多くの場合出現と消失を繰り返した.
    2. mild dysplasia合併時に, それまでの経過中の細胞診で特徴的に認められていた所見上に核の異型が出現したのは, 5/9例 (55.6%) であった.
    3. 6/9例 (66.7%) において, mild dysplasia発症時に, それまでに認められていたHPV感染症細胞診所見の全部あるいは一部が増強されて出現した.
    4. 多くの症例 (8/9例, 88.9%) でimmature metaplastic cell typeの小型の細胞に, 集中してあるいは表層型, 中層型核異常細胞とともに, 核の異型が出現した.
  • 伊藤 園江, 大田 喜孝, 原武 晃子, 森塚 祐子, 丸山 正人, 入江 康司
    1987 年 26 巻 4 号 p. 566-571
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    尿細胞所見および電顕所見からHuman polyoma virus感染が疑われた8症例を報告した.
    Papanicolacu染色では, 小児の4症例で核内封入体細胞 (lntranuclear inclusion bearing cells, INIB細胞) が標本内細胞の90%以上を占めたのに対し成人の4症例では約30%程度であった. INIB細胞の細胞質はライトグリーンに淡染し, 核は11~18μで円形~類円形を呈し, N/C比の著明な増大を認めた.核内所見はINIB細胞のほとんどがスリガラス状を呈し, 鳥の目状, 核崩壊状を呈する細胞も少数ながら全症例に認めた.また, 8症例中4症例では核内がスリガラス状に変化した多核の表層移行上皮細胞を認め, ウイルス感染などに高率に出現するとされる細胞質内封入体細胞 (Intracytoplasmic inclusion bearing cells, ICIB細胞) を全症例に認めた.
    INIB細胞の電顕所見では, 核内に30~40nmのエンベロープを欠くウイルス粒子が結晶状に配列しPolyoma virusの存在が考えられた.なお, 本細胞の由来はPapanicolaou染色による細胞形態および電顕的に原形質内にトノフィラメントが豊富に認められることから移行上皮であると推定された.
  • 今井 大, 山川 光徳, 前田 邦彦, 増田 昭博, 佐藤 俊裕
    1987 年 26 巻 4 号 p. 572-580
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大網組織内乳斑とマクロファージおよび腹腔マクロファージの性状, 役割さらに発生について, ヒトや実験動物を用いて検討した.
    ヒト大網内あるいは腹腔マクロファージと中皮細胞は, monocyte/macrophage系マーカーを用いた免疫細胞化学的手法により鑑別可能であった. 乳斑には多くのマクロファージがみられ, 動物実験の結果から, これらのマクロファージは卵黄嚢の血液単球由来のものと, 胎芽組織由来のものとにより構成されることが示唆された. また, 乳斑は腹腔マクロファージの供給源であり, ときには同部にリンパ濾胞が形成され, 免疫学的反応にも重要な役割を果たしていると考えられた. また, ラットへの種々の刺激物投与実験から, おのおのに対して大網および乳斑は異なった反応を示した.
  • 伊藤 仁, 篠田 玲子, 赤塚 由子, 覚道 健一, 長村 義之
    1987 年 26 巻 4 号 p. 581-584
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    体腔液細胞診に免疫細胞化学的染色を取り入れることは, 診断上有用であると考える. そこで, 腫瘍細胞との鑑別の対象となる中皮細胞の免疫細胞化学的特色を明らかにするために, 酵素抗体間接法を応用し, Keratin, Vimentin, S-100蛋白, Desmin, EMA, CEA, CA 125, CA 19-9, AFPの9種について, 体腔液, 漿膜タッチスメアおよび胸腹膜組織切片を用いて検討した. その結果, 中皮細胞はKeratin, Vimentinに陽性を示し, また, 卵巣癌の腫瘍マーカーとして知られるCA 125にも高率に陽性を示した. その他, Desmin, EMA, S-100蛋自, 腫瘍マーカーであるCEA, CA 19-9, AFPについては, 中皮細胞は陰性であった.
