西日本皮膚科
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80 巻, 3 号
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目次
図説
  • 小池 雄太, 岩永 聰, 大久保 佑美, 宮副 治子
    2018 年 80 巻 3 号 p. 179-180
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり
    症例:56 歳,男性
    既往歴:Wilson 病,四肢麻痺,球麻痺,多発性肺囊胞,弱視,気管喉頭分離術後
    家族歴:特記事項なし
    現病歴:12 歳時に上肢機能障害が出現し,精査にて Wilson 病と診断され,以降,銅沈着に伴う神経・臓器症状が徐々に進行していった。開始時期は定かではないが,D-ペニシラミン内服による尿中への銅排泄治療を長期的に行っていた。7 年前より皮膚科を定期的に受診するようになり,その際頚部の厚い皺襞が確認され,また痤瘡様皮疹に対して外用薬で加療されていた。2 年前に肺炎に罹患した際,D-ペニシラミンの長期投与による間質性肺炎を危惧され,トリエンチンに変更された。その後も皮膚症状は変化なく経過していた。
    現症:頚部・腋窩・肘窩は太い皺を伴い,弛緩したベルベット状皮膚となっていた。側頚部には大豆大で常色の丘疹が敷石状に集簇していた。全身に紅色丘疹,小瘢痕が散在していた(図1 )。
    診断:D-ペニシラミン長期内服に伴う pseudo-pseudoxanthoma elasticum(PPXE)
  • 加瀬 貴美, 加藤 潤史, 澄川 靖之, 肥田 時征, 杉田 真太朗, 宇原 久
    2018 年 80 巻 3 号 p. 181-182
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり
    症例:67 歳,男性
    主訴:多発性丘疹,結節
    既往歴:58 歳時;直腸癌(pStageⅢa),62 歳時;肺転移,64 歳時;両下肢リンパ浮腫Ⅲ期
    現病歴:66 歳時に左大腿に紅色の皮疹が出現した。近医でリンパ浮腫に伴う acquired lymphangioma と診断され,弾性包帯着用で経過観察されていたが,徐々に増大していた。一方,直腸癌切除後より化学療法が継続されていたが,S 状結腸穿孔のため当科を受診する 2 カ月前に中止された。その後,大腿の皮疹は急速に悪化した。
    現症:腹部,陰股部,左下腿に大小様々なドーム状の紅色丘疹・結節が多発していた(図1)。
    病理組織学的所見:真皮内に管腔構造を伴う腫瘍胞巣があり,大型の核を持つ異型細胞や核分裂像がみられ(図2 a,b),直腸癌原発巣(図2 c),および肺転移組織所見(図2 d)と同様であった。また,免疫組織化学染色では,皮膚転移,直腸癌原発巣,肺転移の腫瘍細胞はいずれも CDX2と CK20 が陽性で,CK7は陰性であった。 なお,D2-40 抗体でリンパ管を染色したが,リンパ管内に明らかな腫瘍組織は認められなかった。また明らかに拡張したリンパ管も認められなかった。
    診断:直腸癌の多発皮膚転移
    臨床経過:皮膚転移診断の 1 カ月後に全身状態の悪化により永眠した。
綜説
症例
  • 有隅 由芽, 伊藤 宏太郎, 今福 信一
    2018 年 80 巻 3 号 p. 196-199
    発行日: 2018/06/10
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり

    生後 10 カ月の男児。初診の 3 カ月前から BCG 接種部位に角化性紅斑が出現し,次第に両内眼角,右側頚部,背部,陰部に紅斑が拡大したため当科を受診した。初診時,両内眼角,頚部,背部,陰部,左上腕の BCG 接種部位に角化性紅斑がみられた。特徴的な臨床像と背部の厚みのある角化性紅斑の病理組織学的所見より尋常性乾癬と診断し,アンテベート®軟膏の外用を開始したが,皮疹は悪化した。搔破行動などのケブネル現象の抑制のためザイザル®シロップの内服を開始したが改善なく,ボンアルファ®軟膏の併用も効果に乏しかった。初診から 3 カ月経過し,1 歳になった頃より急激に皮疹は改善し,その後軽度の紅斑は持続しているが悪化はなく経過している。本症例は,BCG 接種を契機に発症した尋常性乾癬と考えられた。小児の乾癬は疫学的に女児に多く,家族歴を有し,HLA-Cw6 の発現率が高いことが知られているが,自験例ではいずれも当てはまらなかった。乳児乾癬の治療においては成人と異なり選択肢が乏しく,外的刺激の回避も困難な場合が多い。乳児乾癬の特徴と治療方針について過去の報告をまとめ検討した。

