原子力施設や化学プラントで万が一有害物質が環境に放出されるような事故が発生した場合には,広範囲にわたる環境災害が発生する可能性がある.実際に1986年のチェルノブイリ原発事故,!984年のボパールの農薬工場の事故では多くの死傷者や環境汚染が発生している.本稿では原子力分野における環境影響評価手法を中心に確率論的安全評価を紹介し,このような事故による環境災害防止のための,オフサイトを対象とした地域防災計画や緊急時対応計画策定への利用可能性について検討する.
製品を域内市場で自由に流通できるようにするために,EUは1958年以来約30年問にわたり,製品安全規格の整合化による市場統合を目指してきたが,この手法は有効ではなかった.そこで1985年に決議されたのが「ニュー・アプローチjである.加盟国がEC指令を国内法に採択し,法規則自体を整合する.基本的要求事項,グローバル・システム,CEマーキング制度の3要素を段階的に展開し,これに よって旧来の手法では実現できなかったEU市場統含を比較的短期問のうちに達成した.「ニュー・ア プローチ」は,地域経済圏間の,そして日本の基準認証制度の国際整合化のモデルとなりうるものであると考えられる.
製品,サービスの環境負荷をライフサイクルの全段階で総合的かっ定量的に評価する手法としてLCA (ライフサイクルアセスメント)が注目され,LCAの研究導入が進められている.現在直面する地球規模の環境問題および資源枯渇に対応しつっ,持続可能発展するためには,人間の健康や,生態系への影響,資源枯渇などに対応するための環境負荷の制御基準を定める必要があり,LCAの重要度は非常に高い,本稿ではLCAの現在示されている手法および適用事例,今後さらに発展するための課題,オラン ダなどで進められているエコインジケータについて概説する.
種々の可燃物の燃焼から高反応性で見かけ上長寿命の気相スモークラジカルが生成する.火災時にこのような気相スモークラジカルが生成する可能性を調べるため,実規模の家屋火災実験での検出を試みた.その結果,酸素中心の気相スモークラジカルが検出され,実際の火災においても,前記の気相ラジカルが生成する可能性が示された. さらに,燃焼条件と気相スモークラジカルの発生挙動との関係を調べるため,代表的な高分子化合物を用いて検討した.その結果,気相ラジカルの生成量は,温度および雰囲気中酸素濃度の増大にともない極大を示した.また,酸素濃度の影響は,分子内酸素をもたない場合に大きく現れ,生成する酸素中心気相ラジカル中の酸素は,雰囲気中の酸素と分子内の酸素の両方に由来することが示唆された.
可燃性の液体や粉末を取り扱う工程における静電気に関連する着火危険を理解するための系統的な解説を試みる.まず,蒸気あるいは粉じんの静電気の放電による着火にっいて簡潔に解説する.また,許容できるレベルまでに静電気放電の着火危険を低減させるために,関連する静電気現象の基本的理解と実用的なガイドラインを与える.静電気発生,電荷の蓄積と緩和,静電場形成と重要な形態の静電気放電に関する理論的あるいは実験的な基礎にっいてもふれる. 最後に,いくつかの報告されている静電気事故事例に触れ,実践的な静電気災害対策をまとめる.
企業が海外に進出し現地で操業を開始するためには,設備や施設の安全性について,その設計段階から注意を払っておく必要がある,その際検討すべき基本となるリスクに『火災・爆発・労働災害』の三 っが挙げられる. シリーズ第12回目は,「台湾」を取り上げ,上記三つのリスクに関する安全防災法令・規則の種類と概要,その運用実態について紹介する.