安全工学
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55 巻, 1 号
安全工学_2016_1
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
会告
安全への提言
総説
  • ―エビデンスの来し方行く末
    相馬 孝博
    2016 年 55 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2016/02/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    医療安全に関する知見は,半世紀以上前から膨大な蓄積があり,数多くのメタアナリシス分析もなされているが,その体系化はいまだ途上である.航空分野をはじめとして,高信頼性組織の安全対策は医療分野に大きな影響を与えている.特に本稿では,航空分野の疲労研究や,チェックリストによる業務改善が医療安全に寄与していることを紹介し,世界標準の教科書ともいうべき,WHO 患者安全カリキュラムガイド多職種版(2011)について解説する.安全で信頼性の高い医療を実現するためには,今後も他分野のプロセス改善・デザイン・情報技術などの解決策も絶えず参考にしつつ,システム改善に繋がるエビデンスを検討する必要がある.
  •  ―鳥インフルエンザ,デング熱,エボラ,MERS など,我が国に侵入の可能性はあるか
    岡部 信彦
    2016 年 55 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2016/02/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    人類は感染症に対して,かなりの克服をしてきたが,近年感染症に関する話題が多い.WHO(世界保健機関)は,1990 年代より新興再興感染症(emerging/re-emerging infectious disease)という概念を導入し,感染症に対する強化を図り始めた.感染症が再び我々にとって身近な問題として戻って来た大きな要因として,人口の増加と都市化,集団生活機会の増加,食習慣・生活習慣の急速な変化,自然環境の破壊,人の住居地の拡大による人と野生動物の距離の接近など,多くのものが挙げられる.そして交通機関の発達による人と物の大量なしかも短時間での移動は,病原体の移動をも容易にした.本稿では,最近話題になった,鳥インフルエンザ,デング熱,エボラ,MERS などの現状と課題について述べた.
  • 本田 一明, 浜田 潤, 井上 守
    2016 年 55 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2016/02/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    平成23 年3 月11 日に発生した東日本大震災後の福島第一原子力発電所の事故は,日本国内はもとより,世界各国の原子力政策などにも大きな影響を及ぼした.日本国内の原子力発電所を始め原子力関連の事業所においては二度と同じような事故は起こさないとの覚悟のもと,安全性の更なる向上に向けて確実に安全対策を行うと共に安全文化の醸成に向けて弛まぬ努力を継続しているところである.同時に原子力に対する環境も大きく変化してきている.本稿では,原子力発電所を始め原子力関連の事業所に対して原子力安全推進協会が実施している安全文化醸成活動について,基本的な考え方から,福島原発事故教訓の抽出,原子力業界を取り巻く環境変化を踏まえた教訓の活動への反映状況等について報告する.
  • 滝澤 真理, 義澤 宣明, 河合 理城, 宮武 裕和, 平川 幸子, 村上 佳菜, 佐藤 理, 高木 俊治, 鈴木 元
    2016 年 55 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2016/02/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    福島第一原子力発電所事故に起因する食品からの内部被ばく線量を推定するため,数々の機関がトータルダイエットスタディ(TDS)を実施している.本稿では,事故後に実施されたTDS の調査結果の推移に触れながら,TDS の手法の一つであるマーケットバスケット(MB)方式の調査結果に着目し,放射性セシウムの年あたりの預託実効線量の減少の傾向について考察する.
  • ―ヒューマンファクターズの視点
    石橋 明
    2016 年 55 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2016/02/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    近年,巨大システムにおける生産活動においては,個人の資質のみに依存するのではなく,規模の差こそあれチーム単位で難易度の高い業務を遂行している.しかし,従事者資格制度の下で個人の資格維持のための技術訓練は十分に行われているものの,チーム力を育成するためのノンテクニカルスキルの訓練が不十分であった.ジャンボジェット機の出現など急速な航空機設計・製造技術の進歩に伴って増加しつつあった航空機事故の調査結果がそれを物語っていた. 1970 年代にこのことに気付いた航空分野では,事故調査結果などから得られた教訓に基づいて,クルーパフォーマンスを高めるための新しい訓練:CRM 訓練(Crew Resource Management Training)を開発した. この訓練は世界に普及して航空安全の推進に貢献し,他産業分野からもノンテクニカルスキル訓練として注目されることとなった.様々な産業分野で現場のニーズに適合化させて導入し成功している例が多い.成功事例の概要を導入支援体験に基づいて解説する.
  • 田中 正晴
    2016 年 55 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2016/02/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    建設業労働災害防止協会(建災防)は,昭和39 年制定の労働災害防止団体法により,法律に基づく団体として創立されて以来50 年を昨年度に迎え,新たな半世紀へ向けて歩みを続けている. 建設業における従来からの安全衛生管理を尊重し,地道な労働災害防止対策を粛々と進めるとともに,社会経済情勢の変化を踏まえ,法令遵守型から先取り型への変化に対応すべく,建設業労働安全衛生マネジメントシステム(コスモス:COHSMS)というスキームを立ち上げた.今後とも建設業における労働災害防止のために,行政との連携強化を引き続き維持し,建設業界の理解を得つつ建設業における労働災害防止の推進を図る.
論文
  • ―石油・化学産業等大規模設備を有する事業所を中心として
    東瀬 朗, 三木 卓典, 高野 研一
    2016 年 55 巻 1 号 p. 49-63
    発行日: 2016/02/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    近年,石油精製・化学などに代表される大規模プロセス産業界の事業所では,安全文化の醸成レベルが労働災害及び重大な産業事故の発生に重要な役割を果たすことが認識されてきた.しかしながら安全文化の構成要素や重要な視点は産業界ごとに理解が異なり,その診断手法には未だ多くの課題がある.本研究においては,石油精製・化学産業を中心とした大規模プロセス産業に適用可能な事業所の安全文化を評価・可視化できる診断手法の開発を目指し,安全文化の8 軸モデルに基づく110 問のアンケートを作成し,火力発電所・石油精製・化学・ゴムなどの産業に属する86 事業所9 647 名から有効な回答を得た.その結果,本質問紙調査の結果から算出された安全文化総合指標が安全パフォーマンス(労働災害・設備災害)と負の相関を示すこと,並びに本診断が事業所の安全施策立案を効果的に行うための支援ツールとして活用できることが示唆された.
資料
  • 後藤 隆雄
    2016 年 55 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2016/02/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    阪神大震災3 年後に石炭火力発電の最初の建設ブームがあり,東日本大震災同3 年後に2 回目のブームが起こっている.内容的にも今回計画は福島県5 地点,兵庫県で3 地点であり,これが1,2 位を占め,ベースロード電源化を主張している.欧米諸国が石炭火力を廃止している中で,我が国は発展途上国並みに石炭火力に固執している.先進国が自然エネルギーに展望を見出しつつある中での動向である.石炭火力は地球温暖化の大敵であるだけでなく,石炭含有の揮発性微量元素(Hg,Sb,Se,As,F,Br 等)による地球生態系の異変問題が深刻化し始めているが,まだ国民的世論は喚起できていないことから,警鐘を込めて書いた.
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