  • 各務 新二, 勝田 浩司, 高成 秀樹
    1987 年 26 巻 4 号 p. 585-592
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胃疾患患者447例について, 胃生検組織診と直視下擦過細胞診を併用し, 次のような結果を得た.
    1. 158例の癌における陽性率は, 生検組織診86.1%, 擦過細胞診84, 8%で, 両者を併用した場合は98.1%となり, 単独の検査結果よりも12%以上の成績向上が示された. なお, 偽陽性例はみられなかった.
    2. 43例の癌では生検組織診または擦過細胞診での判定が疑陽性または陰性であったが, その原因を分析した結果, 生検組織診では陥凹性病変の微小癌 (5mm以下) と進行癌で表面に変性壊死のある例, および癌の表面露出の少ない症例が主体で, 的確に組織が採取されなかったことによった. 一方, 擦過細胞診では陥凹性病変が主であり, 採取細胞が少ないことおよび高ないし中分化型腺癌のため細胞異型の程度が弱いことが原因であった.
    3.細胞診疑陽性は49例で, 癌13例, 良性疾患24例, Atypical epithelial hyperplasia (以下ATPとする) 11例, Reactive lymphoid hyperplasia (以下RLHとする) 1例であった.癌例の大部分は早期癌で, しかも高ないし中分化型のため細胞の異型性が乏しいことが誤疑診の原因となっていた.良性疾患では, 胃炎および胃潰瘍の再生性変化に伴う良性異型細胞がその原因と思われた.
  • 宮本 宏, 荒谷 義和, 伊藤 正美, 磯部 宏, 堂坂 弘俊, 清水 透, 石黒 昭彦, 原田 真雄, 井上 勝一, 川上 義和, 遠藤 ...
    1987 年 26 巻 4 号 p. 593-598
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    手術が行われた肺扁平上皮癌患者 (p.stage Ia) のうち, 肺門部早期癌を除いた31例について中心型癌と末稍型癌にわけ, それらの予後と癌細胞形態像との関連性について検討した. 患者の5年生存率は中心型癌では58.3%, 末梢型癌では91.7%であり, 末稍型癌患者の予後は良好であった (p<0.05) 気管支擦過による非角化癌細胞の形態像では, 癌細胞の核径の平均値は中心型では10.2±1.7μm (mean±S.D.), 末稍型では14.4±1.2μmであり, 末梢型癌の方が中心型癌より大きい核を有していた症例が多かった (p<0.001). 中心型癌のうち, 平均核径11μm以下を有していた小型核細胞優勢症例6例中4例が18~27ヵ月で死亡した. 核小体については, 中心型癌の方が末稍型癌より大きな核小体がみられた (p<0.01)
    これらの成績は肺扁平上皮癌の悪性度が, 腫瘍内細胞の核や核小体の大きさにも関連性がある可能性を示唆している.
  • 川井 俊郎, 三浦 弘資, 角田 尚久, 久保野 幸子, 羽石 恵理子, 芳賀 芳子, 斉藤 建, 斉藤 達也
    1987 年 26 巻 4 号 p. 599-606
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    13例の胸腺腫手術例中, 7例に術前穿刺吸引細胞診を, 6例に術後捺印細胞診を行って以下の結果を得た.
    1. 腫瘍が最も小さく穿刺により細胞が得られなかった1例を除く6例で, 術前細胞診により胸腺腫との正診を得た.
    2. 胸腺腫の細胞像の特徴は異型を欠くリンパ球と上皮細胞の混在であり, その細胞量, 上皮細胞の形態と集塊形成の有無により, リンパ球優位型, 混合型, 上皮細胞集塊型, 紡錘細胞型の4型に分類できた.
    3. 細胞学的に上皮細胞集塊型であった3例はいずれも浸潤あるいは転移を認め悪性胸腺腫であった.しかし上皮細胞の核は非悪、性例に比し大きくはなかった.
  • 川井 俊郎, 三浦 弘資, 角田 尚久, 久保野 幸子, 羽石 恵理子, 芳賀 美子, 斉藤 建, 斉藤 達也
    1987 年 26 巻 4 号 p. 607-613
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    穿刺吸引および胸水細胞診を施行した6例の縦隔良性嚢胞性奇形腫を経験したので, その細胞像と組織像を報告する.
