西日本皮膚科
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44 巻, 6 号
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図説
症例
  • 徳永 孝道, 今山 修平
    1982 年 44 巻 6 号 p. 931-935
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
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    私たちは2例のsolitary lichen planus-like keratosisを経験した。第1例は40才女子で先行病変なく突然顔面に褐色斑を生じ, また第2例は51才女子で7∼8年前より顔面に老人性色素斑が存在し, そのうちの1個が最近急に発赤しそう痒を生じたものである。本症には種々の名称が与えられており, その論点は主として表皮細胞の異型性の有無におかれている。自験2例において表皮細胞の異型性はなく, 良性と考えられ, 臨床所見および病理所見より少なくとも本症には2種類の病型が存在すると思われる。
  • 児島 孝行, 田辺 義次, 岡本 昭二, 宮本 茂樹, 鈴木 信夫, 辻 秀雄
    1982 年 44 巻 6 号 p. 936-944
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    5才と4才のBloom症候群の姉妹例について, その症例呈示を行い, 患者リンパ球と線維芽細胞を用いた実験結果を付した。姉妹とも満期正常分娩であつたが, 生下時体重, 身長は姉1870g, 38cm, 妹1805g, 42cmと小さかつた。初診時, 姉妹は頬部に毛細血管拡張を伴う紅斑を認めた。この紅斑は姉が2才半, 妹が1才半の時から出現した。姉妹とも躯幹, 四肢にcafé-au-lait spotと脱色素斑を認めた。精神発達は正常であり, 奇形はみられなかつた。一般血液検査では血中IgA, IgMの低値以外異常は認めなかつた。2例ともgap, breakなどの染色体異常を多く認めた。姉妹染色分体交換頻度はリンパ球で正常の約10倍, 線維芽細胞でも約7倍高値を示した。両親の染色体異常の出現頻度, 姉妹染色分体交換頻度は正常範囲内であつた。患者線維芽細胞を用いて, 遠紫外線(254nm)に対する致死感受性を検討した結果, 健常者由来の細胞とほぼ同等であつた。また不定期DNA合成の能力は正常範囲内であつた。現在までに本邦で報告された中で姉妹染色分体交換頻度の記載のある6例のBloom症候群を中心に本症の皮膚症状, 光過敏性, 姉妹染色分体交換について若干の文献的考察を行つた。
  • 西嶋 摂子, 二村 省三, 朝田 康夫
    1982 年 44 巻 6 号 p. 945-948
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
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    27才女子。幼小児期より腰背部にはじまり, 両前腕, 両下腿におよぶ対側性の色素異常を認めていた。皮疹は次第に両上腕, 両大腿にも拡大してきたが, 両手背手掌, 両足背足蹠には全く出現していない。臨床検査所見に異常はみられず, 組織学的には色素脱失部では基底層のメラニン色素の減少が認められ, 色素増強部では基底層のメラニン色素の増加と, 一部に軽度の液状変性, 表皮内および基底層直下に少数の個別角化細胞がみられ, 真皮には多数のメラノファージが認められた。PAS染色, Congo red染色ともに陽性物質の沈着はいずれの部位にも認められなかつた。自験例を脱色素斑を主訴とする遺伝性汎発性色素異常症と考えた。皮疹の分布は遺伝性対側性色素異常症とは異なつており, 汎発性色素異常症は単に対側性色素異常症の皮疹が拡大しただけのものとは考え難く, 独立した色素異常症の1つと考えられた。
  • —粘膜天疱瘡Pemphigus Mucosa(仮称)について—
    影下 登志郎, 古城 八寿子, 城野 昌義
    1982 年 44 巻 6 号 p. 949-952
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
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    47才女子, 典型的症状を呈した尋常天疱瘡例が治療後6年間皮疹はなく略治状態にあり, 突然ほぼ全面にわたると思われる食道粘膜表層を吐出した。この吐出された食道粘膜, 生検により得られた膣粘膜に棘融解像, IgGおよびC3の著明な沈着が, 背部皮膚にもIgGの軽微な沈着が認められた。このような症例に尋常天疱瘡の1亜型として粘膜天疱瘡pemphigus mucosaの名称を提唱したい。