  • 阪野 恵, 永瀬 浩太郎, 吉岡 万智子, 井上 卓也, 成澤 寛
    2018 年 80 巻 3 号 p. 200-204
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり

    38 歳,女性。20 年前から 1 週間程度持続する発熱を伴う腹痛を繰り返し認めていた。初診の 2 週間前から下痢が出現し,その後,膝・足・手関節痛と下肢に有痛性の皮疹が出現した。両手関節伸側と両膝から下腿にかけて有痛性紅斑を認め,臨床像,組織学的所見をあわせ結節性紅斑と診断した。11 年前に父・弟妹とともに遺伝子検査で家族性地中海熱(familial Mediterranean fever;FMF)と診断されており,関節症状を伴った結節性紅斑は FMF の発作の一症状と考え,コルヒチン内服を開始したところ症状は改善した。蕁麻疹や紅斑等の皮膚症状の原因として自己炎症性疾患は鑑別に挙げるべき疾患の一つである。 FMF において予後に影響を与えるアミロイドーシスの発症はコルヒチン投与により予防することができるため,早期に診断し治療介入を行うことが有用であると考える。

  • 樫野 かおり, 戸井 洋一郎, 林谷 道子, 高田 晋一, 田村 麻衣子, 河野 通浩, 秋山 真志
    2018 年 80 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり
    31 歳の初産婦より出生した男児。在胎週数 34 週で心音低下があり緊急帝王切開で出生したが出生後20 分で死亡した。全身の皮膚が薄く固く,毛細血管が透見された。また頚部,右鼠径部に裂傷があり,四肢は拘縮しており,特異な顔貌がみられた。病理組織像で角層は錯角化,表皮突起はなく表皮は平坦で脂肪織に膠原線維が入り込んでおり,皮膚付属器はみられなかった。Elastica-Van Gieson 染色で真皮に弾性線維はみられず膠原線維が増加していた。特徴的な臨床像と病理組織像から,restrictive dermopathy を疑い,患児と父母のゲノム DNA を用いて遺伝子診断を行い ZMPSTE24 遺伝子に変異を認めた。 近年,laminopathy(核膜病)という疾患概念が提唱され,これは核膜の裏打ち構造である核ラミナの主要構成成分である lamin A の機能異常により生じ,常染色体優性および劣性の遺伝形式をとる疾患の総称である。Lamin A の機能は核膜の安定化や,遺伝子の転写制御の他に,脂肪合成や間葉系幹細胞の分化,細胞の老化などに関与するとされており,その症状によって早老症,横紋筋症,末梢神経障害,脂肪萎縮症(リポジストロフィー)の 4 種類に分けられている。Laminopathy は ZMPSTE24 遺伝子か LMNA 遺伝子の変異によって生じる。Restrictive dermopathy は laminopathy のうち早老症に分類されており,最も重症であることから生命予後は不良である。
  • 膳所 菜保子, 中尾 匡孝, 伊藤 絵里子, 本下 潤一, 竹内 聡, 古江 増隆
    2018 年 80 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり

    我々は女性の会陰部に生じた乳頭状汗腺腫(hidradenoma papilliferum)を 2 例経験した。症例 1:40歳,女性。会陰部左側に径 6 mm の小結節を認め,外科的に全切除した。病理組織検査にて乳頭状汗腺腫と診断した。症例 2:38 歳,女性。会陰部左側に 1 cm の淡紅色の有茎性腫瘍を認め,症例 1 同様,外科的に全切除した。病理組織検査にて乳頭状汗腺腫にて診断した。乳頭状汗腺腫は女性の外陰部~肛門部に好発し,従来,アポクリン腺由来の良性腫瘍といわれていた。しかし,最近では mammary-like anogenital gland(MLG)と呼ばれる会陰部~肛門周囲にみられる乳腺様組織からの発生を示唆する報告がある。MLG の円柱状細胞は正常なエクリン腺やアポクリン腺では認められないエストロゲン受容体(estrogen receptor:ER),プロゲステロン受容体(progesterone receptor:PgR)を発現している。我々の経験した乳頭状汗腺腫の2 例はいずれも円柱状細胞に ER,PgR の発現を認め,MLG からの発生が示唆された。

