(独)海技教育機構の練習船では,①事故の未然防止,②危険感受性の醸成,③安全意識の向上,を目的にヒヤリハット報告を推進している.1 年間で報告された901 件のヒヤリハット事例のうち,86 %が人的要因に起因していた.運航に関する特徴的な事例を分析し,1)継続的な見張りの重要性,2)航海計器活用の重要性,3)衝突防止を考慮した航海計画の重要性,4)有効なコミュニケーションの重要性,5)現場対応策,6)思い込み防止の重要性を抽出した.これらを基に,衝突予防対策として①見張り訓練,②航海計画立案訓練,③リソース活用訓練,④思い込み防止訓練を提案した.
STAMP による安全工学のパラダイムシフトとして , 「信頼性の確保」から「安全のコントロール」へ と焦点を変える考え方が米国で広まっている . 近年の複雑なシステムは , ソフトウェア集約型で , 機械だ けでなく人や組織ひいては社会機構などの要素で構成されており , その安全設計をする上で従来の安全工 学の手法だけでは扱いきれないことが多い . この STAMP の中で ,STPA によるハザード分析という方法 論は理解されつつあるが , それを安全設計にどう組み込むか , さらには , 運用後の安全管理にどうつなげ るかは十分な理解が得られていない . 本総説では , その全体像を示すとともに , その応用例として遠隔地 クレーン制御システムの安全設計の事例を示す .
Palm oil is widely used in food manufacturing due to its high oxidative and thermal stability. However, prolonged use and exposure to high temperatures lead to an increase in its acid value (AV), accelerating oxidation, thermal degradation, and potential fire hazards. This review systematically examines the effects of AV changes on the thermal stability, oxidative properties, and fire risk characteristics of palm oil. Existing experimental studies indicate that increased AV reduces the smoke point, flash point, and ignition temperature, contributing to greater fire risks. Furthermore, oxidative degradation results in the formation of hazardous by-products, such as polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs), which pose health risks. This study provides a comprehensive analysis of experimental approaches used to evaluate the combustion characteristics of palm oil and highlights key gaps in current research. Finally, recommendations for fire prevention strategies and future research directions are presented to mitigate fire hazards associated with used cooking oils.
本解説では , 非破壊試験法の一つの渦電流探傷試験の高度化の試みとして , 銅製コアを用いた回転渦電 流集束プローブと励磁コイルと検出コイルを互い違いに配置したフィルム渦電流プローブについて , およ び渦電流探傷試験で取得されたデータに機械学習を適用した欠陥評価手法について説明する .
エネルギー物質の新しい形態として , 共結晶の合成に関する報告数は近年増加している . 中でもイオン 性物質である酸化剤と燃料物質を用いたエネルギー共結晶は , 燃料物質と酸化剤が分子レベルで緊密に混 合した状態を作り出すことが出来る . 過塩素酸ナトリウムとアゾール類を対象として共結晶を合成し , 原 料の混合物との感度 , 伝爆性の違いを調べた . その結果 , 感度に変化が生じたほか , 伝爆性は大きく向上 し , 混合物は爆轟しなかったのに対して共結晶は定常爆轟した . 共結晶化は一般的な作業の中で容易に起 こりうる現象であり , 燃料と酸化剤を取り扱う研究開発や製造プロセスにおいて , 意図しない共結晶化は 感度や伝爆性の上昇を引き起こし , 爆発事故の一因となる可能性がある .
理科実験では , 様々な化学物質を取り扱う . その中には可燃性物質が含まれるため , 火災 , 爆発が発生 し , 施設等が焼損 , 破損することがある . 加熱などの操作を行うために , 裸火 , 加熱器具などを使用する ため , 火災 , 爆発 , 高温物体との接触などによって火傷などの負傷を負うことがある . また , 理科実験で 取り扱う化学物質の中には , 毒性のあるものがある . 化学反応によって , 毒性のある化学物質が生成する ことがある . それらの化学物質に暴露されて体調不良になり , 救急搬送されることもある . 火災 , 爆発 , 負傷 , 体調不良などの発生防止 , それらが発生した際の再発防止などに役立てるため , 理科実験が関係し た火災 , 爆発などの事例とその対策を示す .
本研究では , 絶縁性シートとの摩擦によって作業服を帯電させ , 接地された金属球との間で発生する静 電気放電の電荷量およびその危険性を定量的に評価した . 帯電防止仕様でない作業服では , 帯電した作業 服と金属球の間でブラシ放電が発生するが , その放電エネルギーは 20 nC 以下と小さく , 可燃性物質への 着火リスクは低い . 一方 , 帯電防止仕様の作業服では , 摩擦時に導電性糸から自己放電が発生し , コロナ 放電によって帯電電荷が中和されるため , 摩擦後の電位は低下する . これにより , 静電気放電の発生が抑 制される . しかし , 一部の帯電防止仕様作業服で接地不良が生じた場合 , 導電性糸と金属球の間で火花放 電 ( 放電電荷量 :203 nC) が発生し , 可燃性ガスや溶剤に着火する危険性がある .
化学防護手袋のメーカが公開している耐透過性データには混合物はほとんどない . しかし , 実際の作業 現場ではしばしば混合物を使用するため , 混合物に対する化学防護手袋の耐透過性を簡易的に評価する方 法が必要である . そこで , 本研究では , ガスクロマトグラフィー (GC) を用いて混合物を構成する各成 分の透過時間を確認 , リアルタイムモニタの結果と比較し , 混合物の耐透過性を簡易的に評価する方法と してリアルタイムモニタが適用できるかどうか検討を行った .GC の結果より混合物の各成分はほぼ同時 に透過するため , 混合物を合算値として測定するリアルタイムモニタは混合物の測定に適用可能と考えら れた . また , 皮膚等障害化学物質に該当しない透過が速い物質を含有している混合物の場合は , 純物質で は透過が遅い物質も透過が速い物質とほぼ同時に透過するため注意が必要である .