  •  
    村本 文男, 熊切 正信
    1982 年 44 巻 6 号 p. 953-957
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    53才男子, 初診昭和56年6月9日。躯幹, 四肢に無痛性の皮下結節が散在し, 組織学的には真皮中∼下層に不規則に拡張する管腔を一層の内皮細胞と数層のグロムス細胞が囲む。電顕的に内皮細胞は扁平であるが, 時に褶曲し自由神経終末が嵌合する部もある。内皮細胞のfenestrationも散見された。豊富なdense bodyと樹枝状の細胞突起を有するグロムス細胞はおおむね2層の, 時に塊状の集団を形成し, veil cellの細胞突起がこれらをとりまくように存在する部もある。グロムス細胞間の間質には無定型物質と小空胞様構造物を認める。内皮細胞とグロムス細胞の間には, 内弾性板は欠如し, 径40nmの膠原線維, 径12nmの弾力線維とveil cellの細胞突起が介在した。
研究
  • 第1編 健康者について
    恩田 周太朗
    1982 年 44 巻 6 号 p. 958-962
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
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    サーモグラフィー装置と深部体温計を用いて健康者52名の胸部皮膚温と深部温を測定し, 両者を比較検討した。シミュレーターを用いた実験装置により, 深部体温計は体表から約1cmの深さの温度を0.1℃の誤差で測定できることを確認した。検査した男女各26名の平均年令は各々30.8才, 22.7才であつたが, 胸部皮膚温, 深部温ともに男女差は認められなかつた。皮膚温の高温部と低温部の温度差は平均して1.8±0.6℃あつたが, 深部温ではこの差が0.5±0.4℃に縮つた。深部温が安定しているのは皮膚が熱の不良導体であることと, 深部は血流により温度調節されているためと思われる。胸部サーモグラムでみられる高温部は表在性の毛細血管や細血管網が特に密に集つている部位であろうと推測される。深部体温計で計測した額部深部温は腋窩温とほぼ同温を示し, 体温の長時間モニターに適している。
  • 第2編 皮膚疾患について
    恩田 周太朗
    1982 年 44 巻 6 号 p. 963-969
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    サーモグラフィー装置と深部体温計を用いて皮膚疾患患者40名の病変部(患側)と対照(健側)の皮膚温および深部温を測定し, 検討を行つた。深部温プローブの構造上隆起の著しい疾患は除外せざるを得なかつた。皮膚疾患40例の深部温は患側, 健側両者ともに皮膚温より高温を呈し, また殆どの症例が皮膚温, 深部温ともに患側は健側より高温であつた。患側と健側の皮膚温の温度差(ΔTs)の平均値は, 深部温の温度差(ΔTd)の平均値の約2倍であつた。病変部も深部では血流により温度調節されていると考えられる。病変部が高温を呈する際にそれが炎症性のものか悪性のものかを判定するのは困難である。同一疾患でも病状, 経過などにより皮膚温の値は大きく変化し, 病勢とよく相関するが深部温の変化はわずかであり, 病勢の判定にはサーモグラフィーの方が有用と考えられる。
  • 稲田 修一, 片岡 和洋, 岡野 伸二, 木下 三枝子
    1982 年 44 巻 6 号 p. 970-974
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    非感染性炎症性皮膚疾患75例にSinomin(sulfisomezole)を投与し, 有効26例, やや有効11例の成績を得た。ことに皮疹, 自覚症状の著しい軽減, 消退がみられたものは, 色素性痒疹, マヨッキー血管拡張性環状紫斑, シャンバーグ病, 皮膚アレルギー性血管炎, 慢性多形日光疹, 水疱性類天疱瘡, 扁平苔癬, 線状扁平苔癬, アミロイド苔癬であつた。有効例21例, やや有効例11例の皮疹を組織学的に検索し, 炎症性細胞浸潤の最も著しい部位は真皮上層が29例, 最も多い浸潤細胞はリンパ球が25例にあり, 血管病変は15例にあつた。Sinominの抗炎症機序としてリンパ球機能への影響も推測された。Sinominは, 前述の皮膚疾患, 真皮上層にリンパ球浸潤の強い非感染性炎症性皮膚疾患の治療, さらにステロイド, DDSの離脱に試みる価値があると思われた。
  • 石崎 宏, 増田 博司, 加世多 秀範, 神永 時雄, 広根 孝衞
