西日本皮膚科
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69 巻, 4 号
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図説
症例
  • 白石 研, 村上 信司, 橋本 公二
    2007 年 69 巻 4 号 p. 359-364
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
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    21歳,男性。体温上昇時,精神的緊張時に疼痛を伴う無数の膨疹出現を主訴に受診した。温熱負荷および運動負荷により紅斑と粟粒大の膨疹が誘発され,アセチルコリン皮内テストで膨疹と衛星病変を認めた。更に,発汗テストにより発汗低下が確認され,減汗症を伴ったコリン性蕁麻疹と診断した。組織学的には発汗低下の要因となるような器質的変化は認められず,連日の温浴による発汗の促進により症状の軽快が得られた。温浴治療開始1週間後に誘発試験,発汗テストを再検したところ,皮疹の出現を認めず,発汗低下は改善していた。本症例のように内服薬が無効である減汗症を伴ったコリン性蕁麻疹に対し,簡便かつ有効である温浴療法は選択すべき新たな治療の一つではないかと考えられた。
  • 青地 聖子, 安藝 良一, 清水 理会, 原田 晴美, 衛藤 光, 岡田 定
    2007 年 69 巻 4 号 p. 365-369
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
    ジャーナル 認証あり
    53歳,男性。初診の約3週間前より両手指から手背にかけて,疼痛・しびれを伴う浮腫が出現し,左第1指から第3指にかけては紫紅色調の紅斑も伴っていた。これらの症状は消炎鎮痛薬内服,ステロイド外用では改善しなかった。当科初診時,末梢血好酸球増多(1748/μl)があり,皮膚所見と合わせ,episodic angioedema with eosinophiliaを疑った。ところが加療中も,足背浮腫や,右示指に冷感を伴ったチアノーゼ,網状皮斑が出現し,さらには血痰も伴うようになった。再検したところ,好酸球増多は進行し(7951/μl),血管内播種性凝固症候群(DIC)を伴っていることが判明した。好酸球増多について骨髄検査を含めて精査を行ったが明らかな異常はなく,最終的にhypereosinophilic syndrome(HES)と診断した。治療はHESに対してpredonisolone 60mg,DICに対してgabexate mesilateで治療を開始し,軽快した。初診時でのHES の診断は困難であるが,本症例のように非典型的な手の浮腫を認めた場合にはHESも含めた鑑別を挙げる必要があると考えられた。
  • 西岡 和恵, 高旗 博昭, 冨永 和行, 石井 文人, 橋本 隆
    2007 年 69 巻 4 号 p. 370-374
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
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    水疱性類天疱瘡で肺癌の合併が明らかとなった1例を経験した。症例は65歳,男性。体幹,下肢にび漫性紅斑を,背部から上腕に浮腫性環状紅斑を認め,小豆大の小水疱を数個伴っていた。小水疱の生検では表皮下水疱を認め,蛍光抗体間接法では抗表皮基底膜部IgG抗体が陽性,ELISAでは水疱性類天疱瘡で認められるBP 180抗体とともに,尋常性天疱瘡に特異的に認められる抗デスモグレイン3抗体も陽性であった。全身精査の結果,左下葉S6に肺癌(T1N3M0,stage III b,扁平上皮癌)が見出された。水疱性類天疱瘡における悪性腫瘍合併および抗デスモグレイン3抗体陽性の意義について検討した。
  • 久保田 由美子, 山口 和記, 中山 樹一郎
    2007 年 69 巻 4 号 p. 375-381
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
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    ポビドンヨード液の長期外用にて生じた皮膚潰瘍の2例を報告する。症例1: 46歳の男性。2004年6月頃,右下腿切断断端部の水疱を伴う紅斑をヘルペス感染症として,勤務先の病院で約2ヵ月,イソジン®消毒,カデックス®軟膏で処置されたところ,潰瘍化した。症例2: 72歳の男性。2005年11月,包茎手術後,イソジン®きず薬で自己消毒を約1ヵ月続けたところ,同部が潰瘍化した。消毒薬と外用剤による48時間閉鎖式パッチテストでは,症例1ではイソジン®液,カデックス®軟膏,ユーパスタ®軟膏が陽性,症例2では前2者が陽性であり,ポビドンヨード液を含む製剤の陽性反応は48時間後より72時間後の方が強く,1週間後も反応が持続していた。したがって我々はこの2症例ともポビドンヨード液による刺激性+アレルギー性接触皮膚炎および潰瘍と診断した。難治性の皮膚潰瘍を見た場合,消毒薬によるパッチテストは必須である。
  • 鈴木 亜希子, 山本 あい, 新谷 洋一, 森田 明理, 磯貝 善蔵, 速水 芳仁, 上田 龍三
    2007 年 69 巻 4 号 p. 382-386
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