    術前の細胞診にて6例全例が正診された. 嚢胞内容である黄色~ 茶褐色の粥状脂物質を肉眼的に観察することは診断に重要であった.
    細胞像の特徴は, 採取細胞量には乏しいが, 扁平上皮細胞, 角化物質, 泡沫状の細胞質をもつ単核ないし多核のマクロファージ, 結晶様物質, 壊死物質を認めることであった.
    組織学的に主たる嚢胞は付属器を有する皮膚組織を壁とし, 腔内には角化物を入れ, 上皮剥離部では泡沫細胞や異物巨細胞が観察された. 3例には膵組織が認められた
    他部位発生の奇形腫と比較すると縦隔奇形腫は穿破しやすいのが特徴である. 1例は肺内に穿破し気管支洗浄にて炎症細胞, 壊死組織と角化物を認めた. ほかの2例では胸腔内貯留物から嚢胞内容と毛髪を得, 胸腔内穿破と診断された.
  • 畠 榮, 太田 節子, 津嘉山 朝達, 中川 定明
    1987 年 26 巻 4 号 p. 614-620
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    全身性ならびに皮膚を除く限局性アミロイド症 (以後「ア」症と略す) は, 臨床症状が多彩で生前に診断をつけることは困難なことが少なくない. 現在「ア」症の疑われる症例については各臓器の生検により診断および確証を得ている.
    今回われわれは剥離・擦過材料 (3例), 穿刺吸引細胞診材料 (2例) を用い「ア」物質の形態とその鑑別法を検討した.
    「ア」物質は, 1) 無構造・無細胞性物質で, 2) 2~1,000μのライトグリーン濃染性の硝子物質であり, 3) 細線維状の不規則な集塊として出現し, 4) アルカリ・コンゴー赤染色で陽性を示し, 偏光顕微鏡で緑黄色の複屈折を示す特徴を呈した.
  • 水野 重孝, 磯部 宏, 伊藤 正美, 井上 勝一, 宮本 宏, 川上 義和
    1987 年 26 巻 4 号 p. 621-627
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Flow cytometryを用いて細胞核DNA量を測定するために, 肺癌組織の細胞分散法について検討した. 特にペプシン消化法の至適条件を細胞分散状態, CV値, G0G1ピーク値, 細胞径について検討した. 検体は75%エタノールで固定し金属メッシュ (#150) を通しペプシン処理を行った. ペプシン処理の至適条件は手術材料 (扁平上皮癌細胞と腺癌細胞) ではペプシン濃度0.1~0.5%, 処理時間10~30分, 温度37℃ がよく, 剖検材料 (小細胞癌細胞) ではペプシン濃度0.05~0.25%処理時間10~15分, 温度37℃によって良好な結果が得られた.なお, 75%エタノール固定後組織細切細胞と組織細切後75%エタノール固定細胞を比較したが, 核DNA量の測定には差はなかった.
  • 勝部 泰裕, 頼島 信, 岩沖 靖久, 藤井 恒夫, 江川 健士, 上馬場 是美, 藤原 篤
    1987 年 26 巻 4 号 p. 628-633
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣未分化胚細胞腫は, 日産婦分類では中間群に属しているが, その予後は個々の症例によりかなり異なっている. われわれは, 手術療法と維持化学療法により良好な経過を続けている症例 (良好例) と, 術後化学療法を行うも早期に再発し, 放射線療法が著効を呈したものの, 合併症 (劇症肝炎) のため急死した経過不良な症例 (不良例) についてその細胞所見と組織所見を対比して検討した結果を報告する.
    細胞所見では両症例ともリンパ球を背景としてcyanophilicな細胞質をもつ大型の細胞が多数認められた. N/C比は増大し, 著明な核小体を有しているのが特徴的であった. Chromatinは両者ともおもに粗大顆粒状を呈していたが, 良好例の方に粗大化が顕著であった. しかし, 細胞や核の形態については大小不同と多形性や核の辺縁不整などの所見は不良例に著明であった.