  • 村山 直也, 小池 雄太, 田崎 典子, 鍬塚 大, 富村 沙織, 竹中 基, 宇谷 厚志
    2018 年 80 巻 3 号 p. 214-218
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり

    76 歳,女性。5 年前より関節リウマチ,膜性腎症に対してメトトレキサート(methotrexate:MTX)8 mg/week,プレドニゾロン7.5 mg/day を内服していた。初診の 6 カ 月前に両下腿に浸潤を触れる紅斑が出現した。外用薬による治療には反応せず,左下腿の紅斑は腫瘤を形成し,右下腿は潰瘍を形成した。 左下腿は,病理組織学的に真皮全層性に島状に CD20 陽性の大型異型リンパ球が増殖しており,diffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)の像を呈していた。また,Epstein-Barr virus(EBV)-encoded small RNA 陽性,EBV-latent membrane protein 1 陽性から,EBV の感染を確認した。右下腿は T 細胞がオリゴクローナルに増殖していた。MTX の休薬により,いずれの病変も消退し,化学療法は不要であった。病理組織像と臨床経過から MTX 関連リンパ増殖性疾患(MTX-associated lymphoproliferative disorder:MTX-LPD),DLBCL と診断し,その後の再発はなく寛解を維持できている。MTX-LPD は MTX の休薬により自然消退することが知られているが,化学療法を必要とする症例があり,MTX を投与中の症例では注意が必要である。

  • 一木 稔生, 辻 学, 永江 航之介, 和田 麻衣子, 増田 禎一, 永瀬 浩太郎, 内 博史, 古江 増隆
    2018 年 80 巻 3 号 p. 219-223
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり

    81 歳,女性。明らかな外傷の既往なく,約 1 年前に左臀部の皮下結節を自覚した。急激に増大したため近医を受診し,全切除術を施行された。病理組織学的所見では,真皮深層から脂肪織にかけて小型類円形の腫瘍細胞が索状に増殖し,腫瘍巣を形成していた。核は大型で多数の核分裂像を伴っていた。免疫組織化学的所見では,腫瘍細胞は抗サイトケラチン 20 抗体,抗 chromogranin A 抗体に陽性であり,Merkel 細胞癌と診断され,当院当科へ紹介された。PET-CT による全身検索では明らかな悪性腫瘍は認めず,左臀部の拡大切除を施行した。6 カ 月後,左鼠径部リンパ節に腫脹が出現し,リンパ節生検にて Merkel 細胞癌のリンパ節転移と診断し,左鼠径リンパ節郭清を施行した。切除標本中のリンパ節には明らかな転移は認めず,後療法は施行せずに経過観察中である。Merkel 細胞癌の好発部位は主に露光部(顔面・四肢)とされ,臀部に生じた例は稀と考えられる。

  • 高井 彩也華, 米倉 由子, 西澤 綾, 須佐 美知郎, 佐藤 貴浩
    2018 年 80 巻 3 号 p. 224-226
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり
    81 歳,男性。初診 1 カ月前から右肘窩の結節が出現し,急速に増大してきたため,当科を受診した。 初診時,右前腕に径 3 cm 程の多房性の紅色腫瘤を認め,表面には光沢があり,出血斑を伴っていた。病理組織では真皮中層から筋膜にかけて,広範な粘液基質の産生を伴い多形性に富む異型な核を有する腫瘍細胞が束状に増殖していた。粘液線維肉腫(high grade)と診断し,当院整形外科にて辺縁より 5 cm のマージンをとり切除した。その後 1 年経過するが,再発,転移は認めていない。粘液線維肉腫は腫瘍の細胞密度や異型の程度などから low grade, intermediate grade, high grade に分類される。転移は肺,リンパ節などの報告があり,悪性度の高いものや腫瘍の局在が深いものほど転移や腫瘍死が多いとされている。
研究
  • 内藤 聖子, 山﨑 修, 加持 達弥, 高田 実, 浅越 健治, 大塚 正樹, 岩月 啓氏
    2018 年 80 巻 3 号 p. 227-230
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり
    本邦における原発巣不明悪性黒色腫の臨床的特徴や遺伝子変異のパターンは不明である。著者らは当科で過去 15 年間に経験した原発巣不明悪性黒色腫 6 例の臨床的検討と遺伝子解析を行った。原発巣不明悪性黒色腫の平均年齢は 56.6 歳で,男女比は 1:1 であった。診断の契機としては皮下腫瘤が 4 例,画像検査の異常が 2 例であった。初診時の転移はリンパ節は全例で,続いて皮下,肺,脳,骨,肝で認められた。死亡例は 4 例で生存期間は平均 10.5 カ月であった。6 例中 4 例に遺伝子変異を認め,BRAFV600E 2 例,BRAFV600ECDK4 R24C 1 例,EPHB6 G404SPDGFRA E996KERBB4 E452K 1 例であった。当科の皮膚原発悪性黒色腫 29 例の遺伝子変異パターンと類似していた。
統計
  • 岡本 修, 進来 塁, 草津 真菜美, 松田 佳歩, 佐藤 精一, 甲斐 宜貴, 塩田 星児, 橋本 裕之
    2018 年 80 巻 3 号 p. 231-238
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり