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    20歳,男性。家族に同症はなし。小学生頃からばち状指を自覚し,16歳頃より多発関節炎で近医整形外科に通院していた。20歳時,初診。前額部および頬部の深い皺襞,頭部のいわゆる脳回転状皮膚,ばち状の指趾,両手・足・膝関節の腫脹,疼痛を認めた。単純骨レントゲン写真で,四肢・手指骨の骨膜肥厚がみられた。全身検索で明らかな病変はなく,原発性皮膚骨膜肥厚症と診断した。25歳頃より貧血が出現し,28歳頃より血小板減少もみられるようになった。骨髄穿刺ではdry tap,骨髄生検では,脂肪髄で造血巣をほとんど認めず再生不良性貧血が疑われた。ステロイド全身投与にて一旦貧血の改善,血小板の増加がみられたが,漸減にて徐々に増悪を認めた。
  • 阿座上 和子, 松下 茂人, 馬場 千晶, 吉井 典子, 内宮 礼嗣, 金蔵 拓郎, 神崎 保, 米良 修二
    2007 年 69 巻 4 号 p. 387-391
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
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    74歳,男性。1955年頃股部白癬に対して限界線照射治療が行われた。その40年後の1995年,限界線照射部位である左鼠径部に難治性潰瘍が出現し,切除標本によりボーエン癌と診断した。限界線照射50年後の2005年,同じく限界線照射部位の左鼠径部に小潰瘍,左大腿部に結節が出現し,病理組織学的にそれぞれ有棘細胞癌(SCC),基底細胞癌(BCC)と診断した。本症例は限界線治療後50年という長い潜伏期間を経て異なる組織型の皮膚癌を同時に発症した症例であり,過去の限界線照射後に生じた皮膚癌の症例と比較検討し文献的考察を加え報告する。
  • 永瀬 浩太郎, 藤崎 亜紀, 藤崎 伸太, 桑原 守正
    2007 年 69 巻 4 号 p. 392-395
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
    ジャーナル 認証あり
    症例1は56歳の男性。左陰嚢部に無痛性で皮膚常色の結節を自覚し,徐々に増大した。症例2は54歳の男性。左陰嚢皮下に無痛性で可動性のある結節を自覚し,徐々に増大した。臨床像は異なるものの,病理組織学的には2例とも好酸性の細胞質を有する紡錘形細胞の密な束状増殖からなり,明瞭な花むしろ様構造(storiform pattern)がみられ,単発性陰部平滑筋腫(solitary genital leiomyoma)と診断した。いずれも外科的に切除を行い,術後の再発は認めていない。
  • 後藤 和重, 萱島 研一, 城野 剛充, 藤澤 明彦, 廣松 賢治
    2007 年 69 巻 4 号 p. 396-399
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
    ジャーナル 認証あり
    67歳,男性。2005年12月初診。1年前から右大腿部の皮下硬結を自覚していた。自覚症状なく,増大傾向もないが気になるため当科受診。MRIでは皮下脂肪織内に索状影が認められ,末梢血好酸球は正常範囲内だった。生検で脂肪織内から白色の虫体が出現,血清ELISA法にてマンソン孤虫症と確定診断された。本症例で認められたMRIの索状影は虫体ならびに虫体に対する異物反応を反映していると考えられた。移動性のある皮下腫瘤であれば寄生虫症を疑えるが,本症例のように移動性のない皮下硬結で画像所見に索状ないし線状所見を認めた場合は,マンソン孤虫症も鑑別診断の一つとして考慮されるべきであると考えられた。
  • 久保田 由美子, 伊藤 宏太郎, 山口 隆広, 中山 樹一郎
    2007 年 69 巻 4 号 p. 400-405
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 26歳の男性。2004年7月,口腔内アフタと陰部潰瘍出現し,Behçet病と診断され,ステロイド内服にて軽快。10月,感冒症状にてパブロン®S,ピーエイ®錠,ダーゼン®,クラビット®内服。陰部そう痒感出現後,同部の潰瘍,口腔内水疱出現し,摂食困難となったため当科受診。陰茎包皮の紅斑の生検で表皮真皮境界部の裂隙とnecrotic keratinocyteを認め,固定薬疹と診断。皮疹部のパッチテスト(PT)でクラビット®陽性。症例2: 17歳の男性。2005年6月,左拇指,右膝,陰部にそう痒を伴う紅斑と口腔内アフタ出現。自然軽快後,7月,同部位に同様の症状が出現したため当科受診。Behçet病と診断され,右膝の毛嚢炎様丘疹を生検した所,interface changeと表皮内に多数のnecrotic keratinocyteを認め,固定薬疹と診断。皮疹部のPTで不定期に内服していたイブ®A錠が陽性。いずれの症例も詳細な問診と病理所見が診断に有用であった。
  • 坂口 郁代, 日浦 ゆかり, 内田 洋平, 東 裕子, 金蔵 拓郎
    2007 年 69 巻 4 号 p. 406-407
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
    ジャーナル 認証あり