    組織所見からは, 良好例では索状-胞巣状の増殖を示すのに対し, 不良例においては主として禰漫性浸潤性増殖が認められ, 広汎な壊死を伴う部位も存在していた. リンパ球浸潤は良好例に多く認められたが, mitotic activityについては不良例に顕著であり, 不良例の方に異型性が強い所見が認められた.
  • 土岐 利彦, 阿部 祐也, 和田 裕一, 矢嶋 聰, 菅原 淑, 手塚 文明
    1987 年 26 巻 4 号 p. 634-638
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮内膜症により発生したと考えられる, 原発腟腺癌の1例を経験した. 症例は38歳の女性で, 後腟円蓋に外向性の腫瘤が認められた. 術前の腫瘍擦過細胞診では, 腺癌を疑わせる悪性細胞が出現していた. 組織学的には, 低分化型の腺癌であったが, 腫瘍下床のrectovaginal septumに, 子宮内膜症が認められた. 腺癌と内膜症との境界部には, borderline malignancyの腺管が存在し, この腫瘍は子宮内膜症より発生した, 原発性の腟腺癌と思われた.
  • 阿倉 薫, 畠中 光恵, 竹中 正治
    1987 年 26 巻 4 号 p. 639-643
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    インスリン依存型の52歳糖尿病男性の, 尿中にみられたHuman polyomavirus感染細胞について報告した. 昭和59年6月から昭和61年6月までの2年間に16回の細胞診を行い, すべての標本に少数の感染細胞が散見された. 感染細胞の形態学的特徴は核の腫大とクロマチンの核縁への付着であった. 核内は種々の濃度の好塩基性の核内封入体がみられ, 細胞質は変性傾向が著明で, 奇妙な形あるいは裸核様であった. 核内封入体はフォイルゲン染色陽性で均一の染色性を示しウイルス粒子のもつDNAが反応した結果と考えた. 電子顕微鏡的には核内に直径約40nmのウイルス粒子が散在性にみられた.
    Pap. 染色標本を脱色後に同一標本を酵素抗体法で染色した. 1次抗体に抗SV40 VP1家兎血清を用い, 大部分の感染細胞の核のみが陽性反応を示した. この方法はきわめて特異性が高く, 検査に要する時間も短くてすみ, Human polyomavirus感染細胞の迅速診断にはきわめて有効であると考えられる.
  • 笹生 俊一, 菅井 有, 高山 和夫, 渡辺 綾子, 高 金弘, 大堀 勉
    1987 年 26 巻 4 号 p. 644-646
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    尿膜管癌は, 膀胱腫瘍のなかでもまれであり, 尿膜管癌の細胞診についての報告は学会報告のみである. われわれは, 尿膜管癌の1例を細胞診を中心に考察し, 報告した. 症例は, 40歳, 男性で, 入院2年前より排尿終末時痛および白色調粘液の尿中混入をみることがたびたびであった. 膀胱鏡で膀胱頂部に一部潰瘍形成のある腫瘍を認め, 尿膜管腫瘍が疑われた. 自排尿では, 異型細胞, 腺細胞をみなかったが, 膀胱洗浄液中に腺癌細胞を認めた. 癌細胞の核は偏在性で, 核クロマチンの増量, 核の不整な重積がみられ, 胞体には粘液空胞を認めた. 膀胱洗浄液中に粘液を認めた. 生検では, 異型性の乏しい腺組織をみ, 尿膜管遣残が疑われたが, 手術時の迅速診断では粘液癌であった. 腫瘍捺印標本では, 多量の粘液とともに粘液産生像を示す腺癌細胞がみられた. 組織学的に, 膀胱表層に露出した部位は乳頭状腺癌で, 内部は粘液癌であった.