    1982 年 44 巻 6 号 p. 975-979
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    初期量として30∼60mgのetretinate(ET)を投与された後天性角化異常症12例について, 投与中および投与後の血清中のETおよびその活性代謝物(AM)を定量し, これらの血清値と副作用との関係, およびこれらの残留期間を検討した。その結果, 全例において副作用は投与開始1∼2週間後に出現したが, その時点における血清ET値およびAM値は症例により著しい差異があり, 副作用の発現に個体差があるように思われた。また, 副作用消失時の血清ET値およびAM値は副作用出現時のそれらの値よりも低く, 副作用の発現は血清ET値およびAM値またはそのいずれかと関係のあることが示唆された。投与終了後の血清ET値およびAM値の変動は症例により差異があり, 最高残留期間はETでは3ヵ月, AMでは6ヵ月であつた。
講座
統計
  • 近藤 親司, 加治 英雅
    1982 年 44 巻 6 号 p. 983-987
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    昭和37年2月から昭和55年7月までの19年間に, 久留米大学皮膚科教室において経験されたスポロトリコーシス100例につき統計的観察をおこなつた。年間平均の症例数は5.3例であり, また外来患者総数にたいする割合は0.13%であつた。性別では男36例, 女64例と女性に多かつた。年令別の症例数は各年令層に発症をみるが, 10才未満, 40才代, 50才代, 60才代の順に多かつた。罹患部位は顔面と上肢に多く, とくに10才未満の小児では顔面に多く, 逆に40才から79才までの中高年層では上肢が多かつた。病型ではリンパ管型43例にたいし固定型56例と固定型が多かつた。発症時期は春14例, 夏17例, 秋27例, 冬34例で秋から冬にかけての発症が多かつた。外傷の既往のあつたものは39例で, 職業では農業従事者が24例あつた。スポロトリキン反応は93例に施行し90例に陽性を呈した。組織内菌要素は93例中62例に認められた。地理的分布において患者の居住地は福岡県筑後地方の筑後川, 矢部川流域の平野部に集中しており, 山間部では少なく, このように限られた地域での患者統計である点, 意義があるものと考える。
治療
  • Etretinate臨床研究班
    1982 年 44 巻 6 号 p. 988-999
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    新しいビタミンA類似合成化合物であるetretinate経口剤の種々皮膚疾患に対する有用性を, 30施設によるopen studyで検討した。対象疾患は, 乾癬, 魚鱗癬などの角化性疾患を始めとする369例で, 罹病期間の長く, 重症度も高い難治性のものがほとんどであつた。治療効果では, 膿疱性乾癬, 先天性魚鱗癬様紅皮症など, 従来有力な治療法のなかつた疾患に劇的に効果を示したほか, 全体でも軽快以上74%と優れた成績を示した。また一部の症例では既存の治療法との併用効果も検討し, 相加効果が認められた。一方, 本剤の副作用として口唇炎などのビタミンA過剰症様症状が, ほぼ全例に出現した。それらはいずれも用量相関的で, 投与の減量または中止により回復した。以上より本剤は難治性の角化性疾患に対し高い有用性をもつものと考えられた。
  • 古田 博子, 北島 康雄, 森 俊二
    1982 年 44 巻 6 号 p. 1000-1007
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    芳香族レチノイドの1つであるetretinateを, 角化異常をきたす各種疾患9例(尋常乾癬1例, 膿疱性乾癬3例, 水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症2例, ダリエ病1例, 皮膚疣状結核1例, 手掌の多発性皮角1例)に内服投与した。導入期として1mg/kg/日を2∼4週間投与し, 以後, 0.3∼0.75mg/kg/日の維持量とした。結果は, いずれの症例においても優れた臨床効果を示した。副作用としては, 口唇炎, 落屑, 皮膚菲薄化が全例にみられたほか, 口渇4例, 鼻腔の乾燥感3例, そう痒3例, 鼻出血2例, 爪囲炎2例, 結膜炎1例, 悪心1例, 関節痛1例, 四肢の出血斑1例が認められた。特に口唇炎は最初に現わる必発の症状と思われる。検査所見で異常を示した症例はなかつた。
  • 橋本 功, 帷子 康雄, 三橋 善比古, 古川 隆, 河村 葉志子
    1982 年 44 巻 6 号 p. 1008-1012
