目的 : 子宮頸部腺系病変の細胞診による診断精度は必ずしも高いとはいえない. 特に早期の病変を指摘することは容易でない. われわれは, 子宮頸部腺系病変に対して epithelial specific antigen (以下, ESA) を酵素抗体法により実施し, その有用性を検証した.
方法 : 細胞診および組織診が同時期に実施された頸部腺癌, 20 例 ; 上皮内腺癌, 10 例 ; 上皮内癌, 11 例 ; 浸潤性扁平上皮癌, 20 例の計 61 例を対象とした. HE 染色標本および Papanicolaou 染色脱色標本を用いて ESA を酵素抗体間接法にて染色した. 判定に際しては, 各症例の ESA 陽性細胞を半定量的に評価した.
成績 : 組織学的にみた正常細胞の ESA 発現は, 扁平上皮細胞では陰性または基底細胞の一部に, 頸管円柱上皮細胞は陰性または basolateral membrane への発現を示していた. 一方, 細胞学的には, 正常扁平上皮細胞, 扁平上皮化生細胞, 頸管円柱上皮細胞のそれぞれが陰性または細胞質へわずかな発現を示していた. 組織型別発現率については, 組織, 細胞標本のいずれも子宮頸部腺癌 (endocervical adenocarcinoma, EA), 上皮内腺癌 (adenocarcinoma
in situ, AIS) で発現の増加をみた. また, 扁平上皮系病変では上皮内癌 (carcinoma
in situ, CIS), 扁平上皮癌 (invasive squamous cell carcinoma, SCC) のいずれも低値を示していた.
結論 : 子宮頸部細胞診における ESA の応用は, 腺系細胞に限局した発現を示す. したがって浸潤性腺癌はもとより早期頸部上皮内病変である CIS と AIS の鑑別に有用な情報を与えることが示唆された.
抄録全体を表示