  • 野島 孝之, 井上 和秋, 藤田 美悧, 宝金 秀一, 荒川 三紀雄, 遠藤 隆志, 清水 幹雄, 佐野 松子
    1987 年 26 巻 4 号 p. 647-651
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    膵のsolid and cystic tumorはきわめてまれな腫瘍で, 若年女性に発生することが知られている. 今回, 10歳女性の膵体部に発生したsolid and cystic tumorを経験したので, その細胞および組織所見を報告する. 腫瘍は径5cmの充実性, 弾性軟で割面では変性壊死と出血を混じえる. 捺印細胞像では偏在性の円形から類円形の核と豊富な大型の胞体を示すが, 核の大小不同やクロマチンの増加はみられない. 1部では腺管様配列あるいはロゼット様配列を認め, 島細胞腫やカルチノイド腫瘍と鑑別を必要とする. 免疫組織化学的には, Neuron-specific enolase, α1-antitripsin, α1-antichemotrypsinが胞体内に陽性を示し, 電顕的に少数ながら径250-350nmのzymogen様顆粒を認める. これらの所見は本腫瘍の組織発生として腺房細胞を示唆するが, 文献的には, 導管への分化や神経内分泌顆粒の存在の報告もあり, 多種の細胞に分化しうる非常に未分化な細胞由来の可能性もある.
  • 各務 新二, 勝田 浩司, 野田 雅俊, 高成 秀樹
    1987 年 26 巻 4 号 p. 652-658
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    擦過細胞診が臨床的に有用であった直腸カルチノイドを経験したので, 組織診との対比および臨床所見, 文献的考察を加え報告する. 症例は26歳, 男性. 内視鏡下擦過細胞診で, 腫瘍細胞は比較的きれいな背景に小型で均一な細胞として認められ, 大小の集団と散在性の出現を示した. 配列は平面的, 一部重積性, ロゼット状であった. N/C比はやや大きく, 細胞境界は比較的不明瞭, クロマチンはやや増量し, 細顆粒状, 均等分布を示した. 一部の細胞に対細胞, 核内空胞を認めた. 以上よリカルチノイドが疑われた. 生検組織所見では低分化腺癌と診断されたが経肛門的に局所切除され, 切除組織所見および電顕所見でカルチノイドと確認された. 捺印細胞所見は擦過細胞所見と基本的には同じであった. 断端への浸潤はなく, 術後15ヵ月の現在まで再発転移は認められていない.
  • 大崎 能伸, 坂井 英一, 本田 泰人, 池田 裕次, 佐々木 正美, 藤田 昌宏, 小野寺 壮吉
    1987 年 26 巻 4 号 p. 659-663
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    35歳の男性が乾性咳嗽と微熱を主訴とし, 当院を受診した. 理学所見では, 脈拍数が109/分と頻脈で, 胸部聴診上全肺にわたり気管支呼吸音の増強が認められた. 表在リンパ節は触知しなかった. 血液検査では肝機能の軽度障害, CRP (2+), CEA (EIA) 42.0ng/mlなどの異常がみられた. 胸部X線写真では両側肺門部から肺野にかけて小粒状陰影および浸潤陰影, 心陰影の拡大, 両側胸水の貯留がみられた. 気管支鏡検査では気管分岐部から右気管支全体にわたる発赤, 浮腫状変化, 小隆起性病変などが観察された. 喀痰細胞診では孤立散在性にオレンジGやライトグリーン好性で, 胞体が厚く粘液様空胞をもつ悪性細胞がみられ, 擦過細胞診では層状の配列を示す悪性細胞がみられた. また, PAS陽性物質が認められた. 剖検により, 本症例を胃原発の腺扁平上皮癌, 癌性リンパ管症, 癌性胸膜炎, 癌性心膜炎と診断した. この症例にみられた細胞診所見にっき検討を加えた.