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(BCIE), 薄葉状魚鱗癬(LI), 尋常魚鱗癬(IV), 家族型毛孔性紅色粃糠疹(PRP-F)の各1例に対し, etretinate(Ro 10-9359)の経口投与による治療を試みた。治療に対する反応は治癒, 著しく軽快, 軽快, やや軽快, 不変, 悪化の6段階にわけて評価した。治療の結果, BCIEおよびLIでは著しく軽快, IVでは軽快, PRP-Fでは悪化という成績を得た。効果の認められた3例中, IVの1例のみにおいて, 導入期に軽度の副作用が発生したが, 維持期に自然消失した。BCIE, LIおよびIVの各1例では, 従来の治療では経験したことのないほどのすぐれた効果が得られたので, 本剤は遺伝性角化症の治療上, 有用な薬剤であると考えられた。
  • 月永 一郎, 村松 隆一, 森川 玲子, 足立 柳理, 猿田 基司, 飯塚 一, 青柳 俊, 金子 史男
    1982 年 44 巻 6 号 p. 1013-1018
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    北大病院皮膚科を受診した典型的な皮疹をもつDarier病5例につき主に入院治療にて, レチノイド(etretinate, Ro 10-9359)内服で治療を行い良好な成績をおさめた。対象はほぼ全身に皮疹をもつ47才, 17才, 27才, 14才, 56才の男子である。投与方法は初回量50∼100mg/日, 維持量25∼50mg/日, 1日1∼2回食後服用とし併用薬は抗ヒスタミン剤程度で外用剤は原則として用いなかつた。効果は1週間ほどで出現し, ほぼ1ヵ月で皮疹の平坦化, 消失をみた。主に過角化の厚い角質がとれて平らになり, また浸軟して悪臭を放つた部も乾燥化した。25mg/日維持量で大きな再発はなかつたが1例のみ 12.5mg/日に減量時皮疹の再燃をみた。副作用としては口唇炎, 手掌足蹠の落屑は程度の差こそあれ全例にみられたが継続ないし減量で軽快した。そう痒は早期から中期に認められ2例でかなり強いものがあつた。血液生化学的には5例とも著変はなかつた。
  • —角化型汗疱状白癬への試み—
    清水 順也, 平田 摂子
    1982 年 44 巻 6 号 p. 1019-1021
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    1) 抗白癬菌外用剤と20%尿素軟膏との併用療法を角化型汗疱状白癬30例について行いその効果を検討した。
    2) 使用後約1ヵ月以内に臨床的な改善をみた有効例は6例, その他の効果発現までの使用期間は2ヵ月∼12ヵ月を要し, やや有効18例, 不変6例であつた。無効例, 副作用発現例はなかつた。
    3) 抗白癬菌剤内服不可能な例に試みられるべき治療法であると考えられた。
  • 浪花 志郎, 西山 和光, 原 曜子, 白石 達雄, 山本 俊比古, 内田 寛
    1982 年 44 巻 6 号 p. 1022-1026
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    パシフラミン(パッシフローラエキス製剤)を皮膚そう痒症を始めそう痒を伴う各種皮膚疾患計29例に投与し, その鎮静作用がもたらす止痒効果について検討した結果, 一日量3錠ないし6錠の投与で, 比較的早期に止痒効果が発現し, 併用された抗ヒスタミン剤, マイナートランキライザー, またはステロイド剤の有する止痒効果に補助的に作用する傾向がうかがわれた。副作用を示した症例は1例も認められなかつた。従つて, 上記薬剤による止痒効果が不十分であつたり, 副作用のために投与継続が困難な症例では, パシフラミンによる鎮静的止痒効果を期待して補助的に用いることは有用と考えられる。
  • —女子顔面色素異常症にたいする効果—
    下川 優子, 上笹貫 志賀子, 田代 正昭
    1982 年 44 巻 6 号 p. 1027-1029
    発行日: 1982/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    49例の女子顔面色素異常症(肝斑47例, 雀卵斑2例)にたいし, ヒト胎盤抽出液プラセンAF 3%配合製剤を使用し, 55.6%の有効率をえた。治療効果は8週以上外用した症例にえられ, 効果発現は1週目より11週目にまでわたつた。重症な症例ほど効果は著明であつた。49例中4例はそう痒, ヒリヒリ感などの刺激症状のため中止した。他に7例に, 軽度の同症状をみとめたが一過性であり, 治療続行に支障はなかつた。
世界の皮膚科学者
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