    蜂窩織炎/丹毒の臨床経過および諸検査値の推移の予測を目的として統計的検討を行った。若年者では男性の割合が,高齢者では女性の割合が高かった。未治療期間の CRP 値はその期間が長い症例ほど高値になり,白血球数(WBC 数)と体温は逆に低値になる傾向があった。発症早期に治療を開始した症例では CRP 値はいったんピークを示して低下する傾向があり,WBC 数と体温は発症時期に関わらず治療開始後早期に低下する傾向を示した。CRP が 2 mg/dl 以下に低下するまでには治療開始から 8.8±6.0 日を要し,WBC 数と体温が正常化するまでには各々 4.9±5.9 日,5.7±5.5 日を要した。最高 CRP 値および WBC 数と,それらの低下までの期間には有意かつ強い正の相関があった。最高 CRP 値が高いと治療期間も延長し,プロカルシトニン値も CRP 値の低下までの期間に強く影響した。抗炎症剤の継続投与は最高体温を軽度低下させたがその他の検査値推移には影響しなかった。治療期間,病変面積および CRP,WBC 数,体温の最高値や,低下に要した日数が全体の分布から高値に逸脱した症例(逸脱例)は,それら以外の症例(通常例)よりも高齢でプロカルシトニン値が高い傾向があり,敗血症に至った症例が多かった。一方,検査値が正常範囲内で推移した症例(正常値例)は通常例と比較して有意差のある臨床的項目はなかったが,全体の 1/4 を占めていた。

講座
治療
  • 持丸 奈央子, 川崎 洋, 福島 彩乃, 小幡 祥子, 安田 文世, 海老原 全
    2018 年 80 巻 3 号 p. 244-249
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり

    日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎ガイドライン 2016 年版(ガイドライン)に強調されているように,アトピー性皮膚炎患者の治療において,アドヒアランスの向上は重要な要因の一つである。ローション製剤の優れた使用感に注目し,軟膏製剤からローション製剤への切り替えが治療のアドヒアランス向上に寄与すると考えた。今回我々は,躯幹四肢に対する外用薬を,ベリーストロングクラスのステロイド外用薬の軟膏製剤から同クラスのベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルローション製剤に切り替えた症例において,8 週間経過観察し,その有効性と安全性,薬剤の使用感とアドヒアランスを検討した。皮膚重症度 Severity Scoring of Atopic Dermatitis (SCORAD) index,Thymus and Activation-Regulated Chemokine(TARC),かゆみの Visual Analogue Scale(VAS),睡眠不足の指数,Dermatology Life Quality Index(DLQI)はローション製剤への切り替えにより有意に改善した。また,患者へのアンケート結果から,ローション製剤の使用感に対する高い評価が確認でき,ローション製剤はアドヒアランスの向上に寄与していることが推察された。本研究結果から,ローション製剤への切り替えは,アトピー性皮膚炎の躯幹四肢の治療において,有用な選択肢となり得ると考えた。

世界の皮膚科学者
  • Michel Gilliet
    2018 年 80 巻 3 号 p. 255-256
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル 認証あり

    Dr. Gilliet is Professor of Dermatology and Chairman of the Department of Dermatology at the Lausanne University in Switzerland. Over the past 15 years Dr. Gilliet's laboratory has focused on translational research studying inflammatory skin diseases. In particular, Dr. Gilliet's lab has discovered mechanisms how dendritic cells initiate and drive inflammation in skin diseases including psoriasis and lupus based the complex formation of self-DNA with antimicrobial peptides. These studies provided a paradigm shift in the understanding on how sterile inflammation is regulated at the site of disease.

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