  • 小田 恵夫, 河原 栄, 中西 功夫, 中村 春己
    1987 年 26 巻 4 号 p. 664-669
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Klinefelter症候群に併発した睾丸Leydig細胞腫の1例を報告した. 患者は不妊を主訴とする35歳の男性で, 染色体検査の結果, 46, XX/47, XXYのモザイク型Klinefelter症候群と判明した. 睾丸は両側とも小さく, 精細管は萎縮しSertoli細胞のみで占められていた. 精細管間組織にはLeydig細胞が増生していた. 左睾丸上部に0.9×0.9×0.6cm大の境界明瞭な黄褐色のLeydig細胞腫が認められた. 捺印腫瘍細胞は, 類円形の偏在する核, 1-2個の目立つ核小体, およびライトグリーンに淡染する豊富な細胞質を備えていた. よく発達した滑面小胞体に由来すると考えられる大小の空胞やリポフスチンもみられた. Reinkeの結晶は腫瘍細胞内のみならず, 細胞外にも認められた. 腫瘍細胞の壊死や多数の細胞分裂の出現など, 悪性を疑わせる所見はなかった.
  • 橋本 公夫, 石田 由香里, 三村 仁志
    1987 年 26 巻 4 号 p. 670-673
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    2歳10ヵ月男児の第四脳室壁に発生したきわめてまれな髄筋芽腫の捺印細胞診所見について報告した.
    約8ヵ月前から嘔吐をみるようになり, CTおよびMRIで第四脳室を占拠する腫瘍が認められ, 摘出術をうけた. 捺印細胞標本では, 核は卵円形で切れ込みをもつクロマチンに富む裸核状細胞が集合してみられ, 一部にロゼット様の配列を認めた. これらの細胞に混じて, 大きな胞体にギムザ染色にて明らかな横紋をもつ横紋筋細胞を認めた. また, 組織学的, 電顕的, 免疫組織学的にも横紋筋成分の混在を認め髄筋芽腫と診断した.
    横紋筋細胞の混在をみるのにギムザ染色が非常に有用であった.
  • 小谷 広子, 郡谷 裕子, 三原 勝利, 杉原 誠一, 松田 実
    1987 年 26 巻 4 号 p. 674-677
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    伝染性単核症は良性のリンパ球増殖性疾患である. 最近われわれは, 伝染性単核症におけるリンパ節穿刺吸引細胞診の1例を経験し, その細胞学的特徴を観察した.
    本症例は21歳女性で, 頸部リンパ節穿刺吸引細胞診を行った結果, 多数の小リンパ球に混在して, 大型ないし中型の異型リンパ球, リンパ芽球および前リンパ球などが認められた. このような多種にわたる細胞の出現は反応性病変を示唆するものであり, そのなかに特徴的異型リンパ球が比較的多く散在性に介在していた. その出現頻度は12.6%であり, 末梢血液標本にみられた異型リンパ球ときわめて類似していた.
  • 金岡 明博, 黒木 登美子, 衣笠 松男, 三宅 秀一, 川辺 民昭, 鷹巣 晃昌, 池田 英
    1987 年 26 巻 4 号 p. 678-682
    発行日: 1987/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    膵性胸水は膵炎の比較的まれな合併症の1つである. われわれは, 高度異型中皮細胞が出現した膵性胸水の1例を経験した.
    症例は54歳の男性で血痰, 咳嗽, 左胸痛を主訴として来院した. 胸部X線にて左胸水を大量に認めた. 胸水細胞診では, 背景出血性で多数の組織球や中皮細胞に混在して単核あるいは多核で大型の類円形細胞やNIC比大の小型円形細胞が散在性あるいは集塊状としてみられた. これらの核は中心性または偏在性でクロマチンは増量し, 明瞭な核小体を有した. また, 細胞質は肥厚し辺縁にbleb like surface structureを認めた. 以上の所見より細胞診陽性, 悪性中皮腫の疑いと診断した.
    しかし, 胸部X線, CTや67Ga-scintigraphyでは悪性腫瘍は否定的であった. さらに胸水, 血清および尿アミラーゼが高値を示し, 内視鏡的逆行性膵管造影 (以下ERP) で膵管と縦隔洞との内瘻形成を認めたため, 慢性膵性胸水と診断した. 持続的胸水吸引と低脂肪食により胸水は減少するとともに細胞異型も徐々に減弱し, 初回胸水中に認めた異型細胞は胸膜炎に伴う反応性中皮細胞と考慮された.
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