    77歳,男性。左上腕屈側に直径4cmの皮下腫瘤を認めた。疼痛,圧痛などの症状はなく放置していた。病理組織学的には正常な骨格筋組織であった。MRIにて,上腕骨の結節間溝に長頭腱が認められないこと,腫瘤が筋組織と同じ信号強度を呈していることより,上腕二頭筋長頭腱断裂と診断した。上腕の皮下腫瘤の鑑別疾患の一つとして,本症も考慮すべきと考えた。
研究
  • 山下 利春, 黄倉 真恵, 菊地 梨沙, 佐藤 牧人, 高田 知明, 小野 一郎, 神保 孝一
    2007 年 69 巻 4 号 p. 408-413
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
    ジャーナル 認証あり
    Polymerase chain reaction(PCR)を用いると帯状疱疹患者の末梢血リンパ球からも水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)核酸が検出される。本研究では,札幌医大附属病院皮膚科に入院しビダラビン(アラセナ®A)600mg/日を5日間投与された帯状疱疹患者10例よりリンパ球を調製し,PCRによって末梢血リンパ球のVZV gene 29およびgene 62のDNAおよびRNAの検出を行った。検討した10例のうち基礎疾患のある重症帯状疱疹の3例と中等症の1例は補体結合反応値が128倍と高値を示し,さらにPCRによりVZV DNAおよびRNAが検出された。しかし,これら4症例とも入院7~10日後(第14病日)には末梢血リンパ球からウイルス核酸は検出されなかった。他の中等症の1例と軽症5例の末梢血リンパ球からはVZV gene 29あるいは62のDNAとRNAは検出されなかった。患部皮疹が潰瘍化した重症の1例を除き,いずれの症例も3週間以内に上皮化し2~4週間後の帯状疱疹関連神経痛はVASスコアで0/5あるいは1/5まで低下した。これらの結果より,重症例ではウイルス抗体価が上昇し末梢血リンパ球にVZV遺伝子が検出され少なくとも一部のウイルス遺伝子が発現しているが,ビダラビン600mg/日,5日間の投与によって発症2週間後には末梢血よりウイルスが駆逐されると考えられた。
講座
治療
  • —Minocycline Hydrochlorideとの比較—
    川名 誠司, 上野 孝, 下田 貴子
    2007 年 69 巻 4 号 p. 424-427
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
    ジャーナル 認証あり
    マクロライド系抗生物質roxithromycin(ルリッド®: RXM)のざ瘡に対する治療効果をminocycline hydrochloride(ミノマイシン®: MINO)と比較した。16歳以上の炎症性ざ瘡患者32例(RXM 群16例,MINO群16例)を対象とし,常用量(RXM: 300mg/日,MINO: 200mg/日)を2週間投与後,半量に減量して6週間の維持投与を行った。その結果,投与終了後の炎症性皮疹(丘疹,膿疱,結節,嚢腫)の重症度は,両群とも統計学的に有意に減少した。症状の改善幅を両群間で比較したが有意差はなく,同等であった。また,紅色丘疹と膿疱の数も,両群とも経時的に減少した。病変部より分離培養したPropionibacterium acnes(P. acnes)44株に対するMIC90は,RXM では0.2mg/l,MINOでは0.8mg/lであり,RXM がより強い抗菌力を示した。RXMではMICが25mg/l以上の耐性菌が2株認められたが,RXMに対するP. acnesの感受性は,従来の報告と大きな差がなかった。RXMの常用量2週間投与に続く長期維持投与は安全性にも問題がなく,ざ瘡の治療に有用と考える。
  • —イトラコナゾールパルス療法・連続療法とテルビナフィン連続療法の3群間比較—
    竹村 司, 原 弘之
    2007 年 69 巻 4 号 p. 428-433
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2007/09/13
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    近年,本邦での爪白癬の治療はイトラコナゾール,テルビナフィン両剤の経口療法が主流になっている。しかしながら,どちらの薬剤の有効性が優れているかについては興味のあるところであるが,本邦と欧米とでは両剤の用法・用量が異なるため,欧米での比較試験結果をそのまま鵜呑みにすることはできない。そこで今回14施設における趾爪白癬患者を対象に,イトラコナゾール400mgパルス療法,イトラコナゾール100mg・6ヵ月間連続療法,テルビナフィン125mg・6ヵ月間連続療法の3群で,その有効性と安全性を比較検討した。その結果,投与開始から6ヵ月後に判定した総合臨床効果は3群間に有意差を認めなかったものの,爪甲の混濁が消失して白癬菌も陰性になった治癒率は,イトラコナゾールパルス療法が最も高率であった。また,試験期間中の副作用発現率も3群間で有意差が認められなかったが,テルビナフィン連続療法群が最も高率であった。一方,飲み終わりともいえる「治療の完了率」はイトラコナゾールパルス療法群が他の2群に比較して有意に高値を示した。今回の試験結果から,治療完了例ではイトラコナゾールとテルビナフィンとの有効性と安全性はほぼ同等であったが,イトラコナゾールパルス療法は治療期間が短く,しかも治療完了率が高いと考えた。
世界の皮膚科学者
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